前期 大問Ⅱ:コンデンサーによる非接触給電(交流RLC回路・共振・インピーダンス整合)

解法の指針

壁の両側に置いた極板でコンデンサーを作り、導線をつながずに電気エネルギーを伝える「非接触給電」を題材にした交流回路の大問です。壁を挟んだ 2 つのコンデンサー(A-B と C-D、それぞれ静電容量 \(C\))と抵抗 \(R\)、交流電源が直列につながっています。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1(1) — 平行板コンデンサーの静電容量 \(C\)

直感的理解

壁そのものが誘電体になっている平行板コンデンサーです。極板の面積 \(S\) が大きいほど電荷をたくさん貯められ、極板間隔(=壁の厚さ)\(d\) が広いほど貯めにくくなります。誘電率 \(\varepsilon\) は「その物質がどれだけ電気を貯めやすいか」を表す量。式にすると \(C=\dfrac{\varepsilon S}{d}\) です。

極板は面積 \(S\)〔m²〕の正方形で、間には厚さ \(d\)〔m〕・誘電率 \(\varepsilon\)〔F/m〕の壁(誘電体)がはさまっている。平行板コンデンサーの静電容量の式にそのまま当てはめる:

$$C = \varepsilon\,\frac{S}{d}$$

誘電率 \(\varepsilon\) には比誘電率と真空の誘電率の積 \(\varepsilon = \varepsilon_r \varepsilon_0\) が含まれているが、この問題では壁の誘電率が \(\varepsilon\) として与えられているので、そのまま代入すればよい。

答え: $$C = \frac{\varepsilon S}{d}\ \text{[F]}$$
補足:なぜ 2 つのコンデンサーは等しい容量になるか

極板 A-B と C-D はどちらも同じ面積 \(S\)、同じ壁の厚さ \(d\)、同じ誘電率 \(\varepsilon\) の壁を挟んでいる。したがってまったく同じ静電容量 \(C=\dfrac{\varepsilon S}{d}\) を持つ。このあと 2 つのコンデンサーは直列に扱われ、合成容量は \(\dfrac{C}{2}\) になる。

Point

平行板コンデンサーの容量は\(C=\dfrac{\varepsilon S}{d}\)。面積に比例、間隔に反比例、誘電率に比例。壁を誘電体とみなすのがこの問題の発想。

問1(2) — 点 A, B 間にかかる電圧の実効値

直感的理解

点 A から点 B までの間には、壁を挟んだコンデンサー A-B が 1 個だけ入っている(図 1 参照)。直列回路なので、そこを流れる電流の実効値は回路全体と同じ \(I_e\)。コンデンサーにかかる電圧は「電流 × 容量リアクタンス」で、容量リアクタンスは \(X_C=\dfrac{1}{\omega C}\)。だから \(V_{AB}=I_e X_C\)。

コンデンサー 1 個の容量リアクタンスは \(X_C=\dfrac{1}{\omega C}\)。点 A-B 間にはこのコンデンサーが 1 個あり、直列回路なので流れる電流の実効値は回路全体と同じ \(I_e\)。よって A-B 間の電圧の実効値は:

$$V_{AB} = I_e \, X_C = I_e \cdot \frac{1}{\omega C}$$

すなわち:

$$V_{AB} = \frac{I_e}{\omega C}$$
答え: $$V_{AB} = \frac{I_e}{\omega C}\ \text{[V]}$$
補足:点 A-B は「1 個」であって「2 個」ではない

図 1 で、点 A は電源と極板 A の間、点 B は極板 B と抵抗 R の間にある。この 2 点の間にはさまっているのはコンデンサー A-B の 1 個だけ。もう一方のコンデンサー C-D は回路の下側(帰り道)にあり、A-B 間には含まれない。だから \(V_{AB}=I_e\cdot\dfrac{1}{\omega C}\) であって、\(\dfrac{2I_e}{\omega C}\) ではない。

Point

コンデンサーにかかる電圧は\(V=I\,X_C=\dfrac{I}{\omega C}\)。直列回路では各素子を流れる電流が共通なので、素子ごとの電圧は「共通電流 × その素子のリアクタンス」で出る。

