前期 大問Ⅰ:力学(つり合い・剛体・単振り子と振動)

解法の指針

天井の2点 Q・R からひも C で吊られた点 P に、ひも B を介して剛体棒 A(または小球)をぶら下げる装置です。前半は力のつり合い・剛体のつり合い(力のモーメント)、後半は単振り子の張力・等時性の近似・2次元振動(リサジュー図形)へと発展する力学総合問題です。

問題の構成

全体を貫くポイント

設問(1):点 P における3本の張力

直感的理解
点 P には下向きにひも B の張力 $T$(=棒の重さ)が引く。これを、ひも C の2本(PR 方向の $T_1$、PQ 方向の $T_2$)で支える。$\angle$QPR$=90^\circ$ なので $T_1$ と $T_2$ は直交し、まるで「直角に開いた2本のロープで重りを支える」状態になっている。

① ひも B の張力 $T$:剛体棒 A(質量 $m$)はひも B 1本だけで吊られて静止しているので、棒の鉛直方向のつり合いから

$$T = mg$$

② 点 P のつり合い:点 P には、下向きにひも B の張力 $T(=mg)$、PR 方向に $T_1$、PQ 方向に $T_2$ がはたらく。$\angle$PRQ$=60^\circ$ より PR は鉛直と $30^\circ$、$\angle$PQR$=30^\circ$ より PQ は鉛直と $60^\circ$ をなす($\angle$QPR$=90^\circ$)。水平・鉛直に分解すると、

水平方向のつり合い(左右の成分が打ち消し合う):

$$T_1 \sin 30^\circ = T_2 \sin 60^\circ$$

鉛直方向のつり合い(上向きの分力の和が $T$ を支える):

$$T_1 \cos 30^\circ + T_2 \cos 60^\circ = T = mg$$

③ 連立して解く:水平の式に $\sin 30^\circ = \tfrac12,\ \sin 60^\circ = \tfrac{\sqrt3}{2}$ を代入すると

$$\tfrac12 T_1 = \tfrac{\sqrt3}{2} T_2 \quad\Rightarrow\quad T_1 = \sqrt{3}\,T_2$$

これを鉛直の式に代入($\cos 30^\circ = \tfrac{\sqrt3}{2},\ \cos 60^\circ = \tfrac12$):

$$\sqrt{3}\,T_2 \cdot \tfrac{\sqrt3}{2} + T_2 \cdot \tfrac12 = mg \quad\Rightarrow\quad \tfrac32 T_2 + \tfrac12 T_2 = 2T_2 = mg$$ $$T_2 = \frac{1}{2}mg, \qquad T_1 = \sqrt{3}\cdot\frac{1}{2}mg = \frac{\sqrt{3}}{2}mg$$
答え: $$T = mg, \qquad T_1 = \frac{\sqrt{3}}{2}mg, \qquad T_2 = \frac{1}{2}mg$$
別解:直角を活かした「斜交分解」で素早く求める

$T_1 \perp T_2$($\angle$QPR$=90^\circ$)なので、下向きの $T(=mg)$ を $T_1,\ T_2$ の2方向に直接分解できる。$T$ と $T_1$(鉛直から $30^\circ$)のなす角は $30^\circ$、$T$ と $T_2$(鉛直から $60^\circ$)のなす角は $60^\circ$。直角三角形の射影として、

$$T_1 = mg\cos 30^\circ = \frac{\sqrt3}{2}mg, \qquad T_2 = mg\cos 60^\circ = \frac{1}{2}mg$$

同じ結果が一瞬で得られる。$\angle$QPR$=90^\circ$ は「下向きの重さを直角2方向に分ける」ためのヒントだったとわかる。

Point

ひもの張力は必ずひもの方向を向く。$\angle$QPR$=90^\circ$($T_1\perp T_2$)なら、重力を2方向に分解するだけで $T_1=mg\cos30^\circ,\ T_2=mg\cos60^\circ$ と即座に求まる。直交条件は計算を劇的に簡単にする。

設問(2):水平力 $F_1,\ F_2$ を加えて棒を傾ける(剛体のつり合い)

直感的理解
棒の上端と下端に水平な力を加えて、ひも C の短辺 PR・ひも B・棒 A を一直線(鉛直から $30^\circ$ 傾いた線)に並べて静止させる。棒には「重力(中心に下向き)」「上端・下端の水平力 $F_1,\ F_2$」「ひも B の張力(線に沿って上向き)」がはたらく。力のつり合い力のモーメントのつり合いの両方を立てるのがカギ。

