この問題は,滑らかな床の上に置かれた台と,その台に取り付けられた振り子という系を扱います。台が固定されている場合と自由に動ける場合で,物理現象が大きく異なります。
数値例:質量 M = 5.0 kg の台上で質量 m = 1.0 kg の振り子が高さ h = 0.20 m から振れるとき、最下点の速さは v = sqrt(2 × 9.8 × 0.20) = 1.98 m/s ≒ 2.0 m/s。運動量保存より台の速度は V = 1.0 × 2.0 ÷ 5.0 = 0.40 m/s。
台が動かない(固定されている)場合を考えます。糸が鉛直方向から左に角度 $\theta$ 傾いたところで小球を静止させてから静かに放します。
台が固定されているため,これは単純な単振り子の問題です。 力学的エネルギー保存則を適用します。
最下点を基準とした高さは $h = l(1 - \cos\theta)$ です。
初期状態(静止)と最下点での力学的エネルギー保存:
整理すると:
最下点では,小球は円運動をしています。向心方向(鉛直上向き)の運動方程式を立てます:
$v^2 = 2gl(1-\cos\theta)$ を代入すると:
三角関数の公式 $1 - \cos\theta = 2\sin^2\dfrac{\theta}{2}$ を用いると:
$$v = \sqrt{2gl \cdot 2\sin^2\frac{\theta}{2}} = 2\sqrt{gl}\sin\frac{\theta}{2}$$この形は,$\theta$ が小さいとき $v \fallingdotseq \sqrt{gl}\cdot\theta$ となり,微小振動の結果と整合します。
固定台上の単振り子では,エネルギー保存で速度を求め,最下点での円運動の運動方程式で張力を求める。高さの計算 $h = l(1-\cos\theta)$ は振り子問題の基本。
小球を最下点に静止させた状態から,ゆっくり台を右向きに加速度 $a$ で加速します。その後瞬時に加速をやめて等速運動させると,台上で小球は振り子運動をします。台に静止した観測者から見たとき,運動中の小球の速度の最大値を求めます。
「ゆっくり加速」とは,小球が準静的に(振動せずに)釣り合いを保ちながら傾いていくことを意味します。このとき,台に対して小球は静止しています。
台と一緒に加速度 $a$ で動く観測者(非慣性系)から見ると,小球には見かけの力(慣性力)$ma$ が左向きに働きます。
小球が角度 $\phi$ で釣り合うとき(水平方向と鉛直方向):
(1)÷(2)より:
加速をやめて等速運動に切り替わると,慣性力が消えます。小球は角度 $\phi$ の位置から振り子運動を始めます。
台に対して静止した観測者から見ると,台は慣性系になるので,通常の単振り子と同じです。最下点で速度が最大になります。
高さの差は $h = l(1 - \cos\phi)$ です。エネルギー保存より:
$\tan\phi = a/g$ より,$\cos\phi = \frac{g}{\sqrt{a^2 + g^2}}$ です。
したがって:
分子分母に $\sqrt{a^2+g^2}+g$ を掛けて有理化すると:
$$1 - \frac{g}{\sqrt{a^2+g^2}} = \frac{a^2}{\sqrt{a^2+g^2}(\sqrt{a^2+g^2}+g)}$$よって:
$$v_{\max} = a\sqrt{\frac{2l}{\sqrt{a^2+g^2}+g}}$$加速中の台上では,見かけの重力 $g' = \sqrt{a^2 + g^2}$ が $\phi$ 方向に働くと考えることができます。等速運動に切り替わった後は $g$ に戻りますが,$\phi$ の位置から放したことと同じなので:
$$v_{\max} = \sqrt{2gl(1 - \cos\phi)}$$ここで $\cos\phi = g/g' = g/\sqrt{a^2+g^2}$ を代入すれば同じ結果が得られます。
「ゆっくり加速」は準静的過程で $\tan\phi = a/g$ を与える。等速に切り替わった瞬間から台は慣性系になるので,通常のエネルギー保存を適用できる。非慣性系→慣性系の切り替えがこの問の核心。
静止した台の上で,糸が鉛直方向から左に角度 $\theta = 60°$ 傾いたところで小球を静止させてから静かに放します。床に静止した観測者から見たとき,小球が最下点に達したときの小球の速度と台の速度,および糸の張力を求めます。
床は滑らかなので,系に対して水平方向の外力は働きません。よって:
最下点では糸は鉛直なので,小球は台に対して水平方向にのみ運動します。床から見た小球の水平速度を $v$(右向き正),台の速度を $V$ とします。
運動量保存則より:
(台は小球と逆向きに動く)
小球の高さの減少は $h = l(1 - \cos 60°) = l(1 - 1/2) = l/2$ です。
(1)を代入:
整理すると:
(1)より:
大きさで表すと:
最下点では,小球は台に対して円運動をしています。台から見た小球の相対速度を求めます。
最下点で台に働く水平方向の力は0(糸は鉛直)なので,台の加速度は0です。よって台から見た向心加速度は:
小球の鉛直方向の運動方程式(上向き正):$ma_c = T - mg$
ここで $a_c = \dfrac{(M+m)g}{M}$ だから
台が自由に動くと,運動量保存とエネルギー保存の2式を連立する必要がある。張力は「台に対する相対速度」で円運動の式を立てること。最下点では台の水平加速度が0なので,慣性系と同様に扱える。
静止した台の上で小球を最下点で静止させた後,撃力により台に水平右方向の初速度 $V_0$ を瞬時に与えます。小球が糸が水平になる高さまで達したとき,台の速度を求めます。
糸が水平になったとき,台の速度を $V$,小球の速度を $(v_x, v_y)$ とします。
運動量保存:
拘束条件:糸が伸びないので,糸方向の相対速度成分は0です。
糸が水平のとき,糸方向は水平方向なので:
(2)を(1)に代入:
撃力直後の運動量は $MV_0$ なので,重心の速度は:
$$v_G = \frac{MV_0}{M+m}$$糸が水平のとき,小球と台の水平速度が等しい($v_x = V$)ということは,両者が重心と同じ速度で動いていることを意味します。
したがって,直ちに:
$$V = v_G = \frac{MV_0}{M+m}$$糸が水平のときは拘束条件 $v_x = V$ が成り立つ。これは重心速度と一致するので,重心の等速運動に着目すると素早く解ける。
初期状態(撃力直後)と糸が水平になった状態でエネルギー保存を適用します。
$v_x = V$ なので:
整理すると:
したがって:
エネルギー保存で $v_y$ を求めたら,$|\vec{v}|^2 = v_x^2 + v_y^2$ で速さを計算する。$v_x = V$ は(4)の結果をそのまま使えるので,問の流れに沿って解くのが効率的。
小球が糸が水平になる高さに達するためには,その高さで鉛直速度成分が実数でなければなりません。(5)の結果より:
ちょうど糸が水平になる高さに達する(その瞬間に $v_y = 0$)のは:
この結果は直感的にも理解できます:
「ぎりぎり到達」の条件は $v_y = 0$。$M \gg m$ のとき固定台の結果 $\sqrt{2gl}$ に一致するかを検算すると,式の正しさを確認できる。極限チェックは物理の強力な検算法。