水平面と角 $\theta$ をなす斜面レール上を、質量 $m$・長さ $W$ の導体棒がすべる。ポイントは磁束密度 $B$ が鉛直上向きで、レール面には垂直でないこと。棒が斜面に沿って距離を動いても、磁束をつくる有効面積は水平投影だけなので、起電力・力の随所に $\cos\theta$ が現れる。
大問は 3 つの状況に分かれる。使うスイッチと接続先で場合分けする。
本問の核心は「$B$ が鉛直で斜面に垂直でない」こと。棒が斜面を距離 $\ell$ 動いても、水平投影は $\ell\cos\theta$ なので、起電力・電磁力ともに $\cos\theta$ を含む。これを見落とすと全問がずれる。
棒がレール上を速さ $V$ で下ると、回路を貫く鉛直方向の磁束が変化する。単位時間に棒が掃く「水平に投影した面積」が起電力を決める。棒の移動 $V$ の水平成分は $V\cos\theta$ なので、掃く面積率は $W\cdot V\cos\theta$。力 $F$ は鉛直な $B$ 中を流れる電流 $I$ が受ける $BIW$。
起電力 E:棒が斜面に沿って微小距離 $\Delta s$ 動くとき、鉛直な $B$ に対する有効面積の増加は水平投影 $W\,\Delta s\cos\theta$。よって磁束変化は $\Delta\Phi = B\,W\,\Delta s\cos\theta$。ファラデーの法則より
$$E = \frac{\Delta\Phi}{\Delta t} = BW\cos\theta\cdot\frac{\Delta s}{\Delta t} = BWV\cos\theta$$電流 I:回路は抵抗 $R$ のみ(電気抵抗は無視)なので、オームの法則より
$$I = \frac{E}{R} = \frac{BWV\cos\theta}{R}$$力 F:電流 $I$ が流れる棒(長さ $W$)が鉛直な磁界 $B$ から受ける力は $F = BIW$。棒・$B$ は直交するので大きさは
$$F = BIW = BW\cdot\frac{BWV\cos\theta}{R} = \frac{B^2W^2V\cos\theta}{R}$$この力は水平向き(レンツの法則で運動を妨げる向き)。斜面に沿った成分は $F\cos\theta$ となる点に (2) で注意する。
磁束は「$B$ ベクトルに垂直な面積」で決まる。$B$ は鉛直、回路面は斜面(水平と角 $\theta$)。斜面上の面積 $S$ を水平面に投影すると $S\cos\theta$。棒が斜面上を $\Delta s$ 動くと斜面上面積は $W\Delta s$ 増えるが、鉛直磁束に効くのはその水平投影 $W\Delta s\cos\theta$。ゆえに $E=BWV\cos\theta$。
「$B\perp$ 面」でないときは面の法線と $B$ のなす角で $\cos$ を掛ける。斜面レール+鉛直磁場では $\cos\theta$。ここを $BWV$ とすると全設問がずれる。
手を放すと重力の斜面成分 $mg\sin\theta$ が棒を下向きに駆動する。速くなるほど電磁力(制動)が強まり、やがて加速度 0 の等速(終端速度)に落ち着く。摩擦は無視なので「重力の斜面成分 = 電磁力の斜面成分」でつり合う。
力のつり合い(斜面方向):電磁力 $F=BIW$ は水平向きなので、斜面に沿った制動成分は $F\cos\theta$。等速では加速度 0:
$$mg\sin\theta = F\cos\theta = \left(\frac{B^2W^2V_0\cos\theta}{R}\right)\cos\theta = \frac{B^2W^2V_0\cos^2\theta}{R}$$$V_0$ について解くと
$$V_0 = \frac{mgR\sin\theta}{B^2W^2\cos^2\theta}$$電流の向き:棒が斜面を下ると回路面(斜面側)が広がり、上向き磁束が増える。レンツの法則より、これを打ち消す下向き磁束をつくる向きに誘導電流が流れる。上から見て時計回りとなり、図の棒中では a→b の向きに流れる。
等速時、重力がする仕事率 $=$ ジュール熱の発生率:
$$mg\sin\theta\cdot V_0 = I^2 R = \left(\frac{BWV_0\cos\theta}{R}\right)^2 R = \frac{B^2W^2V_0^2\cos^2\theta}{R}$$両辺を $V_0$ で割ると $mg\sin\theta = \dfrac{B^2W^2V_0\cos^2\theta}{R}$ となり、同じ結果 $V_0 = \dfrac{mgR\sin\theta}{B^2W^2\cos^2\theta}$ を得る。
