前期 大問3:ドップラー効果と超音波流速計(波動)

解法の指針

音源と観測者の相対運動によるドップラー効果の基本から始まり、反射板での2段階ドップラー効果、さらに超音波流速計(産業応用)へと展開する問題です。穴埋め形式の説明文を数式で完成させるタイプで、ドップラー効果の原理を正確に理解しているかが問われます。

問題の構成と攻略法

キーポイント
ドップラー効果の公式:\(f' = \frac{V \pm v_{obs}}{V \mp v_{src}} f_0\)。近づくときは分子に+、分母に−。反射板は「動く観測者」兼「動く音源」として2回適用。

数値例:f₀ = 340 Hz, V = 340 m/s, w = 34 m/s(近づく)のとき、f' = 340 × (340+34)/(340) = 374 Hz。反射波なら f'' = 340 × (340)/(340-34) × (340+34)/340 × ... と2段階。

問1(1):受信器が音源に近づく場合の振動数

直感的に理解しよう
一直線上に音源(振動数 \(f_0\))と受信器を載せた台車があります。台車が速さ \(w\) で音源に近づくとき、受信器で観測される振動数を求めます。音速は \(V\)、\(V > w\)。

ドップラー効果の適用:

音源は静止(速度0)、観測者(受信器)が速さ \(w\) で音源に近づきます。ドップラー効果の公式:

$$ f' = \frac{V + v_{obs}}{V - v_{src}} f_0 = \frac{V + w}{V} f_0 $$

穴埋めの論理(問題文の説明文を完成):

時刻 \(t_0\) に音源と受信器の距離が \(L_0\) だったとします。時刻 \(t_0\) から時間 \(t\) 経過後を考えます。ただし \(L_0 > wt\) とします。

受信器は速さ \(w\) で動いているので、時刻 \(t_0\) から \(t\) 後における音源と受信器の距離は:

$$ \text{空欄ア} = L_0 - wt \quad\text{[m]} $$

一方、時刻 \(t_0\) で音源から発射された波面は時間 \(t\) 後に音源から距離 \(Vt\) まで到達。受信器に到達した波面は音源からの距離が \(L_0 - wt\) 以内のもの。時刻 \(t_0\) に受信器に到達した波面は音源から \(L_0\) の位置にあったので:

$$ \text{空欄イ} = Vt \quad\text{[m](音波が進む距離)} $$

受信器に到達した音波の波長は変わらない(音源が静止しているため)ので \(\lambda = V/f_0\)。

$$ \text{空欄ウ} = \frac{V}{f_0} \quad\text{[m](波長)} $$

時間 \(t\) の間に受信器に到達する波の数は、受信器が掃過した距離(\(wt\))と音波が伝わった距離(\(Vt\))を合わせて波長で割ります:

$$ \text{波の数} = \frac{(V + w)t}{V/f_0} = \frac{(V+w)f_0 t}{V} $$

したがって観測振動数:

$$ \text{空欄エ}: \quad f' = \frac{V + w}{V} f_0 \quad\text{[Hz]} $$
答え
$$ \text{ア: } L_0 - wt $$ $$ \text{イ: } Vt $$ $$ \text{ウ: } \frac{V}{f_0} $$ $$ \text{エ: } f' = \frac{V+w}{V}f_0 $$
💡 別解:一般公式からの導出

ドップラー効果の一般公式 \(f' = \frac{V + v_{obs}}{V - v_{src}}f_0\) で、音源静止(\(v_{src} = 0\))、観測者が音源に近づく(\(v_{obs} = +w\))を代入するだけです:

$$ f' = \frac{V + w}{V - 0}f_0 = \frac{V + w}{V}f_0 $$

問1(2):反射板による反射波の振動数

直感的に理解しよう
今度は台車に反射板を取り付け、受信器は直線上の固定位置に置きます。音源から出た音波が、速さ \(w\) で近づく反射板で反射され、固定受信器に届きます。ドップラー効果を2段階適用します。

2段階ドップラー効果:

第1段階:反射板が「観測者」として受ける振動数

反射板は速さ \(w\) で音源に近づく観測者です。反射板が受ける振動数は:

$$ f_1 = \frac{V + w}{V} f_0 $$

第2段階:反射板が「音源」として反射波を発する

反射板は振動数 \(f_1\) の音を発する「動く音源」です。受信器は静止しています。反射板は受信器に近づいているので:

$$ f' = \frac{V}{V - w} f_1 = \frac{V}{V - w} \cdot \frac{V + w}{V} f_0 = \frac{V + w}{V - w} f_0 $$

穴埋め(問題文の構造に沿って):

反射板と受信器の距離が \(L_1\) のとき:

空欄オ〜ケの完成:

