平行導体レール上を動く導体棒が磁束密度 $B$ の磁場中でおこす電磁誘導の問題です。回路には発光ダイオード(LED)と抵抗 $R_0$ が直列に接続されています。LED は閾値電圧 $V_0$ 未満では電流が流れない非線形素子です。
導体棒が速さ $v$ で磁場 $B$ 中を動くと、起電力 $\varepsilon$ が発生する(ファラデーの法則):
$$\varepsilon = B L v$$LEDの閾値電圧が $V_0$ なので、LEDに $V_0$ 以上の電圧がかかった瞬間に電流が流れ始める。電流が流れ始める境界条件では $i=0$ なので、抵抗での電圧降下 $iR_0 = 0$:
$$B L v_0 = V_0 \Rightarrow v_0 = \frac{V_0}{BL}$$理想化された LED は「$V < V_0$ なら $i = 0$」「$V \geq V_0$ なら $V = V_0$(電流は回路の他の要素で決まる)」というスイッチ的特性を持つ。実際の LED は指数関数的な連続特性を持つが、入試では理想化された特性を使う。
LED がちょうど光り始める瞬間、電流 $i$ は 0 から立ち上がる直前で $i \approx 0$。よって抵抗での電圧降下も 0。回路方程式:
$$\varepsilon = V_{\text{LED}} + iR_0$$$i = 0, V_{\text{LED}} = V_0$ なので:
$$B L v_0 = V_0 \Rightarrow v_0 = \frac{V_0}{BL}$$この値は設問(1)と同じだが、「電流が流れ始める最小の速さ」と「ちょうど流れ始めた瞬間の速さ」は境界で一致する。
現実には LED の $V$-$I$ 特性は指数関数的なので、電流が 0 から有限値になるのに微小な速度増加が必要。理想化された問題では「点灯の瞬間 = 閾値電圧到達の瞬間」として扱う。
回路は「導体棒(起電力 $BLv_1$)→ LED(電圧 $V_0$)→ 抵抗 $R_0$」の直列。キルヒホッフの電圧則:
$$B L v_1 = V_0 + i_1 R_0$$電流について解くと:
$$i_1 = \frac{B L v_1 - V_0}{R_0}$$この式は $v_1 > v_0 = V_0/(BL)$ のときに正の値となり、それ以下では電流は 0(LED消灯)となる。
電流の速度依存性:$\dfrac{di}{dv} = \dfrac{BL}{R_0}$(点灯時の応答)。速度が $v_0$ を超えると線形に電流が増える。
導体棒を水平右向きに動かす外力 $F$ があり、逆向きにローレンツ力(電流と磁場の相互作用)が働く:
$$F_{\text{ローレンツ}} = B L i$$電流 $i$ は導体棒に力を及ぼし、フレミング左手則により速度の向きと逆(減速させる)方向。運動方程式:
$$m a = F - B L i$$電流は速度の関数($i = (BLv - V_0)/R_0$)だから、加速度は速度とともに減少する:
$$a = \frac{F}{m} - \frac{B^2L^2 v}{mR_0} + \frac{BL V_0}{m R_0}$$運動エネルギーの時間変化率:$\dfrac{d}{dt}(\frac{1}{2}mv^2) = F v - BLi v$。第2項は磁場が棒から奪う仕事率(この仕事が電気エネルギーになる)。
回路全体で生じる総電気エネルギーの仕事率 = 起電力 × 電流:
$$P_{\text{total}} = \varepsilon \cdot i_1 = B L v_1 \cdot i_1$$LED 単体の消費電力 $W_L$ は $V_0 \cdot i_1$、抵抗での消費 $W_R = i_1^2 R_0$:
$$W_L + W_R = V_0 i_1 + i_1^2 R_0 = i_1(V_0 + i_1 R_0) = i_1 \cdot BLv_1$$問題の $W_1$ は LED消費電力を指す:
$$W_1 = i_1 V_0$$定速運動なので加速度 0、$F = BLi_1$。外力が単位時間にする仕事は $F v_1 = BLi_1 v_1 = \varepsilon i_1$。これが全電気エネルギーに一致。
LED が光っているときの電圧は $V_0$ に固定(理想化)。したがって LED で消費される電力は:
$$W_L = V_0 \cdot i_1$$電流 $i_1$ は速度 $v_1$ に比例して増える(設問(3)の結果):
$$i_1 = \frac{B L v_1 - V_0}{R_0}$$よって LED消費電力は速度の関数:
$$W_L(v_1) = V_0 \cdot \frac{B L v_1 - V_0}{R_0}$$単位時間あたりのエネルギー変化 $\Delta W_L = V_0 \cdot i_1$。
現実のLEDは $V_0 i$ のうち一部だけが光に変換され、残りは熱になる。理想化では「$V_0 i$ 全てが光」として扱う。
導体棒の運動エネルギー(ア=運動エネルギー)は、磁場を介して電流の仕事となり、これが回路の(イ=電気エネルギー)となる。さらに抵抗での(ウ=熱エネルギー)とLEDの光エネルギーに変換される。
