導体・半導体試料に電流を流し、磁場を加えたときの荷電粒子の運動とホール効果を解析する総合問題です。磁場の方向を変えた場合の等電位線パターンまで問われます。
直方体の導体試料に \(y\) 方向に電流を流す。長さ方向 \(b\)、断面積 \(a \times L\) の導体の抵抗は \(R = \rho \frac{b}{aL}\)。自由電子のドリフト速度は電流密度と電子密度で決まる。
導体試料の \(x\), \(y\), \(z\) 方向の長さはそれぞれ \(a\), \(b\), \(L\)。電流は \(y\) 軸方向に流れる。抵抗率 \(\rho\) の導体の抵抗は:
$$R = \rho \frac{\text{長さ}}{\text{断面積}} = \rho \frac{b}{a \cdot L}$$ここで長さは電流の方向(\(y\) 方向)の \(b\)、断面積は電流に垂直な \(xz\) 面の \(a \times L\)。
直流電源により導体内には \(y\) 軸方向に一様な電場が生じる。電場の大きさは:
$$E_y = \frac{V}{b} = \frac{IR_0}{b} = \frac{I\rho}{aL}$$自由電子(電荷 \(-e\))が電場から受ける力は:
$$\vec{F} = (-e)\vec{E} = (-e) \cdot \frac{I\rho}{aL} \hat{y}$$大きさは \(F = \frac{eI\rho}{aL}\)。向きは電場と逆(\(y\) 軸負の方向)。
問題文では電場の力と抵抗力のつり合いから \(F = kv_0\) と書けるとしている。比例定数は \(k = \frac{e\rho}{aL} \cdot \frac{I}{v_0}\) だが、\(I = neaLv_0\)(後述)を代入すると \(k = ne^2\rho\) となる。
電流密度 \(j = \frac{I}{aL}\) と自由電子の数密度 \(n\)、電荷 \(-e\)、ドリフト速度 \(v_0\) の関係:
$$I = n \cdot e \cdot v_0 \cdot (aL)$$(電流の向きと電子の移動方向が逆なので、\(I = ne v_0 aL\) と正の値で表せる)
$$v_0 = \frac{I}{neaL}$$これを \(a\), \(b\), \(R\), \(I\), \(e\), \(v_0\) のうち必要なもので表す。\(\rho = R_0 \cdot \frac{aL}{b}\) を代入することもできる。
電場 \(E_y = \frac{V}{b} = \frac{IR_0}{b}\) に対するドリフト速度の関係式から:
\(v_0 = \frac{eE_y}{k}\) と力のつり合いから求めることもできる。ここで \(k\) は比例定数。最終的に同じ結果 \(v_0 = \frac{I}{neaL}\) が得られる。
電流 = 電荷密度 \(\times\) 電荷 \(\times\) ドリフト速度 \(\times\) 断面積。\(I = nev_0 A\) はミクロとマクロをつなぐ基本式。
磁場を \(x\) 軸正方向にかけると、\(y\) 軸負方向に移動する自由電子はローレンツ力を受けて偏向する。電子が片面に溜まると電場が生じ、力がつり合って定常状態になる。これがホール効果。
自由電子(電荷 \(-e\)、\(e > 0\))が速度 \(\vec{v} = -v_0 \hat{y}\)(電流と逆向き)で運動し、磁場 \(\vec{B} = B\hat{x}\) が加わっている。ローレンツ力は:
$$\vec{F} = (-e)(\vec{v} \times \vec{B}) = (-e)(-v_0\hat{y} \times B\hat{x})$$外積を計算する:
$$\hat{y} \times \hat{x} = -\hat{z}$$ $$\vec{v} \times \vec{B} = (-v_0)(B)(-\hat{z}) = v_0 B \hat{z}$$ $$\vec{F} = (-e)(v_0 B \hat{z}) = -ev_0 B \hat{z}$$ローレンツ力は \(z\) 軸の負の方向に働く。
電子が \(z\) 軸負方向に偏向して蓄積すると、\(z\) 方向に電場 \(E_z\) が生じる。定常状態でローレンツ力と電場力がつり合う:
$$eE_z = ev_0 B$$ $$E_z = v_0 B$$点P, Q は \(x\) 軸方向の中点で \(z\) 座標が \(\pm a/2\) の位置。ホール電圧は(問題の図2(b)の断面図より):
$$V_H = E_z \cdot a = v_0 B a$$P の電位が Q より高い(電子が Q 側に集まるため)。
\(v_0 = \frac{I}{neaL}\)(設問(3))を代入:
