前期 大問3:波動(縦波パルスの反射・弦と気柱の共鳴)

解法の指針

問1は金属棒中の縦波パルスの伝搬と自由端反射、問2は弦の振動と気柱の共鳴を扱う波動の総合問題です。

問題の構成

全体を貫くポイント

設問① — パルス波の通過時間

直感的理解
パルス ABC は有限の「幅」を持つ波の塊。ある断面を通過するのにかかる時間は、パルスの空間的な長さを波の速さで割ればよい。

金属棒の長さ \(L = 1000\) mm \(= 1.0\) m、縦波の速さ \(v = 4000\) m/s。

パルス ABC の空間的な幅を図1から読み取る。前面 A から後面 C までの長さは約 300 mm = 0.30 m。

\(x = 0.5\) m の横断面をパルス ABC が通過する時間は、パルス全体がこの断面を通り抜けるのに要する時間:

$$\Delta t = \frac{\text{パルスの長さ}}{v} = \frac{0.30}{4000} = 7.5 \times 10^{-5} \text{ s}$$

ミリ秒に変換:

$$\Delta t = 0.075 \text{ ms}$$
答え:\(\Delta t = 0.075\) ms
補足:パルスの「通過」の意味

パルスの前面 A が \(x = 0.5\) m に到達してから、後面 C が通過し終わるまでの時間が「通過時間」。パルスが断面に到達する時刻ではないことに注意。

Point

パルスの通過時間 = パルスの空間的な長さ ÷ 波の速さ。グラフから正確にパルス幅を読み取ることが重要。

設問② — 密度の時間変化

直感的理解
縦波の変位が正の方向に増加している(勾配が正の)部分は、媒質が引き伸ばされている → 疎。逆に勾配が負の部分は圧縮されている → 密。パルスが通過するとき、断面での密度変化のパターンが決まる。

縦波の変位 \(u\) と密度変化の関係:

$$\text{密度変化} \propto -\frac{\partial u}{\partial x}$$

\(\partial u / \partial x > 0\)(変位が \(x\) 方向に増加)→ 媒質が伸びる →

\(\partial u / \partial x < 0\)(変位が \(x\) 方向に減少)→ 媒質が圧縮される →

パルス ABC が \(x = 0.5\) m を通過するとき、まず前面側(B→A 部分、勾配が負)が通過してになり、次に後面側(C→B 部分、勾配が正)が通過してになる。

答え:(a) 密 → 疎

設問③ — x = 0.9 m での変位の時間変化(自由端反射を含む)

直感的理解
自由端(\(x = 1.0\) m)では変位が同位相で反射する(山は山のまま)。\(x = 0.9\) m の観測点には、まず入射波が到達し、すぐ後に反射波が重なる。

入射波の前面 A が \(x = 0.9\) m に到達する時刻:

$$t_1 = \frac{0.9 - 0.6}{4000} = \frac{0.30}{4000} = 0.075 \text{ ms}$$

(パルス前面 A は初期位置 \(x \fallingdotseq 0.6\) m にある)

自由端(\(x = 1.0\) m)で反射した波は、あたかも端の向こう側(\(x > 1.0\))から同じ形のパルスが逆方向に進んでくるのと同じ。反射波の前面が \(x = 0.9\) m に到達する時刻は:

$$t_2 = \frac{(1.0 - 0.6) + (1.0 - 0.9)}{4000} = \frac{0.5}{4000} = 0.125 \text{ ms}$$

入射波と反射波が重なる時間帯があり、変位は重ね合わせの原理で合成される。解答用紙のグラフには入射波(実線)と反射波(一点鎖線)と合成波(実線を太く)を区別して描く。

答え:入射パルスが最初に到達し、直後に自由端反射パルス(同位相)が重なる。反射波は入射波と同じ形で逆方向に進む。合成変位はパルスが重なる間は2倍近くに増幅される。
補足:自由端反射 vs 固定端反射

自由端反射:変位が同位相(山→山、谷→谷)。固定端反射:変位が逆位相(山→谷)。

金属棒の端が自由端の場合、端は自由に動けるため変位の振幅が2倍になる。縦波では自由端で密度変化の符号が反転する(密→疎、疎→密)。

Point

自由端反射では変位は同位相。反射波は「鏡像」のように端の向こうからやってくると考える。入射波と反射波の重ね合わせで変位が増幅される。

設問④ — 定在波の基本振動数

直感的理解
金属棒の両端が自由端の場合、定在波の両端は腹になる。基本振動では棒の長さがちょうど半波長に等しい。

金属棒の両端が自由端なので、定在波の両端は

基本振動(\(n = 1\))では棒の長さ \(L\) がちょうど半波長:

$$L = \frac{\lambda_1}{2} \quad \Rightarrow \quad \lambda_1 = 2L = 2 \times 1.0 = 2.0 \text{ m}$$