ひも C の短辺 PR は鉛直と $30^\circ$ をなす。これと一直線になった「ひも B + 棒 A」も鉛直から $30^\circ$ 傾く。棒 A について、力のつり合いとモーメントのつり合いを立てる。ひも B の張力 $T$ は線に沿って上向き(鉛直から $30^\circ$)にはたらく。

① 鉛直方向の力のつり合い:水平力 $F_1,\ F_2$ は鉛直成分を持たないので、$T$ の鉛直成分が重力を支える:

$$T\cos 30^\circ = mg \quad\Rightarrow\quad T = \frac{mg}{\cos 30^\circ} = \frac{2mg}{\sqrt{3}} = \frac{2\sqrt{3}}{3}mg$$

② 力のモーメントのつり合い:棒 A(長さ $a$)の上端(ひも B との接続点)まわりのモーメントを考える。線方向の角度は鉛直から $30^\circ$。上端から測った位置で、重力は中心($\tfrac{a}{2}$)に、$F_2$ は下端($a$)にはたらく($F_1$ は上端なのでモーメント 0、$T$ も上端なので 0)。

水平力のうでの長さは「上端からの鉛直距離」、重力のうでの長さは「上端からの水平距離」になる。上端まわりのモーメントのつり合いは、

$$mg \cdot \frac{a}{2}\sin 30^\circ = F_2 \cdot a\cos 30^\circ$$

$\sin 30^\circ = \tfrac12,\ \cos 30^\circ = \tfrac{\sqrt3}{2}$ を代入:

$$mg\cdot\frac{a}{2}\cdot\frac12 = F_2 \cdot a\cdot\frac{\sqrt3}{2} \quad\Rightarrow\quad \frac{mga}{4} = \frac{\sqrt3}{2}aF_2$$ $$F_2 = \frac{mg}{4}\cdot\frac{2}{\sqrt3} = \frac{mg}{2\sqrt3} = \frac{\sqrt{3}}{6}mg$$

③ 水平方向の力のつり合い:$T$ の水平成分 $T\sin 30^\circ$ と $F_1,\ F_2$ がつり合う:

$$T\sin 30^\circ = F_1 + F_2$$ $$\frac{2mg}{\sqrt3}\cdot\frac12 = F_1 + F_2 \quad\Rightarrow\quad \frac{mg}{\sqrt3} = F_1 + F_2$$

$\dfrac{mg}{\sqrt3} = \dfrac{\sqrt3}{3}mg = \dfrac{2\sqrt3}{6}mg$ なので、

$$F_1 = \frac{2\sqrt3}{6}mg - F_2 = \frac{2\sqrt3}{6}mg - \frac{\sqrt3}{6}mg = \frac{\sqrt{3}}{6}mg$$
答え: $$F_1 = \frac{\sqrt{3}}{6}mg, \qquad F_2 = \frac{\sqrt{3}}{6}mg$$ (上端・下端の水平力は等しい)
補足:なぜ $F_1 = F_2$ になるのか

偶力的に見ると分かりやすい。重力 $mg$ は重心(上端から $\tfrac{a}{2}$)に下向きにはたらく。下端まわりのモーメントでチェックすると、

$$mg\cdot\frac{a}{2}\sin 30^\circ = F_1 \cdot a\cos 30^\circ \;\Rightarrow\; F_1 = \frac{\sqrt3}{6}mg$$

と、上端まわりで $F_2$ を求めたのと完全に対称な式になる。重心がちょうど棒の中央にあるため、上端と下端の水平力が等しくなる。

Point

剛体のつり合いは「力のつり合い(2成分)」+「力のモーメントのつり合い」の3式。モーメントは計算しやすい点(力が多く集まる点)まわりでとると、未知の張力 $T$ を消去できて速い。

設問(3):設問(2)のときの各ひもの張力

直感的理解
棒を傾けた図3では、ひも C の短辺 PR・ひも B・棒 A が一直線。すると点 P では、ひも B の張力 $T$(線に沿って下向き)とひも C 短辺の張力 $T_1$(同じ線に沿って上向き)が一直線上で向かい合う。長辺 PQ(破線)はたるんでいるので張力 $T_2=0$。