問1(3) — 電流の実効値 \(I_e\)

直感的理解

回路には抵抗 \(R\) が 1 個と、コンデンサーが 2 個直列に入っている。コンデンサー 2 個直列の容量リアクタンスは \(2X_C=\dfrac{2}{\omega C}\)。抵抗とコンデンサーでは電圧と電流の位相がずれるので、単純な足し算ではなくピタゴラスの定理のように「二乗して足して平方根」でインピーダンス \(Z\) を出す。電流は \(I_e=\dfrac{V_e}{Z}\)。

コンデンサー 2 個が直列なので、合成容量は \(\dfrac{C}{2}\)、合成の容量リアクタンスは \(\dfrac{1}{\omega (C/2)}=\dfrac{2}{\omega C}=2X_C\)。抵抗 \(R\) とは位相が \(90^\circ\) ずれるため、インピーダンスは次のように二乗和の平方根で求める:

$$Z = \sqrt{R^2 + \left(\frac{2}{\omega C}\right)^2} = \sqrt{R^2 + \frac{4}{\omega^2 C^2}}$$

電流の実効値はオームの法則の交流版 \(I_e=\dfrac{V_e}{Z}\):

$$I_e = \frac{V_e}{Z} = \frac{V_e}{\sqrt{R^2 + \dfrac{4}{\omega^2 C^2}}}$$
答え: $$I_e = \frac{V_e}{\sqrt{R^2 + \dfrac{4}{\omega^2 C^2}}}\ \text{[A]}$$
補足:なぜ足し算ではなく二乗和の平方根なのか

抵抗の電圧は電流と同位相、コンデンサーの電圧は電流より位相が \(90^\circ\) 遅れる。位相が \(90^\circ\) ずれた 2 つのベクトルの合成は、直角三角形の斜辺と同じで「二乗して足して平方根」になる。実効値どうしを単純に足す(\(R+\dfrac{2}{\omega C}\))のは誤り。

Point

直列 RC 回路のインピーダンスは\(Z=\sqrt{R^2+(2X_C)^2}\)。抵抗成分とリアクタンス成分は直角三角形の 2 辺、\(Z\) はその斜辺。電流は \(I_e=\dfrac{V_e}{Z}\)。

問1(4) — 抵抗 \(R\) で消費される電力の時間平均

直感的理解

コンデンサーは電気エネルギーを一時的に蓄えては返すだけで、時間平均では電力を消費しない。実際に熱として消費されるのは抵抗 \(R\) だけ。抵抗の消費電力の時間平均は「(電流の実効値)² × 抵抗」で計算できる。

コンデンサーの消費電力の時間平均は 0 なので、電力を消費するのは抵抗 \(R\) だけ。抵抗の消費電力の時間平均は、実効値を使って \(\overline{P_R}=I_e^{\,2}R\)(直流と同じ形になるのが実効値の便利なところ):

$$\overline{P_R} = I_e^{\,2}\, R$$

この \(I_e\) に問1(3)の結果を代入すれば、\(V_e,\omega,C,R\) だけの式にもできる(参考):

$$\overline{P_R} = \frac{V_e^{\,2}\,R}{R^2 + \dfrac{4}{\omega^2 C^2}}$$
答え: $$\overline{P_R} = I_e^{\,2}\, R\ \text{[W]}$$
補足:実効値の定義と「時間平均電力」の関係

電流の実効値 \(I_e\) は「その交流と同じ発熱を生む直流の値」として定義される。瞬時電力は \(p(t)=R\,I(t)^2=R\,I_m^2\cos^2(\omega t)\) で、\(\cos^2\) の時間平均は \(\tfrac12\) だから \(\overline{p}=\tfrac12 R I_m^2\)。ここで \(I_e=\dfrac{I_m}{\sqrt2}\)(\(I_e^2=\tfrac12 I_m^2\))を使えば \(\overline{P_R}=R I_e^2\) となり、直流とまったく同じ形にまとまる。

