鉛直に立てたシリンダー内の単原子理想気体が、ピストンの上に載る液柱の高さによって圧力を変えながら状態変化していく問題です。ポイントは次の3つに集約されます。
気体の高さ(=ピストンの底面からの高さ)と液柱の高さを、各状態で正確に押さえれば、体積・圧力・温度がすべて決まります。断面積を \(S\) とし、体積は「高さ×\(S\)」で表します。まず装置全体の寸法を整理しましょう。
注入口の下端は底面から \(3a\)。排出口の下端はその \(h\)(\(a \lt h \lt 2a\))だけ上、つまり底面から \(3a+h\)。液体はこの2つの口の間だけを通ってピストンの上に出入りします。「液柱がどこからどこまであるか」を追いかけるのが攻略のコツです。
上のシミュレーションで各状態のボタンを押し、気体の高さ・液柱の高さ・圧力・温度がどう変わるかを体感してください(図では \(h=1.5a\) の場合を描いています)。以下、各設問を順に解いていきます。
状態I→IIは「温度が自然に下がってピストンが降りてきた」だけ。液体はまだなく、ピストンは軽くて自由に動けるので、気体の圧力はずっと大気圧 \(P_0\) のまま。つまり定圧変化で、体積が \(3a\!\to\!2a\) に縮んだ分だけ温度が下がります。
立式:ピストンは質量・厚さが無視でき、なめらかに動きます。液体もまだ載っていないので、気体はピストンを通して大気圧 \(P_0\) を受けるだけ。したがって状態I・IIの圧力は等しく、これは定圧変化です。
$$ P_{\mathrm{I}} = P_{\mathrm{II}} = P_0 $$物質量は一定(コックは閉じたまま)なので、状態方程式の比をとります。断面積 \(S\)、気体の高さは \(3a\!\to\!2a\):
$$ \frac{P_{\mathrm{I}} V_{\mathrm{I}}}{T_{\mathrm{I}}} = \frac{P_{\mathrm{II}} V_{\mathrm{II}}}{T_{\mathrm{II}}} \quad\Rightarrow\quad \frac{P_0\cdot 3aS}{T_0} = \frac{P_0\cdot 2aS}{T_{\mathrm{II}}} $$代入・計算:両辺の \(P_0,\ S\) を消して \(T_{\mathrm{II}}\) について解きます。
$$ T_{\mathrm{II}} = T_0 \times \frac{2aS}{3aS} = \frac{2}{3}\,T_0 $$たとえば \(T_0 = 300\ \mathrm{K}\)(27 ℃)のとき:
$$ T_{\mathrm{II}} = \frac{2}{3}\times 300 = 200\ \mathrm{K}\ (-73\,{}^\circ\mathrm{C}) $$体積が \(2/3\) 倍に縮んだので、定圧では温度も \(2/3\) 倍になります。
ピストンが軽くて自由に動く+上に液体なし → 気体の圧力は常に大気圧 \(P_0\)。だからI→IIは定圧変化。「体積比=温度比」で一発です。
気体は冷えて縮んでいます。縮むということは外部(大気)に押し戻された、つまり気体が外部にした仕事は負。定圧なので「圧力×体積変化」でそのまま計算できます。
立式:I→IIは定圧変化(\(P=P_0\))なので、気体が外部にした仕事は
$$ W_{\mathrm{I}\to\mathrm{II}} = P_0\,\Delta V = P_0\bigl(V_{\mathrm{II}} - V_{\mathrm{I}}\bigr) $$代入:体積は \(V_{\mathrm{I}}=3aS\)、\(V_{\mathrm{II}}=2aS\) なので、
$$ \Delta V = V_{\mathrm{II}} - V_{\mathrm{I}} = 2aS - 3aS = -aS $$計算:
$$ W_{\mathrm{I}\to\mathrm{II}} = P_0\times(-aS) = -P_0\,aS $$符号が負なのは、気体が収縮して外部(大気)から仕事をされたことを表します。
「気体が外部にした仕事」\(W\) が負ということは、逆に「外部が気体にした仕事」は \(+P_0 aS\)。設問が問うているのは気体が外部にした仕事なので、答えは負の \(-P_0 aS\) です。膨張なら正、収縮なら負、と覚えておけば迷いません。
定圧の仕事 \(W=P\Delta V\) は体積が増えれば正、減れば負。図の \(P\)-\(V\) 図で「線の下の面積」が仕事の大きさ、進む向きで符号が決まります。
II→IIIでは「体積を変化させることなく」液体を注入します。ピストンは動かないので気体の体積は不変(定積)。体積が変わらなければ、気体は外部に仕事をまったくしません。
