絶縁円筒の中に、面積の等しい薄い金属板 X, Y, Z が水平に入っている。X と Z は間隔 \(d\) で固定され、それぞれ抵抗値 \(r\) の抵抗器を通して接地されている。中央の板 Y はスイッチ1を介して起電力 \(V\) の電池に、スイッチ2を介して電気容量 \(C\) のコンデンサー1につながっている。Y を上下に動かして容量比を変えながら、各極板の電荷・容量・エネルギーの収支を追う問題です。
図をクリックすると図1(X-Y 間 \(=d/3\))と図2(X-Y 間 \(=\tfrac{3}{4}d\))を切り替えられます。
板 Y を共通端子とすると、回路は次の2つのまとまりの並列接続になる:
Y にはスイッチ1経由で電池、スイッチ2経由でコンデンサー1がつながる。各枝は「抵抗器とコンデンサーの直列」で、それが Y を共有して並列になっている形が正しい。これに当てはまるのは選択肢 (ア)。
「向かい合う2枚の板=1つのコンデンサー」と数える。中央板 Y は上下の板それぞれとコンデンサーをつくるので、並列の2つのコンデンサーとして扱う。各極板に直列に入る抵抗器を見落とさないこと。
スライダーで Y の位置(X-Y 間隔)を変えると、X と Z に分かれる電荷の割合が変わります。間隔が狭い側ほど電荷が多い。
容量の比から電荷を求める。抵抗器に電流が流れなくなった状態では X, Z は 0 V、Y は \(V\)。\(\varepsilon_0 S\) をまとめて表すため、まず X-Y 間と Y-Z 間の容量を書く(間隔はそれぞれ \(\dfrac{d}{3},\ \dfrac{2d}{3}\)):
$$C_{XY} = \frac{\varepsilon_0 S}{d/3} = \frac{3\varepsilon_0 S}{d}, \qquad C_{YZ} = \frac{\varepsilon_0 S}{2d/3} = \frac{3\varepsilon_0 S}{2d}$$Y に蓄えられる電気量 \(Q\) は、2つのコンデンサー(並列)に蓄えられる電荷の和だから:
$$Q = (C_{XY} + C_{YZ})V = \left(\frac{3\varepsilon_0 S}{d} + \frac{3\varepsilon_0 S}{2d}\right)V = \frac{9\varepsilon_0 S}{2d}\,V$$これより \(\varepsilon_0 S\) を \(Q, V, d\) で表せる:
$$\frac{\varepsilon_0 S}{d} = \frac{2Q}{9V}$$X に蓄えられる電気量は X-Y コンデンサーの電荷(電位差 \(V\)):
$$Q_X = C_{XY}\,V = \frac{3\varepsilon_0 S}{d}\,V = 3 \times \frac{2Q}{9V} \times V = \frac{2}{3}Q$$Z に蓄えられる電気量は Y-Z コンデンサーの電荷:
$$Q_Z = C_{YZ}\,V = \frac{3\varepsilon_0 S}{2d}\,V = \frac{3}{2}\times\frac{2Q}{9V}\times V = \frac{1}{3}Q$$検算:\(Q_X + Q_Z = \dfrac{2}{3}Q + \dfrac{1}{3}Q = Q\) となり、Y の電荷と一致する。
X, Z はそれぞれ抵抗器(\(r\))を通して接地されている。コンデンサーが充電され終わって定常状態になると、コンデンサーには電流が流れ込まないので、抵抗器を流れる電流も 0。オームの法則 \(V_{抵抗}=Ir\) で \(I=0\) なら電圧降下も 0。したがって X, Z の電位は接地点と同じ 0 V に保たれる。電流が「流れている間」だけ抵抗器に電圧降下が生じる点を区別すること。
同じ電位差 \(V\) を共有する並列コンデンサーでは、電荷は容量に比例して配分される。間隔が狭い X-Y 側は容量が大きく \(\tfrac23Q\)、広い Y-Z 側は容量が小さく \(\tfrac13Q\)。
設問(2)で得た \(\dfrac{\varepsilon_0 S}{d}=\dfrac{2Q}{9V}\) を、容量の式に代入する。X-Y 間(間隔 \(\tfrac{d}{3}\)):
$$C_X = \frac{\varepsilon_0 S}{d/3} = \frac{3\varepsilon_0 S}{d} = 3\times\frac{2Q}{9V} = \frac{2Q}{3V}$$Y-Z 間(間隔 \(\tfrac{2d}{3}\)):