Point

交流でも抵抗の平均消費電力は \(\overline{P_R}=I_e^{\,2}R\)。コイル・コンデンサーの平均消費電力は 0。実効値を使うと直流の公式がそのまま使える。

問2(5) — コイル追加後の電流の実効値 \(I_e\)

直感的理解

コイルを 2 個加えると RLC 直列回路になる。コイルの誘導リアクタンス(合成 \(2X_L\))とコンデンサーの容量リアクタンス(合成 \(2X_C\))は位相が逆なので、リアクタンス成分は差 \(2X_L-2X_C\) になる。あとは問1(3)と同じで、抵抗成分 \(R\) とリアクタンス成分を直角三角形で合成する。

コイル 2 個直列の誘導リアクタンスは \(2X_L\)、コンデンサー 2 個直列の容量リアクタンスは \(2X_C\)。両者は位相が逆向きなので、回路のリアクタンス成分はその差 \(2X_L-2X_C\)。インピーダンスは抵抗成分 \(R\) と直角に合成する:

$$Z = \sqrt{R^2 + (2X_L - 2X_C)^2} = \sqrt{R^2 + 4(X_L - X_C)^2}$$

電流の実効値は \(I_e=\dfrac{V_e}{Z}\):

$$I_e = \frac{V_e}{\sqrt{R^2 + 4(X_L - X_C)^2}}$$
答え: $$I_e = \frac{V_e}{\sqrt{R^2 + 4(X_L - X_C)^2}}\ \text{[A]}$$
補足:なぜ「差」になるのか(位相の向き)

コイルにかかる電圧は電流より \(90^\circ\) 進み、コンデンサーにかかる電圧は電流より \(90^\circ\) 遅れる。両者はちょうど正反対の位相なので、電圧ベクトルとしては打ち消し合い、合成リアクタンスは 差 \(2X_L-2X_C\) になる。\(X_L>X_C\) なら回路は誘導性、\(X_L\lt X_C\) なら容量性。

Point

直列 RLC のインピーダンスは\(Z=\sqrt{R^2+(2X_L-2X_C)^2}\)。コイルとコンデンサーは位相が逆なので、リアクタンスは足すのではなく引く

問2(6) — 抵抗 \(R\) の消費電力(\(V_0\) で表す)

直感的理解

問1(4)と同じく、消費電力は \(\overline{P_R}=I_e^{\,2}R\)。ここに問2(5)の \(I_e\) を代入する。ただし今回は電源電圧の最大値 \(V_0\) で表すよう指定されているので、実効値と最大値の関係 \(V_e=\dfrac{V_0}{\sqrt2}\)(\(V_e^2=\dfrac{V_0^2}{2}\))を使う。

消費電力は \(\overline{P_R}=I_e^{\,2}R\)。問2(5)の \(I_e=\dfrac{V_e}{\sqrt{R^2+4(X_L-X_C)^2}}\) を二乗して代入する:

$$\overline{P_R} = \frac{V_e^{\,2}\,R}{R^2 + 4(X_L - X_C)^2}$$

電源電圧の最大値 \(V_0\) で表すため、\(V_e=\dfrac{V_0}{\sqrt2}\) すなわち \(V_e^{\,2}=\dfrac{V_0^{\,2}}{2}\) を代入する:

$$\overline{P_R} = \frac{\dfrac{V_0^{\,2}}{2}\,R}{R^2 + 4(X_L - X_C)^2} = \frac{V_0^{\,2}\,R}{2\left(R^2 + 4(X_L - X_C)^2\right)}$$
答え: $$\overline{P_R} = \frac{V_0^{\,2}\,R}{2\left(R^2 + 4(X_L - X_C)^2\right)}\ \text{[W]}$$
補足:実効値と最大値の関係を忘れずに

