海面を伝わる波について、直線状の岸壁と平行に山が並ぶ状況から始まり、岸壁による散乱(干渉)、水深による屈折、動く船によるドップラー効果を順に扱う総合問題です。
1周期 T の間に波は1波長 \(\lambda\) だけ進む。つまり \(c T = \lambda\)。本問では「第1波の谷と直線 AB 上の第2波の山がちょうど点 A に到達」している瞬間を考える。AB は波の進行方向に垂直なので、隣り合う山(または谷)の間隔が半波長。
「第1波の谷」と「第2波の山」が隣り合うから、その間隔は半波長 \(\lambda/2\)。ただし問題は「第1波の谷と直線AB上の第2波の山が点Aに到達した瞬間」であり、問題図の文面 \(\ell = 3000\) m は「第2波の山の場所から第2波の山の次の山までの距離」と読み取れる。つまり \(\ell\) は波長そのものと考える(海面波で数km の波長は津波の特性)。
波の速さ \(C\) と波長 \(\ell\) から周期は:
$$T = \frac{\ell}{C}$$第1波(谷)と第2波(山)の間隔が半波長なので、時刻差は \(T/2\) 半周期。一周期で波は一波長進む関係より、「山から次の山まで」=1波長、時間にして 1 周期 T:
$$T = \frac{\ell}{C} = \frac{3000}{C} \text{ [s]}$$ただし \(C = \sqrt{gh_1}\) なので、水深 \(h_1\) を用いて:
$$T = \frac{\ell}{\sqrt{gh_1}}$$水面波のうち水深 h が波長に比べて浅い場合(浅水波)は \(c = \sqrt{gh}\)。水深 4000 m の太平洋上を伝わる津波は \(\sqrt{9.8 \times 4000} \approx 200\) m/s(時速約 720 km)、ジェット機並みの速さ。
波の基本関係:\(c = f\lambda = \lambda/T\)。水面波では速さが水深に依存するので、浅瀬に入ると遅くなり波長も短くなる(周波数 f は不変)。
岸壁 AB は隙間 d を持つ二重スリットのように働く。通過波と散乱波の経路差が波長の整数倍のとき、A点で山ができる(強め合う)。散乱波は点A・Bから扇状に広がる。
岸壁の隙間 AB(隙間の幅 d)を通過した波は、点 A と点 B から扇状に広がる散乱波となる(ホイヘンスの原理)。
入射角 \(\theta_1\) で波が来るとき、直線 AB 上の点 A と B から散乱された波が、海面内の点で干渉する。入射波は点 A と点 B に到達する時の位相差を持つ。
点 P で散乱波(A 発と B 発)の経路差が \(n\lambda\) なら強め合う(山ができる):
$$\Delta L = d\cos\phi - d\cos\theta_1 = d(\cos\phi - \cos\theta_1)$$これが \(n\lambda\)(n = 0, 1, 2,...)のとき強め合う:
$$d(\cos\phi - \cos\theta_1) = n\lambda$$\(n = 0\) つまり \(\phi = \theta_1\) の方向は、入射方向と同じで経路差がゼロ。これは「透過」に相当する(岸壁の隙間がそのまま透過窓になる)。
二重スリットの干渉条件:経路差 = 整数倍波長で強め合い、半波長のズレで弱め合う。光の二重スリット実験と同じ論理。
問(5)の結果を使い、散乱波で全反射するような特別な条件を作ると、岸壁の隙間幅 d と波長 λ の関係が決まる。
水深 \(h_1\) では波速 \(C = \sqrt{gh_1}\)、周期 T、波長 \(\lambda = CT = \sqrt{gh_1} \cdot T\)。
問題によれば「波が水域1で全反射」する条件が、岸壁との幾何学的関係で \(h_1 = \lambda/2\) となる。これは、岸壁の入射角が臨界角を超える場合に対応する。具体的には:
$$\lambda = 2h_1 \quad \Leftrightarrow \quad h_1 = \frac{\lambda}{2}$$水面波は水深が波長に比べて浅い(\(h \ll \lambda/2\))ほど「浅水波」として \(c = \sqrt{gh}\) の近似が成り立つ。本問では \(h_1 = \lambda/2\) という境界的な条件を設定している。
水面波は水深と波長の比で性質が変わる:浅水波(h ≪ λ)では \(c = \sqrt{gh}\)、深水波(h ≫ λ)では \(c = \sqrt{g\lambda/(2\pi)}\)。
水深が \(h_1\) から \(h_3\) に変わると、波速が \(c_1 = \sqrt{gh_1}\) から \(c_3 = \sqrt{gh_3}\) に変化する。波速が大きくなる側(深い水域)から浅い方へ向かって全反射する条件は、境界面での屈折角が 90° に達するとき。\(h_3 > h_1\) なら波は深い側から浅い側へ向かうときに屈折し、一定角度以上で全反射する。
水深 \(h_3\) の水域から入射角 \(\theta_3\) で波が水深 \(h_1\) の領域に来るとき、屈折の法則:
$$\frac{\sin\theta_3}{\sin\theta_1} = \frac{c_3}{c_1} = \frac{\sqrt{gh_3}}{\sqrt{gh_1}} = \sqrt{\frac{h_3}{h_1}}$$全反射する条件は、屈折波が生じない(つまり \(\sin\theta_1 > 1\))こと。\(h_3\) から \(h_1\) に入る場合、\(h_3 > h_1\)(水深が浅くなる)なら \(c\) が減る → \(\sin\theta_1 < \sin\theta_3\) で全反射は起こらない。逆に \(h_3 < h_1\)(深くなる)方向なら全反射条件がある。
ただし問題文の文脈(「反射する」と表現)から、\(h_3\) が深い側で、境界から浅い側への入射で全反射を考える。臨界角を超える条件:
$$\sin\theta_3 \geq \sqrt{\frac{h_1}{h_3}} \quad \Rightarrow \quad \frac{h_3}{h_1} \geq \frac{1}{\sin^2\theta_3}$$つまり水深比が \(1/\sin^2\theta_1\) 倍以上なら全反射:
$$\frac{h_3}{h_1} \geq \frac{1}{\sin^2\theta_1}$$臨界角 \(\theta_c\) は \(\sin\theta_c = \sqrt{h_1/h_3}\) で決まり、入射角がこれを超えると全反射。光学での屈折率差(n₁/n₂)に対応するのが水深比の平方根。
全反射:速度が大きい側から小さい側に入るときは常に屈折、逆向きでは臨界角を超えると全反射。光の場合と同じ理屈。
船 P が速さ \(v\) で動いているとき、波との相対速度が変わり、波の山が到達する間隔(周期)が変わる(ドップラー効果)。波の進行方向と船の進行方向の角度 \(\theta_2\) によって相対速度が決まる。
船 P が水深 \(h_2\) の水域で速さ \(v\) で動いている。波速 \(c_2 = \sqrt{gh_2}\)、波の進行方向に対して船の進行方向のなす角を \(\theta_2\) とする。
船から見た波との相対速度の、波進行方向成分は:
$$c' = c_2 - v\cos\theta_2$$(船が波と同じ方向に動けば波は遅く見え、逆なら速く見える)
波長は不変(船が動いても波自体の波長は変わらない)なので、船が観測する周期:
$$T' = \frac{\lambda_2}{c'} = \frac{c_2 T_2}{c_2 - v\cos\theta_2}$$ここで水域2の周期 \(T_2\)(波源から見た周期)は \(T\) に等しいので(周波数は媒質によらない)、問題の定義に応じて:
$$T' = T \cdot \frac{c_2}{c_2 - v\cos\theta_2}$$音のドップラー効果では観測者が動く場合:
$$f' = f \cdot \frac{v_s - v_o}{v_s}$$ここで \(v_s\) は音速、\(v_o\) は観測者の速度(音源から離れる向きが正)。水面波も同じ原理。
観測者の動きによるドップラー効果:\(T' = T \cdot c / (c - v\cos\theta)\)。波長は不変、相対速度が変わるので周期が変わる。
問(8) の T' と、水域1 で船が動く場合の周期 T₁ を比較する。水深が違うと波速が違うので、相対速度の分母・分子も変わる。
水域1(水深 \(h_1\))での波速 \(c_1 = \sqrt{gh_1}\)、波の周期 T(周期は媒質によらず一定)、船の進行方向と波の進行方向のなす角 \(\theta_1\)。
水域1で船が観測する周期:
$$T_1 = T \cdot \frac{c_1}{c_1 - v\cos\theta_1}$$水域2(水深 \(h_2\)、波速 \(c_2 = \sqrt{gh_2}\)、なす角 \(\theta_2\))での周期(問(8)の結果):
$$T' = T \cdot \frac{c_2}{c_2 - v\cos\theta_2}$$比を取ると:
$$\frac{T'}{T_1} = \frac{c_2/(c_2 - v\cos\theta_2)}{c_1/(c_1 - v\cos\theta_1)} = \frac{c_2 (c_1 - v\cos\theta_1)}{c_1 (c_2 - v\cos\theta_2)}$$あるいは分子分母を整理すると:
$$\frac{T'}{T_1} = \frac{c_1 (c_2 - v\cos\theta_2)}{c_2 (c_1 - v\cos\theta_1)} \cdot \frac{c_2^2}{c_1^2}$$最も一般的な整理では:
$$\frac{T'}{T_1} = \frac{c_2}{c_1} \cdot \frac{c_1 - v\cos\theta_1}{c_2 - v\cos\theta_2}$$船が静止(v = 0)なら \(T_1 = T' = T\) で \(T'/T_1 = 1\)。確かに上式で v=0 を代入すると:
$$\frac{T'}{T_1} = \frac{c_2 \cdot c_1}{c_1 \cdot c_2} = 1$$正しく1になる。
ドップラー効果で観測される周期は相対速度の逆数に比例。水深が違う水域では波速が異なるため、相対速度の分子・分母が変わる。