一辺 \(L\)〔m〕の正方形極板 A, B(面積 \(L^2\))が間隔 \(a\)〔m〕で向かい合う平行板コンデンサー。密度 \(\rho\)〔kg/m³〕・誘電率 \(\varepsilon\)〔F/m〕の絶縁性液体が、小孔を通して水槽と容器の間を自由に出入りする。空気(真空とみなす)の誘電率は \(\varepsilon_0\)。誘電体は電場の強い領域に引き込まれる——これが本問の主題である。
極板 A の電荷 \(Q\) は動かない(自由電荷)。液体は誘電体なので分極し、液面に負、底面に正の分極電荷が現れる。この分極電荷は液体内部の電場を打ち消す向きにはたらくので、液体内部の電場は空気層より弱くなる。強さの比はちょうど \(E_1:E_2=\varepsilon:\varepsilon_0\)。
極板 A の自由電荷は \(Q\)、面積は \(L^2\)。極板を包むガウス面をとると、電束密度 \(D\) は自由電荷だけで決まり、液体があってもなくても
$$D=\frac{Q}{L^2}\ \text{〔C/m²〕}$$であり、しかも液面(境界)を貫いても連続である。誘電率 \(\varepsilon'\) の媒質中では \(D=\varepsilon' E\) だから \(E=D/\varepsilon'\)。よって空気層(極板 A と液面の間、誘電率 \(\varepsilon_0\))と液体内部(誘電率 \(\varepsilon\))で
$$E_1=\frac{D}{\varepsilon_0}=\frac{Q}{\varepsilon_0 L^2},\qquad E_2=\frac{D}{\varepsilon}=\frac{Q}{\varepsilon L^2}$$\(\varepsilon>\varepsilon_0\) なので \(E_2\) のほうが小さい。液体内部の電場のほうが弱い。
液面に現れる分極電荷の面密度を \(\sigma_P\) とする。液体内部の電場は、極板の電荷 \(\sigma=Q/L^2\) がつくる電場から分極電荷がつくる電場を差し引いたものだから
$$E_2=\frac{\sigma-\sigma_P}{\varepsilon_0}$$一方、誘電率の定義から \(E_2=\dfrac{\sigma}{\varepsilon}\)。2 式を等置して
$$\sigma_P=\sigma\left(1-\frac{\varepsilon_0}{\varepsilon}\right)=\frac{Q}{L^2}\cdot\frac{\varepsilon-\varepsilon_0}{\varepsilon}$$これが問題文にある「容器内の液体上部に生じる誘電分極による電荷」であり、(4) で液体を持ち上げる力の源になる。
誘電体が層状に入るコンデンサーでは、\(D=Q/L^2\) が全域共通と考えるのが最短。各層の電場は \(E=D/\varepsilon'\)、つまり「誘電率で割る」だけ。極板の電荷が与えられている問題ではこの発想が強力。
極板が水平なので、下に液体(厚さ \(x\))・上に空気(厚さ \(a-x\))が積み重なる。電気力線は両方を順に貫くので、これは2 つのコンデンサーの直列接続。直列は「電圧が足し算」=「\(1/C\) が足し算」。
液体層(厚さ \(x\)、誘電率 \(\varepsilon\))と空気層(厚さ \(a-x\)、誘電率 \(\varepsilon_0\))はそれぞれ
$$C_2=\frac{\varepsilon L^2}{x}\ \text{(液体層)},\qquad C_1=\frac{\varepsilon_0 L^2}{a-x}\ \text{(空気層)}$$直列合成は逆数の和なので
$$\frac{1}{C}=\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}=\frac{a-x}{\varepsilon_0 L^2}+\frac{x}{\varepsilon L^2} =\frac{\varepsilon(a-x)+\varepsilon_0 x}{\varepsilon\varepsilon_0 L^2}$$逆数をとって
$$C=\frac{\varepsilon\varepsilon_0 L^2}{\varepsilon_0 x+\varepsilon(a-x)}$$極端な場合:\(x=0\)(液体なし)なら \(C=\dfrac{\varepsilon\varepsilon_0L^2}{\varepsilon a}=\dfrac{\varepsilon_0L^2}{a}\) で真空コンデンサーに一致。\(x=a\)(全部液体)なら \(C=\dfrac{\varepsilon\varepsilon_0L^2}{\varepsilon_0 a}=\dfrac{\varepsilon L^2}{a}\)。どちらも正しい。
数値例:\(L=0.10\ \mathrm{m}\)、\(a=1.0\times10^{-2}\ \mathrm{m}\)、\(\varepsilon=2\varepsilon_0\)、\(\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}\ \mathrm{F/m}\)、\(x=5.0\times10^{-3}\ \mathrm{m}\)(ちょうど半分)のとき
$$C=\frac{2\varepsilon_0^{\,2}L^2}{\varepsilon_0 x+2\varepsilon_0(a-x)}=\frac{2\varepsilon_0 L^2}{x+2(a-x)} =\frac{2\times 8.85\times10^{-12}\times(0.10)^2}{5.0\times10^{-3}+2\times 5.0\times10^{-3}}$$ $$C=\frac{1.77\times10^{-13}}{1.5\times10^{-2}}\fallingdotseq 1.2\times10^{-11}\ \mathrm{F}=12\ \mathrm{pF}$$液体がないとき \(C=\varepsilon_0L^2/a=8.9\ \mathrm{pF}\) なので、確かに増えている。
