問1 は直方体試料を流れる電流のミクロな描像(電流 = 電荷 × 数密度 × 断面積 × 平均速度)とホール効果を扱う。問2 は RL 回路の過渡応答・相互誘導・変圧器(理想変圧器)、そして変圧器を 2 段つないだ送電モデルでの損失を扱う。
立式:一様な電場の中では、電位差 $V$ と電場 $E$、距離 $d$ の間に $V = E\,d$ が成り立つ。面 ADHE と面 BCGF は高さ $h$ だけ離れているので、$d = h$。
$$V = E \cdot h$$結果:$E$ について解くと、
$$E = \dfrac{V}{h}$$面 ADHE(上面)を高電位側につなぐと、電位は上から下へ下がる。電場は高電位から低電位を向くので、上面(高 $z$)から下面(低 $z$)に向かう、すなわち $-z$ 向きになる。電場の大きさは向きによらず $V/h$。
一様電場では $E = V/d$。今回は「面 ADHE と面 BCGF の間」なので距離は高さ $h$。底辺 $a,b$ と取り違えないこと。
立式:電流に垂直な断面の面積は底面 $a\times b$。1 秒間に断面を通過する電子は、断面積 $ab$ に長さ $v$(1 秒間に進む距離)を掛けた体積中に存在する電子で、その個数は
$$\text{通過電子数}/\text{秒} = n \cdot (a b) \cdot v$$1 個の電子の電気量の大きさは $e$ なので、1 秒あたりに通過する電気量、すなわち電流 $I$ は、
$$I = e \cdot n \cdot a b \cdot v = n e a b\, v$$銅 ($n \fallingdotseq 8.5\times10^{28}$ /m³)、$I = 1.0$ A、断面積 $ab = 1.0\,\text{mm}^2 = 1.0\times10^{-6}$ m² として $v$ を求めると、
$$v = \dfrac{I}{n e a b} = \dfrac{1.0}{8.5\times10^{28}\times1.6\times10^{-19}\times1.0\times10^{-6}} \fallingdotseq 7.4\times10^{-5}\ \text{m/s}$$わずか毎秒 0.074 mm! 電子はゆっくり動くが、電場の伝わりは光速近いので電流は瞬時に流れる。
$I = neAv$ は電磁気の基本式。$A$ は電流に垂直な断面積で、ここでは底面 $ab$。高さ $h$ は断面積ではないので使わない。
力のつり合い:電子は静電気力 $eE$ と抵抗力 $kv$ がつり合って一定速度になる。
$$e E = k v \quad\Rightarrow\quad e\cdot\dfrac{V}{h} = k v$$これより電圧 $V$ は、$V = \dfrac{k v h}{e}$。
抵抗の定義から:オームの法則 $V = I R$ と、直方体の抵抗 $R = \dfrac{\rho h}{a b}$(長さ $h$、断面積 $ab$)を用いる。(2) の $I = n e a b\, v$ も代入すると、
$$V = I R = (n e a b\, v)\cdot\dfrac{\rho h}{a b} = n e\,\rho\, h\, v$$2 つの $V$ を等置:
$$\dfrac{k v h}{e} = n e \rho h v$$両辺の $v h$ を消去して $\rho$ について解くと、
$$\dfrac{k}{e} = n e \rho \quad\Rightarrow\quad \rho = \dfrac{k}{n e^2}$$$\rho = k/(n e^2)$ には $a,b,h$ が含まれない。これは正しい。抵抗率は材料固有の量で、試料の形(長さ・断面積)には依存しないはずだからだ。形に依存するのは抵抗 $R=\rho h/(ab)$ のほう。数密度 $n$ が大きい(電子が多い)ほど、また衝突の抵抗係数 $k$ が小さいほど、$\rho$ は小さくなる(電気を通しやすい)。
