大問 II は「電場および磁場中の荷電粒子」に関する総合問題です。問1は 2 本の平行導線が及ぼし合う力を、磁束密度・電流の力・電子のドリフト・ローレンツ力へと段階的に分解します。問2は固定した点電荷 \(Q_0\) のまわりを回る荷電粒子の等速円運動を、クーロン力・ソレノイド磁場・ローレンツ力・円形電流の磁場という順で扱います。座標は \(xy\) 面を紙面にとり、\(z\) 軸は紙面に垂直で裏から表向き(読者に向かう向き)を正とします。
まっすぐな導線に電流を流すと、そのまわりを取り巻くように磁場ができる(右ねじの法則)。導線 P₁ から距離 \(a\) 離れた P₂ の位置での磁場の強さは、電流 \(I_1\) に比例し距離 \(a\) に反比例する。向きは「電流の向きに右ねじを進めたときにねじを回す向き」で決まる。
十分に長い直線電流 \(I_1\) が距離 \(a\) 離れた点につくる磁束密度の大きさは、直線電流の公式より:
$$B_1 = \frac{\mu_0 I_1}{2\pi a}$$向きの決定:電流 \(I_1\) は \(-y\) 向き。P₁ から P₂ を見る方向は \(+x\) 向き。磁場の向きは \(\vec B \propto (\text{電流の向き})\times(\text{電流から観測点への向き})\) で決まる:
$$(-\hat{y})\times(+\hat{x}) = -(\hat{y}\times\hat{x}) = -(-\hat{z}) = +\hat{z}$$よって P₂ の位置での磁束密度は \(+z\) 向き(紙面の裏から表、読者に向かう向き)。
右手の親指を電流の向き(\(-y\)、下向き)に合わせて残りの指を握ると、指先は導線 P₁ のまわりを回る。P₁ の右側(\(+x\) 側)にある P₂ の位置では、指先が紙面から手前へ出てくる向き(\(+z\))になる。シムの緑の同心円が磁力線で、P₂ の位置では手前向き(⊙)だと確認できる。
直線電流の磁束密度は\(B=\dfrac{\mu_0 I}{2\pi r}\)。向きは外積 \((\text{電流})\times(\text{位置})\) または右ねじで確定する。
電流が流れる導線を磁場の中に置くと、力を受ける(\(F=IBL\))。P₂ には磁束密度 \(B_1\) がかかっており、そこに電流 \(I_2\) が流れているので力を受ける。同じ向きに電流を流した 2 本の平行導線は引き合うので、P₂ は P₁ に近づく向き(\(-x\))の力を受けるはずである。
長さ \(L\) の導線 P₂ に電流 \(I_2\) が流れ、磁束密度 \(B_1\) を受けるときの電流が磁場から受ける力の大きさは(電流と磁場が直交しているので):
$$F = I_2 B_1 L$$向きの決定:力は \(\vec F = I_2 \vec L \times \vec B_1\)。P₂ の電流の向きは \(-y\)、\(B_1\) は \(+z\):
$$(-\hat{y})\times(+\hat{z}) = -(\hat{y}\times\hat{z}) = -\hat{x}$$よって力は \(-x\) 向き、すなわち P₁ に近づく向き(引力)。同じ向きの平行電流は引き合うという事実と一致する。
\(B_1 = \dfrac{\mu_0 I_1}{2\pi a}\) を代入すると、平行電流間の力の有名な公式が得られる:
$$F = I_2 L \cdot \frac{\mu_0 I_1}{2\pi a} = \frac{\mu_0 I_1 I_2 L}{2\pi a}$$単位長さあたりでは \(\dfrac{F}{L}=\dfrac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi a}\)。ただし本問は \(I_2, B_1, L\) を用いて表す指定なので、答えは \(F = I_2 B_1 L\) とする。
電流が磁場から受ける力は\(F = IBL\)(電流⊥磁場のとき)。向きは\(\vec F = I\vec L\times\vec B\)。同じ向きの平行電流は引き合う。