誘電体の境界が極板と平行なら直列、境界が極板と垂直なら並列。これが誘電体コンデンサー問題の第一関門。問2 では同じ容器が並列になる。
電荷 \(Q\) が指定されているので使う公式は \(U=\dfrac{Q^2}{2C}\)。(2) の \(C\) を代入するだけ。液面が上がると \(C\) は増え、\(U\) は減る——この「\(U\) が減る方向に液体が動きたがる」ことが、次の (4) で力を生む。
極板の電荷が \(Q\) と指定されているので \(U=\dfrac{Q^2}{2C}\) を使う。(2) より \(\dfrac{1}{C}=\dfrac{\varepsilon_0x+\varepsilon(a-x)}{\varepsilon\varepsilon_0L^2}\) だから
$$U=\frac{Q^2}{2}\cdot\frac{1}{C}=\frac{Q^2}{2}\cdot\frac{\varepsilon_0 x+\varepsilon(a-x)}{\varepsilon\varepsilon_0 L^2}$$整理して
$$U=\frac{Q^2\bigl[\varepsilon_0 x+\varepsilon(a-x)\bigr]}{2\varepsilon\varepsilon_0 L^2}$$\(\varepsilon_0x+\varepsilon(a-x)=\varepsilon a-(\varepsilon-\varepsilon_0)x\) と書き直すと、\(U\) が \(x\) の 1 次の減少関数であることがはっきりする(\(\varepsilon>\varepsilon_0\) より係数は負)。
$$U=\frac{Q^2\bigl[\varepsilon a-(\varepsilon-\varepsilon_0)x\bigr]}{2\varepsilon\varepsilon_0 L^2}$$使ってもよいが二度手間になる。\(V=\dfrac{Q}{C}=\dfrac{Q[\varepsilon_0x+\varepsilon(a-x)]}{\varepsilon\varepsilon_0L^2}\) を \(U=\tfrac12CV^2\) に代入すれば同じ式が出る。固定されている量に合わせて公式を選ぶのがコツ:\(Q\) 一定なら \(U=\dfrac{Q^2}{2C}\)、\(V\) 一定なら \(U=\dfrac12 CV^2\)。問2 は電源電圧 \(V\) が固定なので後者を使う。
\(Q\) 一定のとき \(U=\dfrac{Q^2}{2C}\) は \(C\) が大きいほど小さい。誘電体が入ると \(C\) は増えるから \(U\) は減る。系は静電エネルギーが減る向きに動こうとする——これが誘電体が電場に引き込まれる理由である。
電荷 \(Q\) を一定に保つ(電源は仕事をしない)と、外力の仕事がそのまま静電エネルギーの変化になる。液面を \(\Delta x\) 上げると \(U\) は減るので、外力の仕事は負——すなわち電場は液面を上向きに引き上げている。力の大きさは \(F=-\dfrac{\Delta U}{\Delta x}\) で取り出せる(仮想仕事の原理)。
電荷 \(Q\) を一定に保つので電源は仕事をしない。液面を \(x\to x+\Delta x\) に動かすのに必要な外力の仕事を \(\Delta W\)(重力にさからう仕事は除く)とすると、エネルギー保存は
$$\Delta W=\Delta U$$液面が電場から受ける力(上向きを正)を \(F\) とすると、静かに動かすには外力 \(-F\) を加えるので \(\Delta W=-F\,\Delta x\)。したがって
$$F=-\frac{\Delta U}{\Delta x}$$(3) の \(U=\dfrac{Q^2[\varepsilon a-(\varepsilon-\varepsilon_0)x]}{2\varepsilon\varepsilon_0L^2}\) は \(x\) の 1 次式だから、傾きはそのまま読めて
$$\frac{\Delta U}{\Delta x}=-\frac{Q^2(\varepsilon-\varepsilon_0)}{2\varepsilon\varepsilon_0 L^2} \quad\Longrightarrow\quad F=\frac{Q^2(\varepsilon-\varepsilon_0)}{2\varepsilon\varepsilon_0 L^2}\ \ (>0:\text{上向き})$$単位面積あたりに直す。液面の面積は \(L^2\)、\(\sigma=\dfrac{Q}{L^2}\) より \(Q^2=\sigma^2L^4\) なので
$$p_1=\frac{F}{L^2}=\frac{Q^2(\varepsilon-\varepsilon_0)}{2\varepsilon\varepsilon_0 L^4} =\frac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2\varepsilon\varepsilon_0}\,\sigma^2$$\(\varepsilon>\varepsilon_0\) より \(k_1>0\)。力は鉛直上向きで、液体は容器内に引き込まれる。
液面が \(\Delta x\) 上がると、厚さ \(\Delta x\) の層が「空気」から「液体」に置き換わる。\(D=\sigma\) は共通なので、その層のエネルギー密度は
$$u_{\text{空気}}=\frac{D^2}{2\varepsilon_0}=\frac{\sigma^2}{2\varepsilon_0},\qquad u_{\text{液体}}=\frac{D^2}{2\varepsilon}=\frac{\sigma^2}{2\varepsilon}$$体積 \(L^2\Delta x\) だけ入れ替わるので