立式:問題文に「気体の体積を変化させることなく液体を静かに流入させ」とあります。ピストンの高さは \(2a\) のまま動かないので、気体の体積は変化しません。
$$ \Delta V = V_{\mathrm{III}} - V_{\mathrm{II}} = 2aS - 2aS = 0 $$計算:気体が外部にする仕事は \(W=\displaystyle\int P\,dV\)。体積変化がゼロなので、
$$ W_{\mathrm{II}\to\mathrm{III}} = \int P\,dV = 0 $$この過程で液体(高さ \(a\))がピストンに載るので、気体の圧力は \(P_0 \to P_0+\rho ga\) に増えます。さらに加熱もしているので温度も上がります。しかし体積が変わらない限り、気体がする仕事はゼロ。仕事は「体積変化」だけで決まり、圧力や温度の変化は仕事に直接は関係しません。
状態方程式から状態IIIの温度は、\(V\) 一定で \(P\) が \(P_0\to P_0+\rho ga\) に増えたので \(\dfrac{P_0+\rho ga}{P_0}\) 倍になります(設問(4)で詳しく求めます)。
「体積を変化させることなく」=定積変化。定積なら気体の仕事は必ず \(W=0\)。液体を注入する外力が液体にする仕事は、気体の仕事とは別物です。
ここが本問の心臓部。各状態でピストンの上に液柱が何 \(a\) 分あるかを数えれば圧力が決まり、気体の高さが何 \(a\) 分かを数えれば体積が決まります。あとは基準状態I \((3aS,\ P_0,\ T_0)\) と比べるだけです。
まず各状態の「気体の高さ」「液柱の高さ」を、図から丁寧に読み取ります。
| 状態 | 気体の高さ | 液柱の高さ | 読み取りの根拠 |
|---|---|---|---|
| III | \(2a\) | \(a\) | ピストン \(2a\)、液面が注入口 \(3a\) まで → \(3a-2a=a\) |
| IV | \(2a+h\) | \(a\) | 液体は流出前で量一定(体積 \(aS\))。液面=排出口 \(3a+h\) → ピストン \(=2a+h\) |
| V | \(3a+h\) | \(0\) | 液体は全て排出。ピストンが排出口 \(3a+h\) に到達 |
■ 状態III(欄①②):液柱の高さは \(a\) なので圧力は大気圧+液柱の圧力。
$$ P_{\mathrm{III}} = P_0 + \rho g\cdot a = P_0 + \rho ga \quad\cdots\;① $$温度は基準状態I \((P_0,\ 3aS,\ T_0)\) との比で求めます。体積 \(V_{\mathrm{III}}=2aS\):
$$ \frac{P_0\cdot 3aS}{T_0} = \frac{(P_0+\rho ga)\cdot 2aS}{T_{\mathrm{III}}} $$ $$ T_{\mathrm{III}} = \frac{(P_0+\rho ga)\cdot 2aS}{P_0\cdot 3aS}\,T_0 = \frac{2(P_0+\rho ga)}{3P_0}\,T_0 \quad\cdots\;② $$■ 状態IV(欄③④):液柱の高さはまだ \(a\) のまま(液体は流出前で量が変わらない)。よって圧力はIIIと同じ。
$$ P_{\mathrm{IV}} = P_0 + \rho ga \quad\cdots\;③ $$体積は \(V_{\mathrm{IV}}=(2a+h)S\)。基準Iとの比で温度を求めます。
$$ \frac{P_0\cdot 3aS}{T_0} = \frac{(P_0+\rho ga)\cdot (2a+h)S}{T_{\mathrm{IV}}} $$ $$ T_{\mathrm{IV}} = \frac{(P_0+\rho ga)(2a+h)}{3aP_0}\,T_0 \quad\cdots\;④ $$■ 状態V(欄⑤⑥):液体は全て排出されて液柱なし。圧力は大気圧のみ。
$$ P_{\mathrm{V}} = P_0 \quad\cdots\;⑤ $$体積は \(V_{\mathrm{V}}=(3a+h)S\)。基準Iとの比で:
$$ \frac{P_0\cdot 3aS}{T_0} = \frac{P_0\cdot (3a+h)S}{T_{\mathrm{V}}} \quad\Rightarrow\quad T_{\mathrm{V}} = \frac{3a+h}{3a}\,T_0 \quad\cdots\;⑥ $$| 圧力 | 絶対温度 | |
|---|---|---|
| 状態III | ① \(P_0+\rho ga\) | ② \(\dfrac{2(P_0+\rho ga)}{3P_0}T_0\) |