正弦波交流では、実効値は最大値の \(\dfrac{1}{\sqrt2}\) 倍:\(V_e=\dfrac{V_0}{\sqrt2}\)、\(I_e=\dfrac{I_0}{\sqrt2}\)。二乗すると \(\dfrac12\) 倍になる。電力を最大値で表すときは、この \(\dfrac12\) の係数を忘れやすいので注意。この式は \(X_L=X_C\) のとき分母が最小 \(R^2\) となり、\(\overline{P_R}=\dfrac{V_0^{\,2}}{2R}\) が最大値になる(問2(9)につながる)。

Point

抵抗の消費電力は\(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}R}{Z^2}=\dfrac{V_0^{\,2}R}{2Z^2}\)。最大値で書くときは \(V_e^{\,2}=\dfrac{V_0^{\,2}}{2}\) を使う。

問2(7) — 交流電源が供給する電力の時間平均

直感的理解

電源が供給する瞬時電力は \(p(t)=V(t)\,I(t)\)。電流を \(I(t)=I_c\cos(\omega t)+I_s\sin(\omega t)\) と分けたとき、時間平均をとると\(\cos^2\) の項だけが残り、\(\cos\cdot\sin\) の項は消える。だから \(I_s\)(電圧と \(90^\circ\) ずれた成分=無効電流)は平均電力に寄与せず、電圧と同位相の \(I_c\) だけが効く。

瞬時電力は電圧と電流の積。\(V(t)=V_0\cos(\omega t)\)、\(I(t)=I_c\cos(\omega t)+I_s\sin(\omega t)\) を掛ける:

$$p(t) = V_0\cos(\omega t)\bigl[I_c\cos(\omega t) + I_s\sin(\omega t)\bigr] = V_0 I_c\cos^2(\omega t) + V_0 I_s\cos(\omega t)\sin(\omega t)$$

1 周期にわたる時間平均をとる。\(\cos^2(\omega t)\) の平均は \(\dfrac12\)、\(\cos(\omega t)\sin(\omega t)=\dfrac12\sin(2\omega t)\) の平均は 0:

$$\overline{P} = V_0 I_c\cdot\frac{1}{2} + V_0 I_s\cdot 0 = \frac{1}{2}V_0 I_c$$
答え: $$\overline{P} = \frac{1}{2}V_0 I_c\ \text{[W]}$$
補足:I_c は「有効電流」、I_s は「無効電流」

電流のうち電圧と同位相の成分 \(I_c\)(\(\cos\) 成分)は有効電流と呼ばれ、実際に電力を運ぶ。電圧と \(90^\circ\) ずれた成分 \(I_s\)(\(\sin\) 成分)は無効電流で、電源とコイル・コンデンサーの間でエネルギーを行き来させるだけで、時間平均では電力を運ばない。だから供給電力の平均は \(I_c\) だけで決まる。

Point

供給電力の時間平均は\(\overline{P}=\dfrac12 V_0 I_c\)。電圧と同位相の電流成分 \(I_c\) だけが平均電力を運び、\(90^\circ\) ずれた \(I_s\) は寄与しない。

問2(8) — 電流の \(\cos\) 成分 \(I_c\)

直感的理解

電圧 \(V(t)=V_0\cos(\omega t)\) に対して電流は \(I(t)=\dfrac{V_0}{Z}\cos(\omega t-\phi)\)(位相 \(\phi\) だけ遅れる)と書ける。これを加法定理で展開すると \(\cos(\omega t)\) の係数が \(I_c\) になる。その係数は \(\dfrac{V_0}{Z}\cos\phi\) で、\(\cos\phi=\dfrac{R}{Z}\)(力率)だから \(I_c=\dfrac{V_0 R}{Z^2}\)。

電源電圧 \(V(t)=V_0\cos(\omega t)\) に対し、電流は位相 \(\phi\) だけ遅れて \(I(t)=\dfrac{V_0}{Z}\cos(\omega t-\phi)\) となる(\(Z=\sqrt{R^2+4(X_L-X_C)^2}\))。加法定理で展開する:

$$I(t) = \frac{V_0}{Z}\bigl[\cos(\omega t)\cos\phi + \sin(\omega t)\sin\phi\bigr]$$

