前期 大問Ⅰ:物体の運動(動摩擦・台車上の相対運動・水平投射・床との反発)

解法の指針

床上・台車上を滑る物体 A の運動を、動摩擦力による等加速度運動を軸に追う大問です。水平方向は右向きを正とします。問1は床上での摩擦・仕事、問2は加速→等速→減速する台車の上で A が滑る相対運動、問3は台車の端から飛び出したあとの水平投射と床での非弾性衝突を扱います。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1(1) — 滑り始めから時間 \(T\) の間の変位

直感的理解

床上の物体 A に一定の力 \(F\) を右向きに加える。動き出すと動摩擦力 \(\mu mg\) が左向き(進行方向と逆)にはたらく。両者の差 \(F-\mu mg\) が正味の力で、これが一定なので A は等加速度運動する。加速度が一定なら、変位は「\(\tfrac12\times\)加速度\(\times\)時間²」。

鉛直方向のつり合いより垂直抗力 \(N=mg\)、動摩擦力は \(\mu N = \mu mg\)(左向き)。水平方向の運動方程式で加速度 \(a_1\) を出す:

$$m a_1 = F - \mu mg \quad\Rightarrow\quad a_1 = \frac{F-\mu mg}{m}$$

静止(初速 0)から時間 \(T\) の間の変位は等加速度運動の式 \(x=\tfrac12 a_1 T^2\):

$$x = \frac{1}{2}a_1 T^2 = \frac{(F-\mu mg)T^2}{2m}$$
答え: $$x = \frac{(F-\mu mg)T^2}{2m}\ \text{[m]}$$
補足:滑り出す条件

問題文には「力 \(F\) の作用と同時に滑り始めた」とあるので、最大静止摩擦力を \(F\) が超えている。よって最初から動摩擦の世界で、\(F-\mu mg>0\)、加速度は正になる。

Point

一定の力+一定の動摩擦力=正味の力が一定なので等加速度運動。初速 0 なら \(x=\tfrac12 aT^2\)。

問1(2) — 力 \(F\) と摩擦力がする仕事の和

直感的理解

距離 \(x_1\) だけ滑る間に、力 \(F\)(進行方向)は正の仕事、動摩擦力(進行方向と逆)は負の仕事をする。仕事は「力 × 変位」なので、それぞれ足し合わせればよい。実はこの和は「正味の力 \(\times\) 距離」に等しく、運動エネルギーの増加分にもなっている。

力 \(F\) は進行方向(右向き)に働き、変位も右向きなので仕事は正。動摩擦力 \(\mu mg\) は進行方向と逆(左向き)なので仕事は負。それぞれ大きさ \(x_1\) の変位に対して:

$$W_F = F\,x_1,\qquad W_{\text{摩}} = -\mu mg\,x_1$$

仕事の和はこれらを足す:

$$W = W_F + W_{\text{摩}} = F x_1 - \mu mg\,x_1 = (F-\mu mg)\,x_1$$
答え: $$W = (F-\mu mg)\,x_1\ \text{[J]}$$
補足:仕事とエネルギーの関係で確認

距離 \(x_1\) 進んだときの速さ \(v\) は \(v^2 = 2a_1 x_1 = \dfrac{2(F-\mu mg)x_1}{m}\)。よって運動エネルギーは \(\tfrac12 m v^2 = (F-\mu mg)x_1\)。初速 0 だから運動エネルギーの増加分がそのまま仕事の和に等しい。仕事の和 = 運動エネルギーの変化という関係と一致する。

Point

仕事は力と変位の向きの関係で符号が決まる。同じ向きなら正、逆向きなら負。合力の仕事は運動エネルギーの変化に等しい。

問1(3) — \(F\) を止めた後の停止距離の比 \(x_2/x_1\)

直感的理解

距離 \(x_1\) 進んだところで \(F\) を消すと、以後は動摩擦力だけが A を減速させる。距離 \(x_1\) で得た運動エネルギーを、摩擦力が距離 \(x_2\) かけて全部奪って止める。エネルギーの授受で比を出すのが速い。