| 状態IV | ③ \(P_0+\rho ga\) | ④ \(\dfrac{(P_0+\rho ga)(2a+h)}{3aP_0}T_0\) |
| 状態V | ⑤ \(P_0\) | ⑥ \(\dfrac{3a+h}{3a}T_0\) |
III→IVでは液体はまだ排出口から流出していません(状態IVは「液面が排出口の下端に達した瞬間」)。したがって液体の総量は状態IIIと同じ、体積 \(a\cdot S\)。液柱の断面積は \(S\) で変わらないので、液柱の高さも \(a\) のまま。だから \(P_{\mathrm{IV}}=P_{\mathrm{III}}=P_0+\rho ga\) です。
液面(=液柱の上端)は、ピストンと一緒に \(a\) だけ上(\(3a\to 3a+h\)…ではなく、正確には液面が \(3a\to 3a+h\))へ動きます。ピストンは \(2a\to 2a+h\) へ、液柱の高さ \(a\) を保ったまま平行移動するイメージです。
圧力は液柱の高さだけで決まる(\(P=P_0+\rho g\times\)液柱高さ)。III・IVは液柱 \(a\) で同じ圧力、Vは液柱 \(0\) で \(P_0\)。温度は毎回「基準I \((3aS,P_0,T_0)\) との \(PV/T\) の比」で出せば計算がぶれません。
III→IVの間、液柱の高さはずっと \(a\) のまま(流出前)。だから気体の圧力は \(P_0+\rho ga\) で一定=定圧変化。定圧なら熱量は \(Q=\dfrac{5}{2}P\Delta V\) で一発です。
過程の把握:III→IVは液体流出前なので液柱高さ \(a\) が一定 → 圧力 \(P=P_0+\rho ga\) が一定の定圧変化。気体の高さは \(2a\to 2a+h\) に膨張します。
体積変化:
$$ \Delta V = V_{\mathrm{IV}} - V_{\mathrm{III}} = (2a+h)S - 2aS = hS $$立式:単原子理想気体の定圧変化では、定圧モル比熱 \(C_p=\dfrac{5}{2}R\) より \(Q=nC_p\Delta T=\dfrac{5}{2}nR\Delta T\)。定圧では \(nR\Delta T=P\Delta V\) なので、
$$ Q_{\mathrm{III}\to\mathrm{IV}} = \frac{5}{2}P\,\Delta V = \frac{5}{2}(P_0+\rho ga)\,\Delta V $$代入・計算:\(\Delta V=hS\) を入れて、
$$ Q_{\mathrm{III}\to\mathrm{IV}} = \frac{5}{2}(P_0+\rho ga)\cdot hS = \frac{5}{2}(P_0+\rho ga)\,hS $$定圧なので気体の仕事は \(W=P\Delta V=(P_0+\rho ga)hS\)。
内部エネルギー変化は \(\Delta U=\dfrac{3}{2}nR\Delta T=\dfrac{3}{2}(P_{\mathrm{IV}}V_{\mathrm{IV}}-P_{\mathrm{III}}V_{\mathrm{III}})\)。定圧なので \(P_{\mathrm{IV}}V_{\mathrm{IV}}-P_{\mathrm{III}}V_{\mathrm{III}}=P\Delta V=(P_0+\rho ga)hS\)。よって \(\Delta U=\dfrac{3}{2}(P_0+\rho ga)hS\)。
$$ Q = \Delta U + W = \frac{3}{2}(P_0+\rho ga)hS + (P_0+\rho ga)hS = \frac{5}{2}(P_0+\rho ga)hS $$本解と一致しました。
液体が「流出前」なら液柱の高さは変わらず、圧力一定=定圧変化。単原子気体の定圧吸熱は \(Q=\dfrac{5}{2}P\Delta V\)。「\(\dfrac{5}{2}\)」は \(\dfrac{3}{2}\)(内部エネルギー)+\(1\)(仕事)の内訳です。
IV→Vでは液体が排出口からあふれ出しながらピストンが上がります。液柱の高さは \(a\to0\) と減っていくので、気体の圧力も \(P_0+\rho ga\to P_0\) とだんだん下がります。圧力が変わるので \(W=P\Delta V\) は使えず、面積(積分)で仕事を求めます。
過程の把握:IV→Vではピストンが底面から \(2a+h\) → \(3a+h\)(\(a\) だけ上昇)まで動き、その間に液体があふれ出て液柱が \(a\to0\) に減ります。ピストンの高さを \(y\) とすると、液面は排出口 \(3a+h\) に固定されるので液柱の高さは \((3a+h)-y\)。したがって気体の圧力は