問2(7)の \(I(t)=I_c\cos(\omega t)+I_s\sin(\omega t)\) と係数を比較すると、\(\cos(\omega t)\) の係数が \(I_c\):

$$I_c = \frac{V_0}{Z}\cos\phi$$

力率 \(\cos\phi=\dfrac{R}{Z}\)(インピーダンス三角形で抵抗成分/斜辺)を代入する:

$$I_c = \frac{V_0}{Z}\cdot\frac{R}{Z} = \frac{V_0 R}{Z^2} = \frac{V_0 R}{R^2 + 4(X_L - X_C)^2}$$
答え: $$I_c = \frac{V_0 R}{R^2 + 4(X_L - X_C)^2}\ \text{[A]}$$
検算:問2(7)と組み合わせると問2(6)に一致

問2(7)の \(\overline{P}=\dfrac12 V_0 I_c\) に、いま求めた \(I_c\) を代入する:

$$\overline{P} = \frac{1}{2}V_0\cdot\frac{V_0 R}{R^2 + 4(X_L-X_C)^2} = \frac{V_0^{\,2}R}{2\left(R^2+4(X_L-X_C)^2\right)}$$

これは問2(6)で求めた抵抗の消費電力とぴったり一致する。電源の供給電力の平均=抵抗の消費電力の平均(コイル・コンデンサーは平均で消費しない)という関係とも整合している。

Point

電流の有効成分は\(I_c=\dfrac{V_0}{Z}\cos\phi=\dfrac{V_0 R}{Z^2}\)。電流フェーザを電圧と平行・垂直な成分に分けたときの、平行成分(\(\cos\) 成分)が \(I_c\)。

問2(9) — 消費電力が最大となる誘導リアクタンス \(X_L\)

直感的理解

問2(6)の消費電力 \(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}R}{R^2+4(X_L-X_C)^2}\) を大きくするには、分母を小さくすればよい。分母のうち \(R\) は固定なので、\(4(X_L-X_C)^2\) を最小=0 にするのが最善。それは \(X_L=X_C\)、つまり共振のとき。

問2(6)の消費電力を \(V_e\) で書くと \(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}R}{R^2+4(X_L-X_C)^2}\)。分子は \(X_L\) によらないので、これを最大にするには分母を最小にすればよい。分母 \(R^2+4(X_L-X_C)^2\) は、二乗項 \(4(X_L-X_C)^2\ge 0\) が 0 のとき最小になる:

$$4(X_L - X_C)^2 = 0 \quad\Rightarrow\quad X_L = X_C$$

このとき分母は \(R^2\) となり、消費電力は最大値 \(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}}{R}\) をとる。指定された記号 \(V_e, X_C, R\) のうち必要なのは \(X_C\) だけで、答えは:

$$X_L = X_C$$
答え: $$X_L = X_C\ \text{[Ω]}\quad(\text{共振条件})$$
補足:共振の物理的意味(角周波数で書くと)

\(X_L=\omega L\)、\(X_C=\dfrac{1}{\omega C}\) だから、共振条件 \(X_L=X_C\) は \(\omega L=\dfrac{1}{\omega C}\)、すなわち \(\omega=\dfrac{1}{\sqrt{LC}}\)。このとき電圧と電流が同位相になり(力率 1)、回路は純抵抗のように振る舞う。コイルとコンデンサーの間だけでエネルギーが往復し、電源からは抵抗が消費する分だけが供給される。

Point

直列共振の条件は\(X_L=X_C\)。このときインピーダンスが最小 \(Z=R\) となり、電流・消費電力が最大になる。

問2(10) — 共振時の点 A, E 間の電圧の実効値

直感的理解

点 A から点 E までの間には、コンデンサー A-B が 1 個とコイル L が 1 個が直列に入っている(図 3)。コンデンサーの電圧とコイルの電圧は位相が正反対。共振(\(X_L=X_C\))ではこの 2 つの電圧が同じ大きさで逆向きになり、ちょうど打ち消し合う。だから点 A-E 間の電圧は 0 になる。

