前期 大問2

解法の指針

鉛直に立てた間隔 $\ell$ の平行レール上を、質量 $m$ の導体棒がなめらかに落下する電磁誘導の問題です。磁束密度 $B$ の磁場は紙面手前向き。レール間には「抵抗 $R$ + LED(A)」と「LED(B) + 抵抗 $R$」の2本の導線が並列につながれ、2つのLEDは互いに逆向きに取り付けられています。

LEDの電流電圧特性(図2)

問題の構成

全体を貫くポイント

設問(1):発光するのはLED(A)かLED(B)か

直感的理解
導体棒が下向きに落ちると、フレミング右手の法則(あるいは $q\vec{v}\times\vec{B}$)で棒の中の自由電子が力を受け、誘導電流が生まれます。棒を電池と見立てると、外部回路に流れる電流の向きが決まります。その向きに電流を通せる(順方向の)LEDだけが光ります。2つのLEDは逆向きなので、光るのは片方だけです。

導体棒は下向き($\vec{v}$)に落下し、磁場 $\vec{B}$ は紙面手前向き。棒の中の正電荷が受ける力は $q\vec{v}\times\vec{B}$ の向きです。座標を「右=$x$、上=$y$、手前=$z$」ととると、$\vec{v}=-v\hat{y}$、$\vec{B}=B\hat{z}$ なので:

$$q\vec{v}\times\vec{B} = q(-v\hat{y})\times(B\hat{z}) = -qvB\,\hat{x}$$

力は左向き($-\hat{x}$)。よって棒の中では電流が左向きに流れ、棒の左端が高電位(電池の+極)になります。外部回路では電流は左レール → 導線 → 右レール、すなわち左から右へ流れます。

図1より、上の枝のLED(A)は左向き(◁)=右→左しか通さないので逆方向で不通。下の枝のLED(B)は右向き(▷)=左→右を通すので順方向で導通します。したがって発光するのはLED(B)です。

答え:発光するのは LED(B)
別解:レンツの法則で電流の向きを確認

導体棒が下がると、棒・導線・レールで囲まれた回路(棒より上側の面積)を貫く「手前向き」の磁束が減少する。レンツの法則により、誘導電流はこの磁束の減少を妨げる(手前向きの磁束を増やす)向き、すなわち回路を反時計回り(棒の中で左向き)に流れる。外部回路では左レール→右レールの向きとなり、LED(B)が順方向。$q\vec v\times\vec B$ による判定と一致する。

Point 誘導電流の向きは「$q\vec v\times\vec B$」または「レンツの法則」で決める。逆向きに置かれた2つのLEDは、電流の向きによってどちらか一方だけが順方向で点灯する。

設問(2):発光し始めるときの速さ v₁

直感的理解
LEDは順方向電圧が $V_0$ に達するまで電流を流しません。電流が流れ始める「ちょうどその瞬間」は電流 $I=0$。すると抵抗 $R$ での電圧降下も $0$ なので、導体棒の起電力 $B\ell v$ がまるごとLEDにかかります。これが $V_0$ に等しくなる速さが $v_1$ です。

導体棒が速さ $v$ で落下すると、誘導起電力が生じます:

$$\varepsilon = B\ell v$$

発光が始まる瞬間は電流 $I = 0$。このとき抵抗 $R$ での電圧降下は $IR = 0$ なので、起電力はすべてLEDにかかり、その値が閾値 $V_0$ に等しくなります:

$$B\ell v_1 = V_0$$

速さについて解くと:

$$v_1 = \frac{V_0}{B\ell}$$
答え:$v_1 = \dfrac{V_0}{B\ell}$
補足:なぜ電流 I=0 とおけるのか

LEDは $V < V_0$ で $I=0$、$V=V_0$ で $I$ が $0$ から立ち上がる。したがって「発光し始める瞬間」は $V=V_0$ かつ $I=0$ の境界点。$I=0$ より抵抗の電圧降下がゼロになり、$\varepsilon = V_0$ が成り立つ。$I \ne 0$ ならすでに発光を続けている状態であり、「始めた瞬間」ではない。

