なめらかな水平面上での「ばね+小球の等速円運動」から始まり、「2つの小球とひもの系で一方のひもが切れた後の重心運動・相対運動」、さらに「鉛直面内で回転する剛体的物体が分離した後の放物運動」へと発展する、京都大学らしい力学の総合問題です。3つの設問を貫くのは 向心力と遠心力・重心の運動と相対運動の分離・力学的エネルギー保存の 3 本柱です。
ア(ばねの復元力):点 O から小球までの距離が $R$ のとき、ばねは自然長 $L$ から $R - L$ だけ伸びています。ばね定数 $k$ より、点 O の方向(内向き)にはたらく復元力の大きさは
$$ F_{\text{ばね}} = k(R - L) $$イ(遠心力=必要な向心力):角速度 $\omega$、半径 $R$ で等速円運動する質量 $M$ の小球には、点 O から遠ざかる向きに大きさ $MR\omega^2$ の遠心力がはたらいています(回転座標系で見たとき)。これは、円運動を続けるために中心向きに必要な向心力 $MR\omega^2$ と大きさが等しいものです。
$$ F_{\text{遠心}} = MR\omega^2 $$ウ(両者が等しくなる $R$):ばねの復元力(内向き)と遠心力(外向き)の大きさが等しいとき、回転座標系では力がつり合い、定常的な等速円運動になります。
$$ k(R - L) = MR\omega^2 $$$R$ について整理します。$kR - kL = MR\omega^2$ より
$$ kR - MR\omega^2 = kL \quad\Longrightarrow\quad R(k - M\omega^2) = kL $$ $$ R = \frac{kL}{k - M\omega^2} $$問1(等速円運動が成り立つ条件):得られた $R$ は正の有限の値でなければなりません(ばねは伸びている必要があるので $R > L > 0$)。分子 $kL > 0$ なので、$R > 0$ となるには分母が正であること、すなわち
$$ k - M\omega^2 > 0 \quad\Longrightarrow\quad \omega^2 < \frac{k}{M} $$角速度は正($\omega > 0$)と与えられているので、求める範囲は
$$ 0 < \omega < \sqrt{\frac{k}{M}} $$意味の確認:$\omega \to \sqrt{k/M}$ に近づくと分母 $\to 0$ となり $R \to \infty$(ばねが無限に伸びる)。$\omega \geq \sqrt{k/M}$ では遠心力がばねの復元力に常に勝ってしまい、有限の半径で釣り合えず、円運動が成立しません。
数値で確認:仮に $k = 50$ N/m, $M = 1.0$ kg, $L = 0.60$ m とすると $\sqrt{k/M} = \sqrt{50} \fallingdotseq 7.1$ rad/s。$\omega = 4.0$ rad/s のとき
$$ R = \frac{50 \times 0.60}{50 - 1.0 \times 4.0^2} = \frac{30}{50 - 16} = \frac{30}{34} \fallingdotseq 0.88\ \text{m} $$たしかに $R > L = 0.60$ m となり、ばねが伸びた状態で円運動が成り立つことがわかります。
つり合いの式 $k(R-L) = MR\omega^2$ を $\omega^2$ について解くと
$$ \omega^2 = \frac{k(R-L)}{MR} = \frac{k}{M}\left(1 - \frac{L}{R}\right) $$$R > L$ のとき $0 < 1 - L/R < 1$ なので、右辺は $0$ より大きく $\dfrac{k}{M}$ より小さい。したがって $\omega^2 < \dfrac{k}{M}$、すなわち $0 < \omega < \sqrt{k/M}$ が得られ、同じ条件に到達します。$R$ を大きくとるほど $\omega$ は $\sqrt{k/M}$ に近づくことも読み取れます。
ばねの円運動は「復元力 $k(R-L)$ = 向心力 $MR\omega^2$」の 1 本で決まる。$R$ を解くと分母が $k - M\omega^2$ となり、これが正でないと半径が発散・破綻する。だから $\omega < \sqrt{k/M}$ が円運動の必要条件になる。
切れる直前の状況:点 O を原点に、小球1(質量 $M$)は半径 $a$、小球2(質量 $m$)は半径 $a+b$ で角速度 $\omega$ の等速円運動をしています。小球2が $(a+b,\,0)$ にある瞬間($t=0$)にひも $a$ が切れます。反時計回り(CCW)の回転なので、$+x$ 軸上での速度は $+y$ 方向:小球1の速さ $a\omega$、小球2の速さ $(a+b)\omega$、ともに $+y$ 向きです。
エ・オ(重心の位置):$x$ 座標は質量で重みづけした平均、$y$ 座標は両球とも $0$ です。
