スクリーン上には「左(左端)」「右(右端)」の向きが定義されている(図1)。鏡2は上(鉛直の腕)にあり、スクリーンに近づける=下向きに移動、反時計回りに回転させる、という設定である。上のシムで「平行移動」モードと「傾き」モードを切り替えて、スクリーンの明暗の変化を体感してほしい。
鏡2を腕方向に距離 \(\Delta L\) 動かすと、光はこの腕を往復するので光路長が \(2\Delta L\) 変化する。したがって2つの光の光路差の変化は
$$\Delta(\text{光路差}) = 2\,\Delta L$$スクリーンは一様に明るくなったり暗くなったりを繰り返す(傾きが無いので場所による差はなく、全面が同時に明暗する)。明るさが最大(明)になるのは光路差が波長の整数倍のとき。もっとも明るい状態から次にもっとも明るい状態に戻るには、光路差がちょうど \(\lambda\) だけ変わればよい:
$$2D = \lambda$$これを \(D\) について解いて:
$$D = \frac{\lambda}{2}$$鏡がわずか \(\lambda/2 \fallingdotseq 250\) nm 動くだけで明暗が1回入れ替わる。明暗の回数を数えれば ナノメートル単位で距離が測れる。重力波検出器 LIGO はこの原理を極限まで高めたもので、陽子1個の直径より小さい鏡の変位を検出する。
鏡2が \(\theta\) 傾くと、鏡の法線が \(\theta\) 傾くので、反射の法則により反射光の向きは \(2\theta\) だけ変わる。この傾いた波(鏡2からの光)と、鏡1からの傾いていない波が重なる。スクリーン上で「左」を \(x\) の負、「右」を正にとると、位置 \(x\) での2つの光の光路差は近軸近似で
$$\Delta(x) = \Delta_0 + 2\theta\, x$$と、\(x\) に比例して変化する(\(\Delta_0\) は \(x=0\) での光路差)。明線の条件は「光路差=\(m\lambda\)(\(m\) は整数)」だから、明線の位置 \(x_m\) は
$$\Delta_0 + 2\theta\, x_m = m\lambda \quad\Rightarrow\quad x_m = \frac{m\lambda - \Delta_0}{2\theta}$$隣り合う明線(\(m\) と \(m+1\))の間隔 \(d = x_{m+1} - x_m\) は
$$d = \frac{(m+1)\lambda - m\lambda}{2\theta} = \frac{\lambda}{2\theta}$$より厳密には反射光の傾き角を使って \(d = \dfrac{\lambda}{2\sin\theta}\) だが、\(\theta\) が十分小さいので \(\sin\theta \fallingdotseq \theta\) より上式となる。
鏡2を傾けることは、鏡1の像と鏡2の像の間にくさび形のすきまを作ることと等価。頂角 \(2\theta\) のくさびによる等厚干渉では、厚さが \(\lambda/2\) 増えるごとに1本の縞ができる。くさびの頂角が \(2\theta\) なら、横方向に \(x\) 進むと厚さは \(2\theta\,x\)(往復で \(2\)倍が既に含まれる形)変化し、縞間隔 \(d = \dfrac{\lambda}{2\theta}\) が得られ、本文と一致する。
(2)より、明線の位置は \(x_m = \dfrac{m\lambda - \Delta_0}{2\theta}\)。ここで \(\Delta_0\) は \(x=0\) における光路差で、腕2の往復光路 \(2L\)(\(L\) は鏡2からハーフミラーまでの距離に対応する部分)を含む。図1では反時計回りに傾けたので、反射光は右へ \(2\theta\) 曲がり、右側ほど腕2の光路が長い(=光路差が大きい)。よって \(\Delta(x) = \Delta_0 + 2\theta x\) の符号どおり、\(\Delta_0\) は \(2L\) とともに増減する。
鏡2をスクリーンに近づけると \(L\) が減り、\(\Delta_0\) が減る。ある次数 \(m\) の明線位置は
$$x_m = \frac{m\lambda - \Delta_0}{2\theta}$$だから、\(\Delta_0\) が減ると \(x_m\) は増加する(\(-\Delta_0\) が大きくなる)。すなわち明線は \(x\) の正の向き=右へ動く。
物理的には「腕2を短くした分、同じ明線であり続けるには、腕2の光路がもともと長い右側へ移らねばならない」ということ。
図1で鏡2の右端が上、左端が下になる向き(反時計回り)に傾けると、鏡2の法線がわずかに右へ傾く。入射する上向きの光は反射して右下方向(\(2\theta\) 傾き)へ進む。進行方向に対して右側の点ほど波面が遅れて到達=光路が長いので、スクリーンの右側ほど腕2の光路差が大きい。したがって \(\Delta(x)=\Delta_0+2\theta x\) の \(+\) 符号が確定し、(6)で「投影光が右へ \(d'\) ずれる」という問題文の記述とも整合する。
鏡2を速さ \(V\) でスクリーンに近づけると、光路差はスクリーン上のどの点でも毎秒 \(2V\) の割合で減る。光路差が \(\lambda\) 変わるごとに縞1本分(間隔 \(d\))だけ模様が流れる。よって単位時間に流れる縞の本数は \(\dfrac{2V}{\lambda}\) 本、縞の移動速度 \(v\)(=毎秒の本数 × 縞間隔)は
$$v = \frac{2V}{\lambda}\cdot d$$(2)で得た \(d = \dfrac{\lambda}{2\theta}\) を代入すると