$$ P(y) = P_0 + \rho g\bigl[(3a+h)-y\bigr] $$と、\(y\) とともに変化します(\(y=2a+h\) で \(P_0+\rho ga\)、\(y=3a+h\) で \(P_0\))。
立式:仕事は \(W=\displaystyle\int P\,dV\)。液柱の高さを \(\ell=(3a+h)-y\)(\(a\to0\))と置くと、\(dV=S\,dy=-S\,d\ell\):
$$ W_{\mathrm{IV}\to\mathrm{V}} = \int_{\ell=a}^{0}(P_0+\rho g\ell)\,S\,(-d\ell) = \int_{0}^{a}(P_0+\rho g\ell)\,S\,d\ell $$計算:積分を実行します。
$$ W_{\mathrm{IV}\to\mathrm{V}} = S\left[\,P_0\,\ell + \frac{1}{2}\rho g\,\ell^2\,\right]_{0}^{a} = S\left(P_0\,a + \frac{1}{2}\rho g\,a^2\right) $$ $$ W_{\mathrm{IV}\to\mathrm{V}} = P_0\,aS + \frac{1}{2}\rho g\,a^2 S $$圧力は \(y\)(=体積 \(V\))の1次関数なので、\(P\)-\(V\) 図では直線。仕事は「台形の面積」で求められます。
積分と同じ結果になりました。1次関数なら台形公式が速いです。
液体が排出されて液柱が減る過程は圧力が変化するので、\(W=P\Delta V\) は使えません。圧力が体積の1次関数なら、\(P\)-\(V\) 図の台形の面積(=平均圧力×体積変化)で仕事が出ます。
仕事は(6)で求めました。あとは内部エネルギーの変化を足すだけ。単原子気体は \(U=\dfrac{3}{2}PV\) なので、状態IV・Vの \(PV\) を計算して差をとり、熱力学第一法則 \(Q=\Delta U+W\) にまとめます。
立式:熱力学第一法則 \(Q=\Delta U+W\)。単原子理想気体の内部エネルギーは \(U=\dfrac{3}{2}nRT=\dfrac{3}{2}PV\) なので、
$$ \Delta U = \frac{3}{2}\bigl(P_{\mathrm{V}}V_{\mathrm{V}} - P_{\mathrm{IV}}V_{\mathrm{IV}}\bigr) $$代入:設問(4)より \(P_{\mathrm{V}}=P_0,\ V_{\mathrm{V}}=(3a+h)S\)、\(P_{\mathrm{IV}}=P_0+\rho ga,\ V_{\mathrm{IV}}=(2a+h)S\)。
$$ P_{\mathrm{V}}V_{\mathrm{V}} = P_0(3a+h)S, \qquad P_{\mathrm{IV}}V_{\mathrm{IV}} = (P_0+\rho ga)(2a+h)S $$差を展開して整理します:
$$ P_{\mathrm{V}}V_{\mathrm{V}} - P_{\mathrm{IV}}V_{\mathrm{IV}} = S\Bigl[\,P_0(3a+h) - (P_0+\rho ga)(2a+h)\,\Bigr] $$ $$ = S\Bigl[\,aP_0 - \rho ga(2a+h)\,\Bigr] = aS\bigl[\,P_0 - \rho g(2a+h)\,\bigr] $$よって内部エネルギー変化は
$$ \Delta U = \frac{3}{2}\,aS\bigl[\,P_0 - \rho g(2a+h)\,\bigr] $$計算:(6)の仕事 \(W=P_0 aS+\dfrac{1}{2}\rho ga^2S\) を足します。
$$ Q_{\mathrm{IV}\to\mathrm{V}} = \Delta U + W = \frac{3}{2}aS\bigl[P_0-\rho g(2a+h)\bigr] + \left(P_0 aS + \frac{1}{2}\rho g a^2 S\right) $$\(aS\) でくくって係数を集めます。\(\rho ga\) の項:\(-3\rho ga+\tfrac12\rho ga=-\tfrac52\rho ga\)。\(P_0\) の項:\(\tfrac32P_0+P_0=\tfrac52P_0\)。\(\rho gh\) の項:\(-\tfrac32\rho gh\)。