電流の正体は、導線内を動く自由電子の流れである。断面積 \(S\) の導線を、電子が平均速さ \(v\) で通り抜けるとき、1 秒間に断面を通過する電子の数を数えれば、電流(=1 秒あたりに運ばれる電気量)が求まる。電流は「電子の数密度 × 断面積 × 速さ × 電子 1 個の電気量」で表される。
時間 \(\Delta t\) の間に、電子は距離 \(v\,\Delta t\) だけ進む。断面 \(S\) を通過する電子は、体積 \(S\cdot v\,\Delta t\) の中にある電子すべてで、その個数は \(n_e S v\,\Delta t\)。運ばれる電気量の大きさは 1 個あたり \(e\) だから:
$$\Delta q = e\cdot n_e S v\,\Delta t$$電流は単位時間あたりに通過する電気量なので:
$$I_2 = \frac{\Delta q}{\Delta t} = e\, n_e S v$$電流 \(I_2\) は \(-y\) 向きと決められているが、電子は負電荷なので電流と逆向き(\(+y\))に動く。ドリフト速度の大きさ \(v\) は同じで、電流の大きさは \(I_2 = e n_e S v\) で表される。向きの取り違えに注意しよう。
ドリフト電流は\(I = e\, n_e S v\)。「電気量 × 数密度 × 断面積 × 速さ」で、導体内の自由電子の流れを電流に翻訳する。
問1(2) で求めた力 \(F = I_2 B_1 L\) は「電流」で書かれている。この電流を、問1(3) の「電子の流れ」で書き換えれば、\(I_2\) を使わずに表せる。さらにこの力を「長さ \(L\) の中の電子の総数」で割れば、電子 1 個あたりのローレンツ力 \(evB_1\) が導かれる、という流れの前段階である。
問1(2) の \(F = I_2 B_1 L\) に、問1(3) の \(I_2 = e\, n_e S v\) を代入する:
$$F = I_2 B_1 L = (e\, n_e S v)\, B_1 L$$整理すると:
$$F = e\, n_e S v B_1 L$$問題文の指示どおり、この \(F\) を「長さ \(L\) の部分にある自由電子の総数」で割ると、電子 1 個が受けるローレンツ力が得られる。長さ \(L\)・断面積 \(S\) の体積は \(SL\)、その中の電子数は \(n_e S L\) なので:
$$f = \frac{F}{n_e S L} = \frac{e\, n_e S v B_1 L}{n_e S L} = e v B_1$$こうして「運動する電子 1 個が磁場から受けるローレンツ力 \(f = e v B_1\)」が、平行電流の力から導かれる。これが問1のねらいである。
マクロな力 \(F=IBL\) は、ミクロには個々の電子のローレンツ力 \(f=evB\) の総和。\(I=en_eSv\) を代入し、電子数 \(n_eSL\) で割れば両者がつながる。
正の点電荷 \(Q_0\) は、まわりの空間に外向きの電場をつくる(電気力線が湧き出す)。点 R は \(Q_0\) から \(+x\) 方向に距離 \(r\) の位置にあるので、そこでの電場はクーロンの法則で決まり、向きは \(Q_0\) から遠ざかる \(+x\) 向きになる。
点電荷 \(Q_0\) が距離 \(r\) の点につくる電場の大きさは、クーロンの法則より:
$$E = \frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\cdot\frac{Q_0}{r^2} = \frac{Q_0}{4\pi\varepsilon_0 r^2}$$向き:\(Q_0>0\) なので電場は電荷から遠ざかる向き。点 R は \(Q_0\) の \(+x\) 側にあるから、電場は \(+x\) 向き。
クーロンの法則の比例定数 \(k_0\) は真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) を用いて \(k_0 = \dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0}\) と書ける。数値では \(k_0 \fallingdotseq 9.0\times10^9\ \mathrm{N\cdot m^2/C^2}\)。本問は文字 \(\varepsilon_0\) で答える指定なので \(E = \dfrac{Q_0}{4\pi\varepsilon_0 r^2}\) とする。
