前期 大問2:電磁気(磁場中を移動するコイルと電磁誘導)

解法の指針

一辺 \(l\) の正方形コイルABCDが磁束密度 \(B\) の一様な磁場中をレール上で \(x\) 方向に移動する問題です。コイルは抵抗 \(R\) の抵抗器に接続されています。

キーポイント

一定速度での進入((1)〜(4))

(1) コイルの電流

辺ABが磁場に入るとき、ファラデーの法則より誘導起電力は:

$$ e_0 = BlV $$

回路の電流は(コイルの抵抗は無視):

$$ I = \frac{e_0}{R} = \frac{BlV}{R} $$

電流の向きは、磁束の増加を妨げる方向(レンツの法則)で、AからBに向かって流れます。

答え
\(I = \frac{BlV}{R}\)。電流の向きは辺ABにおいてAからBの方向。

(2) 磁場領域通過中の総磁束

台車が \(x = 0\) から \(x = 3l\) まで移動する間に、抵抗器に発生する総磁束(磁束変化の総量)を求めます。

$$ J = \int_0^{3l} \frac{Bl}{R} \cdot B \, dx $$

ただし誘導が起きるのはコイルが磁場に出入りするときだけです。

答え
コイルが磁場に完全に入るまでの磁束変化 \(\Delta\Phi = Bl^2\)、出るときも \(Bl^2\)。

(3) x = 0 から x = 3l での力 F のグラフ

制動力は \(F = BIl = \frac{B^2l^2V}{R}\) で、コイルが磁場に出入りするときのみ作用します。

答え
Fは台車に対して逆向き。\(0 < x < l\)(進入中)と \(2l < x < 3l\)(退出中)で \(F = \frac{B^2l^2V}{R}\)、\(l < x < 2l\)(完全内部)で \(F = 0\)。

(4) 巻き取り機がした仕事

一定速度で移動するので、巻き取り機は制動力に逆らって仕事をします:

$$ W = F \times \text{距離} = \frac{B^2l^2V}{R} \times 2l = \frac{2B^2l^3V}{R} $$
答え
巻き取り機がした仕事は、抵抗器で発生した熱量に等しく \(\frac{2B^2l^3V}{R}\)。

ロープが外れた後の減速((5)〜(9))

(5) 速度が一定になる位置

\(x \geq 0\) の磁場領域に入ると、電磁制動力で台車は減速します。ある位置 \(x_1\) で速度が一定(等速)になります。これはコイル全体が磁場内に入ったとき(\(x = l\))で、磁束変化がなくなり制動力が消えます。

答え
\(x_1\) の値を \(e\)(自然対数の底)を用いて表します。速度は指数関数的に減少し \(v_1 = v_0 e^{-B^2l^2 \cdot l/(mR \cdot v_0)}\) のような形。

(6) 運動方程式

台車に作用する力は電磁制動力のみ:

$$ m\frac{dv}{dt} = -\frac{B^2l^2v}{R} $$ $$ m\frac{dv}{dx} \cdot v = -\frac{B^2l^2v}{R} $$ $$ m\frac{dv}{dx} = -\frac{B^2l^2}{R} $$

これは速度が位置に対して一定の割合で減少することを意味します:

$$ v = v_0 - \frac{B^2l^2}{mR}x $$
答え
\(v\) は \(x\) に対して線形に減少。\(v = v_0 - \frac{B^2l^2}{mR}x\)。

(7)〜(8) エネルギーと熱

微小時間 \(\Delta t\) の間の運動エネルギーの減少は、抵抗器で発生する熱に等しい:

$$ |\Delta K| = \frac{B^2l^2v^2}{R}\Delta t $$

\((\Delta v)^2\) の項は無視できるので、\(|\Delta K| \fallingdotseq mv|\Delta v|\)。

(9) t > 0 以降の抵抗器の総発熱量

磁場から出た後(\(x > 3l\))は磁場がなくなり、台車は等速運動を続けます。総発熱量は:

$$ Q = \frac{1}{2}mv_0^2 - \frac{1}{2}mv_{\text{final}}^2 $$
答え
\(t > 0\) 以降に抵抗器で発生する総熱量は、磁場領域進入時と退出時の運動エネルギー減少の合計。
💡 別解:微分方程式の厳密解

運動方程式 \(m\frac{dv}{dt} = -\frac{B^2l^2}{R}v\) は1次の線形微分方程式で、解は:

$$ v(t) = v_0 \exp\left(-\frac{B^2l^2}{mR}t\right) $$

時定数 \(\tau = \frac{mR}{B^2l^2}\) が電磁制動の特性時間です。

まとめ