$$V_H = \frac{I}{neaL} \cdot Ba = \frac{IB}{neL}$$ $$n = \frac{IB}{eV_H L}$$\(V_H\), \(n\) のうち必要なもので表す。
ホール係数 \(R_H\) は \(V_H = R_H \frac{IB}{L}\) で定義され:
$$R_H = \frac{1}{ne}$$キャリア密度が小さい半導体では \(R_H\) が大きく、ホール電圧が測定しやすい。導体(金属)は \(n \sim 10^{28}\) m\(^{-3}\) なので \(V_H\) は非常に小さい。
ホール電圧 \(V_H = \frac{IB}{neL}\) はキャリア密度 \(n\) に反比例。半導体のキャリア密度は金属の \(10^{-10}\) 倍程度なので、ホール電圧は \(10^{10}\) 倍大きい。
半導体のキャリアは電子(負)か正孔(正)のいずれか。電流の方向は同じでも、キャリアの符号によってローレンツ力の向きが変わり、ホール電圧の極性が逆になる。これがホール効果の最大の応用:キャリアの符号を判定できる。
半導体のキャリアの電荷を \(\varepsilon\)(正または負のいずれか)、速度を \(v_e\)(\(y\) 軸方向)とする。電流の向きは \(y\) 軸正方向で同じ。
場合分け:
どちらの場合も力の方向は \(z\) 軸負方向だが、蓄積する電荷の符号が異なるため、ホール電圧の極性が逆になる。
問題文では「P の電位が Q の電位より低かった」とある。導体(電子がキャリア)では P の電位が高かった(設問(5))ので、半導体では逆の極性になっている。
P が低電位 → P 側に正電荷が蓄積(または Q 側に負電荷が蓄積)。正電荷が \(z\) 軸負方向(P 側)に蓄積するのは、キャリアが正孔(正電荷)の場合。
導体の場合と同じ式が成り立つ。ホール電圧を \(V_s\)、キャリア密度を \(n_s\) とすると:
$$V_s = \frac{I'B}{|\varepsilon| n_s L}$$(ここで \(I'\) は半導体に流す電流。)
前問で求めた導体の値と組み合わせて \(V_H\), \(e\) および前問の \(n\) を用いて表す:
$$n_s = \frac{I'B}{|\varepsilon| V_s L}$$p型半導体:正孔がキャリア(ホール電圧の極性が金属と逆)
n型半導体:電子がキャリア(ホール電圧の極性が金属と同じ)
ホール効果は半導体の型を判別する実験手法として広く使われる。また、キャリア密度を定量的に測定できるため、半導体素子の品質管理にも不可欠。
ホール効果でキャリアの電荷の符号を実験的に判定できる。これは p型/n型半導体の区別に不可欠な実験手法。
磁場を \(x\) 軸正の方向を基準に、反時計回りに角度 \(\theta\) 回転させる。磁場の \(x\) 成分だけがローレンツ力に寄与し、\(z\) 成分はキャリアの速度方向(\(y\))に平行でローレンツ力を生じない...ではなく、磁場ベクトルの各成分と速度の外積を考える。
磁場を \(x\) 軸正の方向から \(xz\) 平面内で角度 \(\theta\) 回転させると:
$$\vec{B} = B\cos\theta\,\hat{x} + B\sin\theta\,\hat{z}$$電子の速度 \(\vec{v} = -v_0\hat{y}\) とのローレンツ力:
$$\vec{F} = (-e)(\vec{v} \times \vec{B})$$ $$\vec{v} \times \vec{B} = (-v_0\hat{y}) \times (B\cos\theta\,\hat{x} + B\sin\theta\,\hat{z})$$ $$= -v_0 B\cos\theta(\hat{y} \times \hat{x}) - v_0 B\sin\theta(\hat{y} \times \hat{z})$$ $$= -v_0 B\cos\theta(-\hat{z}) - v_0 B\sin\theta(\hat{x})$$ $$= v_0 B\cos\theta\,\hat{z} - v_0 B\sin\theta\,\hat{x}$$したがって:
$$\vec{F} = (-e)(v_0 B\cos\theta\,\hat{z} - v_0 B\sin\theta\,\hat{x})$$ $$= -ev_0 B\cos\theta\,\hat{z} + ev_0 B\sin\theta\,\hat{x}$$ホール電圧は P, Q 間(\(z\) 方向)の電位差なので、ローレンツ力の \(z\) 成分が寄与する:
$$V_H(\theta) = v_0 B a |\cos\theta|$$\(\theta = 0\) で最大、\(\theta = \pm\frac{\pi}{2}\) でゼロ。P, Q の電位の大小関係は \(\cos\theta\) の符号で決まる。
\(-\frac{\pi}{2} < \theta < \frac{\pi}{2}\) の範囲で \(\cos\theta > 0\) なので、P の電位が Q より高い(導体の場合)。
\(\vec{B}\) の \(z\) 成分は、電子の速度 \(-v_0\hat{y}\) と外積をとると \(\hat{x}\) 方向の力になる。これはP-Q方向(\(z\) 方向)には寄与しない。したがって、ホール電圧は磁場の \(x\) 成分 \(B\cos\theta\) だけで決まる。
ホール電圧は磁場の電流・測定方向の両方に垂直な成分だけで決まる。磁場の他の成分はローレンツ力の方向を変えるが、ホール電圧には寄与しない。
磁場を \(y\) 軸回りに回転させると、磁場の \(y\) 成分が現れる。電子の速度も \(y\) 方向なので、\(\vec{v} \parallel \vec{B_y}\) の成分からはローレンツ力が生じない。\(x\) 成分のみが力を生む。角度 \(\theta = \pi/4\) rad の特殊な場合を考える。
磁場を \(x\) 軸正方向から \(y\) 軸正方向へ角度 \(\theta\) 回転:
$$\vec{B} = B\cos\theta\,\hat{x} + B\sin\theta\,\hat{y}$$\(\theta = \frac{\pi}{4}\) のとき:
$$\vec{B} = \frac{B}{\sqrt{2}}\hat{x} + \frac{B}{\sqrt{2}}\hat{y}$$ローレンツ力:
$$\vec{v} \times \vec{B} = (-v_0\hat{y}) \times \left(\frac{B}{\sqrt{2}}\hat{x} + \frac{B}{\sqrt{2}}\hat{y}\right)$$ $$= -\frac{v_0 B}{\sqrt{2}}(\hat{y} \times \hat{x}) - \frac{v_0 B}{\sqrt{2}}(\hat{y} \times \hat{y})$$ $$= -\frac{v_0 B}{\sqrt{2}}(-\hat{z}) - 0 = \frac{v_0 B}{\sqrt{2}}\hat{z}$$ $$\vec{F} = (-e)\frac{v_0 B}{\sqrt{2}}\hat{z} = -\frac{ev_0 B}{\sqrt{2}}\hat{z}$$力は \(z\) 軸負方向で、大きさは \(\frac{ev_0 B}{\sqrt{2}}\)。磁場の \(y\) 成分は力に寄与しない(\(\hat{y} \times \hat{y} = 0\))。
一般に磁場を \(y\) 軸回りに角度 \(\theta\) 回転させた場合:
$$F = ev_0 B\cos\theta$$向きは常に \(z\) 軸負方向(\(0 < \theta < \pi/2\) の範囲)。
\(\theta = \pi/4\) で磁場に \(y\) 成分があっても、ローレンツ力は \(z\) 方向のみ。したがって等電位線パターンは、磁場が純粋に \(x\) 方向の場合と同じ。
等電位線は \(z\) 軸に垂直(\(xy\) 面に平行)で、P が高電位、Q が低電位。
図5(c)の選択肢から、\(xz\) 断面で等電位線が水平に並ぶパターンを選ぶ。ローレンツ力の方向は \(\theta = 0\) の場合と同じ(\(-z\) 方向)なので、同じ等電位線パターンが正解。
ローレンツ力 \(\vec{F} = q\vec{v} \times \vec{B}\) において、\(\vec{v}\) と \(\vec{B}\) が平行な成分は外積がゼロ。ドリフト速度が \(y\) 方向なので、\(\vec{B}\) の \(y\) 成分は力に寄与しない。
これは重要な一般則:磁場が電流方向に平行な成分を持っても、ホール効果には影響しない。
\(x\) 軸回転(設問10-11):磁場の \(z\) 成分が現れ、ローレンツ力に \(x\) 成分が追加される。等電位線パターンが変わる(P-Q方向のホール電圧は \(\cos\theta\) に比例して変化)。
\(y\) 軸回転(設問12-13):磁場の \(y\) 成分は力に寄与しない。ローレンツ力の方向(\(-z\))は不変。ホール電圧は \(\cos\theta\) に比例して減少するが、等電位線パターンの形状は変わらない。
磁場の回転軸によってローレンツ力への影響が異なる。\(\vec{v} \parallel \vec{B}\) の成分は力を生じないことを利用して、力の方向と大きさを判定する。