点電荷のつくる電場は\(E = \dfrac{Q_0}{4\pi\varepsilon_0 r^2}\)。正電荷は外向き、負電荷は内向き。距離の 2 乗に反比例する。
点 R に置いた負電荷 \(-Q\) は、\(Q_0\) がつくる電場 \(E\) の中で力を受ける。力の大きさは \(F = (\text{電荷の大きさ})\times E = QE\)。負電荷は電場と逆向きに力を受けるので、電場が \(+x\) なら力は \(-x\)(\(Q_0\) に引き寄せられる)。正と負なので引力になる。
電場 \(E\) の中で電気量の大きさ \(Q\) の電荷が受ける力の大きさは \(F = QE\)。問2(5) の \(E = \dfrac{Q_0}{4\pi\varepsilon_0 r^2}\) を代入する:
$$F = Q E = Q\cdot\frac{Q_0}{4\pi\varepsilon_0 r^2} = \frac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}$$向き:負電荷は電場と逆向きに力を受ける。電場は \(+x\) 向きなので、力は \(-x\) 向き(\(Q_0\) に引き寄せられる引力)。
電荷 \(Q_0\) と \(-Q\) の間の力は、クーロンの法則から直接 \(F = \dfrac{1}{4\pi\varepsilon_0}\dfrac{Q_0 Q}{r^2}\) と求められる。異符号なので引力。「電場 → 力」の 2 段階と同じ結果になることを確認しよう。
電場中の電荷が受ける力は\(F = qE\)。正電荷は電場と同じ向き、負電荷は逆向き。異符号の電荷どうしは引力。
点 R の \(-Q\) に \(+y\) 向きの初速 \(v_1\) を与えると、\(Q_0\) からの引力(向心力)を受けて \(Q_0\) を中心とする等速円運動をする。円運動では「質量 × 向心加速度 \(\dfrac{v^2}{r}\)」が「向心力(中心に向かう力)」に等しい。ここでは向心力の役割をクーロン引力が担う。
質量 \(m\) の \(-Q\) が半径 \(r\)、速さ \(v_1\) で等速円運動する。向心加速度は \(\dfrac{v_1^{\,2}}{r}\)。向心力は \(Q_0\) との引力(大きさは問2(6) と同じ)で、中心に向かう向き(正)にはたらく。運動方程式「(質量)×(半径方向の加速度)=(半径方向の力)」は:
$$m\,\frac{v_1^{\,2}}{r} = \frac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}$$問題文は「加速度は \(r\) と \(v_1\) を用いて表せ」と指定している。等速円運動の向心加速度は \(a = \dfrac{v_1^{\,2}}{r}\)(=\(r\omega^2\) とも書けるが、ここでは速さ表記を使う)。中心に向かう向きを正としているので、この式のまま右辺に引力を置けばよい。
等速円運動の要は向心方向の運動方程式 \(m\dfrac{v^2}{r}=(\text{向心力})\)。ここでは向心力=クーロン引力。
問2(7) の運動方程式は \(v_1\) についての方程式になっている。両辺を整理して \(v_1\) について解くだけ。引力がちょうど円運動に必要な向心力に一致する速さが、与えるべき初速度 \(v_1\) である。
問2(7) の運動方程式の両辺に \(r\) を掛け \(m\) で割ると:
$$v_1^{\,2} = \frac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 m r}$$平方根をとって(速さは正):
$$v_1 = \sqrt{\frac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 m r}}$$\(\dfrac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}\) は力〔N〕。これに \(r\)〔m〕を掛けるとエネルギー〔J〕、さらに \(m\)〔kg〕で割ると〔J/kg〕=〔m²/s²〕。その平方根は〔m/s〕となり、速さの単位に一致する。式の形が正しいことの簡単な確認になる。