Point 「発光し始める」=「$I=0$ かつ LED電圧 $=V_0$」。境界条件として電流をゼロとおけば、起電力がそのまま閾値電圧に等しい。

設問(3):電流 I₂ が流れているときのLEDの電圧 V_LED

直感的理解
LEDに電流 $I_2$ が流れているとき、図2の特性式 $I=(V-V_0)/R_0$ をそのまま逆に解けばLED電圧が求まります。電流が大きいほど、閾値 $V_0$ に $R_0 I_2$ の分だけ電圧が上乗せされます。

図2のLEDの電流電圧特性は、順方向電圧が $V_0$ を超えると次式で表されます:

$$I = \frac{V - V_0}{R_0}$$

いま電流が $I_2$ なので、この式に $I = I_2$、$V = V_{\mathrm{LED}}$ を代入します:

$$I_2 = \frac{V_{\mathrm{LED}} - V_0}{R_0}$$

$V_{\mathrm{LED}}$ について解くと:

$$V_{\mathrm{LED}} = V_0 + R_0 I_2$$
答え:$V_{\mathrm{LED}} = V_0 + R_0 I_2$
補足:LEDは「電池+内部抵抗」に見える

$V_{\mathrm{LED}} = V_0 + R_0 I_2$ は、起電力 $V_0$ の電池に内部抵抗 $R_0$ が直列につながった素子とまったく同じ形。点灯中のLEDは「$V_0$ の電池 + 抵抗 $R_0$」と等価回路で置きかえられる。この見方が(4)以降の回路計算を簡単にする。

Point LEDの特性式 $I=(V-V_0)/R_0$ を逆に解くと $V_{\mathrm{LED}}=V_0+R_0 I$。点灯中のLEDは「電圧 $V_0$ + 抵抗 $R_0$」と等価。

設問(4):導体棒の速さが v₂ のときの電流 I₂

直感的理解
点灯側の枝(LED(B)+抵抗 $R$)だけに電流が流れます(もう一方の枝は逆方向で不通)。導体棒=起電力 $B\ell v_2$、LED=$V_0 + R_0 I_2$、抵抗=$R I_2$。これらを直列の回路方程式(キルヒホッフ第2法則)に当てはめて $I_2$ を求めます。

点灯している枝だけに電流が流れます。この枝は「導体棒(起電力 $B\ell v_2$)→ LED(電圧 $V_0 + R_0 I_2$)→ 抵抗 $R$(電圧 $R I_2$)」の直列。キルヒホッフの第2法則より:

$$B\ell v_2 = \underbrace{(V_0 + R_0 I_2)}_{\text{LED}} + \underbrace{R I_2}_{\text{抵抗}}$$

右辺の $I_2$ をまとめると:

$$B\ell v_2 = V_0 + I_2(R + R_0)$$

$I_2$ について解いて:

$$I_2 = \frac{B\ell v_2 - V_0}{R + R_0}$$
答え:$I_2 = \dfrac{B\ell v_2 - V_0}{R + R_0}$
補足:もう一方の枝はなぜ無視できるのか

2本の枝は並列だが、LED(A)は逆方向で電流を通さない。したがってLED(A)+抵抗の枝には電流が流れず、実質的に点灯側の1本だけの直列回路として扱える。もし両方が順方向なら並列合成が必要だが、逆向き配置のためその心配はない。

Point 点灯中のLEDを「$V_0$+抵抗 $R_0$」に置きかえ、$B\ell v = V_0 + I(R+R_0)$ という1本の回路方程式にまとめるのが定石。抵抗は $R$ と $R_0$ の和で効く。

設問(5):そのときの加速度の大きさ a₂

直感的理解
落下する導体棒には、下向きの重力 $mg$ と、電流によって生じる上向きの電磁力(制動力)$B\ell I_2$ がはたらきます。この2力の差が棒を加速させます。まだ終端速度に達していないので、重力が勝って下向きに加速している状態です。