時刻 \(t_1\) で反射板と受信器の距離は \(L_1\)。反射板は速さ \(w\) で受信器に近づくので:

$$ \Delta t = \frac{L_1}{V} \quad\text{(空欄オ:反射波が受信器に届くまでの時間)} $$

\(\Delta t\) 後に反射板は距離 \(w \cdot \Delta t\) だけ近づくので:

$$ \text{空欄カ:} w \cdot \frac{L_1}{V} $$

反射板と受信器の間に存在する反射波の波長は、反射板が動くため圧縮されて:

$$ \lambda' = \frac{V - w}{f_1} = \frac{V(V-w)}{(V+w)f_0} \quad\text{(空欄キ)} $$

反射波の振動数:

$$ f_r = \frac{V}{\lambda'} = \frac{V+w}{V-w}f_0 \quad\text{(空欄ク)} $$

\(f'\) を問1(1)の結果 \(f_1\) で表すと:

$$ f_r = \frac{V}{V-w}f_1 \quad\text{(空欄ケ)} $$
答え
$$ f_r = \frac{V+w}{V-w}f_0 $$

空欄オ:\(\frac{L_1}{V}\)、空欄カ:\(\frac{wL_1}{V}\)、空欄キ:\(\frac{V-w}{f_1}\)、空欄ク:\(\frac{V+w}{V-w}f_0\)、空欄ケ:\(\frac{V}{V-w}f_1\)

💡 別解:波面の間隔から直接導出

反射板に当たる音波の波長は \(\lambda_0 = V/f_0\)(音源静止のため波長は不変)。反射板は速さ \(w\) で近づくので、反射板が1波長分の波を受ける時間は \(\Delta t_1 = \lambda_0/(V+w)\)。この間に反射板が発する反射波の数は1波。反射板が \(w\Delta t_1\) 進むので、反射波の波長は \(\lambda_r = V\Delta t_1 - w\Delta t_1 = (V-w)\Delta t_1 = (V-w)\lambda_0/(V+w)\)。したがって \(f_r = V/\lambda_r = V(V+w)/((V-w)\lambda_0) = (V+w)f_0/(V-w)\)。

📌 ポイント
反射板が近づく場合、反射波の振動数は元の振動数より高くなります。\(\frac{V+w}{V-w} > 1\) なので、\(f_r > f_0\) です。これは救急車が近づくときにサイレンの音が高く聞こえるのと同じ原理の2重適用です。

問2(1):超音波流速計(時間差法)

直感的に理解しよう
まっすぐな管内を一様に速さ \(u\) で流れる流体中に、2つの送受信器を距離 \(L\) 離して対向配置し、入射角 \(\theta\) で超音波を発射します。流れに沿う方向と逆方向で超音波の到達時間に差が生じ、この差から流速 \(u\) を求めます。

超音波の伝搬時間:

2つの送受信器を距離 \(L\) 離して角度 \(\theta\) で配置。超音波の速さ \(V_s\)、流体の速さ \(u\)。

超音波の経路は管壁に対して角度 \(\theta\) で、流れ方向の成分は \(u\cos\theta\) です。

送受信器1→2(流れに沿う方向の成分あり):

$$ d_{1 \to 2} = \frac{L}{V_s + u\cos\theta} \quad\text{(到達時間、空欄コ)} $$

ここでは近似 \(\frac{1}{V_s \pm u\cos\theta} \fallingdotseq \frac{1}{V_s}\left(1 \mp \frac{u\cos\theta}{V_s}\right)\) を用います(\(u \ll V_s\))。

送受信器2→1(流れに逆らう方向の成分あり):

$$ d_{2 \to 1} = \frac{L}{V_s - u\cos\theta} \quad\text{(空欄サ)} $$

時間差:

$$ \Delta d = d_{2 \to 1} - d_{1 \to 2} = L\left(\frac{1}{V_s - u\cos\theta} - \frac{1}{V_s + u\cos\theta}\right) $$ $$ = L \cdot \frac{2u\cos\theta}{V_s^2 - u^2\cos^2\theta} $$

\(u \ll V_s\) の近似:

$$ \Delta d \fallingdotseq \frac{2uL\cos\theta}{V_s^2} $$

したがって流速:

$$ \text{空欄シ:} \quad u \fallingdotseq \frac{V_s^2}{2L\cos\theta} |\Delta d| $$
答え
$$ \text{コ:} \frac{L}{V_s + u\cos\theta} $$ $$ \text{サ:} \frac{L}{V_s - u\cos\theta} $$ $$ u \fallingdotseq \frac{V_s^2 \cdot |\Delta d|}{2L\cos\theta} $$
📐 近似式の導出の詳細

\(\frac{1}{V_s \pm u\cos\theta}\) を \(u\cos\theta / V_s \equiv \varepsilon \ll 1\) として展開:

$$ \frac{1}{V_s(1 \pm \varepsilon)} \fallingdotseq \frac{1}{V_s}(1 \mp \varepsilon) $$

差をとると:

$$ \Delta d = \frac{L}{V_s}(1+\varepsilon) - \frac{L}{V_s}(1-\varepsilon) = \frac{2L\varepsilon}{V_s} = \frac{2Lu\cos\theta}{V_s^2} $$

