ばね付き発射台からの小球の打ち上げ、斜方投射、最高点での衝突を扱う力学の総合問題です。
設定:ばねを自然長から $d$ だけ縮めた状態(初期状態、速度 $0$)から、自然長の位置(発射位置)に達するまでの運動を考えます。初期位置を高さの基準とすると、発射位置の高さは $d\sin\phi$ です。
立式:力学的エネルギー保存則(摩擦なし)より、
計算:$V_1^2$ について整理します。
$V_1$ が実数になるには根号の中が正である必要があるため、$\frac{k}{m}d^2 > 2gd\sin\phi$ すなわち $kd > 2mg\sin\phi$ が条件です。ばねの力がmg sinφ(斜面方向の重力成分)に打ち勝つだけの縮みがあるということです。
例えば m = 0.10 kg, k = 200 N/m, d = 0.050 m, g = 9.8 m/s², φ = 30° の場合:
$$V_1 = \sqrt{\frac{200}{0.10} \times 0.050^2 - 2 \times 9.8 \times 0.050 \times \sin 30°}$$ $$= \sqrt{2000 \times 0.0025 - 2 \times 9.8 \times 0.050 \times 0.50}$$ $$= \sqrt{5.0 - 0.49} = \sqrt{4.51} \fallingdotseq 2.1 \text{ m/s}$$ばねの弾性エネルギーは 0.50 × 200 × 0.0025 = 0.25 J、重力の位置エネルギー増加は 0.10 × 9.8 × 0.025 = 0.0245 J で、差の 0.226 J が運動エネルギーになります。
斜面上の移動距離 $d$ と鉛直方向の高さ $d\sin\phi$ を混同しないこと。エネルギー保存では鉛直方向の高さ変化を使う。
設定:床から見た小球の速度成分が $(V_{2x},\, V_{2y})$、発射台の速度が $(-V_3,\, 0)$(左向き)です。
立式:台から見た小球の相対速度 $\vec{v}_{\text{rel}}$ は、
台上では小球は斜面に沿って進む(拘束条件)ので、$\vec{v}_{\text{rel}}$ の向きが $\phi$ に一致します。したがって、
「台から見ると小球は常に斜面に沿って動く」という幾何学的拘束条件がカギ。相対速度 = 小球の速度 − 台の速度 のベクトル引き算を正確に。
立式:水平方向の運動量保存則(右向きを正)。初期状態では両者静止しているため全運動量は $0$ です。
$mV_{2x} = MV_3$ は「小球の右向きの運動量と台の左向きの運動量が常に等しい」ことを意味します。つまり小球が勢いよく飛び出すほど、台も大きな速さで反対方向に動きます(作用・反作用の結果)。
「系に水平方向の外力がない → 水平方向の全運動量が保存」。台は左向きなので速度の符号は $-V_3$。
立式:床から見た発射角を $\phi'$ とします。
設問(2)の結果 $\tan\phi = \dfrac{V_{2y}}{V_{2x}+V_3}$ を $V_{2y}$ について解くと、
これを $\tan\phi'$ に代入します。
ここで、小球は右へ打ち出され ($V_{2x} > 0$)、台は左へ動く ($V_3 > 0$) なので、
したがって $\tan\phi' > \tan\phi$ であり、$0^\circ < \phi,\, \phi' < 90^\circ$ の範囲では $\tan$ は単調増加なので、
設問(2)の結果をフルに活用。$V_{2y}$ を消して $\tan\phi'$ を $\tan\phi$ で表す流れ。直感とも整合:台が逃げる → より上向きに飛ぶ。
設定:初速 $v_0$、発射角 $\theta$ で斜方投射された小球を考えます。
最高点の時刻 $t_1$:鉛直方向の速度が $0$ になる条件から、
最高点の高さ $h$:$t = t_1$ を鉛直方向の位置の式に代入します。
最高点では鉛直速度がゼロで水平速度 $v_0\cos\theta$ だけが残るので、打ち上げ地点と最高点でエネルギー保存を適用すると、
$$\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}m(v_0\cos\theta)^2 + mgh$$ $$mgh = \frac{1}{2}m\bigl(v_0^2 - v_0^2\cos^2\theta\bigr) = \frac{1}{2}mv_0^2\sin^2\theta$$ $$h = \frac{v_0^2\sin^2\theta}{2g}$$運動方程式を使わずに $h$ が得られます。
最高点 = 鉛直速度ゼロ。この条件から $t_1$ を出し、$t_1$ を高さの式に代入する2ステップ。
立式・計算:水平方向は加速度ゼロの等速運動なので、
設問(5)で求めた $t_1 = \dfrac{v_0\sin\theta}{g}$ を代入すると、