導体棒にはたらく力は、下向きの重力 $mg$ と、上向きの電磁力 $F = B\ell I_2$ です。電磁力の向きは、電流が磁場から受ける力(フレミング左手の法則)で決まり、必ず運動を妨げる向き=速度と逆=上向きになります。下向きを正として運動方程式を立てると:

$$m a_2 = mg - B\ell I_2$$

加速度について解くと:

$$a_2 = \frac{mg - B\ell I_2}{m} = g - \frac{B\ell I_2}{m}$$

この段階ではまだ $mg > B\ell I_2$ なので $a_2 > 0$(下向きに加速中)。したがって大きさは:

$$a_2 = g - \frac{B\ell I_2}{m}$$
答え:$a_2 = g - \dfrac{B\ell I_2}{m}$
別解:I₂ を速度で書きかえる

(4)の $I_2 = \dfrac{B\ell v_2 - V_0}{R+R_0}$ を代入すると、加速度を速度の関数として表せる:

$$a_2 = g - \frac{B\ell}{m}\cdot\frac{B\ell v_2 - V_0}{R+R_0} = g - \frac{B^2\ell^2 v_2 - B\ell V_0}{m(R+R_0)}$$

速度 $v_2$ が大きいほど電磁制動が強まり、加速度が小さくなる。$a_2=0$ となる速度が終端速度((9))。

Point 電磁誘導で流れる電流は、磁場から $B\ell I$ の制動力を受ける(レンツの法則=運動を妨げる向き)。運動方程式は $ma = mg - B\ell I$。

設問(6):微小時間 Δt に消費する電力量 W₂

直感的理解
LEDと抵抗が消費する電力は、それぞれ「電圧×電流」。2つを足すと、実は「起電力×電流 = $B\ell v_2 \times I_2$」というきれいな形になります。これに微小時間 $\Delta t$ を掛ければ、その間の消費電力量 $W_2$ です。$\Delta t$ の間の電流変化は無視してよいので、$I_2$ は一定として扱えます。

抵抗と同じく、LEDの消費電力も「電圧×電流」で求まります。$\Delta t$ の間、電流 $I_2$ は一定とみなせます。

LEDの消費電力:電圧 $V_0 + R_0 I_2$、電流 $I_2$ より

$$P_{\mathrm{LED}} = (V_0 + R_0 I_2)\,I_2$$

抵抗 $R$ の消費電力:

$$P_{R} = R I_2^{\,2}$$

2つの和をとると、(4)の回路方程式 $V_0 + I_2(R+R_0) = B\ell v_2$ が使えて:

$$P_{\mathrm{LED}} + P_{R} = I_2\big[(V_0 + R_0 I_2) + R I_2\big] = I_2\big[V_0 + I_2(R+R_0)\big] = I_2 \cdot B\ell v_2$$

これに微小時間 $\Delta t$ を掛けると、消費した電力量 $W_2$:

$$W_2 = (P_{\mathrm{LED}} + P_R)\,\Delta t = B\ell v_2 I_2\,\Delta t$$
答え:$W_2 = B\ell v_2 I_2\,\Delta t$
別解:起電力のする仕事から直接求める

導体棒(起電力 $\varepsilon = B\ell v_2$)が単位時間に回路へ送り込む電気エネルギーは $\varepsilon I_2 = B\ell v_2 I_2$。回路にはこの電力を消費する素子がLEDと抵抗しかない(自己インダクタンス等は無視)ので、そのまま $W_2 = B\ell v_2 I_2\,\Delta t$。エネルギー保存から一発で出る。

Point LEDと抵抗の消費電力の和は「起電力×電流」=$B\ell v_2 I_2$ にまとまる。回路方程式 $B\ell v = V_0 + I(R+R_0)$ を掛け算に使うのがカギ。

設問(7):エネルギーの流れ(ア・イ・ウ)

直感的理解
導体棒は落ちながら発電しています。もとをたどれば、$W_2$(LED・抵抗の消費)のエネルギー源は、棒が高い位置にあることで持っていた位置エネルギー。落ちる途中で位置エネルギーは減り、その一部は棒自身の速さを上げる(運動エネルギーの増加)に使われ、残りが電気を経て消費されます。位置と運動を合わせた力学的エネルギーの減少分が、ちょうど $W_2$ に一致します。

