磁場中の導線レール上を一定速度で動く金属棒(=電池)に、抵抗 $R$・コンデンサー $C, 2C$・スイッチ $\mathrm{S_1}\sim\mathrm{S_3}$ を組み合わせた回路をつないだ問題です。前半(設問(1)〜(6))は直流的な過渡現象、後半(設問(7)〜(9))は棒がばねで単振動するときの交流的なふるまいを扱います。
棒の中の電荷(電気量 $q>0$ を仮定)は、速度 $\vec v=v_0\hat x$ と磁束密度 $\vec B=B\hat z$(裏から表)のもとでローレンツ力 $\vec F=q\,\vec v\times\vec B$ を受ける。
$$\vec v\times\vec B=(v_0\hat x)\times(B\hat z)=v_0 B(\hat x\times\hat z)=-v_0 B\,\hat y$$すなわち正電荷は $-y$ 方向(下のレール側)に押される。よって棒の下端が高電位($+$)、上端($\mathrm{A_1}$ 側)が低電位($-$)になる。起電力の大きさは
$$|\,\mathcal{E}\,| = B d v_0$$回路は開いているので電流は流れず、抵抗での電圧降下はない。下のレールは接地されて電位 $0$。したがって点 $\mathrm{A_1}$ の電位は、下端($0$)より起電力分だけ低い:
$$V_1 = 0 - Bdv_0 = -Bdv_0$$磁場中を動く長さ $d$ の棒には、両端の間に $\mathcal{E}=\displaystyle\int (\vec v\times\vec B)\cdot d\vec\ell = Bdv_0$ の起電力が生じる。これは電池の起電力とまったく同じはたらきをし、外部回路に電流を流す。内部抵抗は $0$(題意より棒の抵抗は無視)。本問では下端が $+$ 極、$\mathrm{A_1}$ 側の上端が $-$ 極になっている点に注意。
電位を問われたら符号まで決める。$\vec v\times\vec B$ の向きで「どちらの端に正電荷が集まるか」を調べ、接地点(電位 $0$)からたどる。本問では $\mathrm{A_1}$ 側が低電位なので $V_1<0$。
閉じた直後($t=0$):コンデンサー $C$ は電荷 $0$ で電位差 $0$。回路は「起電力 $Bdv_0$ + 抵抗 $R$(右側の1本)」だけになる。電流の大きさは
$$|I_1| = \frac{\mathcal{E}}{R} = \frac{Bdv_0}{R}$$向きの符号:設問(1)より棒は $\mathrm{A_1}$ 側が低電位。電流は外部回路を高電位(下のレール)→ 低電位($\mathrm{A_1}$)へ流れる。図1の $I_1$ の正の向き($+y$, 上向き)に対して棒の中では電流は下向きに流れるので、$I_1$ は負:
$$I_1 = -\frac{Bdv_0}{R}\quad(t=0\ \text{の直後})$$時間変化:$C$ が充電されるにつれてコンデンサーの電位差が大きくなり、$R$ にかかる電圧が減って電流は $0$ に近づく。よって $I_1$ は負の値 $-Bdv_0/R$ から始まり、指数関数的に $0$ へ漸近する。
電流は最初が最大で単調に減少(充電)するので、$0$ から立ち上がる (ウ)(ケ) 型や、一定値 (ア)(オ) 型は不適。$I_1$ が負と分かれば正領域の (エ)(イ) も除外でき、「負から $0$ へ戻る」(ク) に確定する。$RC$ 回路の時定数は $\tau=RC$。
コンデンサーを含む回路の「直後」はコンデンサーを「導線(電位差 $0$)」、「定常」は「断線(電流 $0$)」とみなすのが鉄則。$\mathrm{S_3}$ が開なので、このループに関わる抵抗は右側の $R$ 一本だけである点に注意。
定常状態では電流 $I_1=0$。抵抗 $R$ の電圧降下は $RI_1=0$ なので、コンデンサー $C$ にかかる電位差は起電力の大きさそのもの:
$$V_C = Bdv_0$$電気量は $Q=CV_C$ より
$$Q = C\,B d v_0$$静電エネルギーは $U=\dfrac12 C V_C^2$ より
$$U = \frac{1}{2}C(Bdv_0)^2 = \frac{1}{2}CB^2 d^2 v_0^2$$点 $\mathrm{A_2}$($C$ の上の極板)は $\mathrm{S_2}$ を介して $\mathrm{A_1}$ 側につながり、定常では抵抗での降下がないので $V_2=V_1=-Bdv_0$。すなわち上の極板が低電位(負)で、電位差の大きさは $Bdv_0$、電気量の大きさは $Q=CBdv_0$。設問(3)は「大きさ」を問うているので $Q=CBdv_0$ と答えればよい。
「十分時間が経った」=電流ゼロ=抵抗での電圧降下ゼロ。コンデンサーにかかる電圧は起電力そのもの。$Q=CV$、$U=\frac12 CV^2$ の代入だけで終わる。
