点 O から長さ \(L\) の糸で小球 P(質量 \(m\))を吊るした「箱」の中の運動を、3つの設定で追う総合問題です。水平右向きを正、鉛直上向きを正とし、重力加速度の大きさを \(g\)、空気抵抗は無視します。
止まっている P(質量 \(m\))に、半分の重さの Q(質量 \(\tfrac{m}{2}\))が速さ \(v\) でぶつかる。衝突の一瞬は糸の張力の影響を受けず水平方向の運動量が保存する。加えて「はね返り」の度合いは反発係数 \(e\) が決める。この2式を連立すれば、衝突後の P の速さが一発で出る。
衝突直後の P の速度を \(v_P\)、Q の速度を \(v_Q\)(いずれも右向きを正)とする。糸の張力は水平衝突には効かないので、水平方向の運動量が保存する:
$$\frac{m}{2}\,v = \frac{m}{2}\,v_Q + m\,v_P$$両辺を \(m\) で割って整理すると \(v = v_Q + 2v_P\)。次に反発係数の式(衝突後の相対速度は衝突前の \(-e\) 倍):
$$e = \frac{v_P - v_Q}{v - 0}\quad\Rightarrow\quad v_P - v_Q = ev$$2式から \(v_Q\) を消去する。\(v_Q = v - 2v_P\) を反発係数の式に代入して:
$$v_P - (v - 2v_P) = ev \;\Rightarrow\; 3v_P = (1+e)v \;\Rightarrow\; v_P = \frac{(1+e)v}{3}$$完全弾性衝突 \(e=1\) なら \(v_P=\dfrac{2v}{3}\fallingdotseq0.67v\)、完全非弾性 \(e=0\) なら \(v_P=\dfrac{v}{3}\fallingdotseq0.33v\)。反発が強いほど、軽い Q からより多くの運動量を受け取り P は速くなる。P は Q より重い(\(m>\tfrac{m}{2}\))ので、どの \(e\) でも P は必ず右向きに進む。
一直線上の2球衝突は「運動量保存」と「反発係数の式」の連立が定石。糸があっても、衝突の一瞬は張力が仕事をしないので水平運動量はそのまま保存する。
ぶつかった Q は、はね返り方(\(e\))が強いと左へはじき返されるが、弱いとそのまま右へ進み続ける。境目は「Q の衝突後の速度がちょうど 0」になる \(e\)。その値を境に符号が変わるので、\(v_Q<0\) となる条件を \(e\) について解けばよい。
問1(1)の途中で得た関係 \(v_Q = v - 2v_P\) に \(v_P=\dfrac{(1+e)v}{3}\) を代入する:
$$v_Q = v - 2\cdot\frac{(1+e)v}{3} = \frac{3v - 2(1+e)v}{3} = \frac{(1-2e)v}{3}$$Q が左向きに動く条件は \(v_Q<0\)。反発係数は \(0\le e\le 1\) の範囲なので:
$$\frac{(1-2e)v}{3}\lt 0 \;\Rightarrow\; 1-2e\lt 0 \;\Rightarrow\; e\gt\frac{1}{2}$$したがって範囲は \(\dfrac{1}{2}\lt e\le 1\)。このとき床から見た Q の速さは \(v_Q\) の絶対値だから:
$$|v_Q| = \left|\frac{(1-2e)v}{3}\right| = \frac{(2e-1)v}{3}$$\(e=\tfrac12\) のとき \(v_Q=0\)、つまり Q は衝突後ちょうどその場で静止する。これより反発が弱ければ Q は右へ進み続け、強ければ左へはね返る。質量比が \(m:\tfrac{m}{2}=2:1\) だからこの特別な境目が \(e=\tfrac12\) に現れる。
「はね返る/進み続ける」の判定は衝突後の速度の符号を調べる。速度式を \(e\) の式に直し、\(v_Q<0\) を解けば範囲が出る。「速さ」は必ず絶対値で答える。
衝突直後の P は速さ \(v_P\) で最下点を通り、糸に引かれて振り子として上昇する。箱は固定されているので、P だけの力学的エネルギー保存が使える。最高点では速さ 0 になり、運動エネルギーがすべて位置エネルギー \(mgh\) に変わる。