円運動の速さは向心力の式を \(v\) について解くだけ。引力型ポテンシャルの周回速度は距離 \(r\) が大きいほど遅い(\(v\propto 1/\sqrt r\))。
今度は負電荷 \(-Q\) の代わりに、同じ大きさで符号が正の点電荷 \(+Q\) を点 R に置く。正どうし(\(Q_0\) と \(+Q\))なので、力は斥力になり、\(Q_0\) から遠ざかる \(+x\) 向きになる。大きさは符号によらないので問2(6) と同じ形。
点 R での電場は \(+x\) 向きで大きさ \(E = \dfrac{Q_0}{4\pi\varepsilon_0 r^2}\)。正電荷 \(+Q\) が受ける力の大きさは \(F = QE\):
$$F = QE = \frac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}$$向き:正電荷は電場と同じ向きに力を受けるので \(+x\) 向き。\(Q_0\) と \(+Q\) は同符号なので斥力(遠ざける向き)。
力の大きさは電荷の絶対値だけで決まるので問2(6) と同じ \(\dfrac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}\)。変わったのは向きだけで、\(-Q\)(引力・\(-x\))→ \(+Q\)(斥力・\(+x\))。この向きの違いが、後の円運動でローレンツ力と力を足し引きする際に効いてくる。
クーロン力の大きさは電荷の絶対値の積で決まり符号に依存しない。符号で決まるのは向き(引力/斥力)だけ。
ソレノイド(円筒状に巻いたコイル)に電流を流すと、内部にはほぼ一様な磁場ができる。その磁束密度は「単位長さあたりの巻き数 \(n\) × 電流 \(I\)」に比例し、ソレノイドの太さや長さにはよらない。この関係を逆に解けば、必要な電流 \(I\) が求まる。
ソレノイド内部の一様な磁束密度は、単位長さあたりの巻き数 \(n\)、電流 \(I\) を用いて:
$$B_2 = \mu_0 n I$$\(I\) について解く:
$$I = \frac{B_2}{\mu_0 n}$$十分に長いソレノイドでは、内部の磁場は軸方向にほぼ一様で、外部の磁場はほぼ 0 になる。アンペールの法則を適用すると \(B_2 = \mu_0 n I\) が得られ、断面積や半径には依存しない。だから「ソレノイドは十分大きい」という条件のもとで、内部の \(Q\) はどこでも同じ \(B_2\) を感じる。
ソレノイド内部は\(B = \mu_0 n I\)(\(n\) は単位長さあたりの巻き数)。太さ・長さによらず一様。
\(+Q\) に \(+y\) 向きの初速 \(v_2\) を与えると、ソレノイド内部の磁場からローレンツ力を受ける。大きさは \(f = Q v_2 B_2\)(速度と磁場が直交)。この \(+Q\) が \(Q_0\) を中心に等速円運動するには、ローレンツ力が中心(\(Q_0\))に向かう向き(\(-x\))でなければならない。この条件からソレノイド磁場の向きが決まる。
速度 \(v_2\)(\(+y\))と磁場 \(B_2\)(\(z\) 軸方向)は直交するので、ローレンツ力の大きさは:
$$f = Q v_2 B_2$$向きの決定:\(+Q\) が \(Q_0\)(\(-x\) 側)を中心に円運動するには、力の合力が中心(\(-x\))向きでなければならない。クーロン力は斥力で \(+x\) 向きなので、ローレンツ力が \(-x\) 向きでなければ円運動できない。\(\vec f = Q\vec v_2\times\vec B_2\) で \(\vec v_2=+\hat y\) のとき力が \(-\hat x\) になるには:
$$(+\hat{y})\times\vec B_2 = -\hat{x}\ \Longrightarrow\ \vec B_2 = -\hat{z}\ (\because\ \hat{y}\times(-\hat{z})=-\hat{x})$$すなわち \(B_2\) は \(-z\) 向き(紙面の表から裏、読者から遠ざかる向き)。ローレンツ力は \(-x\) 向き(\(Q_0\) に向かう)。