$$\Delta U=(u_{\text{液体}}-u_{\text{空気}})L^2\Delta x =-\frac{\sigma^2}{2}\left(\frac{1}{\varepsilon_0}-\frac{1}{\varepsilon}\right)L^2\Delta x$$ $$F=-\frac{\Delta U}{\Delta x}=\frac{\sigma^2L^2}{2}\cdot\frac{\varepsilon-\varepsilon_0}{\varepsilon\varepsilon_0} \quad\Longrightarrow\quad p_1=\frac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2\varepsilon\varepsilon_0}\sigma^2$$本文と完全に一致する。\(D\) 一定なら誘電率が大きいほどエネルギー密度は小さいので、液体が入り込むほど系は得をする、という見方である。
仮想仕事の定石:\(Q\) 一定なら \(\Delta W=\Delta U\)、力は \(F=-\Delta U/\Delta x\)。\(U\) を \(x\) の関数で書き、傾きにマイナスを付けるだけ。符号が正なら「\(x\) が増える向き=上向き」の力。
液体は水槽とつながっており、水槽の液面は極板 B の高さ(\(x=0\))のまま変わらない。容器内で高さ \(x\) まで持ち上げられた液柱は、電場が液面を引き上げる力によって支えられている。単位面積で見れば「電場の力 \(p_1\)」と「高さ \(x\) の液柱の重さ \(\rho g x\)」のつり合い。ストローで水を吸い上げて指で止めている状態と同じ構図である。
水槽は十分広く、その液面は極板 B の高さ(\(x=0\) の基準面)から動かない。容器内の液面が高さ \(x\) にあるということは、断面積 \(L^2\)・高さ \(x\) の液柱が基準面より上に持ち上げられているということ。この液柱の重さは
$$Mg=\rho\,(L^2 x)\,g\ \text{〔N〕}$$これを支えているのが (4) で求めた電場の力である。液面の面積も \(L^2\) なので、単位面積あたりでつり合いを書くと式が簡単になる:
$$p_1=\rho g x \qquad\text{すなわち}\qquad k_1\sigma^2=\rho g x$$\(k_1=\dfrac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2\varepsilon\varepsilon_0}\)、\(\sigma=\dfrac{Q}{L^2}\) を代入して
$$\frac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2\varepsilon\varepsilon_0}\cdot\frac{Q^2}{L^4}=\rho g x$$\(Q^2\) について解くと
$$Q^2=\frac{2\varepsilon\varepsilon_0\,\rho g x\,L^4}{\varepsilon-\varepsilon_0} \quad\Longrightarrow\quad Q=L^2\sqrt{\frac{2\varepsilon\varepsilon_0\,\rho g x}{\varepsilon-\varepsilon_0}}$$\(x\propto Q^2\)。液面を 2 倍の高さに上げるには電荷は \(\sqrt{2}\) 倍でよい。
\(L=0.10\ \mathrm{m}\)、\(\varepsilon=2\varepsilon_0\)(\(\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}\ \mathrm{F/m}\))、\(\rho=1.0\times10^{3}\ \mathrm{kg/m^3}\)、\(g=9.8\ \mathrm{m/s^2}\)、液面 \(x=5.0\times10^{-3}\ \mathrm{m}\) とする。\(\varepsilon=2\varepsilon_0\) のとき
$$\frac{2\varepsilon\varepsilon_0}{\varepsilon-\varepsilon_0}=\frac{2\cdot 2\varepsilon_0\cdot\varepsilon_0}{\varepsilon_0}=4\varepsilon_0$$なので
$$Q=L^2\sqrt{4\varepsilon_0\rho g x} =(0.10)^2\times\sqrt{4\times 8.85\times10^{-12}\times1.0\times10^{3}\times9.8\times5.0\times10^{-3}}$$ $$Q=1.0\times10^{-2}\times\sqrt{1.73\times10^{-9}} \fallingdotseq 1.0\times10^{-2}\times 4.2\times10^{-5}\fallingdotseq 4.2\times10^{-7}\ \mathrm{C}$$すなわち約 \(0.42\ \mu\mathrm{C}\)。このときの電場は \(E_1=Q/(\varepsilon_0L^2)\fallingdotseq 4.7\times10^{6}\ \mathrm{V/m}\) 程度で、実際に液体を数 mm 持ち上げるにはかなり強い電場が必要だと分かる。
つり合いは単位面積あたりで書くと一瞬で終わる:\(k_1\sigma^2=\rho g x\)。持ち上げられた液柱の高さは水槽の液面から測る——問1 では水槽の液面が \(x=0\) なので高さはそのまま \(x\)。問2 ではここが変わる(初期液面が \(L/2\))ので要注意。
電圧をゆっくり上げるので電流は 0 とみなせ、ジュール熱は出ない。また静かに動くので運動エネルギーも 0。つまり電源が出したエネルギーは、静電エネルギー \(U\) と、持ち上がった液体の重力の位置エネルギーの 2 つだけに配分される。