距離 \(x_1\) を進んだ時点での運動エネルギーは、問1(2)の仕事の和に等しい:

$$\frac{1}{2}m v^2 = (F-\mu mg)\,x_1$$

その後 \(F\) を止めると、動摩擦力 \(\mu mg\) だけが距離 \(x_2\) にわたって負の仕事をし、運動エネルギーをちょうど 0 にする。エネルギーと仕事の関係より:

$$0 - \frac{1}{2}m v^2 = -\mu mg\,x_2 \quad\Rightarrow\quad \mu mg\,x_2 = (F-\mu mg)\,x_1$$

両辺を比較して \(x_2/x_1\) を求める:

$$\frac{x_2}{x_1} = \frac{F-\mu mg}{\mu mg}$$
答え: $$\frac{x_2}{x_1} = \frac{F-\mu mg}{\mu mg}\ \left(=\frac{F}{\mu mg}-1\right)$$
別解:加速度と v² の式で解く

\(F\) 作用中の加速度 \(a_1=\dfrac{F-\mu mg}{m}\)、停止後の減速度 \(a_2=\mu g\)。\(x_1\) 進んだ速さは \(v^2=2a_1 x_1\)、そこから停止まで \(0=v^2-2a_2 x_2\)。よって \(x_2=\dfrac{v^2}{2a_2}=\dfrac{a_1}{a_2}x_1\)。

$$\frac{x_2}{x_1}=\frac{a_1}{a_2}=\frac{(F-\mu mg)/m}{\mu g}=\frac{F-\mu mg}{\mu mg}$$

エネルギーで解いた結果と一致する。

Point

停止距離の比は加速フェーズと減速フェーズの加速度の比で決まる。摩擦だけで止めるとき、消える運動エネルギー=摩擦力×停止距離。

問2(4) — 台車の床から見た全変位

直感的理解

台車の速度は「0→\(at_1\) に増加(時間 \(t_1\))→ \(at_1\) 一定(時間 \(2t_1\))→ \(at_1\)→0 に減少(時間 \(t_1\))」という台形の v-t グラフ(図3)を描く。床から見た変位は、この v-t グラフが囲む台形の面積そのもの。

台車の速度の最大値は \(v_{\max}=a t_1\)。v-t グラフ(図3)は上底 \(2t_1\)(\(t_1\!\to\!3t_1\) の等速部分)、下底 \(4t_1\)(全体)、高さ \(at_1\) の台形。面積を各区間に分けて計算する:

$$S = \underbrace{\frac{1}{2}(a t_1)t_1}_{0\to t_1} + \underbrace{(a t_1)(2t_1)}_{t_1\to 3t_1} + \underbrace{\frac{1}{2}(a t_1)t_1}_{3t_1\to 4t_1}$$

各項を計算して足す:

$$S = \frac{1}{2}a t_1^{\,2} + 2a t_1^{\,2} + \frac{1}{2}a t_1^{\,2} = 3a t_1^{\,2}$$
答え: $$S = 3a t_1^{\,2}\ \text{[m]}$$
別解:台形公式で一気に

台形の面積 =(上底+下底)× 高さ ÷ 2。上底 \(2t_1\)、下底 \(4t_1\)、高さ \(at_1\) より

$$S = \frac{(2t_1 + 4t_1)\cdot a t_1}{2} = \frac{6t_1 \cdot a t_1}{2} = 3a t_1^{\,2}$$

区間分割と同じ結果。

Point

v-t グラフの面積 = 変位。加速・等速・減速の台形はまとめて台形公式で計算できる。

問2(5) — 滑り始めた物体 A の床から見た加速度

直感的理解

台車が動き出すと、A は慣性でその場に留まろうとするため、台車が A より速く前へ進む。すると A は台車に対して後ろ向きに滑る。滑る向きと逆に動摩擦力がはたらくので、A には前向き(右向き)の動摩擦力 \(\mu mg\) が作用する。A に水平にはたらく力はこの摩擦力だけなので、加速度は \(\mu g\)。

