前期 大問Ⅰ:直線と円弧のレール上の運動(円運動の垂直抗力・浮き上がり・壁への斜方投射)

解法の指針

なめらかな(摩擦のない)レール ABCDEFGHIJ の上を、質量 \(m\) の小物体が同一鉛直面内で運動します。谷の円弧 CE と山の円弧 FH(どちらも半径 \(r\))が、傾き \(\theta\) の直線部分となめらかにつながっています。全体を貫く道具は力学的エネルギー保存と、円弧上での円運動の運動方程式(向心方向)の2つだけです。

まず「高さ」を整理する(すべての基礎)

点 D を通る水平面を高さの基準(0)とします。図の幾何から各点の高さは次のように決まります。谷の中心 O は最下点 D の真上に半径 \(r\) だけあるので高さ \(r\)。円弧が直線となめらかにつながる条件(接点で半径 ⊥ 斜面)から、点 C, E は中心 O より \(r\cos\theta\) 低い位置にきます。

各点の高さ(基準:点 D=0)
高さ意味
D\(0\)谷の最下点(基準)
C, E, O′, I\(r(1-\cos\theta)\)同じ高さ
B, O, F, H, K\(r\)同じ高さ
G\(r(2-\cos\theta)\)山の最高点(最も高い)

この高さの表さえ作れれば、エネルギー保存 \(\tfrac12 mv^2 = mg(\text{落下した高さ})\) で任意の点の速さがすぐ出ます。最も速いのは最も低い点 D、最も遅いのは最も高い点 G です。

この大問の流れ

問1(1) — すべり始めた直後の加速度

直感的理解

小物体は BC 間、つまり傾き \(\theta\) のまっすぐな斜面から静かにすべり出す。斜面はなめらかなので、はたらくのは重力と垂直抗力だけ。斜面に沿う向きには重力の斜面成分 \(mg\sin\theta\) だけが残り、これが加速の原因になる。

斜面に沿う方向について運動方程式を立てる。斜面方向の力は重力の成分 \(mg\sin\theta\) のみ(摩擦なし、垂直抗力は斜面に垂直で寄与しない)。加速度を \(a\) とすると:

$$ma = mg\sin\theta$$

両辺を \(m\) で割ると質量が消え、加速度は角度だけで決まる:

$$a = g\sin\theta$$
答え: $$a = g\sin\theta\ \text{[m/s}^2\text{]}$$
補足:この加速度は「すべり始めた直後」だけの値

加速度が \(g\sin\theta\) 一定なのは直線斜面の上にいる間だけ。点 C で円弧に入ると経路が曲がり、向心加速度が加わるため加速度の大きさも向きも変わる。「直後」という言葉は、まだ直線 BC の上にいることを保証している。

Point

なめらかな斜面をすべる物体の加速度は\(g\sin\theta\)。質量によらず、傾きだけで決まる。

問1(2) — 点 D での速さ

直感的理解

高さ \(h_1\) の位置から静かにすべり出し、谷の底 D(高さ 0)まで下る。摩擦がないので失った位置エネルギーがそのまま運動エネルギーに変わる。途中の経路(斜面+円弧)が複雑でも、始点と終点の高さの差だけで速さが決まるのがエネルギー保存の強み。

すべり出しは静かに(初速 0)行われる。点 D は基準(高さ 0)なので、始点の高さ \(h_1\) の位置エネルギーがすべて D での運動エネルギーになる。力学的エネルギー保存則より:

$$0 + mgh_1 = \frac{1}{2}mv^2 + 0$$

\(v\) について解くと、質量が消えて:

$$v^2 = 2gh_1 \quad\Rightarrow\quad v = \sqrt{2gh_1}$$
答え: $$v = \sqrt{2gh_1}\ \text{[m/s]}$$
補足:経路の形は答えに影響しない

途中に直線 BC・円弧 CD があっても、なめらかなら摩擦による熱損失がゼロ。垂直抗力は運動方向に垂直なので仕事をしない。だから「D の速さ」は落差 \(h_1\) だけで決まり、\(\theta\) や \(r\) は答えに現れない。これが「\(m,g,\theta,r,h_1\) のうち必要なものを用いて」という指示の意味。

Point

なめらかな面上の落下では\(v=\sqrt{2gh}\)(\(h\) は落差)。自由落下の公式と同じ形になる。

問1(3) — 点 D での垂直抗力

直感的理解

点 D は谷の底(円弧 CE の最下点)。ここで小物体は半径 \(r\) の円運動をしている。円運動では中心(真上の点 O)へ向かう向心力が必要で、その分だけ垂直抗力は重力より大きくなる。ジェットコースターの谷底で体が重く感じるのと同じ。