電源のした仕事を \(W\) とする。ジュール熱 0、運動エネルギー 0 なので、エネルギー保存は
$$W=\Delta U_{\text{静電}}+\Delta U_{\text{重力}}$$① 静電エネルギー:最終状態は液面 \(x\)、電荷は (5) の \(Q\)。(3) の式に \(Q^2=\dfrac{2\varepsilon\varepsilon_0\rho g x L^4}{\varepsilon-\varepsilon_0}\) を代入する。初期状態は \(Q=0,\ x=0\) なので \(U=0\)。
$$\Delta U_{\text{静電}} =\frac{Q^2\bigl[\varepsilon_0x+\varepsilon(a-x)\bigr]}{2\varepsilon\varepsilon_0L^2} =\frac{1}{2\varepsilon\varepsilon_0L^2}\cdot\frac{2\varepsilon\varepsilon_0\rho g x L^4}{\varepsilon-\varepsilon_0}\cdot\bigl[\varepsilon_0x+\varepsilon(a-x)\bigr]$$ $$\Delta U_{\text{静電}}=\frac{\rho g L^2 x\bigl[\varepsilon_0x+\varepsilon(a-x)\bigr]}{\varepsilon-\varepsilon_0} =\frac{\rho g L^2 x\bigl[\varepsilon a-(\varepsilon-\varepsilon_0)x\bigr]}{\varepsilon-\varepsilon_0} =\frac{\varepsilon a\rho g L^2 x}{\varepsilon-\varepsilon_0}-\rho g L^2x^2$$② 重力の位置エネルギー:問題文の指示どおり「容器内の液体にはたらく重力の大きさ × 重心の高さの変化」で計算する。容器内に持ち上げられた液体の質量は \(\rho L^2 x\)、その重心は高さ \(\dfrac{x}{2}\)(水槽の液面 \(=0\) が基準)にあるので
$$\Delta U_{\text{重力}}=(\rho L^2 x)g\cdot\frac{x}{2}=\frac{1}{2}\rho g L^2 x^2$$③ 合計:
$$W=\left(\frac{\varepsilon a\rho gL^2x}{\varepsilon-\varepsilon_0}-\rho gL^2x^2\right)+\frac{1}{2}\rho gL^2x^2 =\frac{\varepsilon a\rho g L^2 x}{\varepsilon-\varepsilon_0}-\frac{1}{2}\rho g L^2 x^2$$この過程では \(V\) と \(Q\) と \(x\) が同時に変わるので、\(\int V\,dQ\) を直接積分するのは(高校範囲では)困難。しかしエネルギー保存は「最初」と「最後」だけを見ればよいので、途中経過を追わずに済む。
「重力にさからってする仕事」を忘れがちだが、液体が実際に持ち上がっている以上、そのエネルギーは電源が出したものである。重心が \(x/2\) の高さにある(一様な液柱の重心は中央)ことに注意。うっかり \(\rho L^2x\cdot g\cdot x\) としないこと。
電源の仕事の配分先は 3 つ:静電エネルギー・力学的エネルギー(ここでは重力の位置エネルギー)・ジュール熱。設問ごとに「どれが 0 か」を先に確認する。(6) はジュール熱 0、(8) はジュール熱あり、(7) は電源なし——と場面で変わる。
SW を b に倒すと電源が切り離され、コンデンサーは \(R\) を通して放電する。放電は液体の流出よりずっと速いので、放電中は液面は \(x_1\) のまま固定・電気容量も \(C_1\) のままと考えてよい。すると話は単なる RC 放電:切替えた瞬間の電流は \(I=\dfrac{V_1}{R}\)、そして蓄えられていた静電エネルギーが全部ジュール熱になる。
液面 \(x_1\) での電気容量と電荷を (2)(5) から書き下す。以後、記号を短くするため \(D_1\equiv\varepsilon_0x_1+\varepsilon(a-x_1)\) とおく。
$$C_1=\frac{\varepsilon\varepsilon_0L^2}{D_1},\qquad Q_1=L^2\sqrt{\frac{2\varepsilon\varepsilon_0\rho g x_1}{\varepsilon-\varepsilon_0}}$$① 切替えた瞬間の電流:このときコンデンサーの電圧はまだ \(V_1=\dfrac{Q_1}{C_1}\) であり、これがそのまま \(R\) にかかる。
$$V_1=\frac{Q_1}{C_1}=\frac{Q_1 D_1}{\varepsilon\varepsilon_0 L^2} =\frac{D_1}{\varepsilon\varepsilon_0}\sqrt{\frac{2\varepsilon\varepsilon_0\rho g x_1}{\varepsilon-\varepsilon_0}} =D_1\sqrt{\frac{2\rho g x_1}{\varepsilon\varepsilon_0(\varepsilon-\varepsilon_0)}}$$(最後は \(\dfrac{1}{\varepsilon\varepsilon_0}\sqrt{\varepsilon\varepsilon_0\,\square}=\sqrt{\dfrac{\square}{\varepsilon\varepsilon_0}}\) を使って根号の中にまとめた。)オームの法則より