A が台車に対して後ろ向きに滑るので、A にはたらく動摩擦力は右向き(前向き)で大きさ \(\mu N = \mu mg\)。A の水平方向の力はこれだけなので、運動方程式

$$m\,\alpha_A = \mu mg$$

両辺を \(m\) で割る:

$$\alpha_A = \mu g$$
答え: $$\alpha_A = \mu g\ \text{(右向き,正)}$$
補足:台車の加速度 \(a\) には依存しない

A が滑っているあいだ、A にはたらく水平力は動摩擦力 \(\mu mg\) だけで、台車の加速度 \(a\) の値には直接よらない(\(a>\mu g\) で滑り続けている限り一定)。A の加速度は常に \(\mu g\) で、台車が加速中でも等速中でも変わらない。この事実が問2(6)の速度一致の計算で効いてくる。

Point

台車上を滑る物体の水平力は動摩擦力だけ。加速度は \(\pm\mu g\) で、滑る向き(相対速度の向き)と逆に摩擦がはたらく。

問2(6) — \(a=7\mu g\) のとき速度が等しくなる時刻

直感的理解

台車は速度 \(at_1\) まで一気に加速し、A はゆっくり \(\mu g\) で加速する。しばらくは台車の方が速い。やがて台車が減速フェーズ(\(3t_1\!\to\!4t_1\))に入って速度が落ち、A の速度が追いつく瞬間がある。両者の速度式を書いて等式を解く。

\(a=7\mu g\) を代入する。A は加速度 \(\mu g\) で加速するので、床から見た A の速度は \(v_A = \mu g\,t\)。台車が速いあいだ A は滑り続け、この式は台車が減速中でも続く。
台車の速度を各区間で書くと、加速フェーズ・等速フェーズでは A より速く、追いつくのは減速フェーズ(\(3t_1\le t\le 4t_1\))。この区間の台車の速度は、最大値 \(7\mu g\,t_1\) から \(-7\mu g\) で減速するので:

$$v_{\text{台}} = 7\mu g\,t_1 - 7\mu g\,(t-3t_1)$$

\(v_A = v_{\text{台}}\) とおく:

$$\mu g\,t = 7\mu g\,t_1 - 7\mu g\,(t-3t_1)$$

\(\mu g\) で割って整理する:

$$t = 7t_1 - 7t + 21t_1 \;\Rightarrow\; 8t = 28t_1 \;\Rightarrow\; t = \frac{7}{2}t_1$$

\(3t_1 \le \tfrac{7}{2}t_1 \le 4t_1\) を満たし、確かに減速フェーズ内。

答え: $$t = \frac{7}{2}t_1 = 3.5\,t_1\ \text{[s]}$$
補足:加速・等速フェーズで追いつかないことの確認

加速フェーズ(\(0\le t\le t_1\)):台車 \(7\mu g\,t\)、A \(\mu g\,t\)。台車が 7 倍速く、追いつかない。
等速フェーズ(\(t_1\le t\le 3t_1\)):台車 \(7\mu g\,t_1\) 一定。A が追いつくのは \(\mu g\,t=7\mu g\,t_1\)、すなわち \(t=7t_1\) だが、この区間は \(3t_1\) で終わる(\(3t_1\lt 7t_1\))。だから追いつけない。したがって速度一致は減速フェーズで初めて起こる。

Point

各フェーズで台車と A の速度の式を別々に立て、どの区間で交わるかを見極めてから等式を解く。区間の範囲チェック(\(3t_1\le t\le 4t_1\))を忘れない。

問2(7) — 滑り始めから静止までの A の台車から見た変位

直感的理解

\(t=3.5t_1\) で速度が一致するまで A は台車に対して後ろへ滑る。その後は A の方が速くなり、A は台車に対して前へ滑り始め、摩擦が向きを変えて A を減速させる。台車が \(4t_1\) で止まった後も、A は摩擦だけで減速して \(t=7t_1\) に停止する。
「台車から見た変位」=(A の床から見た変位)−(台車の床から見た変位)。両方を最後まで積み上げて引き算する。

