前半は液体に浮かぶ円柱状の浮きの浮力のつり合いと、押し沈めてから手を離したときの単振動。後半は粘度の高い液体中を落下する金属球の抵抗力(速度比例)と終端速度を扱う、力学の総合問題です。いずれも「どの物体に着目して力のつり合い・運動方程式を立てるか」「水槽全体を1つの系とみて床からの垂直抗力を求める」の2つの視点を使い分けます。
立式:浮きにはたらく鉛直方向の力は、下向きの重力 $m_0 g$ と上向きの浮力のみです。浮きは底面積 $S$ の円柱で、液面から深さ $d_0$ まで沈んでいるので、押しのけた液体の体積は $S d_0$。アルキメデスの原理より浮力は
$$F_{\text{浮力}} = \rho \,(S d_0)\, g$$つり合いの式:浮きは静止しているので、重力と浮力がつり合います。
$$m_0 g = \rho S d_0 g$$計算:両辺を $g$ で割って $m_0$ について解くと、
$$m_0 = \rho S d_0$$例えば $\rho = 1.0\times 10^3\ \text{kg/m}^3$(水)、$S = 1.0\times10^{-4}\ \text{m}^2$、$d_0 = 0.050\ \text{m}$ のとき、
$$m_0 = (1.0\times10^3)\times(1.0\times10^{-4})\times 0.050 = 5.0\times10^{-3}\ \text{kg}$$すなわち $5.0\ \text{g}$。細いストローにおもりを入れて水に浮かべたときの全体の質量がこの程度、という感覚です。
円柱状の浮きでは、押しのけた体積は「底面積 × 沈んだ深さ」$= S d_0$。浮力は沈んだ深さ $d_0$ に比例する。$M,\ V,\ g$ は浮き単体のつり合いには不要(水槽・液体は浮きに直接力を及ぼさない)。
着目する系:「水槽+液体1+浮き」をまとめて1つの系とみます。この系にはたらく外力は、下向きの重力(系全体の重さ)と、上向きの床からの垂直抗力 $N_0$ だけです(浮きと液体の間の浮力や、液体と水槽の間の力は系の内力なので打ち消し合う)。
系全体の質量:水槽 $M$、液体1(密度 $\rho$・体積 $V$)の質量 $\rho V$、浮き全体 $m_0 = \rho S d_0$ の和です。
$$M_{\text{系}} = M + \rho V + m_0 = M + \rho V + \rho S d_0$$つり合いの式:系は静止しているので、垂直抗力=系全体の重さ。
$$N_0 = M_{\text{系}}\, g = (M + \rho V + \rho S d_0)\,g$$「水槽+液体」の系に着目すると、外力は重力 $(M+\rho V)g$(下)、床の $N_0$(上)、そして浮きから液体が受ける力です。浮きは液体から上向きの浮力 $\rho S d_0 g$ を受けるので、その反作用として液体は浮きから下向きに $\rho S d_0 g$ を受けます。つり合いより、
$$N_0 = (M + \rho V)g + \rho S d_0 g = (M + \rho V + \rho S d_0)g$$同じ結果になります。「系のとり方」を変えても答えは一致するのが力学の整合性です。
床からの垂直抗力は「水槽+中身ぜんぶ」の総重量に等しい。浮きが浮いているかどうかは関係なく、系の外に出ていく重さはないので $N_0 = (\text{総質量})g$。
指の押す力を求める:まず浮き単体に着目します。浮きは深さ $d_0+d$ まで沈んで静止しているので、上向きの浮力 $\rho S(d_0+d)g$ と、下向きの重力 $m_0 g$ + 指の押す力 $F$ がつり合います。
$$\rho S(d_0 + d)g = m_0 g + F$$$m_0 = \rho S d_0$ を代入して $F$ について解くと、
$$F = \rho S(d_0 + d)g - \rho S d_0 g = \rho S d\, g$$系全体で垂直抗力を求める:「水槽+液体+浮き」の系には、下向きに重力 $(M+\rho V+m_0)g$ と指の力 $F$(外力)、上向きに $N_1$ がはたらきます。つり合いより、