① ひも B の張力 $T$:設問(2)で求めた通り、棒の鉛直方向のつり合いから

$$T = \frac{mg}{\cos 30^\circ} = \frac{2mg}{\sqrt3} = \frac{2\sqrt{3}}{3}mg$$

② 点 P のつり合い:PR・B・A が一直線なので、点 P では「ひも C 短辺の張力 $T_1$(線方向に上向き)」と「ひも B の張力 $T$(線方向に下向き)」が同一直線上で逆向き。長辺 PQ はたるんでいて張力を出せないので $T_2 = 0$。よって線方向のつり合いから、

$$T_1 = T = \frac{2\sqrt{3}}{3}mg$$

線に垂直な方向には力がないので、これだけでつり合いが成立する。

答え: $$T = \frac{2\sqrt{3}}{3}mg, \qquad T_1 = \frac{2\sqrt{3}}{3}mg, \qquad T_2 = 0$$
補足:なぜ長辺 PQ はたるむのか

ひもは「引く」ことしかできず「押す」ことはできない。設問(1)では PQ も PR も張っていたが、設問(2)では棒を傾けて PR・B・A を一直線にした。このとき点 P を支える力は PR 方向(と B 方向)だけで完結し、PQ は引っ張られる必要がない。張る必要のないひもはたるんで張力 0 になる。

Point

一直線上に並んだ2本のひも(B と C 短辺)は「向かい合う1本のひも」とみなせ、張力は等しい($T_1 = T$)。たるんだひもの張力は 0 という基本を見落とさないこと。

設問(4):単振り子の張力の最大・最小

直感的理解
棒を外して小球 D(質量 $M$)を付け、PR と B が一直線(鉛直から $30^\circ$)の位置から静かに放すと、点 P を支点・長さ $b$ の単振り子になる。張力は最下点で最大(速さが最大+向心力が必要)、最高点(振れの端、振れ角 $30^\circ$)で最小(速さ 0)。

支点 P・長さ $b$・振幅(振れ角)$\theta_0 = 30^\circ$ の単振り子。重力加速度 $g$。最下点を高さの基準とする。

① 最高点(端、$\theta = 30^\circ$)での張力 $T_{\min}$:端では速さ 0 で円運動の向心加速度が 0。向心方向(ひも方向)の運動方程式は、重力のひも方向成分とつり合う:

$$T_{\min} = Mg\cos 30^\circ = Mg\cdot\frac{\sqrt3}{2} = \frac{\sqrt{3}}{2}Mg$$

② 最下点での速さ $v$(エネルギー保存):端から最下点までの高さの差は $b(1-\cos 30^\circ)$。力学的エネルギー保存より、

$$Mg\,b(1-\cos 30^\circ) = \frac{1}{2}Mv^2 \quad\Rightarrow\quad v^2 = 2gb(1-\cos 30^\circ)$$

③ 最下点での張力 $T_{\max}$(向心方向の運動方程式):最下点ではひもは鉛直で、向心方向(上向き)の運動方程式は

$$T_{\max} - Mg = \frac{Mv^2}{b}$$

$v^2 = 2gb(1-\cos 30^\circ)$ を代入すると、$b$ が約分されて消える:

$$T_{\max} = Mg + \frac{M\cdot 2gb(1-\cos 30^\circ)}{b} = Mg + 2Mg(1-\cos 30^\circ)$$ $$T_{\max} = Mg\bigl(1 + 2 - 2\cos 30^\circ\bigr) = Mg\bigl(3 - 2\cdot\tfrac{\sqrt3}{2}\bigr) = (3-\sqrt{3})Mg$$

数値例:仮に $M = 0.10$ kg、$g = 9.8$ m/s$^2$ とすると、$Mg = 0.10 \times 9.8 = 0.98$ N。これより

$$T_{\max} = (3-\sqrt{3})\times 0.98 = 1.27 \times 0.98 \fallingdotseq 1.2 \text{ N}$$ $$T_{\min} = \frac{\sqrt{3}}{2}\times 0.98 = 0.866 \times 0.98 \fallingdotseq 0.85 \text{ N}$$

となり、最下点での張力は端での張力の約 1.5 倍。重さ $0.98$ N の球を振らせるだけで、ひもには最大 $1.2$ N の力がかかることがわかる。

答え: $$T_{\max} = (3-\sqrt{3})Mg, \qquad T_{\min} = \frac{\sqrt{3}}{2}Mg$$
別解:任意の振れ角 $\theta$ での張力の一般式

振れ角 $\theta$ での速さは、端 $\theta_0$ からのエネルギー保存より $v^2 = 2gb(\cos\theta - \cos\theta_0)$。向心方向の運動方程式 $T - Mg\cos\theta = \dfrac{Mv^2}{b}$ に代入すると、

$$T(\theta) = Mg\cos\theta + 2Mg(\cos\theta - \cos\theta_0) = Mg(3\cos\theta - 2\cos\theta_0)$$