もし \(B_2\) が \(+z\) 向きだと、\(+y\) に動く \(+Q\) が受けるローレンツ力は \(+x\) 向き(外向き)となり、クーロン斥力と同じ向きに合わさって中心から離れてしまう。これでは円運動が成り立たない。円運動が実現している以上、\(B_2\) は \(-z\) 向きであり、ローレンツ力が向心力の一部を担っていると分かる。図3 の時計回りの電流の向きもこれと整合する。
ローレンツ力は\(f = qvB\)(\(\vec v\perp\vec B\))、向きは\(\vec f = q\vec v\times\vec B\)。円運動の条件から磁場の向きを逆算できる。
\(+Q\) には 2 つの力がはたらく:\(Q_0\) からのクーロン斥力(外向き \(+x\))と、ローレンツ力(内向き \(-x\))。円運動の向心力は「中心に向かう正味の力」なので、内向きのローレンツ力から外向きのクーロン斥力を引いたものが向心力になる。中心向きを正として運動方程式を立てる。
中心(\(Q_0\))に向かう向きを正とする。ローレンツ力 \(Q v_2 B_2\) は中心向き(正)、クーロン斥力 \(\dfrac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}\) は外向き(負)。向心方向の運動方程式は:
$$m\,\frac{v_2^{\,2}}{r} = Q v_2 B_2 - \frac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}$$問2(7)(\(-Q\) の場合)は向心力がクーロン引力だけだった。今回(\(+Q\))はクーロン力が斥力(外向き)に変わり、代わりにローレンツ力(内向き)が向心力を供給する。正味の向心力は「内向きのローレンツ力 − 外向きの斥力」。符号(向き)の管理がこの問題の肝である。
複数の力がはたらく円運動では向心方向の正味の力を向心力とする。外向きの力は引き、内向きの力は足す。
\(+Q\) の初速 \(v_2\) が、問2(8) の \(-Q\) の初速 \(v_1\) と等しいとき、両者は同じ半径 \(r\) で回っている。問2(7) の式(\(-Q\) の向心力=クーロン引力)を使うと、クーロン力の項をまとめて消去でき、\(B_2\) を \(Q, m, r, v_2\) だけで表せる。
問2(7) より、\(-Q\)(初速 \(v_1\))の場合は次が成り立っていた:
$$\frac{Q_0 Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2} = m\,\frac{v_1^{\,2}}{r}$$\(v_2 = v_1\) なので、この右辺は \(m\dfrac{v_2^{\,2}}{r}\) と書ける。これを問2(12) の運動方程式のクーロン項に代入する:
$$m\,\frac{v_2^{\,2}}{r} = Q v_2 B_2 - m\,\frac{v_2^{\,2}}{r}$$\(m\dfrac{v_2^{\,2}}{r}\) を左辺に集めて \(B_2\) について解く:
$$2m\,\frac{v_2^{\,2}}{r} = Q v_2 B_2 \quad\Rightarrow\quad B_2 = \frac{2 m v_2^{\,2}/r}{Q v_2} = \frac{2 m v_2}{Q r}$$\(-Q\) はクーロン引力だけで向心力をまかなっていた。\(+Q\) は同じ速さ・同じ半径で回るのに、クーロン力が斥力に反転してしまう。すると必要な向心力を得るには、ローレンツ力が「向心力ぶん+斥力を打ち消すぶん」の2 倍のクーロン力に相当する大きさでなければならない。だから \(Q v_2 B_2 = 2\times m\dfrac{v_2^{\,2}}{r}\) となり、この関係が \(B_2 = \dfrac{2m v_2}{Qr}\) を生む。
条件(\(v_2=v_1\))を使って既知の関係式を代入し未知項を消去するのが定石。クーロン力が引力→斥力に反転する分、ローレンツ力は 2 倍必要になる。