$$ x_G = \frac{M\cdot a + m\cdot(a+b)}{M+m}, \qquad y_G = 0 $$コ・サ(重心にかかる加速度と重心の運動):ひもが切れた後、系(小球1+小球2)にはたらく外力は重力と垂直抗力だけで、水平面内には外力がありません(残ったひも $b$ の張力は内力)。よって運動量保存により、重心にかかる加速度は
$$ a_G = 0 $$加速度が $0$ なので、重心は切れた直後の速度のまま 等速直線運動します(サの選択肢は ②)。
カ・キ(重心から見た小球1の相対速度):まず重心の速度($+y$ 向き)を求めます。
$$ V_G = \frac{M\cdot a\omega + m\cdot(a+b)\omega}{M+m} = \frac{\bigl(Ma + m(a+b)\bigr)\omega}{M+m} $$小球1の速度は $a\omega$($+y$)なので、重心から見た小球1の相対速度($y$ 成分)は
$$ v_{1,\text{相対}} = a\omega - V_G = \omega\!\left(a - \frac{Ma + m(a+b)}{M+m}\right) = \omega\cdot\frac{a(M+m) - Ma - m(a+b)}{M+m} $$分子を展開すると $aM + am - Ma - ma - mb = -mb$ なので
$$ v_{1,\text{相対}} = -\frac{mb\,\omega}{M+m} $$大きさは $\dfrac{mb\,\omega}{M+m}$、符号が負なので向きは $y$ 軸負の方向(キの選択肢は ④)。重心は小球1より外側(小球2寄り)にあるため、相対的に小球1は重心より「遅れて」見え、$-y$ 向きになります。
ケ(2 球が重心まわりを回る角速度):重心から小球1までの距離 $r_1$ は
$$ r_1 = x_G - a = \frac{Ma + m(a+b)}{M+m} - a = \frac{m(a+b) - ma}{M+m} = \frac{mb}{M+m} $$相対速度の大きさ $\dfrac{mb\omega}{M+m}$ をこの半径で割れば、重心まわりの角速度が出ます。
$$ \omega' = \frac{|v_{1,\text{相対}}|}{r_1} = \frac{mb\omega/(M+m)}{mb/(M+m)} = \omega $$すなわち、重心まわりの回転角速度はもとの角速度 $\omega$ と同じです(剛体的に回っていたので当然)。
ク(連結ひも $b$ の張力):小球1は半径 $r_1 = \dfrac{mb}{M+m}$、角速度 $\omega' = \omega$ で重心まわりを回るので、必要な向心力をひもの張力 $T$ が与えます。
$$ T = M\,r_1\,\omega'^2 = M\cdot\frac{mb}{M+m}\cdot\omega^2 = \frac{Mmb\,\omega^2}{M+m} $$(小球2側で確認しても同じ:$r_2 = \dfrac{Mb}{M+m}$, $T = m r_2 \omega^2 = \dfrac{Mmb\omega^2}{M+m}$ と一致します。)
2 体問題では、相対運動を「換算質量 $\mu = \dfrac{Mm}{M+m}$ の 1 質点が距離 $b$ を保って角速度 $\omega$ で回る」と見なせます。向心力(=ひもの張力)は
$$ T = \mu\, b\, \omega^2 = \frac{Mm}{M+m}\, b\, \omega^2 = \frac{Mmb\,\omega^2}{M+m} $$個々の半径 $r_1, r_2$ を求めなくても、換算質量と相対距離 $b$ だけで同じ結果に到達します。大学以降で学ぶ「2 体問題の換算質量」の考え方ですが、結果は高校範囲の向心力計算と完全に一致します。
切れる前、系全体は点 O のまわりを剛体的に角速度 $\omega$ で回っていました。ひもが切れても、2 球の相対位置・相対速度の関係は瞬間的には変わりません。剛体回転では「重心まわりの角速度」も「固定点まわりの角速度」も同じ $\omega$ です。切れた後、固定点 O の拘束が消えるだけで内部の回転状態(角速度 $\omega$)はそのまま引き継がれるため、$\omega' = \omega$ となります。重心の並進運動と重心まわりの回転運動が独立に分離するのがポイントです。
連結系の運動は「重心の並進+重心まわりの回転」に分解する。外力の水平成分がなければ重心は等速直線運動($a_G=0$)。重心からの距離は $r_1 = \dfrac{mb}{M+m}$、$r_2 = \dfrac{Mb}{M+m}$ で、和は $b$。張力は $T = \dfrac{Mmb\omega^2}{M+m}$。
物体 A の構成:鉄棒(回転軸 O)から長さ $2a$ の棒の先に小球1(質量 $2m$)、その先に長さ $a$ の棒で小球2(質量 $m$)が固定されています。軸からの距離は小球1が $2a$、小球2が $3a$です。$x$ 軸からの回転角を $\theta$(反時計回りを正)とします。
慣性モーメント(運動エネルギーの準備):軸まわりの慣性モーメントは各小球の「質量×距離²」の和です。