ミクロな描像(つり合い $eE=kv$ + 電流 $I=neabv$)と、マクロな抵抗 $R=\rho h/(ab)$ を橋渡しするのがこの問題。$\rho$ から $a,b,h$ が消えることが正しさの目印。
立式:磁場中を速度 $v$ で運動する電荷が受けるローレンツ力の大きさは、$F = |q|\,v\,B\sin\theta$。ここで電子の速度($+z$)と磁場($+y$)は直交($\theta=90°$)し、電気量の大きさは $e$ だから、
$$F = e\, v\, B\,\sin 90^\circ = e v B$$(2) の $v = \dfrac{I}{n e a b}$ を代入すれば、電流で表したローレンツ力も書ける:
$$F = e\cdot\dfrac{I}{n e a b}\cdot B = \dfrac{I B}{n a b}$$これは「電流が同じなら、電子が少ない($n$ 小)ほど 1 個あたりの力が大きい」ことを示す。
ローレンツ力の大きさは $evB$(直交時)。大きさを聞かれているので符号 $-e$ ではなく $e$ を使う。向きは次の (あ) で決める。
向きの整理(座標:$z$ 上・$y$ 右・$x$ 手前):電場は $-z$ 向きなので、電流(正電荷の流れ)は $-z$ 向き。電子は電気量が負なので、電子の速度は逆の $+z$ 向き、$\vec v = +v\hat z$。磁場は $\vec B = +B\hat y$。
ローレンツ力(電子):$\vec F = (-e)\,\vec v\times\vec B = (-e)(v\hat z)\times(B\hat y) = -evB\,(\hat z\times\hat y)$。ベクトル積は $\hat z\times\hat y = -\hat x$ なので、
$$\vec F = -evB\,(-\hat x) = +evB\,\hat x$$力は $+x$ 向き(手前)。よって電子は $+x$ 側の面に集まる。図 1 で $+x$ 側(手前)の面は面 ABCD。電子が集まるので、ここが負に帯電する。
電子が前面 ABCD に偏ると、反対の後面 EFGH では電子が不足して正に帯電する。2 面間に電場(ホール電場)ができ、やがてこの電場による静電気力がローレンツ力を打ち消すまで電荷の蓄積が続く。これがつり合った状態が次の (5)。
帯電面の判定は「電子の速度の向き(電流と逆)」を出発点に、$\vec F=(-e)\vec v\times\vec B$ で計算するのが確実。フレミング左手の法則を使う場合も、電流ではなく電子の運動向きに注意。
つり合い:電子が前面に偏ってできたホール電場 $E'$ による静電気力 $eE'$ が、ローレンツ力 $evB$ とつり合うと、電子は元の運動状態(まっすぐ)に戻る。
$$e E' = e v B \quad\Rightarrow\quad E' = v B$$ホール電圧:面 ABCD と面 EFGH の間(磁場 $y$ 方向の厚み $a$)の電位差を $V'$ とすると、一様電場なので、
$$V' = E' \cdot a = v B a$$$v$ を電流で表す:(2) の $v = \dfrac{I}{n e a b}$ を代入する。
$$V' = \dfrac{I}{n e a b}\cdot B \cdot a = \dfrac{I B}{n e b}\cdot\dfrac{a}{a}\ \Rightarrow\ V' = \dfrac{I B}{n e\, a}\cdot\dfrac{a^2}{ab}$$整理すると(厚み $a$ と断面の $a$ が約分されて分母に $a$ が残る)、
$$V' = \dfrac{I B}{n e\, a}$$$n$ について解く:
$$n = \dfrac{I B}{e\, a\, V'}$$$V' = vBa$ と $v=I/(neab)$ を素直に掛けると、$V'=\dfrac{IBa}{neab}=\dfrac{IB}{neb}$ に見えるが、ここで $a$ は2 面間の距離(磁場 $y$ 方向の厚み)、$b$ は別方向の幅。ホール電圧の標準公式 $V_H = \dfrac{IB}{net}$($t$=磁場方向の試料厚さ)に対応させると、磁場 $B$ は $y$ 方向、$y$ 方向の厚みが $a$。よって $t=a$ で $V'=\dfrac{IB}{nea}$、$n=\dfrac{IB}{eaV'}$ となる。電流方向($z$)・電場方向($x$)・磁場方向($y$)の 3 軸を取り違えないことが鍵。
$I = 1.0$ A、$B = 0.10$ T、$V' = 1.0\times10^{-8}$ V、$a = 1.0\times10^{-3}$ m のとき、
$$n = \dfrac{1.0\times0.10}{1.6\times10^{-19}\times1.0\times10^{-3}\times1.0\times10^{-8}} \fallingdotseq 6.3\times10^{28}\ \text{/m}^3$$金属の自由電子密度($\sim10^{28}$〜$10^{29}$ /m³)の桁に一致する。ホール効果はキャリアの符号・濃度を測る基本手法。
ホール効果は「ローレンツ力 = 静電気力」のつり合いから $V'=vBa$、これに $v=I/(neab)$ を代入して $n$ を測る技法。残る長さが磁場方向の厚みであることに注意。
回路方程式:コイル(自己インダクタンス $L$)・抵抗 $R$・電源 $E$ の直列回路で、キルヒホッフの電圧則より、
$$E = L\dfrac{dI}{dt} + R I$$初期条件 $I(0)=0$ のもとで解くと(解の形だけ覚えればよい)、
$$I(t) = \dfrac{E}{R}\left(1 - e^{-t/\tau}\right), \qquad \tau = \dfrac{L}{R}$$$t=0$ では $I=0$、時間とともに傾きがだんだん緩やかになりながら増加し、最終的に $E/R$ に飽和する。直線増加(ア)でも、減衰(オ)でも、振動(イ)でもない。
電流が増えようとすると、コイルはそれを妨げる向きに自己誘導起電力 $-L\dfrac{dI}{dt}$ を発生する(レンツの法則)。スイッチ ON 直後は $\dfrac{dI}{dt}$ が大きく逆起電力も大きいので電流は急に増えない。時間が経ち $\dfrac{dI}{dt}$ が小さくなると逆起電力も小さくなり、電流は抵抗で決まる $E/R$ に達する。
RL 回路の電流は「指数関数的に増加して飽和」。RC 回路の充電も同じ形。逆に放電・減衰は「指数関数的に減少」。グラフの形と回路の対応を押さえる。
立式:コイル1 の電流変化により、相互インダクタンス $M$ を通じてコイル2 に誘導起電力 $V_2$ が生じる。
$$V_2 = M\dfrac{dI_1}{dt}$$数値代入:$M = 0.05$ H、$\dfrac{dI_1}{dt} = 100$ A/s より、
$$V_2 = 0.05 \times 100 = 5\ \text{V}$$コイル2 の電流:コイル2 の両端には $10$ Ω の抵抗だけがつながっているので、オームの法則より、
$$I_2 = \dfrac{V_2}{R} = \dfrac{5}{10} = 0.5\ \text{A}$$$V_2 = M\dfrac{dI_1}{dt} = 5$ V は「誘導起電力」であって「電流」ではない。問われているのはコイル2 に流れる電流なので、抵抗 $10$ Ω で割る必要がある。$5$ V のまま答えると誤り。誘導起電力 → 電流の 1 ステップを忘れないこと。
相互誘導の起電力 $V_2 = M\dfrac{dI_1}{dt}$。電流を聞かれたら抵抗で割る。$dI_1/dt$ が一定(1 秒に 100 A 増加)なので $V_2,\,I_2$ ともに一定値になる。
二次側の電圧:理想変圧器では電圧比=巻数比なので、コイル2(二次側)の電圧 $V_2$ は、
$$V_2 = V\cdot\dfrac{N_2}{N_1}$$二次側の電流:コイル2 には抵抗 $R$ がつながっているので、オームの法則より、
