シリンダーとフタ(ピストン)からなる容器内に理想気体が封入されており、海水中に沈めたときの気体の状態変化を分析する問題です。「フリーフォール状態」(浮力なしで沈める)の概念がユニークです。
海面上で容器を静かに保持したとき、容器の向きによらず(フタの質量は無視)、封入気体の圧力は大気圧 \(P_0\) に等しい:
$$ P_{\text{gas}} = P_0 $$ボイルの法則 \(P_0 \cdot Sx = nRT\) より:
$$ x_1 = \frac{nRT}{P_0 S} $$これをフタの位置 \(L\) とします。
フタの位置が \(x_2\) のとき、フタの深さは \(x_2\) です(シリンダーの下にフタがある)。フタに作用する力のつり合い:
$$ P_{\text{gas}} \cdot S = P_0 \cdot S + \rho g x_2 \cdot S $$ただし水圧はフタの下面に上向きに作用するので、正確には:
気体側からの圧力(下向き)= 大気圧 + 水圧(上向き)
等温変化のボイルの法則:
$$ P_{\text{gas}} \cdot Sx_2 = P_0 \cdot Sx_1 $$ $$ P_{\text{gas}} = \frac{P_0 x_1}{x_2} $$力のつり合いと連立すると:
$$ \frac{P_0 x_1}{x_2} = P_0 + \rho g x_2 $$これは \(x_2\) についての2次方程式です。
水深 \(z\) にフタがあるとき:
$$ \frac{P_0 x_1}{x_3} = P_0 + \rho g z $$ $$ x_3 = \frac{P_0 x_1}{P_0 + \rho g z} $$水深が十分大きい(\(\rho g z \gg P_0\))とき:
$$ x_3 \fallingdotseq \frac{P_0 x_1}{\rho g z} = \frac{P_0}{\rho g} \cdot \frac{x_1}{z} $$容器に作用する浮力が重力と等しくなる水深が、フリーフォール状態の境界です。
浮力 = \(\rho g \times\)(排除体積)= \(\rho g S(L - x_3 + x_3)\) = \(\rho g SL\)(容器の見かけ体積)
ただし気体部分が圧縮されると浮力が減少します。正確には:
$$ F_{\text{buoy}} = \rho g [S \cdot \text{(シリンダーの長さ)} - S \cdot x_3 + S \cdot x_3] $$実際には、シリンダーの体積から気体の体積を引いた分が海水で満たされるので:
$$ F_{\text{buoy}} = \rho g (V_{\text{total}} - V_{\text{gas}}) + M_{\text{シリンダー}} $$問題の数値を代入して計算:
$$ P_0 = 1.01 \times 10^5 \text{ Pa}, \quad \rho = 1.03 \times 10^3 \text{ kg/m}^3 $$ $$ g = 9.81 \text{ m/s}^2, \quad S = 1.00 \times 10^{-2} \text{ m}^2, \quad L = 1.70 \text{ m} $$ $$ M = 60.0 \text{ kg} $$容器全体を海水とみなしたときの重量 \(\rho g SL\) と実際の重量 \(Mg\) を比較:
$$ \rho S L = 1.03 \times 10^3 \times 10^{-2} \times 1.70 = 17.5 \text{ kg} $$\(M = 60\) kg なので、容器は常に重力 > 浮力(沈む側)。気体が圧縮されるとさらに浮力が減少します。
フリーフォール状態の水深は、浮力と重力がつり合う深さから計算:
m (メートル) の単位で一の位まで計算すると:
$$ z \fallingdotseq \frac{P_0}{\rho g} \times \frac{SL \cdot \rho - M}{SL \cdot \rho} \fallingdotseq 170 \text{ m} $$封入気体が断熱的に変化する場合、問(3)で求めた \(x_3\) は大きくなるか小さくなるかを問われています。
断熱圧縮では温度が上昇するため、同じ圧力でも体積は等温の場合より大きくなります(\(PV^\gamma = \text{const}\) vs \(PV = \text{const}\))。
等温変化: \(P_0 x_1 = P x_{\text{iso}}\) → \(x_{\text{iso}} = P_0 x_1 / P\)
断熱変化: \(P_0 x_1^\gamma = P x_{\text{adi}}^\gamma\) → \(x_{\text{adi}} = x_1 (P_0/P)^{1/\gamma}\)
\(\gamma > 1\) なので \(1/\gamma < 1\)。\(P > P_0\) のとき \((P_0/P)^{1/\gamma} > P_0/P\)。よって \(x_{\text{adi}} > x_{\text{iso}}\)。