$$v = \frac{2V}{\lambda}\cdot \frac{\lambda}{2\theta} = \frac{V}{\theta}$$これを \(V\) について解いて
$$V = v\,\theta$$波長 \(\lambda\) は約分されて消え、\(V\) は縞の速さ \(v\) と傾き \(\theta\) だけで表せる。
明線位置 \(x_m = \dfrac{m\lambda - \Delta_0}{2\theta}\) で、\(\Delta_0 = 2L\)、\(L\) が速さ \(V\) で減るとする(\(\dfrac{dL}{dt} = -V\))。両辺を時間微分すると
$$\frac{dx_m}{dt} = -\frac{1}{2\theta}\frac{d\Delta_0}{dt} = -\frac{1}{2\theta}\cdot 2\frac{dL}{dt} = -\frac{1}{\theta}(-V) = \frac{V}{\theta}$$縞の速さ \(v = \left|\dfrac{dx_m}{dt}\right| = \dfrac{V}{\theta}\)、すなわち \(V = v\theta\)。本文と一致する。
(4)より \(V = v\theta\)。与えられた値は \(v = 1.0\ \text{mm/s} = 1.0\times10^{-3}\ \text{m/s}\)、\(\theta = 1.0\times10^{-4}\ \text{rad}\)(\(\tan\theta \fallingdotseq \theta\) の近似を用いてよい)。代入すると
$$V = v\,\theta = (1.0\times10^{-3}\ \text{m/s}) \times (1.0\times10^{-4})$$ $$V = 1.0\times10^{-7}\ \text{m/s}$$単位を換えると \(V = 0.10\ \mu\text{m/s} = 100\ \text{nm/s}\)。有効数字2桁で \(1.0\times10^{-7}\ \text{m/s}\)。
問題文は \(\lambda = 500\) nm を与えているが、(4)で \(\lambda\) は約分されて消えた。念のため \(\lambda\) を使う経路でも確認すると、縞間隔 \(d = \dfrac{\lambda}{2\theta} = \dfrac{5.0\times10^{-7}}{2\times10^{-4}} = 2.5\times10^{-3}\) m。毎秒の縞本数 \(= v/d = \dfrac{1.0\times10^{-3}}{2.5\times10^{-3}} = 0.40\) 本/s。光路差変化 \(2V = 0.40\times\lambda = 0.40\times5.0\times10^{-7} = 2.0\times10^{-7}\) m/s より \(V = 1.0\times10^{-7}\) m/s。同じ答えになり、\(\lambda\) は結局消える。
鏡2を \(\theta\) 回転させると反射光の向きが \(2\theta\) 変わる。鏡2からスクリーンまでの距離が \(H\) なので、スクリーン上での光束(投影光)の横ずれは
$$d' = H\tan(2\theta) \fallingdotseq 2H\theta$$数値は (5) と同じ \(\theta = 1.0\times10^{-4}\) rad、\(\lambda = 500\) nm を用い、\(H = 10\ \text{cm} = 0.10\ \text{m}\):
$$d' = 2 \times 0.10 \times (1.0\times10^{-4}) = 2.0\times10^{-5}\ \text{m} = 20\ \mu\text{m}$$一方、縞の間隔は (2)(5) より
$$d = \frac{\lambda}{2\theta} = \frac{5.0\times10^{-7}}{2\times(1.0\times10^{-4})} = 2.5\times10^{-3}\ \text{m} = 2.5\ \text{mm}$$両者の比をとると
$$\frac{d'}{d} = \frac{2H\theta}{\lambda/(2\theta)} = \frac{4H\theta^2}{\lambda} = \frac{4\times0.10\times(1.0\times10^{-4})^2}{5.0\times10^{-7}} = 8.0\times10^{-3}$$したがって \(d'\) は \(d\) の約 \(1/125\) しかなく、\(d' < d\)(\(d'\) の方が小さい)。理由は、\(d'\) は光束が \(2\theta\) 傾いて距離 \(H\) だけ進む間に横ずれする幾何的な量(\(\theta\) の1次)であるのに対し、縞間隔 \(d = \lambda/(2\theta)\) は波長 \(\lambda\) を微小角 \(2\theta\) で割った量で、微小角で割るぶん大きくなるためである。
もし \(d'\) が縞間隔 \(d\) と同程度かそれ以上だと、鏡2からの光束と鏡1からの光束が重ならなくなり、干渉じまがそもそも見えない。\(d' \ll d\) だからこそ、2つの光束はほぼ完全に重なった状態を保ち、その中に細かい干渉じま(間隔 \(d\))がくっきり現れる。傾き \(\theta\) を大きくしすぎると \(d'\) が増え \(d\) が減って、やがて縞は見えなくなる。