衝突直後の P の速さは \(v_P=\dfrac{(1+e)v}{3}\)(問1(1))。箱が固定なので P 単独で力学的エネルギー保存を立てる。最下点(高さ 0)での運動エネルギーが、最高点(高さ \(h\)、速さ 0)の位置エネルギーに等しい:
$$\frac{1}{2}m v_P^{\,2} = mgh$$\(h\) について解き、\(v_P\) を代入する:
$$h = \frac{v_P^{\,2}}{2g} = \frac{1}{2g}\left(\frac{(1+e)v}{3}\right)^{2} = \frac{(1+e)^2 v^2}{9\cdot 2g}$$ $$h = \frac{(1+e)^2 v^2}{18g}$$\(e=1,\ v=6\,\text{m/s}\) とすると \(v_P=\dfrac{2}{3}\times6=4\,\text{m/s}\)。よって
$$h=\frac{v_P^{\,2}}{2g}=\frac{4^2}{2\times9.8}=\frac{16}{19.6}\fallingdotseq0.82\ \text{m}$$公式 \(h=\dfrac{(1+e)^2v^2}{18g}=\dfrac{4\times36}{18\times9.8}=\dfrac{144}{176.4}\fallingdotseq0.82\,\text{m}\) と一致する。糸の長さ \(L\) より高くならない範囲(\(h\le L\))でこの式が有効。
固定された振り子の上昇は「最下点の運動エネルギー = 最高点の位置エネルギー」。糸の張力は運動方向に垂直なので仕事をせず、エネルギー保存がそのまま使える。
P は右へ上がったあと戻り、点 O の真下(最下点)を左向きに通過する。この瞬間、P は半径 \(L\) の円運動をしており、速さは(同じ高さなので)衝突直後と同じ。最下点では糸は真上を向くので、「張力 − 重力 = 向心力」の運動方程式から張力が求まる。
最下点での速さ \(v_b\) は、最高点 \(h\) からのエネルギー保存より \(\dfrac12 m v_b^{\,2}=mgh\)、すなわち \(v_b^{\,2}=2gh\)。最下点で P は半径 \(L\) の円運動をしており、糸方向(鉛直上向き)の運動方程式は、上向きを正として:
$$T - mg = \frac{m v_b^{\,2}}{L}$$ここで向心加速度は \(\dfrac{v_b^{\,2}}{L}\)(中心 O へ向かう)。\(v_b^{\,2}=2gh\) を代入する:
$$T = mg + \frac{m\cdot 2gh}{L} = mg + \frac{2mgh}{L}$$\(mg\) でくくって整理すると:
$$T = mg\left(1 + \frac{2h}{L}\right)$$最下点の速さは衝突直後と同じだが、問題は「\(g,h,L,m\) で表せ」と指定している。そこで \(v_b^{\,2}\) を \(v_P\) ではなく高さ \(h\) のエネルギー保存 \(v_b^{\,2}=2gh\) で置き換えるのがポイント。こうすると \(e\) や \(v\) を含まない、指定文字だけの式になる。もし \(h=L\)(真横まで上がる)なら \(T=3mg\) となり、有名な「振り子最下点の張力は最大 \(3mg\)」の関係が現れる。
円運動の張力は中心方向の運動方程式で出す。最下点では \(T-mg=\dfrac{mv^2}{L}\)。速さの2乗はエネルギー保存 \(v^2=2gh\) で高さに置き換えると指定文字だけで書ける。
今度は箱(質量 \(M\))がなめらかな床で自由に動ける。P を右へ \(\theta\) 傾けて静かに放すと、P は左へ振れ、その反作用で箱は右へ動く。系の外から水平方向の力がないので全体の水平運動量は 0 のまま。エネルギー保存と合わせて、最下点での P の速さを求める。
最下点で P は水平(左向き)に速さ \(v_P\)、箱は水平(右向き)に速さ \(V\) で動く。右向きを正とすると、系の初期運動量 0 が保存するので:
$$0 = m(-v_P) + M V \;\Rightarrow\; MV = m v_P \;\Rightarrow\; V = \frac{m}{M}v_P$$次に力学的エネルギー保存。P が高さ \(L(1-\cos\theta)\) だけ下がり、その位置エネルギーが P と箱の運動エネルギーに変わる:
$$mgL(1-\cos\theta) = \frac{1}{2}m v_P^{\,2} + \frac{1}{2}M V^{2}$$\(V=\dfrac{m}{M}v_P\) を代入すると \(\dfrac12 M V^2=\dfrac12\dfrac{m^2}{M}v_P^{\,2}\)。まとめて:
$$mgL(1-\cos\theta) = \frac{1}{2}v_P^{\,2}\,m\left(1+\frac{m}{M}\right) = \frac{1}{2}v_P^{\,2}\,\frac{m(M+m)}{M}$$\(v_P^{\,2}\) について解く:
$$v_P^{\,2} = \frac{2MgL(1-\cos\theta)}{M+m} \;\Rightarrow\; v_P = \sqrt{\frac{2MgL(1-\cos\theta)}{M+m}}$$\(M\to\infty\) では \(\dfrac{M}{M+m}\to1\) なので \(v_P\to\sqrt{2gL(1-\cos\theta)}\)。これは固定振り子(箱が動かない場合)の最下点の速さそのもの。箱が軽いほど箱に運動エネルギーを取られ、P の速さは小さくなる(分子の \(M\) が効く)。物理的に納得できる。
床がなめらかで水平外力ゼロ → 系の水平運動量 0 が保存。これで箱の速さ \(V\) を \(v_P\) で表し、エネルギー保存に代入するのが2体問題の王道。
水平方向に外力がないので、系全体の重心は水平に動かない。P が右から真下(点 O の鉛直線)まで来る間、P は左へ動き、箱は右へ動くが、両者の重心は同じ水平位置にとどまり続ける。この「重心不動」だけで、箱の移動距離が求まる(速さや時間は不要)。
系に水平方向の外力がないので、重心の水平位置は一定に保たれる。箱の重心は点 O を通る鉛直線上にあるので、箱の水平位置は O の位置で代表できる。箱が右へ距離 \(X\) 動いたとする。
初めの位置で O を原点にとると、P は O の右に \(L\sin\theta\) の位置にある。重心の水平位置は:
$$x_{\mathrm G,\text{初}} = \frac{M\cdot 0 + m\cdot L\sin\theta}{M+m} = \frac{mL\sin\theta}{M+m}$$最後(P が O の真下)は、箱も O も P も右へ \(X\) 動いているので:
$$x_{\mathrm G,\text{後}} = \frac{M\cdot X + m\cdot X}{M+m} = X$$重心不動 \(x_{\mathrm G,\text{初}}=x_{\mathrm G,\text{後}}\) より:
$$X = \frac{mL\sin\theta}{M+m}$$箱(+O)が右へ \(X\) 動くと、P は箱に対して \(L\sin\theta\) だけ左へ動く。よって床から見た P の水平移動は「左へ \(L\sin\theta - X\)」。重心不動は「\(M\times(\text{箱の右移動}) = m\times(\text{P の左移動})\)」と書ける:
$$M\,X = m\,(L\sin\theta - X) \;\Rightarrow\; (M+m)X = mL\sin\theta \;\Rightarrow\; X=\frac{mL\sin\theta}{M+m}$$本文と一致。時間も速さも使わず、幾何と質量比だけで決まるのが重心保存の強み。
水平外力ゼロの系は重心の水平位置が不変。位置の問いは運動量保存を積分するより、重心不動を直接使うほうが速い。移動距離は質量比 \(\dfrac{m}{M+m}\) と水平変位 \(L\sin\theta\) の積。