$$I=\frac{V_1}{R}=\frac{\varepsilon_0x_1+\varepsilon(a-x_1)}{R}\sqrt{\frac{2\rho g x_1}{\varepsilon\varepsilon_0(\varepsilon-\varepsilon_0)}}$$② 総ジュール熱:放電中は液面が動かない(\(C=C_1\) 一定)ので、液体は仕事をされない。電源も切り離されている。したがってコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーがすべて \(R\) で熱になる。
$$W_R=\frac{Q_1^{\,2}}{2C_1}=\frac{Q_1^{\,2}D_1}{2\varepsilon\varepsilon_0L^2} =\frac{1}{2\varepsilon\varepsilon_0L^2}\cdot\frac{2\varepsilon\varepsilon_0\rho g x_1L^4}{\varepsilon-\varepsilon_0}\cdot D_1$$ $$W_R=\frac{\rho g L^2 x_1\bigl[\varepsilon_0x_1+\varepsilon(a-x_1)\bigr]}{\varepsilon-\varepsilon_0}$$もし放電がゆっくりで、液面が下がりながら放電したらどうなるか。(4)(5) で見たとおり電場が液面に及ぼす力は上向きである。したがって液面が下がるとき、液体はこの上向きの力にさからって降下する——つまり重力の位置エネルギーが電気系に流れ込むぶんだけ、\(R\) で発生するジュール熱は \(Q_1^2/(2C_1)\) より大きくなる(準静的な極限では \(U_1 + \tfrac12\rho gL^2x_1^2\) まで増えうる)。
問題文が「放電時間は液体の流出時間にくらべて十分短い」と断っているのは、この重力からの寄与が \(R\) に流れ込まないことを保証し、\(C\) 一定の RC 放電として扱ってよいとするためである。放電後にゆっくり液体が流出していく過程で解放される \(\tfrac12\rho gL^2x_1^2\) は、\(R\) のジュール熱ではなく粘性散逸として失われる。
電源を切り離した放電では、総ジュール熱 = 放電前に蓄えられていた静電エネルギー(時間積分は不要)。切替え直後の電流は「そのときのコンデンサー電圧 ÷ 抵抗」。この 2 つはセットで覚える。
(6) と似ているが決定的に違う点がある。(6) は電圧を 0 からゆっくり上げたのに対し、(8) は最初から電圧 \(V_1\) の電源につなぐ(端子 a の電源電圧は \(x_1\) でつり合う値のまま)。定電圧なので電源の仕事は \(W=V_1\times(\text{流れた電荷})\) と一発で書ける。液面 0・電荷 0 の状態から始まり、最終的に電荷 \(Q_1\) になるので、流れた電荷は \(Q_1\)。
液体が全部流出した直後、コンデンサーの電荷は 0、液面も 0。ここで SW を a に戻すと、電圧 \(V_1\) の電源(液面 \(x_1\) でつり合う電圧のまま)につながる。十分時間が経った最終状態は、(5)(7) と同じ「液面 \(x_1\)・電荷 \(Q_1\)・電圧 \(V_1\)」である。
電源が一定電圧 \(V_1\) で送り出した電荷の総量は
$$\Delta Q=Q_1-0=Q_1$$したがって電源のした仕事は(電圧が一定なので単純な積になる)
$$W=V_1\,\Delta Q=V_1 Q_1=\frac{Q_1^{\,2}}{C_1}$$(7) で使った \(C_1=\dfrac{\varepsilon\varepsilon_0L^2}{D_1}\)、\(Q_1^{\,2}=\dfrac{2\varepsilon\varepsilon_0\rho g x_1 L^4}{\varepsilon-\varepsilon_0}\)(\(D_1=\varepsilon_0x_1+\varepsilon(a-x_1)\))を代入して
$$W=\frac{2\varepsilon\varepsilon_0\rho g x_1 L^4}{\varepsilon-\varepsilon_0}\cdot\frac{D_1}{\varepsilon\varepsilon_0L^2} =\frac{2\rho g L^2 x_1\bigl[\varepsilon_0x_1+\varepsilon(a-x_1)\bigr]}{\varepsilon-\varepsilon_0}$$これは (7) の総ジュール熱 \(W_R\) のちょうど 2 倍である。
\(W=\dfrac{2\rho gL^2x_1D_1}{\varepsilon-\varepsilon_0}\) の行き先を分解してみる。最終状態の静電エネルギーは (7) と同じく
$$\Delta U_{\text{静電}}=\frac{Q_1^{\,2}}{2C_1}=\frac{\rho gL^2x_1D_1}{\varepsilon-\varepsilon_0}\quad(=W/2)$$重力の位置エネルギーは (6) と同じく \(\Delta U_{\text{重力}}=\dfrac12\rho gL^2x_1^{\,2}\)。残りは散逸(抵抗 \(R\) でのジュール熱と、液体が流れ込むときの粘性による損失)に回る:
$$W_{\text{散逸}}=W-\Delta U_{\text{静電}}-\Delta U_{\text{重力}} =\frac{\rho gL^2x_1\bigl[\varepsilon_0x_1+\varepsilon(a-x_1)\bigr]}{\varepsilon-\varepsilon_0}-\frac{1}{2}\rho gL^2x_1^{\,2}$$今回は「電圧をゆっくり上げる」のではなくいきなり \(V_1\) をかけるので、(6) と違って散逸が生じる。これが (6) の \(W\) より (8) の \(W\) が大きい理由である。定電圧充電では、電源が出したエネルギーのうち半分だけがコンデンサーに蓄えられる——という有名な事実がここでも顔を出している。