基本振動数:

$$f_1 = \frac{v}{\lambda_1} = \frac{4000}{2.0} = 2000 \text{ Hz} = 2.0 \text{ kHz}$$
答え:\(f_1 = 2000\) Hz \(= 2.0\) kHz
補足:開管と閉管の定在波との比較

金属棒の両端自由端は、音波の開管に対応する:

  • 両端自由端(開管型):\(f_n = \frac{nv}{2L}\)(\(n = 1, 2, 3, \ldots\))
  • 一端固定・一端自由(閉管型):\(f_m = \frac{(2m-1)v}{4L}\)(奇数倍音のみ)
Point

両端自由端では\(L = n\lambda/2\)。基本振動数は \(f_1 = v/(2L)\)。縦波の定在波も横波と同じ考え方で解ける。

設問⑤ — 閉管の共鳴条件

直感的理解
円管の下端にピストンがあるので「閉管」。閉端(ピストン側)は変位の節、開端は変位の腹。基本共鳴では管の長さが波長の1/4。

弦の基本振動で発生した音波が円管に入る。円管は下端がピストン(閉端)、上端が開放(開端)の閉管

ピストンを下げていくとき、初めて共鳴するのは閉管の基本振動。ピストンの下面から円管の下端 A までの距離が 200 mm のとき:

閉管の基本振動条件:

$$L_1 = \frac{\lambda}{4}$$ $$\lambda = 4L_1 = 4 \times 200 = 800 \text{ mm} = 0.80 \text{ m}$$

このとき、ピストンの下面が変位の、開端 B が変位の

答え:ピストン下面は媒質変位の(閉端 → 固定端に相当)。解答欄は ○ で囲む →

設問⑥ — 共鳴時の音波の振動数

直感的理解
共鳴条件 \(\lambda = 4L\) と音速 \(v = 340\) m/s から振動数が決まる。弦の振動数と気柱の共鳴振動数が一致している。

音速 \(v_s = 340\) m/s、波長 \(\lambda = 0.80\) m より:

$$f = \frac{v_s}{\lambda} = \frac{340}{0.80} = 425 \text{ Hz}$$

有効数字3桁で:

$$f = 425 \text{ Hz}$$
答え:\(f = 425\) Hz
Point

閉管の基本共鳴条件 \(L = \lambda/4\) → \(\lambda = 4L\)。弦の振動数 = 気柱の共鳴振動数。弦と気柱は同じ振動数で振動する。

設問⑦ — 次の共鳴位置

直感的理解
閉管では奇数倍の振動モードしか存在しない。次の共鳴は3倍振動で、気柱長が \(3\lambda/4\) になるとき。

閉管の共鳴条件は:

$$L_m = \frac{(2m-1)\lambda}{4} \quad (m = 1, 2, 3, \ldots)$$

振動数は弦の基本振動数 \(f = 425\) Hz で固定。次の共鳴(\(m = 2\))では:

$$L_2 = \frac{3\lambda}{4} = \frac{3 \times 800}{4} = 600 \text{ mm}$$

ピストンの円管下端 A からの高さ:

$$h = L_2 = 600 \text{ mm}$$
答え:円管下端 A からの高さ \(= 600\) mm

設問⑧ — 開管(ピストンなし)の共鳴と円管長 AB

直感的理解
ピストンを取り除くと両端開放の「開管」になる。開管の共鳴条件は \(L = n\lambda/2\)。弦の振動数を変えずに次の共鳴を得るための管長を求める。

ピストンが上端 B を通過(ピストン除去と同等)すると、管は開管になる。問題文では「ピストンは上端 B に達した後、ピストンを取り除くと円管 AB は共鳴した」とある。

開管の共鳴条件:

$$L = \frac{n\lambda}{2} \quad (n = 1, 2, 3, \ldots)$$

弦の振動数は \(f = 425\) Hz のまま、\(\lambda = 0.80\) m。

円管長 AB が \(\lambda/2 = 400\) mm のとき基本共鳴、\(\lambda = 800\) mm のとき2倍振動。

閉管で \(L_2 = 600\) mm のとき共鳴したので、ピストンをさらに引き上げて管長 \(L_{AB}\) の開管で共鳴するためには:

$$L_{AB} = \frac{n \times 800}{2} = 400n \text{ mm}$$

管長が 600 mm より大きい最小の開管共鳴長は \(n = 2\) のとき \(L_{AB} = 800\) mm。

答え:円管 AB の長さ \(= 800\) mm
別解:閉管と開管の共鳴条件の比較

同じ振動数の音波に対して:

  • 閉管:\(L = \lambda/4, 3\lambda/4, 5\lambda/4, \ldots\) → 200, 600, 1000 mm
  • 開管:\(L = \lambda/2, \lambda, 3\lambda/2, \ldots\) → 400, 800, 1200 mm

ピストンを上げていくと、600 mm(閉管3倍)の次に共鳴するのは 800 mm(開管2倍)。

Point

閉管は奇数倍振動のみ(\(\lambda/4, 3\lambda/4, \ldots\))、開管は整数倍振動(\(\lambda/2, \lambda, \ldots\))。同じ周波数で共鳴する管長は異なる。

設問⑨ — 弦を伝わる横波の速さ

直感的理解
弦の波の速さは張力と線密度で決まる。おもりの質量が大きいほど張力が増し、波は速くなる。弦が細い(線密度が小さい)ほど速くなる。

弦の条件:おもりの質量 \(M_1\)(kg)、弦の長さ(固定端〜支点)\(L_1\)(m)。線密度 \(\rho\)(kg/m)、張力 \(T\)(N)。

おもりの重力が張力を与える(滑車は摩擦なし):

$$T = M_1 g$$

弦を伝わる横波の速さ:

$$v_{\text{弦}} = \sqrt{\frac{T}{\rho}} = \sqrt{\frac{M_1 g}{\rho}}$$

問題で指定された記号を使って:

$$v = \sqrt{\frac{T}{\rho}} \text{ [m/s]}$$
答え:\(\displaystyle v = \sqrt{\frac{T}{\rho}} = \sqrt{\frac{M_1 g}{\rho}}\) [m/s]

設問⑩ — 支点を移動したときの共鳴条件

直感的理解
弦を短くすると振動数が上がる。おもりの質量を変えると張力が変わり、波の速さが変わる。共鳴条件(弦の振動数 = 気柱の振動数)を満たすように調整する。

支点を固定端側に移動して弦の長さを \(L_s\) にする。円管 AB の共鳴が維持されなくなり、おもりの質量を \(M_2\) に変えて再び共鳴させる。

弦の基本振動数:

$$f = \frac{1}{2L_s}\sqrt{\frac{M_2 g}{\rho}}$$

この振動数が円管の共鳴振動数 425 Hz と等しいので:

$$\frac{1}{2L_s}\sqrt{\frac{M_2 g}{\rho}} = 425$$

元の条件(弦長 \(L_1\)、質量 \(M_1\))では:

$$\frac{1}{2L_1}\sqrt{\frac{M_1 g}{\rho}} = 425$$

割り算して:

$$\frac{L_1}{L_s}\sqrt{\frac{M_2}{M_1}} = 1$$ $$M_2 = M_1 \left(\frac{L_s}{L_1}\right)^2$$
答え:\(\displaystyle M_2 = M_1\left(\frac{L_s}{L_1}\right)^2\)
補足:弦の振動数と張力・長さの関係

弦の基本振動数は:

$$f = \frac{1}{2L}\sqrt{\frac{T}{\rho}}$$

振動数を一定に保つには:

  • 弦を短くする(\(L\) 減少)→ 振動数が上がる → 張力を下げて補償
  • \(f \propto \frac{\sqrt{T}}{L}\) より、\(T \propto L^2\) で \(f\) が一定
  • つまり \(M \propto L^2\)(張力 = おもりの重力)
補足:弦の波の速さの導出

弦の微小区間 \(dx\) に対して運動方程式を立てると:

$$\rho \frac{\partial^2 y}{\partial t^2} = T \frac{\partial^2 y}{\partial x^2}$$

これは波動方程式で、波の速さは:

$$v = \sqrt{\frac{T}{\rho}}$$

次元解析でも確認できる:\([T] = \text{kg}\cdot\text{m/s}^2\)、\([\rho] = \text{kg/m}\) より \(\sqrt{T/\rho}\) の次元は m/s。

Point

弦の基本振動数 \(f = \frac{1}{2L}\sqrt{\frac{T}{\rho}}\) で、振動数を一定に保つなら \(T \propto L^2\)(弦を半分にするとおもりは1/4でよい)。弦と気柱の共鳴は振動数一致が条件。