$$N_1 = (M + \rho V + m_0)g + F = (M + \rho V + \rho S d_0)g + \rho S d g$$整理すると、
$$N_1 = \bigl(M + \rho V + \rho S(d_0 + d)\bigr)g$$指で押し沈めた分だけ、系には外から下向きの力 $F=\rho S dg$ が加わります。床はその分も支えなければならないので、$N_1 = N_0 + \rho S d g$ となり、必ず $N_0$ より大きくなります。指を離せば $F=0$ に戻り、瞬間的には $N_0$ の状態に近づきます(その後は単振動)。
余分に沈めた深さ $d$ の分だけ浮力が $\rho S d g$ 増え、それを指が押さえている。系全体で見ると、その指の力がそのまま床の負担に上乗せされて $N_1 = N_0 + \rho S d g$。
立式(運動方程式):浮きの底面が液面から深さ $d_0+x$ にあるとき、鉛直下向きを正として浮きにはたらく力は、下向きの重力 $m_0 g$ と上向きの浮力 $\rho S(d_0+x)g$ です。運動方程式は、
$$m_0 a = m_0 g - \rho S (d_0 + x) g$$代入:$m_0 = \rho S d_0$ を代入します。
$$\rho S d_0\, a = \rho S d_0\, g - \rho S (d_0 + x) g$$途中計算:右辺を展開すると $\rho S d_0 g$ が打ち消し合い、
$$\rho S d_0\, a = -\rho S x g$$両辺を $\rho S d_0$ で割って、
$$a = -\frac{g}{d_0}\, x$$周期:$a = -\omega^2 x$ の形(単振動)と比べると $\omega^2 = \dfrac{g}{d_0}$。周期は $T = \dfrac{2\pi}{\omega}$ なので、
$$T = 2\pi\sqrt{\frac{d_0}{g}}$$復元力の比例定数(ばね定数に相当)は $K = \rho S g$、質量は $m_0 = \rho S d_0$ なので、
$$\omega = \sqrt{\frac{K}{m_0}} = \sqrt{\frac{\rho S g}{\rho S d_0}} = \sqrt{\frac{g}{d_0}}$$と $\rho,\ S$ がきれいに約分されます。振幅 $d$ も周期には無関係(単振動の等時性)。沈み具合 $d_0$ と $g$ だけで周期が決まる、振り子と同じ形 $T=2\pi\sqrt{\ell/g}$($\ell \to d_0$)になるのが面白いところです。
つり合い位置からの変位 $x$ に対し、復元力が $-\rho S g\, x$(変位に比例して逆向き)になるので単振動。$a=-\omega^2 x$ の係数から $\omega$ を読み取り、$T=2\pi/\omega$ で周期を出す。$d_0$ が「振り子の長さ」の役割を果たす。
糸を切る直前 $N_2$:金属球は糸(天井)で吊られ、その重さ $mg$ は天井が支えています。球は体積無視で浮力を受けないので、液体には何の力も及ぼしません。「水槽+液体2」の系に着目すると、外力は重力 $(M+\rho V)g$(下)と床の $N_2$(上)だけです。
$$N_2 = (M + \rho V)g$$糸を切った直後 $N_3$:糸が切れた瞬間、球の速度は $v=0$ なので、速度に比例する抵抗力 $k|v| = 0$。球と液体の間にはたらく力もまだ $0$ です(このとき球は加速度 $g$ で落下を始める)。したがって「水槽+液体2」が受ける力は切る前と変わりません。
$$N_3 = (M + \rho V)g$$球の重さ $mg$ は、切る前は糸(天井)が支えています。床が支えているのは「水槽+液体2」の重さだけ。もし球が体積を持って浮力を受けるなら、その反作用で液体が下に押され $N$ に寄与しますが、本問では「体積無視」なので浮力ゼロ、寄与なしです。切った直後も $v=0$ で抵抗ゼロなので、球はまだ液体に力を渡しておらず $N_3=N_2$ のままです。