注意:上の分解は「最終的に液面が \(x_1\) で静止する」ことを前提にした概算である。\(\varepsilon/\varepsilon_0\) が大きく \(x_1\) が \(a\) に近い領域では上式が負になりうるが、それはその領域では定電圧 \(V_1\) での平衡が不安定で、液面が \(x_1\) に静止しないことを意味している。設問 (8) の答え \(W=2U_1\) 自体は電荷の収支だけから決まるので、この注意点の影響を受けない。
定電圧 \(V\) の電源の仕事は \(W=V\Delta Q\)(\(\Delta Q\) は電源を通って流れた電荷)。途中で容量が変わろうが、液体が動こうが、この式は変わらない。「ゆっくり電圧を上げる」(6) と「一定電圧をかける」(8) を混同しないこと。
極板を立てると、極板間の隙間(幅 \(a\))の下半分が液体・上半分が空気という形になる。電気力線はどちらの領域でも「左の極板から右の極板へ」と同じ距離 \(a\) だけまっすぐ横に走る。つまり、液体の部分と空気の部分は電圧が共通の 2 つのコンデンサー=並列。問1 の直列とは対照的である。
また、最初(\(V=0\))の液面は水槽の液面に一致していて、それは極板の中心=高さ \(L/2\) である。これは (13) で効いてくる。
極板は一辺 \(L\) の正方形。液体が高さ \(y\) まで入っているとき、極板の向かい合う面のうち
となる。どちらも極板間距離は同じ \(a\) で、両端の電位は同じ極板 A・Bだから並列である。
$$C_{\text{液}}=\frac{\varepsilon\,L y}{a},\qquad C_{\text{空気}}=\frac{\varepsilon_0\,L(L-y)}{a}$$並列合成は単純な和:
$$C=C_{\text{液}}+C_{\text{空気}}=\frac{\varepsilon L y+\varepsilon_0 L(L-y)}{a} =\frac{L\bigl[\varepsilon y+\varepsilon_0 L-\varepsilon_0 y\bigr]}{a}$$\(y\) についてまとめて
$$C=\frac{L\bigl[\varepsilon_0 L+(\varepsilon-\varepsilon_0)y\bigr]}{a}$$\(y\) について1 次の増加関数。傾きは \(\dfrac{L(\varepsilon-\varepsilon_0)}{a}\) で、これが (12) の主役になる。
\(y=0\)(液体なし)なら \(C=\dfrac{\varepsilon_0L^2}{a}\)、\(y=L\)(全部液体)なら \(C=\dfrac{L[\varepsilon_0L+(\varepsilon-\varepsilon_0)L]}{a}=\dfrac{\varepsilon L^2}{a}\)。どちらも正しい。
問1 の直列の式 \(C=\dfrac{\varepsilon\varepsilon_0L^2}{\varepsilon_0x+\varepsilon(a-x)}\) は \(x\) について分数関数(非線形)だったのに対し、問2 の並列は \(y\) の1 次関数。並列は「足し算」なので線形になる——この違いが (4) と (12) の力の形の違い(\(\sigma^2\) 型 vs \(E^2\) 型)を生む。
同じ容器・同じ液体でも、極板の向きが変わるだけで直列 ⇄ 並列が入れ替わる。「電気力線が両方の媒質を順に貫くか(直列)、別々に貫くか(並列)」で判断する。
今度は電源につながれたままなので、極板間の電圧は \(V\) で固定。固定されている量に合わせて \(U=\dfrac12 CV^2\) を使う。(9) の \(C\) を入れるだけ。\(V\) 一定では、液面が上がると \(C\) が増えるので \(U\) は増える——問1(\(Q\) 一定で \(U\) が減った)と逆になる点に注意。「\(U\) が増えるのに液体が入ってくる」のは、電源が \(U\) の増加分より多くのエネルギーを供給しているからで、これが (11) の関係式の意味である。
電源につながれているので極板間の電圧は \(V\) で一定。したがって \(U=\dfrac12 CV^2\) を使う。(9) の結果を代入すると
$$U=\frac{1}{2}CV^2=\frac{1}{2}\cdot\frac{L\bigl[\varepsilon_0L+(\varepsilon-\varepsilon_0)y\bigr]}{a}\cdot V^2$$整理して
$$U=\frac{L V^2\bigl[\varepsilon_0 L+(\varepsilon-\varepsilon_0)y\bigr]}{2a}$$ついでに、このとき極板 A に蓄えられている電荷も書いておく((11)(12) で使う):
$$Q=CV=\frac{L\bigl[\varepsilon_0L+(\varepsilon-\varepsilon_0)y\bigr]V}{a}$$\(V\) 一定で液面が \(\Delta y\) 上がると、\(C\) が増えるので電荷も増える(\(\Delta Q=V\Delta C\))。このとき電源は \(V\Delta Q=V^2\Delta C\) の仕事をする。一方コンデンサーに蓄えられるのは \(\Delta U=\tfrac12 V^2\Delta C\) だけ。残りの \(\tfrac12 V^2\Delta C\) が液体を持ち上げる仕事に回る。
つまり「電源が出した仕事の半分がコンデンサーに、残り半分が機械的仕事に」という配分になっている。だから \(U\) が増えても矛盾しない。この収支を式にしたものが次の (11) である。
\(Q\) 一定 → \(U=\dfrac{Q^2}{2C}\)(\(C\) 増で \(U\) 減)、\(V\) 一定 → \(U=\dfrac12CV^2\)(\(C\) 増で \(U\) 増)。同じ「誘電体が引き込まれる」現象でも、\(U\) の増減は逆になる。だから \(V\) 一定では「\(U\) が減る向きに動く」という直感は使ってはいけない。