\(a=7\mu g\) のまま考える。まず台車の床から見た全変位は問2(4)で \(3a t_1^{\,2}=3(7\mu g)t_1^{\,2}=21\mu g\,t_1^{\,2}\)。
次にA の床から見た全変位を区間ごとに積み上げる。A の速度は \(t=3.5t_1\) まで \(\mu g\,t\) で増え、以後は \(\mu g\) で減速して \(t=7t_1\) に停止する。

区間①(\(0\to 3.5t_1\)、加速):終速 \(v_1=3.5\mu g\,t_1\)。変位は

$$x_1 = \frac{1}{2}\mu g\,(3.5t_1)^2 = \frac{49}{8}\mu g\,t_1^{\,2}$$

区間②(\(3.5t_1\to 4t_1\)、減速、\(\Delta t=0.5t_1\)):初速 \(3.5\mu g\,t_1\)、加速度 \(-\mu g\)。変位は

$$x_2 = 3.5\mu g\,t_1\cdot 0.5t_1 - \frac{1}{2}\mu g\,(0.5t_1)^2 = \frac{13}{8}\mu g\,t_1^{\,2}$$

区間③(\(4t_1\to 7t_1\)、台車停止後も摩擦で減速):\(t=4t_1\) での A の速さは \(3\mu g\,t_1\)、これが \(\mu g\) の減速で \(3t_1\) かけて 0 になる。変位は

$$x_3 = \frac{1}{2}\cdot 3\mu g\,t_1\cdot 3t_1 = \frac{36}{8}\mu g\,t_1^{\,2}$$

A の床から見た全変位を合計する:

$$x_A = x_1+x_2+x_3 = \frac{49+13+36}{8}\mu g\,t_1^{\,2} = \frac{98}{8}\mu g\,t_1^{\,2} = \frac{49}{4}\mu g\,t_1^{\,2}$$

台車から見た変位は「A の床変位 − 台車の床変位」:

$$\Delta x = x_A - 21\mu g\,t_1^{\,2} = \frac{49}{4}\mu g\,t_1^{\,2} - \frac{84}{4}\mu g\,t_1^{\,2} = -\frac{35}{4}\mu g\,t_1^{\,2}$$
答え:台車から見て後ろ向き(負の向き)に $$|\Delta x| = \frac{35}{4}\mu g\,t_1^{\,2}\ \text{[m]}$$
補足:符号の意味と物理像

相対変位が負なのは、A が台車に対して正味で後ろ向きにずれたことを表す。前半(\(t\le 3.5t_1\))は台車が速く A は後ろへ大きくずれ、後半は A が前へ戻すが、後ろへのずれを完全には取り戻せない。差し引き \(\dfrac{35}{4}\mu g\,t_1^{\,2}\) だけ後ろにずれて止まる。台車が十分長いので落下しない、という但し書きはこのずれを許すためのもの。

Point

相対変位は床基準の変位どうしの差で求めるのが確実。フェーズごとに A の速度の向き(=摩擦の向き)が変わる点に注意して積み上げる。

問3(8) — 飛び出すまでの A の床から見た水平変位

直感的理解

台車が加速度 \(a\)、A が加速度 \(\mu g\)(\(a>\mu g\))で進むので、A は台車に対して後ろへずれていく。台車の中央(端まで \(L/2\))にいた A は、台車に対して \(L/2\) 後ろへずれると後端から飛び出す。まず「台車から見て \(L/2\) ずれるのにかかる時間」を出し、その時間で A が床に対してどれだけ進むかを求める。

床から見た加速度は、台車 \(a\)、A \(\mu g\)。台車から見た A の相対加速度は \(\mu g - a\)(負、後ろ向き)。相対的に \(L/2\) ずれると後端に達する。相対運動は初速 0 の等加速度なので、飛び出しまでの時間 \(t_f\) は:

$$\frac{1}{2}(a-\mu g)\,t_f^{\,2} = \frac{L}{2} \quad\Rightarrow\quad t_f = \sqrt{\frac{L}{a-\mu g}}$$