箱が左向きに加速すると、箱の中の P には右向きの慣性力がはたらくように見える。重力(下向き)と慣性力(右向き)を合わせた「見かけの重力」の方向に糸が傾き、角 \(\phi\) で静止する。箱内では P は3力(張力・重力・慣性力)のつり合いにある。この直角三角形から張力と加速度が一度に読める。
箱の加速度を \(a\)(左向き)とする。箱内(非慣性系)で P にはたらく力は、張力 \(T\)(糸方向、O へ向かって上・左)、重力 \(mg\)(下)、慣性力 \(ma\)(右)。糸は鉛直から右へ \(\phi\) 傾いて静止=つり合いしている。水平・鉛直に分解する:
$$\text{水平:}\quad T\sin\phi = ma$$ $$\text{鉛直:}\quad T\cos\phi = mg$$(7) 張力:鉛直のつり合いから直接 \(T\) が出る:
$$T = \frac{mg}{\cos\phi}$$(8) 箱の加速度:水平の式に \(T=\dfrac{mg}{\cos\phi}\) を代入する:
$$ma = T\sin\phi = \frac{mg}{\cos\phi}\sin\phi = mg\tan\phi \;\Rightarrow\; a = g\tan\phi$$重力 \(mg\)(下)と慣性力 \(ma\)(横)の合力が「見かけの重力」\(mg'\)。大きさは直角三角形の斜辺だから \(mg'=\sqrt{(mg)^2+(ma)^2}\)、すなわち \(g'=\sqrt{g^2+a^2}\)。\(a=g\tan\phi\) を代入すると
$$g'=\sqrt{g^2+g^2\tan^2\phi}=g\sqrt{1+\tan^2\phi}=\frac{g}{\cos\phi}$$この \(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\) は (9) 以降で繰り返し使う重要な量。張力は \(T=mg'=\dfrac{mg}{\cos\phi}\) とも書ける。
加速する箱の中は重力+慣性力=見かけの重力で考える。糸の傾き \(\phi\) は見かけの重力の向きに一致し、\(\tan\phi=\dfrac{a}{g}\)、\(T=\dfrac{mg}{\cos\phi}\)。
P を静止位置(角 \(\phi\))からわずかにずらして放すと、見かけの重力 \(g'\) の方向を「新しい真下」とする単振り子として小さく振動する。単振り子の周期の公式 \(T=2\pi\sqrt{L/g}\) の \(g\) を、そのまま \(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\) に置き換えればよい。
単振り子の周期は、糸の長さ \(L\) と(その環境での)重力加速度 \(g'\) を使って \(T=2\pi\sqrt{\dfrac{L}{g'}}\)。この台車上では見かけの重力が \(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\)(問3(7)(8)の補足)なので、代入する:
$$T = 2\pi\sqrt{\frac{L}{g'}} = 2\pi\sqrt{\frac{L}{\ \dfrac{g}{\cos\phi}\ }}$$分母の分数を整理する:
$$T = 2\pi\sqrt{\frac{L\cos\phi}{g}}$$\(\phi\to0\)(加速度 0)では \(\cos\phi\to1\) なので \(T\to2\pi\sqrt{L/g}\)。おなじみの単振り子の周期に一致する。加速が強く \(\phi\) が大きいほど見かけの重力 \(g'\) は大きくなり、周期は短くなる(振り子が速く振れる)。周期が振幅によらないのは、微小振動だから(単振動近似)。
加速する系の単振り子は公式の \(g\) を見かけの重力 \(g'\) に置き換えるだけ。\(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\) を入れて \(T=2\pi\sqrt{\dfrac{L\cos\phi}{g}}\)。