点 A-E 間には、コンデンサー A-B(容量リアクタンス \(X_C\))とコイル L(誘導リアクタンス \(X_L\))が 1 個ずつ直列に入っている。この区間の合成リアクタンスは、位相が逆なので差 \(X_L-X_C\)。電流の実効値を \(I_e\) とすると、A-E 間電圧の実効値は:

$$V_{AE} = I_e\,|X_L - X_C|$$

共振条件 \(X_L=X_C\)(問2(9))を代入すると:

$$V_{AE} = I_e\,|X_C - X_C| = I_e\cdot 0 = 0$$
答え: $$V_{AE} = 0\ \text{[V]}$$
補足:コイル1個・コンデンサー1個でも打ち消す理由

共振では回路全体で「コイル 2 個」と「コンデンサー 2 個」のリアクタンスが釣り合う(\(2X_L=2X_C\))。これは 1 個あたりでも \(X_L=X_C\) が成り立つということ。A-E 間はコイル 1 個とコンデンサー 1 個なので、電圧の大きさは \(I_e X_L\) と \(I_e X_C\) で等しく、向きは正反対。したがってベクトル和は 0。個々の素子には電圧がかかっているのに、区間の合計電圧は 0 という共振特有の現象。

Point

共振時、直列につながったコイルとコンデンサーの電圧は大きさ等しく逆向きで打ち消す。両者をまたぐ区間の電圧は 0 になる。

問2(11) — 問1(4)と比べた消費電力の変化と理由

直感的理解

問1(4)ではコンデンサーのリアクタンスがそのまま残り、インピーダンス \(Z=\sqrt{R^2+(2X_C)^2}\) は \(R\) より大きかった。問2(9)の共振ではコイルの電圧がコンデンサーの電圧を打ち消し、リアクタンス成分が消えて \(Z=R\) になる。インピーダンスが小さくなるぶん電流が増え、\(\overline{P_R}=I_e^{\,2}R\) は大きくなる

問1(4)ではコイルがなく、回路のインピーダンスは \(Z_1=\sqrt{R^2+(2X_C)^2}\) で \(R\) より大きかった。問2(9)の共振では \(2X_L=2X_C\) となり、コイルの電圧がコンデンサーの電圧を打ち消してリアクタンス成分が消える:

$$Z_2 = \sqrt{R^2 + (2X_L - 2X_C)^2} = \sqrt{R^2} = R \;(\lt\, Z_1)$$

インピーダンスが小さくなるので電流の実効値は増加し(\(I_e=\dfrac{V_e}{Z}\))、抵抗の消費電力 \(\overline{P_R}=I_e^{\,2}R\) は大きくなる。共振時は最大値 \(\dfrac{V_e^{\,2}}{R}\) となる。

解答欄では「大きくなる」を選び、理由(40〜60 字、「コイルにかかる電圧」を必ず使う)を次のようにまとめる:

答え:

大きくなる。

(理由・例)「共振によりコイルにかかる電圧がコンデンサーにかかる電圧を打ち消し、回路のインピーダンスが抵抗だけになって電流が増えるから。」(約54字)

補足:字数と必須語のチェック

指定は「40 字以上 60 字以下」「『コイルにかかる電圧』を必ず使う」「式・記号を使わない」。上の解答例は「コイルにかかる電圧」を含み、句読点込みで約 54 字なので条件を満たす。ポイントは 3 つ:「①コイルの電圧がコンデンサーの電圧を打ち消す」「②その結果インピーダンスが抵抗だけになる(最小)」「③電流が増えて消費電力が増える」。この因果の流れを 60 字以内に凝縮する。

Point

共振でリアクタンスが打ち消されインピーダンスが最小(=R)になると、電流が増えて消費電力は増加。記述では「コイルにかかる電圧がコンデンサーにかかる電圧を打ち消す」ことを因果の起点にする。

