音源と観測者の相対運動によるドップラー効果の基本から始まり、反射板での2段階ドップラー効果、さらに超音波流速計(産業応用)へと展開する問題です。穴埋め形式の説明文を数式で完成させるタイプで、ドップラー効果の原理を正確に理解しているかが問われます。
数値例:f₀ = 340 Hz, V = 340 m/s, w = 34 m/s(近づく)のとき、f' = 340 × (340+34)/(340) = 374 Hz。反射波なら f'' = 340 × (340)/(340-34) × (340+34)/340 × ... と2段階。
ドップラー効果の適用:
音源は静止(速度0)、観測者(受信器)が速さ \(w\) で音源に近づきます。ドップラー効果の公式:
$$ f' = \frac{V + v_{obs}}{V - v_{src}} f_0 = \frac{V + w}{V} f_0 $$穴埋めの論理(問題文の説明文を完成):
時刻 \(t_0\) に音源と受信器の距離が \(L_0\) だったとします。時刻 \(t_0\) から時間 \(t\) 経過後を考えます。ただし \(L_0 > wt\) とします。
受信器は速さ \(w\) で動いているので、時刻 \(t_0\) から \(t\) 後における音源と受信器の距離は:
$$ \text{空欄ア} = L_0 - wt \quad\text{[m]} $$一方、時刻 \(t_0\) で音源から発射された波面は時間 \(t\) 後に音源から距離 \(Vt\) まで到達。受信器に到達した波面は音源からの距離が \(L_0 - wt\) 以内のもの。時刻 \(t_0\) に受信器に到達した波面は音源から \(L_0\) の位置にあったので:
$$ \text{空欄イ} = Vt \quad\text{[m](音波が進む距離)} $$受信器に到達した音波の波長は変わらない(音源が静止しているため)ので \(\lambda = V/f_0\)。
$$ \text{空欄ウ} = \frac{V}{f_0} \quad\text{[m](波長)} $$時間 \(t\) の間に受信器に到達する波の数は、受信器が掃過した距離(\(wt\))と音波が伝わった距離(\(Vt\))を合わせて波長で割ります:
$$ \text{波の数} = \frac{(V + w)t}{V/f_0} = \frac{(V+w)f_0 t}{V} $$したがって観測振動数:
$$ \text{空欄エ}: \quad f' = \frac{V + w}{V} f_0 \quad\text{[Hz]} $$ドップラー効果の一般公式 \(f' = \frac{V + v_{obs}}{V - v_{src}}f_0\) で、音源静止(\(v_{src} = 0\))、観測者が音源に近づく(\(v_{obs} = +w\))を代入するだけです:
$$ f' = \frac{V + w}{V - 0}f_0 = \frac{V + w}{V}f_0 $$2段階ドップラー効果:
第1段階:反射板が「観測者」として受ける振動数
反射板は速さ \(w\) で音源に近づく観測者です。反射板が受ける振動数は:
$$ f_1 = \frac{V + w}{V} f_0 $$第2段階:反射板が「音源」として反射波を発する
反射板は振動数 \(f_1\) の音を発する「動く音源」です。受信器は静止しています。反射板は受信器に近づいているので:
$$ f' = \frac{V}{V - w} f_1 = \frac{V}{V - w} \cdot \frac{V + w}{V} f_0 = \frac{V + w}{V - w} f_0 $$穴埋め(問題文の構造に沿って):
反射板と受信器の距離が \(L_1\) のとき:
空欄オ〜ケの完成:
時刻 \(t_1\) で反射板と受信器の距離は \(L_1\)。反射板は速さ \(w\) で受信器に近づくので:
$$ \Delta t = \frac{L_1}{V} \quad\text{(空欄オ:反射波が受信器に届くまでの時間)} $$\(\Delta t\) 後に反射板は距離 \(w \cdot \Delta t\) だけ近づくので:
$$ \text{空欄カ:} w \cdot \frac{L_1}{V} $$反射板と受信器の間に存在する反射波の波長は、反射板が動くため圧縮されて:
$$ \lambda' = \frac{V - w}{f_1} = \frac{V(V-w)}{(V+w)f_0} \quad\text{(空欄キ)} $$反射波の振動数:
$$ f_r = \frac{V}{\lambda'} = \frac{V+w}{V-w}f_0 \quad\text{(空欄ク)} $$\(f'\) を問1(1)の結果 \(f_1\) で表すと:
$$ f_r = \frac{V}{V-w}f_1 \quad\text{(空欄ケ)} $$空欄オ:\(\frac{L_1}{V}\)、空欄カ:\(\frac{wL_1}{V}\)、空欄キ:\(\frac{V-w}{f_1}\)、空欄ク:\(\frac{V+w}{V-w}f_0\)、空欄ケ:\(\frac{V}{V-w}f_1\)
反射板に当たる音波の波長は \(\lambda_0 = V/f_0\)(音源静止のため波長は不変)。反射板は速さ \(w\) で近づくので、反射板が1波長分の波を受ける時間は \(\Delta t_1 = \lambda_0/(V+w)\)。この間に反射板が発する反射波の数は1波。反射板が \(w\Delta t_1\) 進むので、反射波の波長は \(\lambda_r = V\Delta t_1 - w\Delta t_1 = (V-w)\Delta t_1 = (V-w)\lambda_0/(V+w)\)。したがって \(f_r = V/\lambda_r = V(V+w)/((V-w)\lambda_0) = (V+w)f_0/(V-w)\)。
超音波の伝搬時間:
2つの送受信器を距離 \(L\) 離して角度 \(\theta\) で配置。超音波の速さ \(V_s\)、流体の速さ \(u\)。
超音波の経路は管壁に対して角度 \(\theta\) で、流れ方向の成分は \(u\cos\theta\) です。
送受信器1→2(流れに沿う方向の成分あり):