$\sin\theta\cos\theta = \frac{1}{2}\sin 2\theta$ を用いると $l = \dfrac{v_0^2\sin 2\theta}{2g}$ とも書けます。これは全水平到達距離(飛距離)$R = \dfrac{v_0^2\sin 2\theta}{g}$ のちょうど半分であり、放物線の対称性から当然です。
水平方向は「等速」なので速さ×時間で距離。$t_1$ は設問(5)の結果をそのまま使う。
手順:設問(5)(6)で $h = H$, $l = L$ とおきます。
$v_0^2\cos^2\theta$ を求める:②の両辺を2乗し、①で割ります。
$v_0^2$ を求める:$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ を利用します。
$E_0$ を求める:
$\theta$ の消去テクニック:$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ の両辺に $v_0^2$ を掛けた形 $v_0^2 = v_0^2\sin^2\theta + v_0^2\cos^2\theta$ を使い、それぞれを①③で置き換える。
設定:右向きを正とします。
立式:水平方向の運動量保存則より、
$v_1, v_2$ は「速さ」(正の値)で定義されている。$v_1$ は左向きなので速度として扱うときは $-v_1$ と符号を付ける。ここを間違えると設問(9)(10)にも響く。
反発係数の定義:衝突後の相対速度の大きさ ÷ 衝突前の相対速度の大きさ。
衝突前の相対速度(接近速度)は $v_0\cos\theta - 0 = v_0\cos\theta$。衝突後の相対速度(離反速度)は、小球2が右に $v_2$ で進み小球1が左に $v_1$ で進むので $v_2 - (-v_1) = v_1 + v_2$。
連立:①と②を連立して $v_1, v_2$ を求めます。
まず②を $v_2$ について解きます。
②'を①に代入します。
$v_1$ の項を左辺に移項します。
$v_2$ は②'に代入して求めます。
問題文では「小球1は跳ね返って左向きに進む」ことを前提にしています。これが成り立つには $v_1 > 0$、つまり $m_2 e > m_1$ が必要です。
例えば $m_1 = m_2$ で $e = 1$(完全弾性衝突)なら $v_1 = 0$(小球1は停止し、小球2が $v_0\cos\theta$ で飛ぶ)。これはニュートンのゆりかごと同じ現象です。
質量 $m_1$ の物体が速度 $u$ で静止した質量 $m_2$ に衝突するとき、衝突後の速度は一般に、
$$v_1' = \frac{m_1 - m_2 e}{m_1+m_2}\,u, \quad v_2' = \frac{m_1(1+e)}{m_1+m_2}\,u$$本問では $u = v_0\cos\theta$ であり、小球1は「跳ね返る(速度が負になる)」ので、速さは $|v_1'| = \frac{m_2 e - m_1}{m_1+m_2}\,v_0\cos\theta$ となり、同じ結果が得られます。
衝突の定石:「運動量保存 + 反発係数」の2式を連立して2つの未知数 $v_1, v_2$ を求める。片方を消去 → 代入の流れ。
設定:衝突直前の小球1の運動エネルギーを $E_1$ とおきます。
衝突後の運動エネルギーの合計 $E_2$:設問(9)の結果を代入します。
損失エネルギー $\Delta E$:
直接計算するより、次の衝突エネルギー損失の公式を利用する方が簡潔です。
この公式を $E_1 = \frac{1}{2}m_1(v_0\cos\theta)^2$ で割ると、
つまり、
運動量保存式①より $m_1 v_0\cos\theta = -m_1 v_1 + m_2 v_2$。反発係数②より $v_1 + v_2 = ev_0\cos\theta$。
$\Delta E$ は衝突前後の運動エネルギーの差であり、
$$\Delta E = \frac{1}{2}m_1(v_0\cos\theta)^2 - \frac{1}{2}m_1 v_1^2 - \frac{1}{2}m_2 v_2^2$$ $$= \frac{1}{2}\bigl[m_1(v_0\cos\theta)^2 - m_1 v_1^2 - m_2 v_2^2\bigr]$$①と②を使って整理すると(途中計算は省略)、
$$\Delta E = \frac{1}{2}\frac{m_1 m_2}{m_1+m_2}(1-e^2)(v_0\cos\theta)^2$$$1 - e^2 = (1-e)(1+e)$ と因数分解もでき、$e$ が $1$ に近いほど損失は急激に小さくなることが分かります。
衝突のエネルギー損失公式 $\Delta E = \frac{1}{2}\frac{m_1 m_2}{m_1+m_2}(1-e^2) \cdot (\text{相対速度})^2$ を覚えておくと一瞬で整理できる。公式を忘れても、設問(9)の $v_1, v_2$ を使って $E_1 - E_2$ を地道に計算すれば同じ結果を得られる。