$$\Delta E_{\text{運動}} = \Delta E_{\text{熱}} + \Delta E_{\text{LED}}$$ $$\frac{1}{2}m \Delta(v^2) = i^2 R_0 \Delta t + V_0 i \Delta t$$ $$= i(iR_0 + V_0)\Delta t = i \cdot BLv \Delta t$$LEDに使われる電気エネルギーの割合 $\eta = V_0 / (V_0 + iR_0)$。電流が大きくなるほど抵抗熱に食われる割合が増え、LEDの効率は下がる。
外力無しの場合、運動方程式は:
$$m\frac{dv}{dt} = - B L i_1$$電流 $i_1 = (BLv - V_0)/R_0$ を代入:
$$m\frac{dv}{dt} = -\frac{BL(BLv - V_0)}{R_0}$$運動エネルギーの変化率:
$$\frac{d}{dt}\left(\frac{1}{2}mv^2\right) = m v \frac{dv}{dt} = -BLv \cdot i_1 = -\varepsilon i_1$$微小時間 $\Delta t$ の間の減少量:
$$\Delta K = -BLv \cdot i_1 \Delta t = -(i_1 V_0 + i_1^2 R_0)\Delta t$$$\Delta(v^2) = 2v\Delta v$ の形に書くと、LED のみの寄与として:
$$\Delta(v^2)_{\text{LED}} = \frac{2 i_1 V_0 \Delta t}{m}$$エネルギー保存から直接:$\frac{1}{2}m\Delta(v^2) = i_1 V_0 \Delta t \Rightarrow \Delta(v^2) = \frac{2 i_1 V_0 \Delta t}{m}$。
重力場中でレール上を落下する導体棒の運動方程式(LED点灯時、下向きを正):
$$m \frac{dv}{dt} = m g - B L i$$終端速度 $v_2$ では $dv/dt = 0$:
$$m g = B L i_2 \Rightarrow i_2 = \frac{mg}{BL}$$回路方程式から $BL v_2 = V_0 + i_2 R_0$:
$$B L v_2 = V_0 + \frac{m g R_0}{B L}$$両辺を $BL$ で割って:
$$v_2 = \frac{V_0}{B L} + \frac{m g R_0}{B^2 L^2}$$重力による単位時間の仕事 = 電気エネルギー消費率:$mgv_2 = V_0 i_2 + i_2^2 R_0$。連立から同じ結果。
LEDがずっと点灯しないための条件は、最終的な速度が閾値 $v_0 = V_0/(BL)$ 未満であること。終端速度を考えると、LED OFF 時の等価抵抗 $R_0$ のみで回路方程式:
$$B L v_\infty = i R_0, \quad m g = B L i$$これらから:
$$v_\infty = \frac{m g R_0}{B^2 L^2}$$LED点灯しない条件:$v_\infty < v_0 = V_0/(BL)$:
$$\frac{m g R_0}{B^2 L^2} < \frac{V_0}{BL}$$$m$ について解くと:
$$m < \frac{V_0 BL}{g R_0}$$したがって臨界質量:
$$m_0 = \frac{V_0 BL}{g R_0}$$質量が非常に小さい → 重力が弱い → 電磁制動の方が強い → 速度が閾値未満で等速になる → LED 消灯のまま。$m = m_0$ でちょうど境界。
代表的な値を代入して計算してみる。物理の式は記号だけでは実感しにくいが、具体的な数値で計算すると実際のスケールが見える。
代表値の例:
例えば、ある問題の結果が $v_0 = \sqrt{g\ell}$ となった場合:
$$v_0 = \sqrt{9.8 \times 0.5} = \sqrt{4.9} \approx 2.2 \text{ m/s}$$時間の計算例:$t = \sqrt{2h/g}$、$h = 1.0$ m なら:
$$t = \sqrt{2 \times 1.0 / 9.8} = \sqrt{0.204} \approx 0.45 \text{ s}$$エネルギー計算例:$E = \frac{1}{2}mv^2$、$m = 2.0$ kg, $v = 3.0$ m/s なら:
$$E = \frac{1}{2} \times 2.0 \times 9.0 = 9.0 \text{ J}$$電気量計算例:$Q = CV$, $C = 1.0 \times 10^{-6}$ F, $V = 5.0$ V なら:
$$Q = 1.0 \times 10^{-6} \times 5.0 = 5.0 \times 10^{-6} \text{ C} = 5.0 \mu\text{C}$$基本単位:長さ m (メートル)、質量 kg、時間 s、電流 A、温度 K、物質量 mol、光度 cd。
組立単位の例:速度 m/s、加速度 m/s²、力 N = kg·m/s²、エネルギー J = N·m、電力 W = J/s、電気量 C = A·s、電圧 V = J/C、抵抗 Ω = V/A、磁束密度 T = kg/(A·s²) など。