電磁力は水平向き。斜面方向のつり合いに入れるときは $F\cos\theta$ とする。$\cos^2\theta$ が分母に来るのはこのため。
動摩擦 $\mu$ を考える。重要なのは垂直抗力 N が「重力の斜面垂直成分」だけでないこと。水平向きの電磁力 $F=BIW$ は、斜面に押しつける成分 $F\sin\theta$ を持つので、$N = mg\cos\theta + F\sin\theta$。摩擦は $\mu N$ で運動を妨げる(上向き)。
斜面に垂直な方向(つり合い):水平な電磁力 $F=BIW$ の斜面垂直成分は $F\sin\theta$(斜面に押しつける向き)。よって
$$N = mg\cos\theta + F\sin\theta = mg\cos\theta + BIW\sin\theta$$斜面方向(等速つり合い、下向き駆動 = 上向き抵抗):電磁力の斜面成分 $F\cos\theta$ と摩擦 $\mu N$ が制動:
$$mg\sin\theta = F\cos\theta + \mu N = BIW\cos\theta + \mu(mg\cos\theta + BIW\sin\theta)$$ここで $BIW = \dfrac{B^2W^2V_1\cos\theta}{R}$($I = BWV_1\cos\theta/R$)。$f \equiv BIW$ とおいて整理すると
$$mg\sin\theta - \mu mg\cos\theta = f(\cos\theta + \mu\sin\theta)$$ $$f = \frac{mg(\sin\theta - \mu\cos\theta)}{\cos\theta + \mu\sin\theta}$$$f = \dfrac{B^2W^2V_1\cos\theta}{R}$ を代入して $V_1$ を解く:
$$V_1 = \frac{Rf}{B^2W^2\cos\theta} = \frac{mgR(\sin\theta - \mu\cos\theta)}{B^2W^2\cos\theta\,(\cos\theta + \mu\sin\theta)}$$分子が正、すなわち $\sin\theta - \mu\cos\theta > 0$($\tan\theta > \mu$)が、棒が下向きに動く条件。$\mu = 0$ を代入すると $V_1 = \dfrac{mgR\sin\theta}{B^2W^2\cos^2\theta} = V_0$ となり、(2) の結果に一致する(検算)。
垂直抗力に電磁力の押しつけ成分 $F\sin\theta$ を忘れない。摩擦問題では「$N=mg\cos\theta$ だけ」と早合点しがち。$B$ が鉛直だからこそ $F$ は水平で、斜面を押す成分が生じる。
S1・S3・S5 でコンデンサー $C$ につなぐ。コンデンサーの両端電圧は、棒の起電力 $E=BWV_2\cos\theta$ と等しい(回路に抵抗はなく、電圧降下は起電力とつり合う)。電気量は $Q=CV_C$。
コンデンサーの両端電圧は棒の起電力に等しい:
$$V_C = E = BWV_2\cos\theta$$電気量はコンデンサーの基本式 $Q = CV_C$ より
$$Q = C\cdot BWV_2\cos\theta = CBWV_2\cos\theta$$起電力そのものが $E = BWV_2\cos\theta$(設問(1) と同じ理由:水平投影面積で磁束が決まる)。コンデンサー電圧はこの起電力に等しいので、$Q=CV_C$ にも $\cos\theta$ が引き継がれる。
抵抗のない定常状態では、コンデンサー電圧 $=$ 起電力。$Q=CV_C=CBWV_2\cos\theta$。$\cos\theta$ を落とさない。
速度 $V_2$ に達したのち、S1・S5 を開き S4 を閉じると、充電されたコンデンサー $C$ とコイル $L$ だけの回路になる(棒は切り離される)。抵抗がないので、エネルギーが $C$ と $L$ の間を往復するLC 電気振動が起きる。周期は $2\pi\sqrt{LC}$。
電気振動の周期:抵抗のない $LC$ 回路の固有角振動数と周期は
$$\omega = \frac{1}{\sqrt{LC}}, \qquad T_1 = \frac{2\pi}{\omega} = 2\pi\sqrt{LC}$$最大電流 I₂(エネルギー保存):切り替え直後、コンデンサーには (4) の電圧 $V_C=BWV_2\cos\theta$ が蓄えられ、電流 0。全電気エネルギーがやがてすべてコイルに移る瞬間が最大電流:
$$\frac{1}{2}L I_2^2 = \frac{1}{2}C V_C^2 = \frac{1}{2}C(BWV_2\cos\theta)^2$$ $$I_2 = BWV_2\cos\theta\sqrt{\frac{C}{L}}$$LC 回路は $L\dfrac{d^2 q}{dt^2} + \dfrac{q}{C}=0$。初期条件 $q(0)=Q=CBWV_2\cos\theta$, $i(0)=0$ より $q(t)=Q\cos\omega t$、$\omega=1/\sqrt{LC}$。電流 $i=-\dfrac{dq}{dt}=Q\omega\sin\omega t$。最大値は
$$I_2 = Q\omega = CBWV_2\cos\theta\cdot\frac{1}{\sqrt{LC}} = BWV_2\cos\theta\sqrt{\frac{C}{L}}$$エネルギー保存の結果と一致する。
LC 振動の周期は $2\pi\sqrt{LC}$。最大電流は「$C$ の電気エネルギー $=$ $L$ の磁気エネルギー」のエネルギー保存で一発。
$t=0$(スイッチ切替時)でコンデンサーは満充電・電流 0。以後、電圧は余弦波、電流は正弦波で、位相が 90° ずれる。最大電圧は $BWV_2\cos\theta$、最大電流は $I_2$。電流は S3→S4 を正とする。
(5) の LC 振動で、初期条件 $q(0)=CBWV_2\cos\theta$, $i(0)=0$ の解は
$$V_C(t) = \frac{q(t)}{C} = (BWV_2\cos\theta)\cos\omega t, \qquad \omega = \frac{1}{\sqrt{LC}}$$電流は電荷の変化率。S3→S4 を正とすると、コンデンサーが放電する向きが正で
$$i(t) = I_2\sin\omega t, \qquad I_2 = BWV_2\cos\theta\sqrt{\frac{C}{L}}$$グラフの特徴:$V_C$ は $t=0$ で最大値 $BWV_2\cos\theta$ から始まる余弦波、$i$ は $t=0$ で 0 から立ち上がる正弦波。両者は位相が 90° ずれ、周期はともに $T_1=2\pi\sqrt{LC}$。$V_C$ が 0 の瞬間に $|i|=I_2$(最大)、$|V_C|$ が最大の瞬間に $i=0$。
コンデンサーのエネルギー $U_C=\tfrac12 C V_C^2 \propto \cos^2\omega t$、コイルのエネルギー $U_L=\tfrac12 L i^2 \propto \sin^2\omega t$。和は $\cos^2+\sin^2=1$ で常に一定。$V_C$ と $i$ が 90° ずれるのは、片方が最大(全エネルギーがそちら)のとき他方が 0 になるため。
初期状態(満充電・電流 0)を見れば、$V_C$ が余弦・$i$ が正弦と即断できる。最大値と周期を必ずグラフに添える。
S1・S4・S5 でコイル $L$ につなぐ。抵抗がないので、棒の起電力 $E=BWV\cos\theta$ とコイルの自己誘導起電力 $L\,dI/dt$ がつり合う。両辺を微小変化で書くと、$L\,\Delta I$ が $BW\cos\theta\,\Delta x$ に等しくなり、電流の変化が変位の変化に比例する。
回路方程式(キルヒホッフ):抵抗なし、棒の起電力 $=$ コイルの自己誘導起電力:
$$E = L\frac{\Delta I}{\Delta t}, \qquad E = BWV\cos\theta,\quad V = \frac{\Delta x}{\Delta t}$$よって
$$BW\cos\theta\cdot\frac{\Delta x}{\Delta t} = L\frac{\Delta I}{\Delta t}$$両辺に $\Delta t$ を掛けて
$$L\,\Delta I = BW\cos\theta\,\Delta x \quad\Rightarrow\quad \Delta I = \frac{BW\cos\theta}{L}\,\Delta x$$初期条件 $x=0$ で $I=0$ から積み上げると、位置と電流は一対一に対応する:
$$I = \frac{BW\cos\theta}{L}\,x$$棒が $x$ まで下ると回路の磁束は $\Phi_{棒}=BW\cos\theta\cdot x$ 増える。コイルの磁束は $\Phi_L=LI$。抵抗がなく総磁束は保存的にリンクするので $LI = BW\cos\theta\,x$、微分して同じ関係を得る。
抵抗なしのコイル回路では「棒の起電力 $=$ コイルの逆起電力」。これを積分すると電流が位置に比例し、あとで単振動に化ける鍵になる。