$\theta = 0$(最下点)で $T = Mg(3 - 2\cos 30^\circ) = (3-\sqrt3)Mg$、$\theta = \theta_0 = 30^\circ$ で $T = Mg\cos 30^\circ = \tfrac{\sqrt3}{2}Mg$。同じ結果が得られる。

Point

振り子の張力は「向心方向の運動方程式」+「エネルギー保存」のセットで求める。最下点で最大(重力+向心力ぶん)、振れの端で最小($Mg\cos\theta_0$)。長さ $b$ は約分で消えるので答えに残らない。

設問(5):復元力と単振動の近似(空欄 あ〜え)

直感的理解
振り子の球には円弧に沿って戻そうとする力(復元力)がはたらく。振れ角 $\theta = X/L$ が小さいと $\sin\theta \fallingdotseq \theta$ と近似でき、復元力が変位 $X$ に比例する「ばねと同じ式」になる。これが単振動の等時性(周期が振幅によらない)の根拠。

空欄(あ)円弧に沿った力 $F$:球にはたらく重力 $Mg$ の、円弧の接線方向(最下点 O に戻す向きを正)の成分。振れ角は $\theta = X/L$ なので、戻す向きを正にとると

$$F = -Mg\sin\theta = -Mg\sin\frac{X}{L} \quad\cdots\text{(あ)}=\text{(ク)}$$

空欄(い)近似式:$X$ が $L$ に比べて十分小さいとき $\sin\dfrac{X}{L} \fallingdotseq \dfrac{X}{L}$ なので、

$$F \fallingdotseq -Mg\cdot\frac{X}{L} = -\frac{MgX}{L} \quad\cdots\text{(い)}=\text{(イ)}$$

空欄(う)ばね定数 $k$:これをフックの法則 $F = -kX$ と見比べると、

$$-kX = -\frac{MgX}{L} \quad\Rightarrow\quad k = \frac{Mg}{L} \quad\cdots\text{(う)}=\text{(エ)}$$

運動方程式は $Ma = -\dfrac{Mg}{L}X$、すなわち $a = -\dfrac{g}{L}X$ となり、角振動数 $\omega = \sqrt{g/L}$、周期 $\displaystyle 2\pi\sqrt{\frac{L}{g}}$ の単振動(振幅によらない=等時性)が示される。

空欄(え)大振幅のときの周期:大きな振幅では、実際の復元力 $|F| = Mg\sin\dfrac{X}{L}$ は近似値 $\dfrac{MgX}{L}$ より小さい($\sin\theta < \theta$)。戻す力が弱いほど往復に時間がかかるので、大振幅の振り子の周期は小振幅のときより長くなる

$$\text{(え)}=\text{(サ) より長}$$
答え:
補足:設問(4)の実測が近似式と 1.74% ずれた理由

設問(4)の振幅は $30^\circ$ と大きい。大振幅では復元力が近似より弱く、周期が近似式 $2\pi\sqrt{L/g}$ より長くなる。実際、振幅 $\theta_0$ の振り子の周期は近似的に

$$T \fallingdotseq 2\pi\sqrt{\frac{L}{g}}\left(1 + \frac{\theta_0^2}{16}\right)$$

$\theta_0 = 30^\circ = \dfrac{\pi}{6}$ を入れると $\dfrac{\theta_0^2}{16} = \dfrac{(0.524)^2}{16} \fallingdotseq 0.0171$、すなわち約 1.7% 長くなる。問題文の「1.74% 異なった」とよく一致する。

Point

単振り子の等時性は$\sin\theta\fallingdotseq\theta$(微小角近似)に支えられている。大振幅では $\sin\theta<\theta$ で復元力が弱くなり、周期は近似式より長くなる。「近似が成り立つ条件」を意識することが大切。

設問(6):$x$・$y$ 方向の変位の時間変化グラフ

直感的理解
$x$ 方向(ひも C の面内)に振れるときは、支点が点 P で実効的なひもの長さは $b$(短い)。$y$ 方向(C 面に垂直)に振れるときは、ひも C 全体も一緒に振れるため支点が天井側に上がり、実効的な長さは $b$ より長い。長さが長いほど周期は長い($T\propto\sqrt{L}$)ので、$x$ は速く、$y$ はゆっくり振動する。

① 周期が異なる理由:$x$ 方向(ひも C の面内)の振動では、ひも C は形を変えず支点は点 P。実効長は $L_x = b$。一方 $y$ 方向(C 面に垂直)の振動では、ひも B だけでなくひも C も一緒に傾くため、回転の中心が天井側に上がり、実効長 $L_y$ は $b$ より長い($c$ を無視できないので $L_y > b$)。