棒にされた仕事は与式 $W=Q|V_1|$ で与えられる。設問(1)(3) より $|V_1|=Bdv_0$、$Q=CBdv_0$ なので
$$W = Q|V_1| = (CBdv_0)(Bdv_0) = CB^2 d^2 v_0^2$$この仕事は、コンデンサーの静電エネルギー $U$ と抵抗のジュール熱 $J$ に分配される。エネルギー保存より $W=U+J$:
$$J = W - U = CB^2 d^2 v_0^2 - \frac{1}{2}CB^2 d^2 v_0^2$$ $$J = \frac{1}{2}CB^2 d^2 v_0^2$$電池(ここでは棒)で一定電圧 $\mathcal{E}$ のもとコンデンサー $C$ を充電すると、電池がする仕事 $W=Q\mathcal{E}=C\mathcal{E}^2$ のうち、コンデンサーに残るのは $U=\frac12 C\mathcal{E}^2$ だけ。残りの $\frac12 C\mathcal{E}^2$ は抵抗値によらず必ずジュール熱になる。これは抵抗の値が小さくても同じ(電流が大きくなり熱の総量は変わらない)という有名な結果。
過渡現象のエネルギー収支は「外部がした仕事 = 蓄えられたエネルギー + ジュール熱」。コンデンサー充電では、供給エネルギーのちょうど半分が熱になる。
$t=t_1$ の直前、$C$ は電位差 $|V_2|=Bdv_0$(極板 $\mathrm{A_2}$ 側が負)で充電済み、$2C$ は空($V_3=0$)。$\mathrm{S_3}$ を閉じた直後、左の抵抗 $R$ の両端電位差は $|V_2-V_3|=Bdv_0$。よって $R$ を流れる電流の大きさは
$$|I| = \frac{|V_2 - V_3|}{R} = \frac{Bdv_0}{R}$$$I_3$($2C$ を充電する向き=図の $+y$):電荷は $C$ から $2C$ へ流れ込み、$2C$ を充電する。この向きは $I_3$ の正の向きと一致するので
$$I_3 = +\frac{Bdv_0}{R}\quad(t=t_1\ \text{の直後})$$$I_2$($C$ を充電する向き=図の $+y$):$C$ は逆に放電する(電荷が出ていく)ので、$I_2$ は正の向きと逆=負:
$$I_2 = -\frac{Bdv_0}{R}\quad(t=t_1\ \text{の直後})$$時間変化:$t
$\mathrm{S_1}$ を開いた後、$C$ と $2C$ の上の極板($\mathrm{A_2},\mathrm{A_3}$)は左の $R$ を介してつながり、外部から孤立する。極板上の総電荷は保存:
$$Q_{\text{tot}} = C\cdot(-Bdv_0) + 2C\cdot 0 = -CBdv_0$$最終的に両者の電位差が等しく $V_f$ になるとき $Q_{\text{tot}}=(C+2C)V_f$ より $V_f=-\dfrac{Bdv_0}{3}$。これが設問(6)につながる。
充電済みコンデンサーと空のコンデンサーを抵抗でつなぐと電荷の再分配が起こる。直後の電流は「両端の電位差 ÷ 抵抗」、最終値は「電荷保存」で決める。スイッチ操作の直後は電流が不連続に跳ぶ(スパイク)。
定常では電流ゼロ、$R$ の降下もゼロなので $\mathrm{A_2}$ と $\mathrm{A_3}$ は同電位。設問(5)の補足の電荷保存から、両コンデンサーの共通電位は
$$V_2 = V_3 = V_f = \frac{Q_{\text{tot}}}{C+2C} = \frac{-CBdv_0}{3C} = -\frac{Bdv_0}{3}$$念のため電荷で検算すると、$C$ の電荷 $C\cdot(-\tfrac{Bdv_0}{3})=-\tfrac13 CBdv_0$、$2C$ の電荷 $2C\cdot(-\tfrac{Bdv_0}{3})=-\tfrac23 CBdv_0$。合計 $-CBdv_0$ で確かに保存している。
時間変化:$V_2$ は $t
再分配前の静電エネルギーは $\frac12 C(Bdv_0)^2=\frac12 CB^2d^2v_0^2$。再分配後は $\frac12 C V_f^2+\frac12 (2C) V_f^2=\frac32 C\left(\frac{Bdv_0}{3}\right)^2=\frac{1}{6}CB^2d^2v_0^2$。差 $\frac13 CB^2d^2v_0^2$ は左の抵抗 $R$ でジュール熱として失われる。「電荷は保存するがエネルギーは保存しない」のが二つのコンデンサー間の再分配の特徴。
再分配後の定常電位は「総電荷 ÷ 合成容量」。容量比 $C:2C$ なので電荷は $1:2$ に分かれるが、電位(電圧)は両者共通。符号は元の $C$ の極性(負)を引き継ぐ。
棒の速度は $v(t)=-a\omega\sin(\omega t)$。設問(1)と同じ符号規則「点 $\mathrm{A}$ 側の電位 = $-Bd\,v$」を使う($\mathrm{S_1}$ 開なので電流ゼロ、抵抗での降下なし)。