$$C_Z = \frac{\varepsilon_0 S}{2d/3} = \frac{3\varepsilon_0 S}{2d} = \frac{3}{2}\times\frac{2Q}{9V} = \frac{Q}{3V}$$これらを使うと、確かに \(C_X V = \dfrac{2Q}{3V}\cdot V = \dfrac{2}{3}Q = Q_X\)、\(C_Z V = \dfrac{Q}{3} \cdot \dfrac{1}{V}\cdot V\)… すなわち \(C_Z V = \dfrac{1}{3}Q = Q_Z\) と設問(2)に一致する。
未知の \(\varepsilon_0 S\) は「与えられた条件(Y の電荷 \(Q\))」から一度 \(\dfrac{\varepsilon_0 S}{d}=\dfrac{2Q}{9V}\) と書き換えておくと、以降すべて \(Q, V, d\) だけで表せる。これがこの大問を貫く鍵。
電池が電荷を運ぶときの仕事は \(W = (\text{運んだ電荷})\times(\text{起電力})\)。スイッチ1を閉じてから定常状態に達するまで、電池は Y に電気量 \(Q\) を供給した(電池を通った電荷の総量が \(Q\))。起電力は一定の \(V\) なので:
$$W = Q \times V = QV$$電池の仕事 \(QV\) のうち、コンデンサーに蓄えられるのは \(\tfrac12 QV\) だけ。残りの \(\tfrac12 QV\) は抵抗器でジュール熱として失われる(設問(5)へつながる)。
コンデンサー(合成容量 \(C_X+C_Z\))に蓄えられた静電エネルギーは、合成容量が \(C_X+C_Z=\dfrac{2Q}{3V}+\dfrac{Q}{3V}=\dfrac{Q}{V}\) なので:
$$U = \frac{1}{2}(C_X+C_Z)V^2 = \frac{1}{2}\cdot\frac{Q}{V}\cdot V^2 = \frac{1}{2}QV$$(合成容量 \(=\dfrac{Q}{V}\) は、電圧 \(V\) で電荷 \(Q\) が蓄えられたことからも直ちに分かる。)エネルギー保存より、抵抗器1, 2で消費されたエネルギーの総和 \(W_R\) は:
$$W_R = W - U = QV - \frac{1}{2}QV = \frac{1}{2}QV$$抵抗器を通して一定電圧でコンデンサーを充電すると、抵抗で失われる総熱量は抵抗値によらず、つねに「電池の仕事の半分」になる。これは充電過程の定番の結果で、抵抗が大きければゆっくり充電され、小さければ速く充電されるが、失われる総エネルギーは同じ。だから \(r\) は答えに出てこない。
「電池の仕事 \(QV\)」「蓄積 \(\tfrac12 QV\)」「損失 \(\tfrac12 QV\)」はセットで覚える。電圧一定の充電では必ず半分が熱になる。
Y は電池から切り離された後に上へ移動する。電荷 \(Q\) は保たれたまま、間隔だけが変わる。
新しい容量。X-Y 間隔 \(=\tfrac34 d\)、Y-Z 間隔 \(=\tfrac14 d\)。\(\dfrac{\varepsilon_0 S}{d}=\dfrac{2Q}{9V}\) を代入:
$$C_X' = \frac{\varepsilon_0 S}{\tfrac34 d} = \frac{4}{3}\cdot\frac{\varepsilon_0 S}{d} = \frac{4}{3}\cdot\frac{2Q}{9V} = \frac{8Q}{27V}$$ $$C_Z' = \frac{\varepsilon_0 S}{\tfrac14 d} = 4\cdot\frac{\varepsilon_0 S}{d} = 4\cdot\frac{2Q}{9V} = \frac{8Q}{9V}$$Y の電位。Y は孤立して電荷 \(Q\) を保つ。X, Z は 0 V のままなので、Y の電位 \(V_Y\) は \(Q = (C_X'+C_Z')V_Y\) から決まる。合成容量は:
$$C_X' + C_Z' = \frac{8Q}{27V} + \frac{8Q}{9V} = \frac{8Q}{27V} + \frac{24Q}{27V} = \frac{32Q}{27V}$$ $$V_Y = \frac{Q}{C_X'+C_Z'} = \frac{Q}{\dfrac{32Q}{27V}} = \frac{27}{32}V$$選択肢では (キ) \(\dfrac{27}{32}V\)。