$$I_2 = \dfrac{V_2}{R} = \dfrac{V}{R}\cdot\dfrac{N_2}{N_1}$$一次側の電流:電流比は巻数の逆比 $\dfrac{I_1}{I_2} = \dfrac{N_2}{N_1}$(電力保存 $V I_1 = V_2 I_2$ から導ける)なので、$I_1 = I_2\cdot\dfrac{N_2}{N_1}$。代入して、
$$I_1 = \dfrac{V}{R}\cdot\dfrac{N_2}{N_1}\cdot\dfrac{N_2}{N_1} = \dfrac{V}{R}\left(\dfrac{N_2}{N_1}\right)^2$$理想変圧器ではエネルギーが失われないので、一次側に供給する電力=二次側に渡す電力:
$$V I_1 = V_2 I_2 = \left(V\dfrac{N_2}{N_1}\right) I_2$$両辺を $V$ で割ると $I_1 = \dfrac{N_2}{N_1} I_2$。すなわち電圧が大きくなる側(巻数が多い側)は電流が小さくなる。「電圧を上げれば電流は下がる」が送電で損失を減らす原理。
一次側から見た抵抗は $\dfrac{V}{I_1} = \dfrac{V}{(V/R)(N_2/N_1)^2} = R\left(\dfrac{N_1}{N_2}\right)^2$。巻数比の 2 乗で抵抗を変換できる。これがオーディオの出力トランスなどで「インピーダンス整合」に使われる。
理想変圧器:電圧比=巻数比、電流比=逆巻数比、電力は保存。一次電流は $I_1 = \dfrac{V}{R}\left(\dfrac{N_2}{N_1}\right)^2$ と巻数比の 2 乗が効く。
送電線($r$)を流れる電流:変圧器1 のコイル1(一次側、巻数 $N_1$)に電流 $I$ が流れている。コイル2(二次側、巻数 $N_2$)に流れる電流を $I_{\text{送}}$ とすると、理想変圧器のアンペアターンの保存(電流比=逆巻数比)より、
$$N_1 I = N_2 I_{\text{送}} \quad\Rightarrow\quad I_{\text{送}} = \dfrac{N_1}{N_2}\,I$$変圧器1 のコイル2 と変圧器2 のコイル2 は抵抗 $r$ を介して直列に接続されているので、$r$ を流れる電流はこの $I_{\text{送}}$ に等しい。
(8) 損失電力:抵抗 $r$ でのジュール熱による損失電力は $P_r = I_{\text{送}}^2 r$。$I_{\text{送}} = \dfrac{N_1}{N_2}I$ を代入して、
$$P_r = \left(\dfrac{N_1}{N_2}\,I\right)^2 r = \left(\dfrac{N_1}{N_2}\right)^2 I^2 r$$(9) 供給電力:交流電源は変圧器1 のコイル1(電圧の実効値 $V$、電流の実効値 $I$)に接続されている。電圧と電流が同位相であれば(理想変圧器・抵抗負荷)、電源が供給する電力は、
$$P = V I$$損失の割合は、
$$\dfrac{P_r}{P} = \dfrac{(N_1/N_2)^2 I^2 r}{V I} = \dfrac{r I}{V}\left(\dfrac{N_1}{N_2}\right)^2$$$N_2$ を $N_1$ より十分大きくすると $\left(\dfrac{N_1}{N_2}\right)^2$ が小さくなり、$P_r/P$ が低減する。これは実際の送電で「電圧を高くして電流を小さくし、送電線でのジュール損失を減らす」高圧送電の原理そのもの。$P_r = I_{\text{送}}^2 r$ なので、同じ電力を送るなら電流 $I_{\text{送}}$ を小さくするほど損失は劇的に減る(2 乗で効く)。
送電損失 $P_r = I_{\text{送}}^2 r$ は送電線を流れる電流の 2 乗に比例。変圧器で昇圧して電流を下げる($N_2\gg N_1$)と損失割合 $P_r/P$ が下がる。供給電力は電源側で $P=VI$。