$$ d_{1 \to 2} = \frac{L}{V_s + u\cos\theta} \quad\text{(到達時間、空欄コ)} $$ここでは近似 \(\frac{1}{V_s \pm u\cos\theta} \fallingdotseq \frac{1}{V_s}\left(1 \mp \frac{u\cos\theta}{V_s}\right)\) を用います(\(u \ll V_s\))。
送受信器2→1(流れに逆らう方向の成分あり):
$$ d_{2 \to 1} = \frac{L}{V_s - u\cos\theta} \quad\text{(空欄サ)} $$時間差:
$$ \Delta d = d_{2 \to 1} - d_{1 \to 2} = L\left(\frac{1}{V_s - u\cos\theta} - \frac{1}{V_s + u\cos\theta}\right) $$ $$ = L \cdot \frac{2u\cos\theta}{V_s^2 - u^2\cos^2\theta} $$\(u \ll V_s\) の近似:
$$ \Delta d \fallingdotseq \frac{2uL\cos\theta}{V_s^2} $$したがって流速:
$$ \text{空欄シ:} \quad u \fallingdotseq \frac{V_s^2}{2L\cos\theta} |\Delta d| $$\(\frac{1}{V_s \pm u\cos\theta}\) を \(u\cos\theta / V_s \equiv \varepsilon \ll 1\) として展開:
$$ \frac{1}{V_s(1 \pm \varepsilon)} \fallingdotseq \frac{1}{V_s}(1 \mp \varepsilon) $$差をとると:
$$ \Delta d = \frac{L}{V_s}(1+\varepsilon) - \frac{L}{V_s}(1-\varepsilon) = \frac{2L\varepsilon}{V_s} = \frac{2Lu\cos\theta}{V_s^2} $$設定:
送受信器から入射角 \(\theta\) で発射された振動数 \(F_0\) の超音波が、流速 \(u_0\) で動く粒子に反射されます。超音波の流体中での速さは \(V_s\)。粒子の径は管の径に比べて十分小さく、粒子は流体と同じ速さ \(u_0\) で運動。\(V_s \gg u_0\)。
ドップラーシフトの計算(反射=2段階ドップラー):
超音波の伝搬方向と粒子の運動方向のなす角を考えると、粒子の運動の超音波伝搬方向成分は \(u_0\cos\theta\) です。
第1段階(粒子が「観測者」):
$$ F_1 = \frac{V_s + u_0\cos\theta}{V_s} F_0 $$第2段階(粒子が「音源」として反射、同じ方向に送受信器部に戻る):
送受信器は静止、反射波は粒子(速さ \(u_0\cos\theta\) で遠ざかる)から発せられるので:
$$ F_r = \frac{V_s}{V_s - u_0\cos\theta} F_1 $$問1のケの結果を参考にすると:
$$ \text{空欄ス:} F_r = \frac{V_s}{V_s - u_0\cos\theta} \times F_0 \cdot \frac{V_s + u_0\cos\theta}{V_s} $$ $$ F_r = \frac{V_s + u_0\cos\theta}{V_s - u_0\cos\theta} F_0 $$振動数の差(ドップラーシフト):
$$ \Delta F = F_r - F_0 = F_0\left(\frac{V_s + u_0\cos\theta}{V_s - u_0\cos\theta} - 1\right) = F_0 \cdot \frac{2u_0\cos\theta}{V_s - u_0\cos\theta} $$\(V_s \gg u_0\) の近似で:
$$ \text{空欄セ:} \quad \Delta F \fallingdotseq \frac{2u_0\cos\theta}{V_s} F_0 $$したがって流速:
$$ u_0 \fallingdotseq \frac{V_s}{2F_0\cos\theta} \cdot |\Delta F| $$時間差法は \(u \propto \Delta d\)(時間差に比例)、ドップラー法は \(u \propto \Delta F\)(振動数シフトに比例)で流速を求めます。
時間差法は清浄な流体でも使えますが、ドップラー法は粒子や気泡が必要です。一方ドップラー法は小さな流速でも高精度(振動数の測定は高精度)という利点があります。
分析:
(1)の時間差法では \(\Delta d \propto \cos\theta\)、(2)のドップラー法では \(\Delta F \propto \cos\theta\) です。
いずれの方法でも信号の大きさは \(\cos\theta\) に比例するため、\(\cos\theta\) が大きい(\(\theta\) が小さい)ほど信号が大きくなります。
したがって、\(\theta\) をできるだけ小さくする(\(\theta \to 0°\)、すなわち超音波を流れの方向にほぼ平行に入射する)のが測定精度の向上に有効です。
理由:入射角 \(\theta\) を小さくすると \(\cos\theta \to 1\) となり、超音波の伝搬方向と流れの方向が近くなるため、流速の影響(時間差やドップラーシフト)が最大になります。
入射角 \(\theta\) をできるだけ小さくする。
理由:(1)(2)の結果から、時間差 \(\Delta d\) も振動数差 \(\Delta F\) も \(\cos\theta\) に比例する。\(\theta\) を小さくして \(\cos\theta\) を大きくすれば信号が大きくなり、測定精度が向上する。
実際には \(\theta = 0\)(完全に平行)にすることは困難です。管壁に送受信器を取り付ける構造上、ある程度の角度が必要です。また、\(\theta\) が小さすぎると管壁からの反射(ノイズ)が増えるという実用上の問題もあります。
一般的な超音波流速計では \(\theta = 30° \sim 45°\) 程度が使われます。本問の理想的な議論と実用設計にはギャップがありますが、試験問題としては \(\cos\theta\) の大小で答えます。