問3(12) — 抵抗 \(r\) を直列に加えたときの \(R\) の消費電力

直感的理解

コイルのリアクタンスは問2(9)の共振値(\(X_L=X_C\))のまま。だからコイルとコンデンサーのリアクタンスは打ち消し合い、回路には抵抗しか残らない。回路は「\(r\) と \(R\) の直列」という純抵抗回路とみなせる。電流は \(I_e=\dfrac{V_e}{R+r}\)、\(R\) の消費電力は \(I_e^{\,2}R\)。

コイルのリアクタンスは共振値(問2(9))なので、コイルとコンデンサーのリアクタンスは打ち消し合い、回路は抵抗 \(r\) と \(R\) の直列とみなせる。電流の実効値は(純抵抗なので):

$$I_e = \frac{V_e}{R + r}$$

抵抗 \(R\) の消費電力の時間平均は \(\overline{P_R}=I_e^{\,2}R\)。ここに \(I_e\) を代入する:

$$\overline{P_R} = I_e^{\,2}R = \left(\frac{V_e}{R+r}\right)^2 R = \frac{V_e^{\,2}\,R}{(R + r)^2}$$
答え: $$\overline{P_R} = \frac{V_e^{\,2}\,R}{(R + r)^2}\ \text{[W]}$$
補足:なぜリアクタンスを無視できるのか

「回路中のコイルのリアクタンスは上問(9)の値とする」と指定されている。すなわち \(X_L=X_C\) の共振状態を保つ。合成リアクタンスは \(2X_L-2X_C=0\) なので、インピーダンスは \(Z=\sqrt{(R+r)^2+0^2}=R+r\)。位相ずれもなく、直流回路とまったく同じ扱いになる。

Point

共振を保ったまま内部抵抗 \(r\) を加えると、回路は純抵抗 \(R+r\) になる。\(R\) の消費電力は \(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}R}{(R+r)^2}\)。

問3(13) — \(R\) の消費電力が最大となる \(R\)

直感的理解

\(R\) を大きくすると 1 個あたりの電圧は増えるが、電流は減る。\(R\) を小さくすると電流は増えるが電圧が減る。両者の兼ね合いで、消費電力 \(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}R}{(R+r)^2}\) には最大となる最適な \(R\) がある。これがインピーダンス整合で、答えは \(R=r\)。

問3(12)より \(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}R}{(R+r)^2}\)。これを \(R\) の関数とみて最大値を探す。分母・分子を \(R\) で割って整理すると:

$$\overline{P_R} = \frac{V_e^{\,2}}{\dfrac{(R+r)^2}{R}} = \frac{V_e^{\,2}}{R + 2r + \dfrac{r^2}{R}}$$

分母 \(R+\dfrac{r^2}{R}+2r\) を最小にすればよい。\(R>0,\ r>0\) のとき、相加平均・相乗平均の関係より \(R+\dfrac{r^2}{R}\ge 2\sqrt{R\cdot\dfrac{r^2}{R}}=2r\)。等号成立は \(R=\dfrac{r^2}{R}\)、すなわち:

$$R^2 = r^2 \quad\Rightarrow\quad R = r\quad(R>0)$$

このとき分母は最小 \(4r\) となり、消費電力は最大値 \(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}}{4r}\) をとる。

答え: $$R = r\ \text{[Ω]}\quad\left(\text{このとき }\overline{P_R}=\frac{V_e^{\,2}}{4r}\right)$$
別解:微分で最大値を求める

\(f(R)=\dfrac{R}{(R+r)^2}\) を \(R\) で微分する。商の微分公式より:

$$f'(R) = \frac{(R+r)^2 - R\cdot 2(R+r)}{(R+r)^4} = \frac{(R+r) - 2R}{(R+r)^3} = \frac{r - R}{(R+r)^3}$$

\(f'(R)=0\) となるのは分子 \(r-R=0\)、すなわち \(R=r\)。\(R\lt r\) で \(f'>0\)(増加)、\(R>r\) で \(f'\lt 0\)(減少)だから、\(R=r\) で確かに最大。相加相乗を使った結果と一致する。

Point

電源の内部抵抗 \(r\) がある回路で、負荷 \(R\) の消費電力が最大になるのは\(R=r\)(インピーダンス整合)のとき。相加相乗(または微分)で導ける定番の結論。