導体棒は落下しているので、$W_2$ のエネルギー源をたどると棒の位置エネルギー(重力による位置エネルギー)です。よって空欄アは位置

落下の途中、位置エネルギーの一部は棒の速さを上げること、すなわち棒の運動エネルギーの増加に使われます。よって空欄イは運動

位置エネルギーと運動エネルギーの合計を力学的エネルギーとよびます。エネルギー保存を式で書くと(位置エネルギーの減少 = 運動エネルギーの増加 + $W_2$):

$$(-\Delta E_{\text{位置}}) = \Delta E_{\text{運動}} + W_2$$

移項すると、$W_2 = -\Delta E_{\text{位置}} - \Delta E_{\text{運動}} = -\Delta(E_{\text{位置}} + E_{\text{運動}})$。すなわち $W_2$ は棒の力学的エネルギーの減少量に一致します。よって空欄ウは力学的

$$W_2 = -\,\Delta E_{\text{力学的}} \quad(\text{力学的エネルギーの減少量})$$
答え:ア=位置、イ=運動、ウ=力学的
補足:電気エネルギーのその先(熱と光)

力学的エネルギーの減少分は、いったん電気エネルギー $W_2$ になり、抵抗 $R$・$R_0$ ではジュール熱、LEDの $V_0$ 分では主に光として放出される。設問(7)は「導体棒側のエネルギー収支(位置・運動・力学的)」を問うており、電気の先の熱・光は次の段階。混同しないよう注意。

Point 落下する導体棒の発電では、$W_2 =$ 力学的エネルギー(位置+運動)の減少量。位置エネルギーが源で、一部が運動エネルギーの増加に、残りが電気(=$W_2$)になる。

設問(8):力学的エネルギーの減少量が W₂ に一致することの証明

直感的理解
微小時間 $\Delta t$ の間に、棒は $v_2\Delta t$ だけ落下します。位置エネルギーの減少($mg\times$落下距離)から、運動エネルギーの増加を引けば、力学的エネルギーの減少量が出ます。これを計算すると、(6)で求めた $W_2 = B\ell v_2 I_2\Delta t$ にぴたりと一致します。$(\Delta t)^2$ の項は十分小さいので無視します。

① 位置エネルギーの減少:$\Delta t$ の間に棒は $v_2\Delta t$ だけ落下する(速度変化は $\Delta t$ の1次では $v_2$ とみなす)。重力による位置エネルギーの減少は:

$$-\Delta E_{\text{位置}} = mg\,v_2\,\Delta t$$

② 運動エネルギーの増加:速度は $v_2$ から $v_2 + a_2\Delta t$ に増える。運動エネルギーの増加は:

$$\Delta E_{\text{運動}} = \frac{1}{2}m(v_2 + a_2\Delta t)^2 - \frac{1}{2}m v_2^{\,2} = m v_2 a_2\,\Delta t + \frac{1}{2}m a_2^{\,2}(\Delta t)^2$$

$(\Delta t)^2$ の項を無視して:

$$\Delta E_{\text{運動}} \fallingdotseq m v_2 a_2\,\Delta t$$

③ 力学的エネルギーの減少量:①から②を引く。ここで(5)の $a_2 = g - \dfrac{B\ell I_2}{m}$ より $g - a_2 = \dfrac{B\ell I_2}{m}$ を使う:

$$-\Delta E_{\text{力学的}} = mg\,v_2\Delta t - m v_2 a_2\Delta t = m v_2(g - a_2)\Delta t = m v_2\cdot\frac{B\ell I_2}{m}\,\Delta t$$

質量 $m$ が約分され:

$$-\Delta E_{\text{力学的}} = B\ell v_2 I_2\,\Delta t = W_2 \qquad \blacksquare$$
答え:力学的エネルギーの減少量 $= B\ell v_2 I_2\Delta t$ となり、(6)の $W_2 = B\ell v_2 I_2\Delta t$ に一致する。(証明終)
別解:運動方程式 × 速度から仕事率で示す