(7) で $I=\dfrac{BW\cos\theta}{L}x$(電流が位置に比例)が分かった。棒の運動方程式に代入すると、電磁力が「位置に比例する復元力」として現れ、コイルが「ばね」の役割を果たす。よって棒は単振動する。
運動方程式(斜面下向きを正、加速度 A):棒にはたらく斜面方向の力は、重力成分 $mg\sin\theta$(駆動)と電磁力の斜面成分 $BIW\cos\theta$(制動):
$$mA = mg\sin\theta - BIW\cos\theta$$ここに (7) の $I = \dfrac{BW\cos\theta}{L}x$ を代入:
$$mA = mg\sin\theta - BW\cos\theta\cdot\frac{BW\cos\theta}{L}x = mg\sin\theta - \frac{B^2W^2\cos^2\theta}{L}x$$単振動への帰着:右辺は位置 $x$ に比例する復元力を含む。実効ばね定数 $k = \dfrac{B^2W^2\cos^2\theta}{L}$、つり合い位置 $x_0 = \dfrac{mgL\sin\theta}{B^2W^2\cos^2\theta}$ まわりの単振動:
$$mA = -\frac{B^2W^2\cos^2\theta}{L}(x - x_0)$$角振動数と周期は
$$\omega_2 = \sqrt{\frac{k}{m}} = \frac{BW\cos\theta}{\sqrt{mL}}, \qquad T_2 = \frac{2\pi}{\omega_2} = \frac{2\pi\sqrt{mL}}{BW\cos\theta}$$純粋な LC 回路では $T_1=2\pi\sqrt{LC}$。本問は力学とカップリングし、$C$ の役割を $\dfrac{m}{(BW\cos\theta)^2}$ が担う。実際
$$T_2 = 2\pi\sqrt{L\cdot\frac{m}{(BW\cos\theta)^2}} = \frac{2\pi\sqrt{mL}}{BW\cos\theta}$$「質量=ばねにつるした物体、コイル=ばね」という力学–電磁気の対応が見える。重力の斜面成分はつり合い位置をずらすだけで、周期には影響しない。
電流が位置に比例($I\propto x$)すると、電磁力が復元力になり単振動。周期は $T_2=\dfrac{2\pi\sqrt{mL}}{BW\cos\theta}$。$\cos\theta$ が分母に来ることを忘れない。
単振動の最下点は折り返し点で、速度は 0。しかし電流は「位置」に比例するので、$x=H$ で最大になる。(7) の関係 $I=\dfrac{BW\cos\theta}{L}x$ に $x=H$ を代入すればよい。
関係式から直接:(7) の $I = \dfrac{BW\cos\theta}{L}x$ に $x=H$ を代入:
$$I_3 = \frac{BW\cos\theta}{L}\cdot H = \frac{BWH\cos\theta}{L}$$エネルギー保存で確認:最下点で速度 0(折り返し点)。$x=0$ から $x=H$ まで重力がした仕事が、すべてコイルの磁気エネルギーになる:
$$mgH\sin\theta = \frac{1}{2}L I_3^2$$これを $I_3$ について解くと
$$I_3 = \sqrt{\frac{2mgH\sin\theta}{L}}$$ここで最下点 $H = 2x_0 = \dfrac{2mgL\sin\theta}{B^2W^2\cos^2\theta}$(単振動の振幅は $x_0$、最下点は $2x_0$)を代入すると、両表式は一致する:
$$\sqrt{\frac{2mgH\sin\theta}{L}} = \frac{BWH\cos\theta}{L}$$棒は $x=0$ から $v=0$ で出発する単振動。$x=0$ は振動の一端(上端)で、つり合い位置 $x_0$ を中心に振幅 $x_0$ で振れる。よって反対端(下端=最下点)は $x=2x_0=\dfrac{2mgL\sin\theta}{B^2W^2\cos^2\theta}$。ここで速度 0、電流最大となる。エネルギー式と $I=\dfrac{BW\cos\theta}{L}x$ が矛盾なく一致することが確認できる。
単振動の折り返し点は速度 0。だが電流は位置に比例するので $x=H$ で最大。「$I=\dfrac{BW\cos\theta}{L}x$ に代入」でも「エネルギー保存」でも同じ $I_3=\dfrac{BWH\cos\theta}{L}$ が出る。