点 D では、真上の中心 O へ向かう向きを正として円運動の運動方程式(向心方向)を立てる。はたらく力は上向きの垂直抗力 \(N\) と下向きの重力 \(mg\)。向心加速度は \(\dfrac{v^2}{r}\) だから:

$$N - mg = \frac{v^2}{r}\,m$$

問1(2) より D での速さは \(v=\sqrt{2gh_1}\)、すなわち \(v^2 = 2gh_1\)。これを代入する:

$$N = mg + \frac{m\,(2gh_1)}{r} = mg + \frac{2mgh_1}{r}$$

\(mg\) でくくって整理すると:

$$N = mg\left(1 + \frac{2h_1}{r}\right)$$
答え: $$N = mg\left(1 + \frac{2h_1}{r}\right)\ \text{[N]}$$
🧮 計算例:具体的な数値を入れてみる

\(m=0.20\,\text{kg}\)、\(g=9.8\,\text{m/s}^2\)、\(r=1.0\,\text{m}\)、\(h_1=0.50\,\text{m}\) とすると:

$$N = 0.20\times 9.8\times\left(1 + \frac{2\times 0.50}{1.0}\right) = 1.96\times(1+1) = 3.92\ \text{N}$$

重力 \(mg=1.96\,\text{N}\) のちょうど 2 倍。谷底では体重計が示す値(=垂直抗力)が実際の重さの 2 倍になる、という感覚がつかめる。

Point

谷底の円運動では\(N = mg + \dfrac{mv^2}{r}\)。速いほど・半径が小さいほど垂直抗力が大きくなる。逆に山の頂上では \(N = mg - \dfrac{mv^2}{r}\) と符号が変わる(問2以降で使う)。

問2(4) — BI 間での速さの最大値・最小値

直感的理解

速さは高さだけで決まる(エネルギー保存)。だから最も低い点で最速、最も高い点で最遅。BI 間で最も低いのは谷底 D(高さ 0)、最も高いのは山頂 G(高さ \(r(2-\cos\theta)\))。この2点の速さを出せばよい。

高さ \(h_2\) から初速 0 ですべり出す。任意の高さ \(y\) の点での速さは、エネルギー保存 \(mgh_2 = \tfrac12 mv^2 + mgy\) より \(v = \sqrt{2g(h_2 - y)}\)。\(y\) が小さいほど速く、大きいほど遅い

最大値(最低点 D、\(y=0\)):

$$v_{\max} = \sqrt{2g(h_2 - 0)} = \sqrt{2gh_2}$$

最小値(最高点 G、\(y = r(2-\cos\theta)\)):

$$v_{\min} = \sqrt{2g\{h_2 - r(2-\cos\theta)\}}$$
答え: $$v_{\max} = \sqrt{2gh_2}\ \text{(点D)},\qquad v_{\min} = \sqrt{2g\{h_2 - r(2-\cos\theta)\}}\ \text{(点G)}$$
📐 山頂 G の高さ \(r(2-\cos\theta)\) の導き方

山の円弧 FH の中心 O′ は、点 C, E, I と同じ高さ \(r(1-\cos\theta)\)。G は円弧 FH の最高点なので、O′ の真上に半径 \(r\) だけ高い。よって

$$(\text{Gの高さ}) = r(1-\cos\theta) + r = r(2-\cos\theta)$$

同様に F, H は O′ より \(r\cos\theta\) 高く \(r(1-\cos\theta)+r\cos\theta = r\) となり、B, O と同じ高さになる。

Point

なめらかレールでは速さの大小は高さの大小だけで決まる。速さの最大・最小を問われたら、経路上の最低点と最高点を探せばよい。

問2(5) — CE・EF・FH・HI 各区間の垂直抗力の変化

直感的理解

直線区間(EF・HI)では経路が曲がらないので向心力は不要、垂直抗力は一定(\(mg\cos\theta\))。円弧区間(CE・FH)では場所によって「必要な向心力」と「速さ」が変わるので垂直抗力も変化する。谷(CE)は底 D で最大、山(FH)は頂上 G で最大になる、と当たりをつけよう。

向心方向の運動方程式を各区間で立てる。角 \(\psi\) はそれぞれの円弧の対称点(谷は D、山は G)から測る。

谷 CE(中心が上、C→D→E):向心方向は上向き。\(N - mg\cos\psi = \dfrac{mv^2}{r}\) より

$$N = mg\cos\psi + \frac{mv^2}{r}$$

C→D では速さ \(v\) が増え \(\cos\psi\) も増える(両方増)→ \(N\) 増加。D→E では両方減る → \(N\) 減少。よって増加した後、減少する(ウ)