この時間に A が床に対して進む距離は、A の加速度 \(\mu g\)、初速 0 より \(x_A=\tfrac12\mu g\,t_f^{\,2}\):

$$x_A = \frac{1}{2}\mu g\,t_f^{\,2} = \frac{1}{2}\mu g\cdot\frac{L}{a-\mu g} = \frac{\mu g L}{2(a-\mu g)}$$
答え: $$x_A = \frac{\mu g L}{2(a-\mu g)}\ \text{[m]}$$
補足:相対運動でとらえるのがコツ

「A が台車のどこにいるか」は相対座標で決まる。相対加速度 \(a-\mu g\) で \(L/2\) 進む時間を出すのが第一歩。飛び出しの条件(後端に到達)は床基準ではなく台車基準で立てる点がポイント。時間 \(t_f\) さえ出れば、床基準の距離は A 単独の等加速度運動で計算できる。

Point

飛び出す条件は台車から見た相対変位 = L/2。相対加速度は \(a-\mu g\)。時間 \(t_f\) を先に求めてから床基準の量に戻す。

問3(9) — 飛び出すときの A の床から見た水平速度

直感的理解

飛び出す瞬間の A の速さは、A が台車上で \(\mu g\) の加速度で \(t_f\) 秒間加速し続けた結果。初速 0 だから \(v_0=\mu g\,t_f\)。問3(8)で求めた \(t_f\) を入れるだけ。

A は加速度 \(\mu g\)、初速 0 で時間 \(t_f\) 加速する。飛び出しの速さ \(v_0\) は:

$$v_0 = \mu g\,t_f$$

問3(8)の \(t_f=\sqrt{\dfrac{L}{a-\mu g}}\) を代入する:

$$v_0 = \mu g\sqrt{\frac{L}{a-\mu g}}$$
答え: $$v_0 = \mu g\sqrt{\frac{L}{a-\mu g}}\ \text{[m/s]}$$
別解:\(v^2 = 2\alpha x\) で直接

A の床から見た運動は加速度 \(\mu g\)、変位(問3(8))\(x_A=\dfrac{\mu g L}{2(a-\mu g)}\)。初速 0 の等加速度公式 \(v_0^2=2\mu g\,x_A\) より

$$v_0^2 = 2\mu g\cdot\frac{\mu g L}{2(a-\mu g)} = \frac{\mu^2 g^2 L}{a-\mu g} \;\Rightarrow\; v_0 = \mu g\sqrt{\frac{L}{a-\mu g}}$$

時間を経由せずに同じ答えが出る。

Point

飛び出し速度はA の床基準の等加速度運動(加速度 μg)で決まる。時間 \(t_f\) か変位 \(x_A\) のどちらから入っても同じ。

問3(10) — 飛び出してから床に衝突するまでの時間と水平変位

直感的理解

台車の端(高さ \(H\))から水平速度 \(v_0\) で飛び出した A は、水平投射になる。鉛直方向は初速 0 の自由落下で、高さ \(H\) 落ちる時間から着地時刻が決まる。水平方向は等速なので、その時間に \(v_0\) を掛ければ水平変位が出る。

着地までの時間:鉛直方向は初速 0 の自由落下で高さ \(H\) 落ちる。\(H=\tfrac12 g\,t^2\) より

$$t = \sqrt{\frac{2H}{g}}$$

水平変位:水平方向は速さ \(v_0\) の等速。水平変位 \(x\) は \(v_0\) と着地時間の積:

$$x = v_0\,t = v_0\sqrt{\frac{2H}{g}}$$

問3(9)の \(v_0=\mu g\sqrt{\dfrac{L}{a-\mu g}}\) を代入して整理する:

$$x = \mu g\sqrt{\frac{L}{a-\mu g}}\cdot\sqrt{\frac{2H}{g}} = \mu\sqrt{\frac{g^2 L}{a-\mu g}\cdot\frac{2H}{g}} = \mu\sqrt{\frac{2gHL}{a-\mu g}}$$
答え: $$t = \sqrt{\frac{2H}{g}}\ \text{[s]},\qquad x = v_0\sqrt{\frac{2H}{g}} = \mu\sqrt{\frac{2gHL}{a-\mu g}}\ \text{[m]}$$
補足:水平と鉛直は独立