② 周期の比較:単振り子の周期は $\displaystyle T = 2\pi\sqrt{\frac{L}{g}}$ で、長さが長いほど周期が長い。$L_x = b < L_y$ より、

$$T_x = 2\pi\sqrt{\frac{L_x}{g}} \;<\; T_y = 2\pi\sqrt{\frac{L_y}{g}}$$

つまり $x$ 方向の方が周期が短く(速く振動)、$y$ 方向の方が周期が長い(ゆっくり振動)。

③ グラフの選択:図4・図6の状況では、球を傾けて静かに放すので、$t=0$ で $x,\ y$ はともに最大変位(速さ 0)からスタートする=両方とも $\cos$ 型で $t=0$ が山。さらに $x$(実線)の方が周期が短く、同じ時間内で振動回数が多い。これを満たすのは、実線が破線より速く(密に)振動し、両方が $t=0$ で山から始まるグラフ。

答え:(エ)
実線($x$)が破線($y$)より高い振動数(短い周期)で、両方とも $t=0$ で最大変位から始まるグラフ。
補足:他の選択肢が不適な理由

(ア)(イ):実線と破線の周期がほぼ同じ。$L_x\ne L_y$ なので周期は等しくならず不適。

(ウ)(オ):$t=0$ で一方が山でなく途中の位相から始まっていたり、遅い側(破線)の方が密に振動していたりして、「$x$ が速い・両方 $t=0$ で山」という条件を満たさない。

静かに放す(初速 0)ので、$x,y$ とも $t=0$ で最大変位になる点が決め手。

Point

同じ振り子でも、振動の向きによって実効的なひもの長さが変わることがある。長さが違えば周期が違う。「初速 0 で放す→$t=0$ は最大変位($\cos$ 型)」も読み取りの決め手。

設問(7):$xy$ 平面上の小球 D の軌跡

直感的理解
互いに直交する2方向の単振動を合成するとリサジュー図形になる。$x$ と $y$ の周期が同じなら楕円や直線だが、ここでは $T_x \ne T_y$($x$ が速い)。周期がずれているので軌跡は1本の楕円にならず、何本もの弧が交差した「網目状」のリサジュー図形を描く。

① 軌跡の式:$x,\ y$ がそれぞれ単振動するとき、初速 0 で放すので両方 $\cos$ 型。角振動数を $\omega_x,\ \omega_y$ として、

$$x = A_x\cos(\omega_x t), \qquad y = A_y\cos(\omega_y t)$$

これは直交する2つの単振動の合成(リサジュー図形)。$\omega_x = \omega_y$ なら軌跡は1本の楕円(または直線)になるが、本問は $L_x \ne L_y$ より $\omega_x \ne \omega_y$。

② 周期がずれると軌跡は閉じない:$\omega_x > \omega_y$ なので $x$ の方が先に振動を進める。1往復ごとに $x$ と $y$ の位相関係が少しずつずれていくため、軌跡は1本の楕円を描かず、向きの異なる弧が次々に重なって網目状(格子状)に交差した図形になる。

③ グラフの選択:設問(6)の周期比 $T_x:T_y$ がおよそ $4:5$ 程度($x$ が速い)であることから、$x,\ y$ ともに $\cos$ 型で振動数比が単純な整数比に近いリサジュー図形を選ぶ。原点 O を中心に、ほぼ正方形の領域内で複数の弧が交差する図がこれにあたる。

答え:(ウ)
原点 O を中心に、複数の弧が網目状に交差したリサジュー図形($T_x\ne T_y$ のため1本の楕円にならない)。
補足:なぜ直線(ア)や1個の楕円(オ)ではないのか

(ア) 直線:$\omega_x=\omega_y$ かつ同位相のときに限る。本問は周期が異なるので不適。

(オ) 1個の楕円/(エ) 傾いた楕円:これらも $\omega_x=\omega_y$(周期が等しい)場合の軌跡。周期がずれている本問では、軌跡は時間とともに少しずつ回転・変形し、1本の閉じた楕円にはならない。

網目状(イ)・(ウ):$\omega_x\ne\omega_y$ の典型的なリサジュー図形。両振動とも $t=0$ で最大(角の点 $(A_x, A_y)$ から出発)し、$x$ が速い場合の対称な格子模様が最も適切。

Point

直交2方向の単振動の合成=リサジュー図形周期(振動数)が等しいなら楕円・直線、異なるなら閉じない網目状の軌跡になる。設問(6)で「$T_x\ne T_y$」を導いたことが、ここで楕円を除外する根拠になる。