周期は「1 周の道のり ÷ 速さ」で \(T = \dfrac{2\pi r}{v_2}\)。ここに問2(13) で得た関係 \(B_2 = \dfrac{2m v_2}{Qr}\) を使えば、\(r\) や \(v_2\) を消して \(Q, m, B_2\) だけで表せる。磁場中の荷電粒子の周期は速さや半径によらず一定になる(サイクロトロン周期に類似)ことが見える。
等速円運動の周期は「1 周の長さ ÷ 速さ」:
$$T = \frac{2\pi r}{v_2}$$問2(13) の \(B_2 = \dfrac{2m v_2}{Q r}\) を \(v_2\) について解くと \(v_2 = \dfrac{Q B_2 r}{2m}\)。これを代入する:
$$T = \frac{2\pi r}{\dfrac{Q B_2 r}{2m}} = \frac{2\pi r \cdot 2m}{Q B_2 r} = \frac{4\pi m}{Q B_2}$$クーロン力がない純粋な磁場中の円運動なら、周期は \(T_0 = \dfrac{2\pi m}{Q B_2}\)(サイクロトロン周期、速さによらず一定)。本問はクーロン斥力の分だけローレンツ力を強くする必要があり、その結果 \(v_2\) と半径の関係が変わって周期は \(\dfrac{4\pi m}{Q B_2}\)、すなわち純粋磁場の場合の 2 倍になる。周期が速さ・半径によらず磁束密度だけで決まる点は共通している。
磁場中の円運動の周期は速さや半径によらず磁束密度で決まる。周期は \(T=\dfrac{2\pi r}{v}\) を出発点に、既知の関係で \(r, v\) を消去する。
電荷 \(+Q\) が円周上をぐるぐる回ると、点 R をくり返し通過する。1 周にかかる時間は \(T=\dfrac{2\pi r}{v_2}\)。円形電流の強さは「単位時間あたりに点 R を通過する電気量」なので、電気量 \(Q\) を周期 \(T\) で割れば求まる。
円形電流の強さ \(i\) は、点 R を単位時間あたりに通過する電気量。1 周期 \(T\) ごとに電気量 \(Q\) が 1 回通過するので:
$$i = \frac{Q}{T}$$周期は \(T = \dfrac{2\pi r}{v_2}\)。代入する:
$$i = \frac{Q}{\dfrac{2\pi r}{v_2}} = \frac{Q v_2}{2\pi r}$$円軌道上のどの断面をとっても、1 周期に 1 回だけ電荷 \(Q\) が通過する。よって平均電流は \(\dfrac{Q}{T}\)。これは「電流=単位時間あたりの電気量」という定義そのもの。ボーア模型で電子の公転を円形電流とみなす手法と同じ発想である。
周回する電荷は円形電流 \(i = \dfrac{Q}{T} = \dfrac{Qv}{2\pi r}\) とみなせる。1 周期に 1 回、電気量 \(Q\) が通過する。
半径 \(r\) の円形電流 \(i\) は、その中心(ここでは \(Q_0\) の位置)に磁場をつくる。中心の磁束密度は \(B = \dfrac{\mu_0 i}{2r}\)。\(i\) は問2(15) で分かっているので代入するだけ。向きは、円運動の回り方から右ねじで判定し、ソレノイド磁場と比べる。
半径 \(r\) の円形電流 \(i\) が中心につくる磁束密度は \(B = \dfrac{\mu_0 i}{2r}\)。問2(15) の \(i = \dfrac{Q v_2}{2\pi r}\) を代入する:
$$B = \frac{\mu_0 i}{2r} = \frac{\mu_0}{2r}\cdot\frac{Q v_2}{2\pi r} = \frac{\mu_0 Q v_2}{4\pi r^2}$$向きの決定:点 R(\(+x\) の位置)で \(+Q\) は \(+y\) 向きに動くので、\(Q_0\) を中心に反時計回りに回る。反時計回りの正電荷の流れ(=反時計回りの円形電流)は、右ねじの法則で中心に \(+z\) 向きの磁場をつくる。一方、ソレノイドの磁場 \(B_2\) は問2(11) で \(-z\) 向きと分かっている。したがって、この円形電流の磁場はソレノイドの磁場と逆向き。
位置 \((r,0)\) で速度 \(+y\) は、角度が増える向き(反時計回り)を意味する。反時計回りの正電荷の周回は、磁気モーメントが \(+z\) 向き(紙面手前)になり、中心での磁場も \(+z\)。ソレノイド磁場が \(-z\)(紙面奥)だったので、両者は互いに逆向き。この「回る荷電粒子が外部磁場を打ち消す向きの磁場をつくる」構図は、反磁性のイメージにもつながる。