水平投射では、鉛直方向の落下時間は水平速度 \(v_0\) にまったく依存しない。どんな \(v_0\) でも高さ \(H\) を落ちる時間は \(\sqrt{2H/g}\) で同じ。水平速度が大きいほど遠くに着地するが、着地までの時間は変わらない。これが「水平と鉛直の運動は独立」ということ。

Point

水平投射は鉛直=自由落下(時間を決める)/水平=等速(距離を決める)。着地時間は落下高さ \(H\) だけで決まる。

問3(11) — 具体値での軌跡(\(\mu=\tfrac14,\ a=\tfrac34 g,\ L=4H\))

直感的理解

与えられた具体値を入れると、飛び出し点・着地点の座標がきれいな整数(1目盛 \(=H/5\))になる。原点 O は A の初期位置(台車上、高さ \(H\))。台車上を滑るあいだ A は水平にだけ動き(高さは \(H\) 一定=グリッド上で \(y=0\))、飛び出し後は放物線を描いて床(\(y=-H\)=5目盛下)に着地する。

具体値を代入する。まず \(a-\mu g\) を計算:

$$a - \mu g = \frac{3}{4}g - \frac{1}{4}g = \frac{1}{2}g$$

台車上での水平移動(問3(8)):\(L=4H\) を入れる:

$$x_A = \frac{\mu g L}{2(a-\mu g)} = \frac{\frac14 g\cdot 4H}{2\cdot\frac12 g} = \frac{gH}{g} = H$$

よって飛び出し点は原点 O から水平に \(H\)(=5目盛)進んだ位置、高さは \(H\) のまま(グリッドで \(y=0\))。飛び出し点は \((5,\,0)\)。

飛び出し速度(問3(9))

$$v_0 = \mu g\sqrt{\frac{L}{a-\mu g}} = \frac14 g\sqrt{\frac{4H}{\frac12 g}} = \frac14 g\sqrt{\frac{8H}{g}} = \frac14\sqrt{8gH} = \frac12\sqrt{2gH}$$

飛び出し後の水平投射(問3(10)):落下時間と水平距離を求める:

$$t = \sqrt{\frac{2H}{g}},\qquad x = v_0\,t = \frac12\sqrt{2gH}\cdot\sqrt{\frac{2H}{g}} = \frac12\sqrt{2gH\cdot\frac{2H}{g}} = \frac12\cdot 2H = H$$

飛び出し後、水平に \(H\)(5目盛)進み、鉛直に \(H\)(5目盛)落ちて床に着く。着地点は \((10,\,-5)\)。軌跡は \((5,0)\) から \((10,-5)\) に至る下向きの放物線で、途中の中点はおよそ \((7.5,\,-1.25)\) を通る(上のグラフ参照)。

答え:原点 O から水平に直線で進み \((5,0)\) で飛び出し(•印)、そこから放物線で \((10,-5)\)(床)へ着地する。1目盛 \(=H/5\)。

飛び出し点 \((5,0)\)、着地点 \((10,-5)\)。

補足:軌跡の式(放物線)

飛び出し点を新たな原点にとると、水平 \(X=v_0 t\)、鉛直 \(Y=-\tfrac12 g t^2\)。\(t=X/v_0\) を代入すると

$$Y = -\frac{g}{2v_0^{\,2}}X^2 = -\frac{g}{2\cdot\frac{1}{2}\cdot 2gH}X^2 = -\frac{X^2}{2H}$$

グリッド単位(1目盛 \(H/5\))に直すと、飛び出し点から \(x_{\text{grid}}=5\) 進んだところで \(y_{\text{grid}}=-5\) となり、係数 \(-0.2\) の放物線 \(y=-0.2(x-5)^2\)(飛び出し点基準)に一致する。