$$ Q_{\mathrm{IV}\to\mathrm{V}} = aS\left(\frac{5}{2}P_0 - \frac{5}{2}\rho ga - \frac{3}{2}\rho gh\right) = \frac{aS}{2}\bigl(5P_0 - 5\rho ga - 3\rho gh\bigr) $$加熱している過程なので \(Q \gt 0\) が期待されます。実際、大気圧 \(P_0\) は液柱の圧力 \(\rho g\times(\text{数}a)\) よりずっと大きいのが普通なので、\(5P_0 \gt 5\rho ga+3\rho gh\) となり \(Q \gt 0\)(吸熱)です。
一方、内部エネルギー変化 \(\Delta U\) は温度差 \(T_{\mathrm V}-T_{\mathrm{IV}}\) の符号で決まり、\(P_0\) と \(\rho ga\) の大小によっては正にも負にもなり得ます。仕事 \(W\) は膨張なので必ず正です。
\(nRT=PV\) を使えば温度を経由せず \(\Delta U=\dfrac{3}{2}(PV\ \text{の差})\) で内部エネルギー変化が出せる。文字が多い問題ほど、この「\(PV\) の差」テクが計算ミスを減らします。
状態が元に戻る一巡(サイクル)では、気体がした正味の仕事は \(P\)-\(V\) 図で閉曲線が囲む面積に等しくなります。4つの過程の仕事を足し合わせれば OK。うまく打ち消し合って、意外とスッキリした答えになります。
サイクルは III→IV→V→I→III の4過程。各過程で気体がした仕事を、これまでの結果を使って書き出します。状態の \((V,\ P)\) は次の通り(設問(4)):
| 状態 | 体積 \(V\) | 圧力 \(P\) |
|---|---|---|
| III | \(2aS\) | \(P_0+\rho ga\) |
| IV | \((2a+h)S\) | \(P_0+\rho ga\) |
| V | \((3a+h)S\) | \(P_0\) |
| I | \(3aS\) | \(P_0\) |
各過程の仕事:
① III→IV(定圧 \(P_0+\rho ga\)、\(\Delta V=hS\)):
$$ W_1 = (P_0+\rho ga)\cdot hS $$② IV→V(設問(6)の結果):
$$ W_2 = P_0 aS + \frac{1}{2}\rho g a^2 S $$③ V→I(定圧 \(P_0\)、体積 \((3a+h)S\to 3aS\)、\(\Delta V=-hS\)):
$$ W_3 = P_0\bigl(3aS-(3a+h)S\bigr) = -P_0 hS $$④ I→III(コックを開き、ピストンが \(3a\to2a\) に下がりながら液柱が \(0\to a\) に増える)。これは(6)の逆向きの過程で、液柱の高さ \(\ell\) が \(0\to a\) に増え圧力が上がりながら収縮します。ピストン高さ \(y\)(\(3a\to2a\))、液柱 \(\ell=3a-y\)、\(P=P_0+\rho g\ell\):
$$ W_4 = \int_{\ell=0}^{a}(P_0+\rho g\ell)\,S\,(-d\ell) = -\left(P_0 aS + \frac{1}{2}\rho g a^2 S\right) $$合計:\(W_2\) と \(W_4\) は大きさが同じで符号が逆なので打ち消し合います。
$$ W_{\text{net}} = W_1 + W_2 + W_3 + W_4 = (P_0+\rho ga)hS - P_0 hS + \underbrace{\left(P_0 aS+\tfrac12\rho ga^2S\right) - \left(P_0 aS+\tfrac12\rho ga^2S\right)}_{=\,0} $$ $$ W_{\text{net}} = (P_0+\rho ga)hS - P_0 hS = \rho ga\cdot hS $$4つの頂点を \(P\)-\(V\) 図にとると平行四辺形になります(III・IVは高圧 \(P_0+\rho ga\) の水平辺、V・Iは低圧 \(P_0\) の水平辺、IV→VとI→IIIは同じ傾きの斜辺)。
平行四辺形の面積 = 底辺 × 高さ:
$$ W_{\text{net}} = hS \times \rho ga = \rho g a h S $$サイクルは時計回り(気体が正の仕事をする向き)なので \(W_{\text{net}} \gt 0\)。面積計算と積分計算が一致しました。
サイクルの正味仕事は \(P\)-\(V\) 図の囲む面積。斜辺どうし(IV→VとI→III)の仕事が打ち消し合うので、残るのは高圧の水平膨張と低圧の水平圧縮の差=平行四辺形の面積 \(\rho gahS\)。個別に積分しなくても面積で一発です。