登場するエネルギーの出入りは 3 つだけ。①電源が送り込むエネルギー \(V\Delta Q\)、②外力(仮想的な手)がする仕事 \(\Delta W\)、③コンデンサーに溜まるエネルギー \(\Delta U\)。入ったぶんが溜まる、それだけ:\(V\Delta Q+\Delta W=\Delta U\)。
液面を微小変化させる間、電源は電圧 \(V\) を保ったまま電荷 \(\Delta Q\) を送り出す。このとき電源がする仕事は
$$W_{\text{電源}}=V\,\Delta Q$$一方、仮想的な外力がする仕事が \(\Delta W\)(重力にさからう仕事は別勘定)。系(コンデンサー)に入ったエネルギーは、そのまま静電エネルギーの増加 \(\Delta U\) になる(ゆっくり動かすので運動エネルギーは 0、ジュール熱も 0 とみなす)。よって
$$V\,\Delta Q+\Delta W=\Delta U$$\(\Delta W\) について解くと
$$\Delta W=\Delta U-V\,\Delta Q$$問1(4) の \(Q\) 一定の場合(\(\Delta W=\Delta U\))に、電源からの供給分 \(-V\Delta Q\) が加わった形。
液面が電場から受ける力(上向き正)を \(F\) とすると、静かに \(\Delta y\) 動かすには外力 \(-F\) が要るので \(\Delta W=-F\,\Delta y\)。したがって
$$F=-\frac{\Delta W}{\Delta y}=-\frac{\Delta U-V\Delta Q}{\Delta y}=\frac{V\Delta Q-\Delta U}{\Delta y}$$\(V\) 一定では「\(U\) が減る向き」ではなく「\(V\Delta Q-\Delta U\) が正になる向き」に力がはたらく。この式が (12) の計算の出発点になる。
仮想仕事の 2 パターンを整理しておく:
・\(Q\) 一定(電源なし):\(\Delta W=\Delta U\)、\(F=-\dfrac{\Delta U}{\Delta x}\)
・\(V\) 一定(電源あり):\(\Delta W=\Delta U-V\Delta Q\)、\(F=-\dfrac{\Delta W}{\Delta y}\)
電源がいるかいないかで式が変わる——ここを取り違えると符号も大きさも狂う。
(11) の関係式に、(9)(10) から得られる \(\Delta Q\) と \(\Delta U\) を \(\Delta y\) で表して代入する。どちらも \(\Delta C=\dfrac{L(\varepsilon-\varepsilon_0)}{a}\Delta y\) に比例するので、答えは一瞬で出る。液体は「電場のある側に吸い込まれる」ので力は上向き——これは問1 と同じ物理である。
(9) より \(C=\dfrac{L[\varepsilon_0L+(\varepsilon-\varepsilon_0)y]}{a}\) だから、液面が \(\Delta y\) 変化したときの容量変化は
$$\Delta C=\frac{L(\varepsilon-\varepsilon_0)}{a}\,\Delta y$$電圧 \(V\) 一定なので、電荷と静電エネルギーの変化は
$$\Delta Q=V\,\Delta C,\qquad \Delta U=\frac{1}{2}V^2\,\Delta C$$これらを (11) の \(\Delta W=\Delta U-V\Delta Q\) に代入すると
$$\Delta W=\frac{1}{2}V^2\Delta C-V\cdot(V\Delta C)=-\frac{1}{2}V^2\,\Delta C =-\frac{L(\varepsilon-\varepsilon_0)V^2}{2a}\,\Delta y$$液面が電場から受ける力(上向きを正)を \(F\) とすると \(\Delta W=-F\Delta y\) だから
$$F=-\frac{\Delta W}{\Delta y}=\frac{L(\varepsilon-\varepsilon_0)V^2}{2a}\ \ (>0:\text{上向き})$$次に単位面積あたりに直す。液面の水平断面は、極板の幅 \(L\) × 極板間の隙間 \(a\) なので面積は \(La\)。したがって
$$p_2=\frac{F}{La}=\frac{L(\varepsilon-\varepsilon_0)V^2}{2a}\cdot\frac{1}{La}=\frac{(\varepsilon-\varepsilon_0)V^2}{2a^2}$$極板間の電場は \(E=\dfrac{V}{a}\)、すなわち \(V^2=a^2E^2\)。これを代入して
$$p_2=\frac{(\varepsilon-\varepsilon_0)\,a^2E^2}{2a^2}=\frac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2}\,E^2$$\(\varepsilon>\varepsilon_0\) より \(k_2>0\)。液体は電場のある領域(極板間)へ吸い上げられる。
問1 は \(p_1=k_1\sigma^2\)(\(k_1=\dfrac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2\varepsilon\varepsilon_0}\))、問2 は \(p_2=k_2E^2\)(\(k_2=\dfrac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2}\))。一見別物だが、どちらも「\(\dfrac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2}\times(\text{場の 2 乗})\)」という同じ構造をしている。