円形電流の中心磁場は\(B = \dfrac{\mu_0 i}{2r}\)。向きは右ねじ(電流の回る向きに指を握ると親指が磁場の向き)。
\(Q_0\) を取り除くと、クーロン力が消えて \(+Q\) にはたらくのはローレンツ力だけになる。これは純粋な磁場中の等速円運動で、半径は \(r' = \dfrac{m v_2}{Q B_2}\)。ソレノイド電流はそのままなので \(B_2\) も同じ。問2(13) の \(B_2\) を代入すると、半径がちょうど元の半分 \(r/2\) になる。
\(Q_0\) を取り除くとクーロン力が消え、\(+Q\) にはたらくのはローレンツ力のみ。純粋な磁場中の等速円運動の半径 \(r'\) は、向心力=ローレンツ力より:
$$m\,\frac{v_2^{\,2}}{r'} = Q v_2 B_2 \quad\Rightarrow\quad r' = \frac{m v_2}{Q B_2}$$ソレノイド電流は保たれているので \(B_2\) は問2(13) の \(B_2 = \dfrac{2m v_2}{Q r}\) のまま。代入する:
$$r' = \frac{m v_2}{Q\cdot\dfrac{2m v_2}{Q r}} = \frac{m v_2\cdot Q r}{Q\cdot 2 m v_2} = \frac{r}{2}$$\(Q_0\) があったとき、ローレンツ力は「向心力 \(m\dfrac{v_2^{\,2}}{r}\)」と「斥力を打ち消すぶん \(m\dfrac{v_2^{\,2}}{r}\)」を合わせた2 倍の大きさだった(問2(13) 参照)。\(Q_0\) を取り除くと斥力が消えるので、同じ大きさのローレンツ力(\(B_2, v_2\) が同じ)は今や向心力の2 倍を供給できる。向心力が 2 倍あれば半径は半分になる(\(m\dfrac{v_2^{\,2}}{r'}\) が 2 倍 → \(r'=r/2\))。
純粋な磁場中の円運動の半径は\(r = \dfrac{mv}{QB}\)。同じ \(B, v\) でも、クーロン斥力が消えるとローレンツ力が余り、半径は半分に縮む。
この大問の答えは文字式ばかりなので、代表的な数値を入れて「だいたいどれくらいか」を体感しよう。平行電流の力、円運動の周期・半径などを具体的な値でチェックすると、式の妥当性が確認できる。
平行電流の力の大きさを確認する。\(\mu_0 = 4\pi\times10^{-7}\ \mathrm{N/A^2}\)、\(I_1=I_2=1\ \mathrm{A}\)、\(a=1\ \mathrm{m}\) のとき、単位長さあたりの力:
$$\frac{F}{L} = \frac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi a} = \frac{4\pi\times10^{-7}\times 1\times 1}{2\pi\times 1} = 2\times10^{-7}\ \mathrm{N/m}$$円運動の周期と、\(Q_0\) を除いた後の半径の関係も再掲する:
$$T = \frac{4\pi m}{Q B_2},\qquad r' = \frac{r}{2}$$円形電流が \(Q_0\) の位置につくる磁場は \(B = \dfrac{\mu_0 Q v_2}{4\pi r^2}\) で、向きはソレノイド磁場(\(-z\))と逆の \(+z\)。
平行電流の力 \(F/L = 2\times10^{-7}\) N/m(\(I=1\)A, \(a=1\)m)、周期 \(T = \dfrac{4\pi m}{Q B_2}\)、\(Q_0\) 除去後の半径 \(r' = r/2\)、円形電流の磁場はソレノイド磁場と逆向き。
本問では磁束密度の公式を 3 種類使い分けた:
係数(\(2\pi r\)、\(n\)、\(2r\))の違いを取り違えないことが得点のカギ。
文字式で答えたら代表値で数値を入れて規模感を確認すると計算ミスに気づける。磁場の 3 公式(直線・ソレノイド・円形電流)は係数の違いを正確に覚えておく。