問2(2):粒子・気泡による反射波のドップラーシフト

直感的に理解しよう
管内の流体中に粒子や気泡が混ざっている場合、超音波はこれらに反射されます。粒子は流体と同じ速さ \(u_0\) で運動しているので、反射波にはドップラーシフトが生じます。このシフトから流速を求めるのがドップラー法です。

設定:

送受信器から入射角 \(\theta\) で発射された振動数 \(F_0\) の超音波が、流速 \(u_0\) で動く粒子に反射されます。超音波の流体中での速さは \(V_s\)。粒子の径は管の径に比べて十分小さく、粒子は流体と同じ速さ \(u_0\) で運動。\(V_s \gg u_0\)。

ドップラーシフトの計算(反射=2段階ドップラー):

超音波の伝搬方向と粒子の運動方向のなす角を考えると、粒子の運動の超音波伝搬方向成分は \(u_0\cos\theta\) です。

第1段階(粒子が「観測者」):

$$ F_1 = \frac{V_s + u_0\cos\theta}{V_s} F_0 $$

第2段階(粒子が「音源」として反射、同じ方向に送受信器部に戻る):

送受信器は静止、反射波は粒子(速さ \(u_0\cos\theta\) で遠ざかる)から発せられるので:

$$ F_r = \frac{V_s}{V_s - u_0\cos\theta} F_1 $$

問1のケの結果を参考にすると:

$$ \text{空欄ス:} F_r = \frac{V_s}{V_s - u_0\cos\theta} \times F_0 \cdot \frac{V_s + u_0\cos\theta}{V_s} $$ $$ F_r = \frac{V_s + u_0\cos\theta}{V_s - u_0\cos\theta} F_0 $$

振動数の差(ドップラーシフト):

$$ \Delta F = F_r - F_0 = F_0\left(\frac{V_s + u_0\cos\theta}{V_s - u_0\cos\theta} - 1\right) = F_0 \cdot \frac{2u_0\cos\theta}{V_s - u_0\cos\theta} $$

\(V_s \gg u_0\) の近似で:

$$ \text{空欄セ:} \quad \Delta F \fallingdotseq \frac{2u_0\cos\theta}{V_s} F_0 $$

したがって流速:

$$ u_0 \fallingdotseq \frac{V_s}{2F_0\cos\theta} \cdot |\Delta F| $$
答え
$$ \text{ス:} \frac{V_s + u_0\cos\theta}{V_s - u_0\cos\theta} F_0 $$ $$ \text{セ:} \frac{2u_0 F_0 \cos\theta}{V_s} $$ $$ u_0 \fallingdotseq \frac{V_s \cdot |\Delta F|}{2F_0 \cos\theta} $$
💡 時間差法との比較

時間差法は \(u \propto \Delta d\)(時間差に比例)、ドップラー法は \(u \propto \Delta F\)(振動数シフトに比例)で流速を求めます。

時間差法は清浄な流体でも使えますが、ドップラー法は粒子や気泡が必要です。一方ドップラー法は小さな流速でも高精度(振動数の測定は高精度)という利点があります。

問2(3):測定精度を上げるための入射角

直感的に理解しよう
超音波流速計の測定精度を向上させるには、\(\Delta F\) や \(\Delta d\) の信号を大きくする必要があります。どの入射角 \(\theta\) が最適でしょうか。

分析:

(1)の時間差法では \(\Delta d \propto \cos\theta\)、(2)のドップラー法では \(\Delta F \propto \cos\theta\) です。

いずれの方法でも信号の大きさは \(\cos\theta\) に比例するため、\(\cos\theta\) が大きい(\(\theta\) が小さい)ほど信号が大きくなります。

したがって、\(\theta\) をできるだけ小さくする(\(\theta \to 0°\)、すなわち超音波を流れの方向にほぼ平行に入射する)のが測定精度の向上に有効です。

理由:入射角 \(\theta\) を小さくすると \(\cos\theta \to 1\) となり、超音波の伝搬方向と流れの方向が近くなるため、流速の影響(時間差やドップラーシフト)が最大になります。

答え

入射角 \(\theta\) をできるだけ小さくする。

理由:(1)(2)の結果から、時間差 \(\Delta d\) も振動数差 \(\Delta F\) も \(\cos\theta\) に比例する。\(\theta\) を小さくして \(\cos\theta\) を大きくすれば信号が大きくなり、測定精度が向上する。

📐 実際の超音波流速計の設計

実際には \(\theta = 0\)(完全に平行)にすることは困難です。管壁に送受信器を取り付ける構造上、ある程度の角度が必要です。また、\(\theta\) が小さすぎると管壁からの反射(ノイズ)が増えるという実用上の問題もあります。

一般的な超音波流速計では \(\theta = 30° \sim 45°\) 程度が使われます。本問の理想的な議論と実用設計にはギャップがありますが、試験問題としては \(\cos\theta\) の大小で答えます。

📌 ポイント
ドップラー効果では、音源と観測者の相対速度の視線方向成分だけが振動数変化に寄与します。超音波を流れにほぼ平行に入射すれば、視線方向成分が最大になり、信号が強くなります。