Point

作図問題は飛び出し点と着地点の座標を先に数値で確定させ、その間を放物線で結ぶ。台車上は水平直線、飛び出し後は下に凸の放物線。

問3(12) — 1回目衝突後に達する最大高さの比 \(h_1/H\)

直感的理解

床との1回目の衝突は、鉛直方向に反発係数 \(e=\tfrac12\) の非弾性衝突。衝突直前の鉛直速度(下向き)に \(e\) を掛けたものが、衝突直後の鉛直速度(上向き)になる。その上向き速度で跳ね上がる最大高さを求める。

飛び出し点(高さ \(H\))から落ちて床に達したときの鉛直方向の速さは、自由落下より \(v_y=\sqrt{2gH}\)(下向き)。反発係数 \(e=\tfrac12\) の衝突後、鉛直速度(上向き)は:

$$v_y' = e\,v_y = \frac{1}{2}\sqrt{2gH}$$

この上向き速度で跳ね上がる最大高さ \(h_1\) は、\(0 = v_y'^{\,2}-2g\,h_1\) より:

$$h_1 = \frac{v_y'^{\,2}}{2g} = \frac{\left(\frac12\sqrt{2gH}\right)^2}{2g} = \frac{\frac14\cdot 2gH}{2g} = \frac{H}{4}$$

比を取る:

$$\frac{h_1}{H} = \frac{1}{4}$$
答え: $$\frac{h_1}{H} = \frac{1}{4}$$
補足:反発係数と高さの一般関係

高さ \(H\) から落として反発係数 \(e\) で跳ね返ると、跳ね上がり高さは \(e^2 H\) になる。速さが \(e\) 倍、高さは速さの2乗に比例するから \(e^2\) 倍。今回は \(e=\tfrac12\) なので \(e^2=\tfrac14\)、\(h_1=\tfrac14 H\)。水平方向の速度変化(\(\tfrac34\) 倍)は高さには影響しない(鉛直と水平は独立)。

Point

反発係数 \(e\) で跳ね返ると跳ね上がり高さは元の \(e^2\) 倍。鉛直方向だけで決まり、水平速度の変化は無関係。

問3(13) — 時間の比 \(T_2/T_1\)

直感的理解

\(T_1\) は飛び出し(高さ \(H\))から1回目の着地までの落下時間。\(T_2\) は1回目のバウンド後、跳ね上がって再び床に落ちるまでの滞空時間。跳ね上がりの上向き初速から往復の時間を出し、\(T_1\) と比べる。

\(T_1\)(飛び出しから1回目の着地):高さ \(H\) の自由落下時間(問3(10)と同じ):

$$T_1 = \sqrt{\frac{2H}{g}}$$

\(T_2\)(1回目→2回目の衝突):1回目衝突直後の上向き速度は \(v_y'=\tfrac12\sqrt{2gH}\)(問3(12))。上がって同じ高さに戻る往復時間は \(2v_y'/g\):

$$T_2 = \frac{2v_y'}{g} = \frac{2\cdot\frac12\sqrt{2gH}}{g} = \frac{\sqrt{2gH}}{g} = \sqrt{\frac{2H}{g}}$$

両者は等しいので比は 1:

$$\frac{T_2}{T_1} = \frac{\sqrt{2H/g}}{\sqrt{2H/g}} = 1$$
答え: $$\frac{T_2}{T_1} = 1$$
補足:なぜちょうど等しくなるのか

\(T_1\) は「高さ \(H\) を落ちる片道時間」\(\sqrt{2H/g}\)。一方 \(T_2\) は「跳ね上がり高さ \(h_1=H/4\) を往復する時間」\(2\sqrt{2h_1/g}=2\sqrt{2(H/4)/g}=2\cdot\tfrac12\sqrt{2H/g}=\sqrt{2H/g}\)。反発係数 \(e=\tfrac12\) だと、往復(2倍)と高さ \(\tfrac14\) 倍(時間 \(\tfrac12\) 倍)がちょうど打ち消し合って \(T_1\) に一致する。一般には \(T_2/T_1 = 2e\) で、\(e=\tfrac12\) のとき 1 になる。