$$ I = 2m\,(2a)^2 + m\,(3a)^2 = 8ma^2 + 9ma^2 = 17ma^2 $$シ($\theta=0$ で小球2に初速 $V_0$ を与えたときの運動エネルギー):小球2は軸から $3a$ なので、このときの角速度は $\omega_0 = \dfrac{V_0}{3a}$。物体 A は剛体的に回るので
$$ K = \frac{1}{2}I\omega_0^2 = \frac{1}{2}\cdot 17ma^2 \cdot\left(\frac{V_0}{3a}\right)^2 = \frac{1}{2}\cdot 17ma^2\cdot\frac{V_0^2}{9a^2} = \frac{17mV_0^2}{18} $$ス(回転角 $\theta$ での位置エネルギー):$y=0$(水平)を基準とすると、回転角 $\theta$ で小球1の高さは $2a\sin\theta$、小球2の高さは $3a\sin\theta$。
$$ U(\theta) = 2m\,g\,(2a\sin\theta) + m\,g\,(3a\sin\theta) = 4mga\sin\theta + 3mga\sin\theta = 7mga\sin\theta $$以下、$V_0 = 3\sqrt{ag}$ とします。このとき初期角速度は
$$ \omega_0 = \frac{V_0}{3a} = \frac{3\sqrt{ag}}{3a} = \frac{\sqrt{ag}}{a} = \sqrt{\frac{g}{a}} $$初期運動エネルギーは $K_0 = \dfrac{1}{2}I\omega_0^2 = \dfrac{1}{2}\cdot 17ma^2\cdot\dfrac{g}{a} = \dfrac{17mga}{2}$。
セ($\theta=\frac{3\pi}{2}$ に初めて到達する直前の回転向き):小球2に与えた初速度は鉛直上向き($+y$)で、これは反時計回り(CCW)の回転に対応します。最高点 $\theta=\frac{\pi}{2}$ を越えられるか確認します。最高点での位置エネルギーは $U(\frac{\pi}{2}) = 7mga$。最高点での運動エネルギーは
$$ K\!\left(\tfrac{\pi}{2}\right) = K_0 - U\!\left(\tfrac{\pi}{2}\right) = \frac{17mga}{2} - 7mga = \frac{17mga - 14mga}{2} = \frac{3mga}{2} > 0 $$運動エネルギーが正なので最高点を通過でき、CCW 方向に回り続けます。$\theta=0\to\frac{\pi}{2}\to\pi\to\frac{3\pi}{2}$ と進むので、$\theta=\frac{3\pi}{2}$ に達する直前も 反時計回り(選択肢 ②)です。
ソ($\theta=\frac{3\pi}{2}$ での角速度の大きさ):$\theta=\frac{3\pi}{2}$ での位置エネルギーは $U(\frac{3\pi}{2}) = 7mga\sin\frac{3\pi}{2} = -7mga$。力学的エネルギー保存より
$$ \frac{1}{2}I\omega^2 + U\!\left(\tfrac{3\pi}{2}\right) = \frac{1}{2}I\omega_0^2 + U(0) $$$U(0)=0$, $I=17ma^2$ を代入します。
$$ \frac{1}{2}\cdot 17ma^2\,\omega^2 + (-7mga) = \frac{17mga}{2} $$ $$ \frac{1}{2}\cdot 17ma^2\,\omega^2 = \frac{17mga}{2} + 7mga = \frac{17mga + 14mga}{2} = \frac{31mga}{2} $$ $$ 17ma^2\,\omega^2 = 31mga \quad\Longrightarrow\quad \omega^2 = \frac{31g}{17a} $$ $$ \omega = \sqrt{\frac{31g}{17a}} $$タ(鉄棒の高さ):$\theta=\frac{3\pi}{2}$(真下を向いた瞬間、軸から見て小球1は $(0,-2a)$、小球2は $(0,-3a)$)で、長さ $2a$ の棒と小球1の連結部が外れます。これを $t=0$ とします。残った「長さ $a$ の棒でつながれた小球1($2m$)と小球2($m$)」の運動を考えます。
① 分離直後の速度:角速度 $\omega = \sqrt{\frac{31g}{17a}}$ で CCW 回転中。$\theta=\frac{3\pi}{2}$(真下)での接線速度は水平($+x$)向きで、小球1(半径 $2a$)は $2a\omega$、小球2(半径 $3a$)は $3a\omega$。
② 2 球系の重心の位置と速度:軸から測った重心の位置(鉛直下向きに測る)は
$$ r_G = \frac{2m\cdot 2a + m\cdot 3a}{2m + m} = \frac{4a + 3a}{3} = \frac{7a}{3} $$重心は軸の真下 $\dfrac{7a}{3}$ にあります。重心の速度(水平 $+x$ 向き、初速度の鉛直成分は 0)は