Y を動かして全体の間隔配分を変えると、合成容量は \(\dfrac{Q}{V}\to\dfrac{32Q}{27V}\) と増えた(\(\tfrac{32}{27}\fallingdotseq 1.19\) 倍)。孤立した導体では電荷 \(Q\) が一定だから、\(V_Y=\dfrac{Q}{C}\) の関係で容量が増えれば電位は下がる。実際 \(V_Y=\dfrac{27}{32}V\fallingdotseq 0.84V < V\) となっている。
電池を切り離した瞬間に切り替わる原則は「電荷一定」。以後は \(V=\dfrac{Q}{C}\) で電位を追う。逆に電池につないだままなら「電位一定」で電荷が変わる。どちらが固定かを常に意識する。
スライダーでコンデンサー1の容量 \(C\) を変えると、電荷 \(Q\) が Y とコンデンサー1にどう分かれるかが見えます。
スイッチ2を閉じる直前、Y のもつ電荷は \(Q\)、コンデンサー1は無電荷。スイッチ2を閉じると、Y まわりの幾何学的容量 \(C_X'+C_Z' = \dfrac{32Q}{27V}\) とコンデンサー1の容量 \(C\) が、共通電位 \(V'\) になるまで電荷を分け合う。電荷保存より:
$$Q = (C_X'+C_Z')V' + C\,V' = \left(\frac{32Q}{27V} + C\right)V'$$これを \(V'\) について解く:
$$V' = \frac{Q}{\dfrac{32Q}{27V} + C} = \frac{27VQ}{32Q + 27VC}$$Y に蓄えられている電気量(幾何学的容量にかかる分)\(Q_Y'\) は:
$$Q_Y' = (C_X'+C_Z')V' = \frac{32Q}{27V}\cdot\frac{27VQ}{32Q + 27VC} = \frac{32Q^2}{32Q + 27VC}$$コンデンサー1にたまる電荷は \(Q_C = C V' = \dfrac{27VCQ}{32Q+27VC}\)。これと \(Q_Y'\) を足すと
$$Q_Y' + Q_C = \frac{32Q^2 + 27VCQ}{32Q+27VC} = \frac{Q(32Q+27VC)}{32Q+27VC} = Q$$となり、はじめに Y がもっていた電荷 \(Q\) と一致する。電荷保存が確認できた。
導線でつながれた極板群は同じ電位になる。「共通電位 \(V'\) を未知数に置き、電荷保存で1本の式を立てる」のがコンデンサーの再配分の定石。\(C\to0\) なら \(Q_Y'\to Q\)(移らない)、\(C\to\infty\) なら \(Q_Y'\to0\)(全部移る)と極限も合う。
繰り返すたびにコンデンサー1の電圧が上がり、\(V\) に近づく様子。図をクリックすると最初からやり直せます。
幾何学的容量を \(C_Y \equiv C_X'+C_Z' = \dfrac{32Q}{27V}\) と書く。十分繰り返したあとの収束状態を考える。コンデンサー1の電圧が一定値 \(V_2\) に落ち着いたとすると、1サイクルの操作は:
電荷保存より:
$$C_Y V + C V_2 = (C_Y + C)V'$$収束(不動点)では、このサイクル後のコンデンサー1の電圧 \(V'\) が、ふたたび \(V_2\) に等しい(\(V' = V_2\))。代入すると:
$$C_Y V + C V_2 = (C_Y + C)V_2$$ $$C_Y V = C_Y V_2 + C V_2 - C V_2 = C_Y V_2$$ $$\therefore\quad V_2 = V$$具体的に \(C_Y=\dfrac{32Q}{27V}\) を入れても \(C\) も \(Q\) も消え、\(V_2=V\) となる。直感的にも、Y は毎回必ず電位 \(V\) にリセットされるので、コンデンサー1は最終的に電池電圧 \(V\) まで充電される。
毎サイクルで Y は電池により電位 \(V\) に「上書き」される。コンデンサー1は Y からしか電荷を受け取れず、Y の電位を超えることはない一方、Y が常に \(V\) なので、十分回数を重ねればコンデンサー1も Y と同電位 \(V\) に到達する。最終状態は「Y もコンデンサー1も電位 \(V\)」で、両者の間に電荷の移動がなくなる平衡。だから容量 \(C\) や電気量 \(Q\) の大小は収束速度を変えるだけで、収束値 \(V_2=V\) には影響しない。
繰り返し操作の収束値は「1サイクル後に状態が変わらない」という不動点条件で求める。Y が毎回電池で電位 \(V\) にリセットされる構造なので、相手のコンデンサー1も最終的に \(V\) に達する。