Point

落下の片道時間と、バウンド後の往復時間を別々に出して比を取る。一般に \(T_2/T_1=2e\)、今回 \(e=\tfrac12\) で比 1。

問3(14) — 1回目と2回目の衝突の間の水平変位

直感的理解

1回目の衝突で水平速度が \(\tfrac34\) 倍に変わる。衝突前の飛び出し速度が \(v_0\) なので、バウンド後の水平速度は \(\tfrac34 v_0\)。この一定速度で、滞空時間 \(T_2\) のあいだ水平に進む。水平変位 =(水平速度)×(滞空時間)。

1回目の衝突で水平速度は \(v_0\) から \(\tfrac34\) 倍に変わるので、バウンド後の水平速度は \(\tfrac34 v_0\)(一定)。滞空時間は問3(13)の \(T_2=\sqrt{\dfrac{2H}{g}}\)。水平方向は等速だから水平変位は:

$$x = \frac{3}{4}v_0 \cdot T_2$$

\(T_2=\sqrt{\dfrac{2H}{g}}\) を代入する:

$$x = \frac{3}{4}v_0\sqrt{\frac{2H}{g}}$$
答え: $$x = \frac{3}{4}v_0\sqrt{\frac{2H}{g}}\ \text{[m]}$$
補足:水平と鉛直の変化は別々に効く

床との衝突で、鉛直方向は反発係数 \(e=\tfrac12\)(跳ね上がり高さ \(\tfrac14 H\)、往復時間 \(T_2\) を決める)、水平方向は速度が \(\tfrac34\) 倍(滑りや摩擦で水平運動量が減る)。両者は独立に扱えるので、滞空時間 \(T_2\) は鉛直の話、水平距離は「\(\tfrac34 v_0 \times T_2\)」と切り分けられる。もし水平が変化しなければ距離は \(v_0 T_2\) だった。

Point

水平変位は(衝突後の水平速度)×(滞空時間)。滞空時間は鉛直(反発係数 \(e\))で、水平速度は水平方向の変化率(\(\tfrac34\))で別々に決まる。

数値で確認

直感的理解

問3(11)の具体条件(\(\mu=\tfrac14,\ a=\tfrac34 g,\ L=4H\))で、\(H=1.0\) m, \(g=9.8\) m/s² を入れて主要量の規模感を確認する。文字式の答えに数値を代入し、「だいたいどれくらいか」を体感しよう。

\(H=1.0\) m, \(g=9.8\) m/s² を代入する。

飛び出し速度:

$$v_0 = \frac12\sqrt{2gH} = \frac12\sqrt{2\times 9.8\times 1.0} = \frac12\sqrt{19.6} \fallingdotseq 2.2\ \text{m/s}$$

落下時間と跳ね上がり高さ:

$$T_1 = \sqrt{\frac{2\times 1.0}{9.8}} \fallingdotseq 0.45\ \text{s},\qquad h_1 = \frac{H}{4} = 0.25\ \text{m}$$
答え(数値例):

\(v_0 \fallingdotseq 2.2\) m/s, \(x_A = 1.0\) m, \(T_1 \fallingdotseq 0.45\) s, \(h_1 = 0.25\) m(\(H=1.0\) m のとき)

補足:文字式のまま扱う理由

この大問は \(m, F, \mu, g, a, t_1, L, H\) などの文字が主役で、最終的な数値答えは要求されない。だからこそ、代表値を入れて「\(v_0\) は数 m/s、跳ね上がりは元の 1/4」といった規模感を持っておくと、途中式の符号ミスや係数ミスに気づきやすい。

Point

文字式で答えたら代表値で数値を入れて規模感を確認する。ここでは高さ 1 m の台車が、飛び出し後も水平 1 m 進んで着地する。