$$ V_G = \frac{2m\cdot 2a\omega + m\cdot 3a\omega}{3m} = \frac{4a\omega + 3a\omega}{3} = \frac{7a\omega}{3} $$③ 重心は放物運動:分離後、2 球系の外力は重力のみ。重心は水平初速 $V_G$、鉛直初速 $0$ の放物運動をします(鉛直方向は自由落下)。
④ 重心まわりの回転:重心から小球2までの距離は $3a - \frac{7a}{3} = \frac{2a}{3}$(重心の下側)、小球1までは $\frac{7a}{3} - 2a = \frac{a}{3}$(重心の上側)。重心まわりの角速度は分離時の $\omega$ を保ちます(内力の張力は重心運動・相対回転を変えない)。「小球2が再び小球1の鉛直下方に来る」のは、$t=0$ ですでに小球2が小球1の真下にあるので、重心まわりに 1 回転(角度 $2\pi$)した時刻です。
$$ T = \frac{2\pi}{\omega} = 2\pi\sqrt{\frac{17a}{31g}} $$⑤ そのときの高さ条件:その瞬間、小球2は重心の真下 $\frac{2a}{3}$ にあり、ちょうど地面に接します。したがって地面を基準とすると、その時刻の重心の高さは $\dfrac{2a}{3}$。一方、分離時の重心の高さは(鉄棒の高さを $H$ として)$H - \dfrac{7a}{3}$。重心は時間 $T$ で $\dfrac{1}{2}gT^2$ だけ落下するので
$$ \left(H - \frac{7a}{3}\right) - \frac{1}{2}gT^2 = \frac{2a}{3} $$ $$ H = \frac{2a}{3} + \frac{7a}{3} + \frac{1}{2}gT^2 = \frac{9a}{3} + \frac{1}{2}gT^2 = 3a + \frac{1}{2}gT^2 $$$T^2 = \dfrac{4\pi^2}{\omega^2} = 4\pi^2\cdot\dfrac{17a}{31g} = \dfrac{68\pi^2 a}{31g}$ を代入します。
$$ \frac{1}{2}gT^2 = \frac{1}{2}g\cdot\frac{68\pi^2 a}{31g} = \frac{34\pi^2 a}{31} $$ $$ H = 3a + \frac{34\pi^2 a}{31} = \frac{93a + 34\pi^2 a}{31} = \frac{(93 + 34\pi^2)\,a}{31} $$慣性モーメントを使わずに、各小球の運動エネルギーを足してもよい。$\theta=0$ で角速度 $\omega_0=\dfrac{V_0}{3a}$ なら、小球1の速さ $v_1 = 2a\omega_0 = \dfrac{2V_0}{3}$、小球2の速さ $v_2 = 3a\omega_0 = V_0$。
$$ K = \frac{1}{2}(2m)v_1^2 + \frac{1}{2}m v_2^2 = \frac{1}{2}(2m)\left(\frac{2V_0}{3}\right)^2 + \frac{1}{2}m V_0^2 $$ $$ = m\cdot\frac{4V_0^2}{9} + \frac{mV_0^2}{2} = \frac{4mV_0^2}{9} + \frac{mV_0^2}{2} = \frac{8mV_0^2 + 9mV_0^2}{18} = \frac{17mV_0^2}{18} $$慣性モーメントで求めた値と一致します。
分離は $\theta=\frac{3\pi}{2}$(真下)で起きます。この瞬間、各小球の速度は回転の接線方向=水平です。重心速度も水平成分のみ(鉛直成分 0)になるため、重心の鉛直運動は「初速 0 の自由落下 $\frac{1}{2}gT^2$」だけになります。
また「小球2が小球1の鉛直下方に来る」条件について:$t=0$ で小球2はすでに小球1の真下にあります。重心まわりに角速度 $\omega$ で回るので、再び同じ相対配置(小球2が真下)になるのは 1 周後の $T=\frac{2\pi}{\omega}$。半周($\pi$)だと小球2は小球1の真上に来てしまうので不適です。
なお、重心まわりの角速度が分離前の $\omega$ のまま保たれるのは、設問(2)と同じく「内力(棒の張力)は重心運動も相対回転の角速度も変えない」からです。
剛体回転は $K=\frac{1}{2}I\omega^2$($I=\sum m_i r_i^2$) でエネルギー保存を立てる。分離後は 重心の放物運動+重心まわりの等角速度回転に分解。「小球2が小球1の真下に戻る=重心まわり 1 周($T=\frac{2\pi}{\omega}$)」を見抜き、落下距離 $\frac{1}{2}gT^2$ と幾何(重心が $\frac{7a}{3}$ 下、小球2が重心の $\frac{2a}{3}$ 下)を組み合わせて高さを出す。