体積無視の球は浮力ゼロ。糸が支える間も、切った瞬間($v=0$ で抵抗ゼロ)も、液体への力は $0$。だから $N_2=N_3=(M+\rho V)g$。球の重さが床に伝わるのは、球が抵抗力を通じて液体を下に押し始めてから。
球の運動方程式:$0
液体が受ける力(垂直抗力 $N_4$):球は液体から上向きに $kv$ の抵抗力を受けています。作用・反作用の法則より、球は液体を下向きに $kv$ で押しています。「水槽+液体2」の系に着目すると、はたらく外力は重力 $(M+\rho V)g$(下)、球からの力 $kv$(下)、床の $N_4$(上)です。水槽+液体は静止しているので、つり合いより、
$$N_4 = (M + \rho V)g + kv$$球は加速して落ちている($a>0$)ので、まだ重さの一部しか液体に「預けて」いません。液体に伝わるのは抵抗力の反作用 $kv$ だけです。$v$ が小さいうちは $kv < mg$ なので $N_4 < (M+\rho V + m)g$。$v$ が増えるほど $kv$ が大きくなり、$N_4$ も増えていきます。終端速度に達すると $kv=mg$ となり、ようやく球の全重量が床に伝わります(設問(7))。
球が液体に及ぼす力=抵抗力の反作用 $kv$(下向き)。だから $N_4 = (M+\rho V)g + kv$ で、速さ $v$ とともに増える。球の重力 $mg$ をそのまま足すのは誤り(球は加速中で、重さの一部しか床に伝わっていない)。
終端速度の条件:終端速度とは、加速度が $0$($a=0$)になり等速で落下する状態です。設問(6)の運動方程式 $ma = mg - kv$ に $a=0$ を代入すると、抵抗力が重力とつり合います。
$$0 = mg - k v_{\text{終端}} \quad\Rightarrow\quad k v_{\text{終端}} = mg$$垂直抗力 $N_5$:設問(6)で導いた $N_4 = (M+\rho V)g + kv$ に、終端速度の条件 $kv = mg$ を代入します。
$$N_5 = (M + \rho V)g + k v_{\text{終端}} = (M + \rho V)g + mg$$整理すると、
$$N_5 = (M + \rho V + m)g$$終端速度では球は加速していない(つり合い状態)ので、球にはたらく力の合計はゼロ。これは「球の重さ $mg$ がそっくり液体に伝わり、最終的に床が支えている」ことを意味します。実際 $N_5 = (M+\rho V+m)g$ は、球も含めた全質量 $M+\rho V+m$ の総重量と一致します。設問(6)の途中(加速中)はまだ $kv
終端速度=抵抗力が重力とつり合う状態($kv=mg$)。このとき $N_5 = (M+\rho V)g + mg = (M+\rho V+m)g$。等速になると球の全重量がようやく床に伝わる、と覚えると見通しが良い。
各区間の $N$ を整理:設問(5)〜(7)の結果を時系列で並べます(鉛直抗力 $N$ の変化)。
概形の特徴:$N$ は $(M+\rho V)g$ から始まり、$t_1$ に向かって増加(上に凸の曲線で漸近)して $(M+\rho V+m)g$ に達します。終端速度時の値 $(M+\rho V+m)g$ と、$t_2$ 以降に底で静止したときの値 $(M+\rho V+m)g$ は等しいので、$t_2$ 以降の水平線は終端速度時の高さと同じになります。
選択肢のうち「最初に増加して一定値に達し、$t_2$ 以降も同じ高さを保つ」のは(ク)です((キ)は $t_2$ 以降が高すぎ、(ケ)は低すぎ、(オ)(カ)(イ)等は増加しない・変化が逆)。
キモは「終端速度時の $N$ と、底で静止後の $N$ が等しい」こと。どちらも球の全重量 $mg$ が床に伝わる状態なので $N=(M+\rho V+m)g$。だから $t_1$ の到達値と $t_2$ 以降の値が同じ高さになる(ク)が正解。