$$V_4(t) = -B d\,v(t) = -Bd\big(-a\omega\sin(\omega t)\big)$$ $$V_4(t) = Bad\omega\,\sin(\omega t)$$これは $t=0$ で $0$ から始まり、まず正に立ち上がる正弦波。$1$ 周期分の概形は (テ)($+\sin$ の形)。
位置 $x=a\cos(\omega t)$($t=0$ で $+a$)、速度 $v=-a\omega\sin(\omega t)$($t=0$ で $0$、その後負)。起電力は速度に比例するので $V_4\propto -v=+a\omega\sin(\omega t)$。つまり $V_4$ は位置 $x$ より位相が $\frac{\pi}{2}$ 進み、$+\sin$ 型になる。$t=0$ 直後は棒が $-x$ 方向へ動き出すので、設問(1)とは逆に $\mathrm{A}$ 側が高電位($V_4>0$)になる点が直感と一致する。
動く棒は「速度に比例する起電力 $Bdv$」をもつ電源。単振動では速度が正弦的に変わるので、起電力(=開放電位)も正弦的な交流電源になる。符号は $-Bdv$ の形で機械的に決める。
図2の左側は、点 $\mathrm{A}$ から「$R\to\mathrm{S_1}$(閉)$\to$ ノード $T$ $\to C\to$ ノード $P\to L\to$ 接地」という経路。$\mathrm{S_2}$ は $C$ を、$\mathrm{S_3}$ は $L$ を短絡するスイッチ。各組合せのインピーダンスを比べる($\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ を使う)。
| 組合せ | 回路 | インピーダンス $|Z|$ |
|---|---|---|
| (ヌ) 両方開 | $R$ と直列に $C,L$ | $R$($LC$ 共振で $0$) |
| (ネ) S₂開 S₃閉 | $L$ 短絡, $R$ と $C$ | $\sqrt{R^2+\frac{1}{(\omega C)^2}}$ |
| (ノ) S₂閉 S₃開 | $C$ 短絡, $R$ と $L$ | $\sqrt{R^2+(\omega L)^2}$ |
| (ハ) 両方閉 | $C,L$ 短絡, $R$ のみ | $R$ |
(ヌ) では $C$ と $L$ が直列になり、合成リアクタンスは
$$\omega L - \frac{1}{\omega C} = 0\quad(\because \omega^2 LC = 1)$$なので $LC$ 部分のインピーダンスは $0$、回路全体は $R$ だけ。(ハ) では $C,L$ がともに短絡されてやはり $R$ だけ。この $2$ つが最小インピーダンス $R$ で、電流振幅が最大になる。
(ネ) は $R$ と $C$ の直列で $|Z|=\sqrt{R^2+1/(\omega C)^2}>R$、(ノ) は $R$ と $L$ の直列で $|Z|=\sqrt{R^2+(\omega L)^2}>R$。どちらもリアクタンスが残るため $|Z|>R$ となり、電流振幅は (ヌ)(ハ) より小さい。共振(リアクタンス相殺)か、完全短絡か、どちらかでないと最小にならない。
交流回路の電流振幅はインピーダンス最小で最大。$LC$ 直列で $\omega^2LC=1$ なら直列共振してリアクタンスが消える。本問は「共振 (ヌ)」と「完全短絡 (ハ)」の $2$ 通りが同点で最大になる、というひねりがある。
電流振幅最大の場合((ヌ) または (ハ))、回路のインピーダンスは $R$ のみ。電流の正の向き $+y$ と起電力の関係は設問(2)で確かめた $I=\dfrac{(\text{点 A の開放電位})}{R}$ がそのまま使える(棒の内部抵抗 $0$、ループの抵抗は $R$ のみ)。設問(7)の $V_4(t)$ を用いて
$$I_4(t) = \frac{V_4(t)}{R} = \frac{Bad\omega}{R}\,\sin(\omega t)$$抵抗だけなので電圧と同位相。よって $1$ 周期分の概形は $V_4$ と同じ (テ)($+\sin$)。
検算(位相のチェック):抵抗のみの回路では $L,C$ による位相の進み・遅れがない。共振 (ヌ) でも合成リアクタンスが $0$ なので、やはり同位相になる。
容量性 (ネ: $R$ と $C$) なら電流は電圧より位相が進み、誘導性 (ノ: $R$ と $L$) なら遅れる。電流振幅も小さくなる。最大振幅となる (ヌ)(ハ) はちょうど位相ずれが消える条件なので、電流は電圧とぴったり同位相の $+\sin$ になる。これが「振幅最大」と「位相ずれなし」が同時に起こる共振の特徴。
抵抗のみ(または共振状態)の交流回路では、電流は電圧と同位相で $I=V/R$ が瞬時値でも成立する。設問(7)の $V_4$ をそのまま $R$ で割れば $I_4$ が求まる。