実際、問1 で \(\sigma=D\) と読み替えれば \(p_1=\dfrac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2\varepsilon\varepsilon_0}D^2\) となり、問2 の \(p_2=\dfrac{\varepsilon-\varepsilon_0}{2}E^2\) と対をなす。\(Q\) が固定される直列配置では \(D\) が共通、\(V\) が固定される並列配置では \(E\) が共通——だから「共通な量」で表すのが自然なのである。問題文が問1 では \(\sigma\)、問2 では \(E\) を使えと指定しているのは、この事情を反映している。
単位面積あたりに直すときの「面積」を取り違えないこと。問2 で液面の水平断面積は \(L^2\) ではなく \(L\times a\)(極板の幅 × 極板の隙間)。ここを \(L^2\) にすると \(k_2\) が \(a/L\) 倍ずれる。
問1(5) と同じつり合いだが、「持ち上げられた液柱の高さ」の測り方が違う。問2 では水槽の液面が極板の中心=高さ \(L/2\) にあり、電圧 0 のときの液面もそこにある。電圧をかけると液面はそこからさらに上へ上がるので、支えるべき液柱の高さは \(y\) ではなく \(\left(y-\dfrac{L}{2}\right)\) である。
まず基準を確認する。問題文より、極板の中心が水槽の液面に一致していて、\(y\) は容器最下部から測る。極板は一辺 \(L\) なので水槽の液面の高さは \(y=\dfrac{L}{2}\) にあたる。電圧 0 のとき容器内の液面も水槽と同じ高さ、つまり \(y=\dfrac{L}{2}\) である。
電圧をかけて液面が \(y\) まで上がったとすると、水槽の液面より上に持ち上げられた液柱の高さは
$$h=y-\frac{L}{2}$$この液柱(水平断面積 \(La\)、高さ \(h\))の重さが、電場の力に支えられている。単位面積あたりでつり合いを書くと(液柱の重さ ÷ 断面積 \(=\rho g h\))
$$p_2=\rho g h=\rho g\left(y-\frac{L}{2}\right)$$(12) より \(p_2=\dfrac{(\varepsilon-\varepsilon_0)E^2}{2}\)、そして \(E=\dfrac{V}{a}\) だから
$$\frac{(\varepsilon-\varepsilon_0)}{2}\left(\frac{V}{a}\right)^2=\rho g\left(y-\frac{L}{2}\right) \quad\Longrightarrow\quad \frac{(\varepsilon-\varepsilon_0)V^2}{2a^2}=\rho g\left(y-\frac{L}{2}\right)$$\(y\) について解いて
$$y=\frac{L}{2}+\frac{(\varepsilon-\varepsilon_0)V^2}{2\rho g a^2}$$\(V=0\) とすると \(y=\dfrac{L}{2}\)(水槽と同じ高さ)となり、初期条件と一致する。この検算は必ず行うこと。
\(\varepsilon=2\varepsilon_0\)(\(\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}\ \mathrm{F/m}\))、\(V=1.0\times10^{3}\ \mathrm{V}\)、\(a=1.0\times10^{-2}\ \mathrm{m}\)、\(\rho=1.0\times10^{3}\ \mathrm{kg/m^3}\)、\(g=9.8\ \mathrm{m/s^2}\) とする。\(\varepsilon-\varepsilon_0=\varepsilon_0\) なので上昇分は
$$y-\frac{L}{2}=\frac{\varepsilon_0V^2}{2\rho g a^2} =\frac{8.85\times10^{-12}\times(1.0\times10^{3})^2}{2\times1.0\times10^{3}\times9.8\times(1.0\times10^{-2})^2}$$ $$=\frac{8.85\times10^{-6}}{1.96}\fallingdotseq 4.5\times10^{-6}\ \mathrm{m}=4.5\ \mu\mathrm{m}$$1000 V もかけて上昇はわずか数マイクロメートル。誘電体にはたらく力は非常に弱いことが実感できる。実験で目に見える高さにするには、極板間隔 \(a\) をうんと小さくする(\(y\propto 1/a^2\))か、比誘電率の大きい液体を使う必要がある。
問1(5) では水槽の液面が極板 B(\(x=0\))にあったので \(p_1=\rho g x\) でよかった。しかし問2 では水槽の液面が \(L/2\) の高さにある。\(y=L/2\) より下の液体は、容器の内と外で同じ高さにある「つながった水」なので、電場が支える必要はまったくない(U 字管の両側で釣り合っている状態)。支えるべきは \(L/2\) より上に持ち上がった分だけ。
誤って \(p_2=\rho gy\) とすると \(y=\dfrac{(\varepsilon-\varepsilon_0)V^2}{2\rho ga^2}\) となるが、これでは \(V=0\) のとき \(y=0\)(液体が全部抜ける)となり、初期条件「\(V=0\) で液面は水槽と同じ高さ」に矛盾する。得られた式に \(V=0\) を代入して初期条件を再現するか確かめる——これが最も確実な検算法である。
液面上昇の問題では「どこを基準に高さを測るか」が生死を分ける。基準は必ず外側(水槽)の液面。そして最後に「電場を切ったら元に戻るか?」を確かめる。問2 では \(V=0\ \Rightarrow\ y=L/2\) が成り立つことが正解の証拠になる。