運動方程式 $ma_2 = mg - B\ell I_2$ の両辺に $v_2$ を掛ける:

$$m a_2 v_2 = mg v_2 - B\ell I_2 v_2$$

左辺 $m a_2 v_2$ は運動エネルギーの変化率、$mg v_2$ は重力のする仕事率(位置エネルギー減少率)。移項すると:

$$B\ell I_2 v_2 = mg v_2 - m a_2 v_2 = (\text{位置Eの減少率}) - (\text{運動Eの増加率})$$

右辺は力学的エネルギーの減少率。両辺に $\Delta t$ を掛ければ $W_2 = -\Delta E_{\text{力学的}}$。

Point 「位置Eの減少 − 運動Eの増加 = 力学的Eの減少」。$(\Delta t)^2$ を無視し、(5)の $g-a_2 = B\ell I_2/m$ を代入すれば、質量が約分されて $W_2$ に一致する。

設問(9):終端速度 v₃ は v₁ の何倍か

直感的理解
落下が続くと電磁制動が強まり、やがて重力と電磁力がつり合って加速度 $0$ の一定速度(終端速度 $v_3$)になります。このとき「$mg = B\ell I_3$」で電流が決まり、回路方程式 $B\ell v_3 = V_0 + I_3(R+R_0)$ から速度が決まります。それを $v_1 = V_0/(B\ell)$ で割れば倍率が出ます。

終端速度 $v_3$ では加速度が $0$。運動方程式 $ma = mg - B\ell I_3 = 0$ より、そのときの電流 $I_3$ は:

$$mg = B\ell I_3 \quad\Rightarrow\quad I_3 = \frac{mg}{B\ell}$$

この状態でも回路方程式 $B\ell v_3 = V_0 + I_3(R + R_0)$ が成り立ちます。$I_3$ を代入:

$$B\ell v_3 = V_0 + \frac{mg}{B\ell}(R + R_0)$$

両辺を $B\ell$ で割って $v_3$ を求めると:

$$v_3 = \frac{V_0}{B\ell} + \frac{mg(R + R_0)}{B^2\ell^2}$$

$v_1 = \dfrac{V_0}{B\ell}$ で割って倍率を求めます。まず $B\ell v_3$ を $V_0$ で割ると:

$$\frac{v_3}{v_1} = \frac{B\ell v_3}{V_0} = \frac{V_0 + \dfrac{mg(R+R_0)}{B\ell}}{V_0} = 1 + \frac{mg(R + R_0)}{B\ell V_0}$$
答え:$v_3 = \left(1 + \dfrac{mg(R + R_0)}{B\ell V_0}\right) v_1$、すなわち $v_1$ の $\;\boxed{1 + \dfrac{mg(R + R_0)}{B\ell V_0}}\;$ 倍
別解:エネルギー(仕事率)のつり合いから

終端速度では運動エネルギーが増えないので、重力のする仕事率がそのまま電気の消費電力に等しい:

$$mg v_3 = V_0 I_3 + I_3^{\,2}(R+R_0)$$

$I_3 = mg/(B\ell)$ を代入して整理しても、同じ $v_3 = \dfrac{V_0}{B\ell} + \dfrac{mg(R+R_0)}{B^2\ell^2}$ が得られる。

Point 終端速度は「$mg = B\ell I$」のつり合いで電流を決め、回路方程式に代入して速度を求める。$v_1 = V_0/(B\ell)$ が基準になっているので倍率がきれいにまとまる。

設問(10):LEDが壊れないための質量条件 m₀

直感的理解
落下中、電流は速度とともに増え続け、終端速度に近づくにつれて最大値 $I_3 = mg/(B\ell)$ に漸近します(これを超えることはない)。したがって、この最大電流が $I_0$ を超えなければLEDは壊れません。$I_3 \le I_0$ を質量について解けば、上限 $m_0$ が求まります。質量が大きいほど終端電流が大きくなるので、質量に上限があるのです。

落下中、電流は速度とともに増加し続け、最終的に終端速度に近づくにつれて最大値 $I_3 = \dfrac{mg}{B\ell}$ に漸近します(この値を超えることはありません)。よってLEDに流れる電流の最大値は $I_3$ です。