静止位置(見かけの鉛直)は角 \(\phi\) の向き。P を角 \(2\phi\)(真の鉛直から)まで引くと、それは見かけの鉛直から角 \(\phi\) ずれた位置。ここから放すと、見かけの重力 \(g'\) の場で、見かけの鉛直(角 \(\phi\))を「最下点」とする振り子運動になる。見かけの重力でエネルギー保存+円運動の運動方程式を立てればよい。
見かけの重力の大きさは \(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\)。見かけの鉛直(角 \(\phi\))を基準にすると、P は「基準から角 \(\phi\) ずれた位置」から放され、角 \(\phi\)(=見かけの最下点)を通過する。見かけの重力でのエネルギー保存を、見かけの鉛直に沿う「見かけの高さ」で立てる。基準から角 \(\psi\) のときの見かけの高さは \(L(1-\cos\psi)\)。放す位置は \(\psi=\phi\)、通過点は \(\psi=0\):
$$\frac{1}{2}m v^{2} = m g'\,L\,(1-\cos\phi)$$(10) 速さ:\(v^2\) について解き、\(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\) を代入する:
$$v^{2} = 2g'L(1-\cos\phi) = 2\cdot\frac{g}{\cos\phi}\cdot L(1-\cos\phi) = \frac{2gL(1-\cos\phi)}{\cos\phi}$$ $$v = \sqrt{\frac{2gL(1-\cos\phi)}{\cos\phi}}$$(11) 張力:角 \(\phi\)(見かけの最下点)では、糸方向は見かけの鉛直に一致する。円運動の中心方向(O へ向かう向き)の運動方程式は、見かけの重力 \(mg'\) が糸と逆向きなので:
$$T - mg' = \frac{m v^{2}}{L}$$\(v^2=2g'L(1-\cos\phi)\) を代入して \(mg'\) でまとめる:
$$T = mg' + \frac{m\cdot 2g'L(1-\cos\phi)}{L} = mg'\bigl(1 + 2(1-\cos\phi)\bigr) = mg'(3 - 2\cos\phi)$$最後に \(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\) を代入する:
$$T = \frac{mg(3 - 2\cos\phi)}{\cos\phi}$$台車の加速度は一定なので、慣性力も一定。真の重力による位置エネルギーと、慣性力による位置エネルギーを合わせた「有効ポテンシャル」で保存則を立てても同じ結果になる。合成すると、大きさ \(mg'\) の一様な力による位置エネルギーとなり、その等ポテンシャル面は見かけの鉛直に垂直。結局、見かけの重力を真の重力とみなすのが最短で、問題文もそれを許可している。
加速する箱の振り子は「見かけの重力 \(g'\) を真の重力とみなす」と、エネルギー保存も張力の式もいつも通り。基準は見かけの鉛直(角 \(\phi\))、振れ幅は角 \(\phi\)。最下点の張力は \(T=mg'(3-2\cos\phi)\)。
P を紙面と垂直な面内で等速円運動させると円錐振り子になる。その回転軸は見かけの鉛直(角 \(\phi\) 傾く)で、糸と軸のなす半頂角も \(\phi\)。軸方向は加速も何もないので見かけの重力とつり合う。その方向の力のつり合いから張力が出る。
円錐振り子の回転軸は見かけの鉛直(大きさ \(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\))。糸は軸から半頂角 \(\phi\) 傾く。軸方向には加速度がないので、張力の軸方向成分が見かけの重力とつり合う:
$$T\cos\phi = m g'$$\(T\) について解き、\(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\) を代入する:
$$T = \frac{m g'}{\cos\phi} = \frac{m}{\cos\phi}\cdot\frac{g}{\cos\phi} = \frac{mg}{\cos^{2}\phi}$$問3(7)の静止つり合いでは \(T=\dfrac{mg}{\cos\phi}\) だったが、円錐振り子では \(T=\dfrac{mg}{\cos^2\phi}\) とさらに大きい。これは、静止時は見かけの重力を支えるだけでよいのに対し、円運動では加えて向心力(軸へ向かう水平成分)も張力が担うため。\(\cos\phi<1\) なので \(\dfrac{1}{\cos^2\phi}>\dfrac{1}{\cos\phi}\) となり、その分だけ張力が増す。
円錐振り子は軸方向のつり合い \(T\cos\phi=mg'\) と半径方向の運動方程式 \(T\sin\phi=\dfrac{mv^2}{r}\) の2本立て。張力は軸方向のつり合いだけで決まり、\(T=\dfrac{mg}{\cos^2\phi}\)。
円錐振り子で P は半径 \(r=L\sin\phi\) の円を描く。軸に垂直な方向(円の中心へ向かう方向)の張力成分が向心力になる。(12) で求めた張力を使えば、半径方向の運動方程式から速さが、さらに「一周の距離÷速さ」から周期が出る。
円の半径は \(r=L\sin\phi\)。軸に垂直な方向(円の中心へ向かう向き)の運動方程式は、張力の軸垂直成分 \(T\sin\phi\) が向心力になる:
$$T\sin\phi = \frac{m v^{2}}{r} = \frac{m v^{2}}{L\sin\phi}$$(13) 速さ:\(v^2\) について解き、\(T=\dfrac{mg}{\cos^2\phi}\)(問3(12))を代入する:
$$v^{2} = \frac{T\sin\phi\cdot L\sin\phi}{m} = \frac{L\sin^{2}\phi}{m}\cdot\frac{mg}{\cos^{2}\phi} = gL\,\frac{\sin^{2}\phi}{\cos^{2}\phi} = gL\tan^{2}\phi$$ $$v = \sqrt{gL}\,\tan\phi$$(14) 周期:周期は「一周の道のり \(2\pi r\) ÷ 速さ \(v\)」。\(r=L\sin\phi\)、\(v=\sqrt{gL}\,\tan\phi=\sqrt{gL}\,\dfrac{\sin\phi}{\cos\phi}\) を入れる:
$$T_{\text{周期}} = \frac{2\pi r}{v} = \frac{2\pi L\sin\phi}{\ \sqrt{gL}\,\dfrac{\sin\phi}{\cos\phi}\ } = \frac{2\pi L\cos\phi}{\sqrt{gL}}$$\(\dfrac{L}{\sqrt{gL}}=\sqrt{\dfrac{L}{g}}\) を使って整理する:
$$T_{\text{周期}} = 2\pi\cos\phi\sqrt{\frac{L}{g}}$$見かけの重力 \(g'\) での円錐振り子の周期は \(T_{\text{周期}}=2\pi\sqrt{\dfrac{L\cos\phi}{g'}}\)(\(\phi\) は半頂角)。\(g'=\dfrac{g}{\cos\phi}\) を代入すると:
$$T_{\text{周期}}=2\pi\sqrt{\frac{L\cos\phi}{\ g/\cos\phi\ }}=2\pi\sqrt{\frac{L\cos^{2}\phi}{g}}=2\pi\cos\phi\sqrt{\frac{L}{g}}$$本文と一致。ちなみに問3(9)の微小振動の周期 \(2\pi\sqrt{L\cos\phi/g}\) とは \(\sqrt{\cos\phi}\) 倍だけ異なり、円錐振り子(半頂角 \(\phi\))のほうが短周期になる。
円錐振り子の速さは半径方向の運動方程式 \(T\sin\phi=\dfrac{mv^2}{L\sin\phi}\) から。周期は \(\dfrac{2\pi r}{v}\)。見かけの重力を使えば通常の円錐振り子公式がそのまま適用でき、\(T_{\text{周期}}=2\pi\cos\phi\sqrt{\dfrac{L}{g}}\)。