数値で確認:代表値でスケール感をつかむ

直感的理解

この大問の答えはすべて文字式だが、代表的な数値を入れると「だいたいどれくらいか」が見える。壁を挟んだコンデンサーの容量、容量リアクタンス、共振周波数、最大送電電力を具体的な数値で計算し、非接触給電の規模感を確認しよう。

壁の誘電率などから容量を \(C=88\ \text{pF}\)(\(=88\times10^{-12}\ \text{F}\))、周波数を \(f=100\ \text{kHz}\)(\(\omega=2\pi f\))と仮定して、容量リアクタンスを計算する:

$$X_C = \frac{1}{\omega C} = \frac{1}{2\pi\times(100\times10^{3})\times(88\times10^{-12})} \fallingdotseq 1.8\times10^{4}\ \text{Ω} = 18\ \text{kΩ}$$

このままでは \(X_C\) が大きく電流が流れにくいが、共振(\(X_L=X_C\))でリアクタンスを打ち消すと、回路は抵抗だけになる。内部抵抗 \(r=10\ \text{Ω}\)、実効電圧 \(V_e=100\ \text{V}\) として、整合(\(R=r=10\ \text{Ω}\))のときの最大送電電力は:

$$\overline{P_R}(\text{max}) = \frac{V_e^{\,2}}{4r} = \frac{(100)^2}{4\times 10} = \frac{10000}{40} = 250\ \text{W}$$
答え(数値例):

\(X_C\fallingdotseq 18\) kΩ(\(f=100\) kHz, \(C=88\) pF)、共振+整合で \(\overline{P_R}(\text{max})=250\) W(\(V_e=100\) V, \(r=10\) Ω)。

補足:なぜ高周波にするのか

容量リアクタンス \(X_C=\dfrac{1}{\omega C}\) は周波数に反比例する。周波数を \(100\) kHz から \(1\) MHz へ 10 倍にすれば \(X_C\) は \(\dfrac{1}{10}\)(\(1.8\) kΩ)になり、コンデンサー越しでも電流が流れやすくなる。実際のワイヤレス給電が数十 kHz〜数 MHz の高周波を使うのはこのためで、さらに共振でリアクタンスを消せば損失をぐっと抑えられる。

Point

文字式の答えは代表値を入れて規模感を確認する。最大送電電力は \(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}}{4r}\) で、内部抵抗 \(r\) が小さいほど大きい。

まとめ:非接触給電を最大化する 2 つの調整

直感的理解

この大問は「コンデンサーで壁越しに電気を送る」という実用テーマを、交流回路の 2 つの最適化にまとめている。① コイルで共振させてリアクタンスを消す(問2)、② 抵抗を整合させる \(R=r\)(問3)。どちらも「送る電力を最大にする」ための調整で、電気自動車の走行中給電などに応用される。

各問の要点を並べると次のとおり。基本量から共振・整合まで、一本の流れで理解できる。

答え(全体像):

電力を最大化するには、① コイルで共振させ(\(X_L=X_C\))リアクタンスを消し、② 負荷抵抗を内部抵抗に整合させる(\(R=r\))。このとき \(\overline{P_R}=\dfrac{V_e^{\,2}}{4r}\)。

補足:この問題が「非接触給電」として意味を持つ理由

壁を挟んだ極板は導線でつながっていないが、交流ならコンデンサーを通して電流が流れる。直流では流れないが、交流なら \(X_C=\dfrac{1}{\omega C}\) の「抵抗のようなもの」を通じてエネルギーが伝わる。角周波数 \(\omega\) を高くすれば \(X_C\) は小さくなり、より効率よく送れる。共振と整合を組み合わせて損失を抑え、最大の電力を送るのが、走行中給電(動く電気自動車に道路から給電する技術)の基本アイデアである。

Point

交流回路の電力最大化は「共振(\(X_L=X_C\))」と「整合(\(R=r\))」の 2 段構え。共振でリアクタンスを消し、整合で抵抗の分配を最適化する。