LEDが壊れる条件は「電流が $I_0$ を超える」ことなので、壊れないための条件は最大電流が $I_0$ 以下であること:

$$I_3 = \frac{mg}{B\ell} \leq I_0$$

質量について解くと:

$$m \leq \frac{B\ell I_0}{g}$$

したがって、壊れないための質量の上限 $m_0$ は:

$$m_0 = \frac{B\ell I_0}{g}$$
答え:$m_0 = \dfrac{B\ell I_0}{g}$($m \le m_0$ ならLEDは壊れない)
補足:なぜ最大電流が終端電流なのか

電流 $I = \dfrac{B\ell v - V_0}{R+R_0}$ は速度 $v$ の増加関数。落下中 $v$ は単調に増えるが、加速度 $a = g - \dfrac{B\ell I}{m}$ は $I$ が増えると減るため、$v$ は終端速度 $v_3$ に下から漸近する($v_3$ を超えない)。よって電流も $I_3 = mg/(B\ell)$ を超えず、これが電流の上限。$R$・$R_0$・$V_0$ は最大電流の値には効かず、$m_0$ の式に現れないのがポイント。

Point 落下中の電流の最大値は終端電流 $I_3 = mg/(B\ell)$。これが定格 $I_0$ 以下なら壊れない:$m_0 = \dfrac{B\ell I_0}{g}$。質量が大きいほど終端電流が大きくなるので上限がある。

数値例:代表値でスケールをつかむ

直感的理解
この問題は文字式だけで答えるので、数値の感覚がつかみにくいものです。代表的なSI値を代入すると、「棒はどれくらいの速さで光り出すのか」「終端速度はいくつか」が実感できます。スライダーで質量 $m$ を変えると終端速度がどう変わるか確かめてみましょう。

次の代表値を使って主要な式を計算してみます(数値は物理的な桁感覚をつかむための例です):

(2) 発光し始める速さ $v_1$:

$$v_1 = \frac{V_0}{B\ell} = \frac{2.0}{0.10} = 20 \text{ m/s}$$

(9) 終端速度 $v_3$:

$$v_3 = \frac{V_0}{B\ell} + \frac{mg(R+R_0)}{B^2\ell^2} = 20 + \frac{1.0\times10^{-2}\times 9.8 \times 5.0}{(0.10)^2}$$ $$v_3 = 20 + \frac{0.49}{0.010} = 20 + 49 = 69 \text{ m/s}$$

倍率は $v_3/v_1 = 69/20 \fallingdotseq 3.5$ 倍。文字式 $1 + \dfrac{mg(R+R_0)}{B\ell V_0} = 1 + \dfrac{0.49}{0.10\times 2.0} = 1 + 2.45 = 3.45$ 倍と一致します。

(10) 壊れない質量上限 $m_0$(定格 $I_0 = 0.30$ A とする):

$$m_0 = \frac{B\ell I_0}{g} = \frac{0.10 \times 0.30}{9.8} = 3.1\times 10^{-3} \text{ kg} \fallingdotseq 3.1 \text{ g}$$
総括:$v_1 = 20$ m/s、$v_3 \fallingdotseq 69$ m/s($v_1$ の約 3.5 倍)、$m_0 \fallingdotseq 3.1$ g。文字式に代表値を入れると、桁感覚と式の妥当性を同時に確認できます。
補足:単位のチェック(次元解析)

$v_1 = V_0/(B\ell)$ の単位は $\text{V}/(\text{T·m})$。$\text{T} = \text{kg}/(\text{A·s}^2)$、$\text{V} = \text{kg·m}^2/(\text{A·s}^3)$ を代入すると、確かに $\text{m/s}$ になる。$m_0 = B\ell I_0/g$ も $\text{T·m·A}/(\text{m/s}^2) = \text{kg}$ となり、質量の単位が出る。答えの次元が正しいかは、必ず単位で検算する習慣をつけよう。

Point 文字式の答えは、代表的なSI値を代入して桁と単位を検算する。$v_1 = 20$ m/s、$v_3 \fallingdotseq 69$ m/s のように具体化すると、式の意味とスケール感が身につく。