山 FH(中心が下、F→G→H):向心方向は下向き。\(mg\cos\psi - N = \dfrac{mv^2}{r}\) より

$$N = mg\cos\psi - \frac{mv^2}{r}$$

F→G では \(\cos\psi\) が増え、速さ \(v\) は減る(上るから)→ 引く項が小さくなり \(N\) 増加。G→H では逆で \(N\) 減少。よって増加した後、減少する(ウ)

直線 EF・HI:経路は直線で向心加速度が 0。斜面に垂直な力のつり合いから \(N = mg\cos\theta\)(一定)。よって変化しない(オ)

答え:
補足:山 FH で「速さが最小なのに N が最大」になる理由

一見、速いほど \(N\) が減りそうだが、山では \(N = mg\cos\psi - \dfrac{mv^2}{r}\)。頂上 G では \(\cos\psi\) が最大(\(=1\))で \(v\) が最小、つまり「支える成分が最大・奪う成分が最小」の二重で \(N\) が最大になる。谷 D とちょうど逆の構図。

Point

直線区間の垂直抗力は\(mg\cos\theta\) で一定。円弧では「対称の底/頂上」で極大になり、そこへ向かって増え、通り過ぎると減る。

問2(6) — 浮き上がらずに点 I に到達する条件(\(h_2\) の上限)

直感的理解

浮き上がる(レールから離れる)とは、垂直抗力が 0 になること。危ないのは山の円弧 FH で、しかも FH の中で最も \(N\) が小さいのは端の F と H(前問より \(N = mg\cos\psi - \tfrac{mv^2}{r}\) は \(\cos\psi\) が最小の端で最小)。直線から円弧に入った瞬間の F で \(N\) が急に下がるので、F で浮かなければどこでも浮かない。だから「F で \(N\ge 0\)」が条件。

浮き上がる恐れがあるのは山の円弧 FH。前問の \(N = mg\cos\psi - \dfrac{mv^2}{r}\) は \(\cos\psi\) が最小の端点 F, H で最小になる(グラフは頂上 G で最大の山型)。したがって「F でも \(N\ge 0\) なら FH のどこでも \(N\ge 0\)」。F の高さは \(r\)、速さは \(v_F^2 = 2g(h_2 - r)\)。F で \(\psi=\theta\) だから:

$$N_F = mg\cos\theta - \frac{m\,v_F^2}{r} = mg\cos\theta - \frac{2mg(h_2 - r)}{r} \ge 0$$

\(mg\) を払って \(h_2\) について解く:

$$\cos\theta \ge \frac{2(h_2 - r)}{r} \;\Rightarrow\; r\cos\theta \ge 2h_2 - 2r \;\Rightarrow\; 2h_2 \le r(2+\cos\theta)$$

したがって浮き上がらない条件は:

$$h_2 \le \frac{r(2+\cos\theta)}{2}$$
答え:高さ \(h_2\) は次の値より小さければよい。 $$h_2 \lt \frac{r(2+\cos\theta)}{2}\ \text{[m]}$$
📐 なぜ端点 F が最も危ないのか(増減の確認)

山 FH 上で \(\dfrac{N}{mg} = 3\cos\psi + 2(1-\cos\theta) - \dfrac{2h_2}{r}\)(\(v^2\) をエネルギー保存で消した形)。これは \(\cos\psi\) について単調増加なので、\(\cos\psi\) が最小の \(\psi=\theta\)(=端点 F, H)で最小。しかも直線 EF 上では \(N=mg\cos\theta>0\) だったのが、F で円弧に入った瞬間 \(N\) が \(\dfrac{mv_F^2}{r}\) だけ不連続に下がる。この落差に耐えられれば以後は安全、という理屈。

Point

浮き上がりの判定は「垂直抗力 \(N=0\) になる点」を探す。凸(山)の円弧では、直線から入る端点で \(N\) が最小になりやすい。

問2(7) — そのような \(h_2\) が存在する \(\theta\) の条件

直感的理解

点 I に到達するには、まず最も高い山頂 G を越えるだけの高さが要る(下限)。一方で浮き上がらないためには高すぎてはいけない(上限、前問)。この下限と上限の間に隙間があるときだけ、条件を満たす \(h_2\) が存在する。隙間が消える境目が \(\theta\) の条件になる。

下限(点 I に届く):経路の最高点 G(高さ \(r(2-\cos\theta)\))を越えるには、そこで速さが 0 より大きい必要がある。すなわち

$$h_2 > r(2-\cos\theta)$$

上限(浮き上がらない、問2(6)):

$$h_2 < \frac{r(2+\cos\theta)}{2}$$

両立する \(h_2\) が存在するには、下限 が 上限 より小さければよい:

$$r(2-\cos\theta) < \frac{r(2+\cos\theta)}{2}$$

両辺を 2 倍して整理する:

$$2(2-\cos\theta) < 2+\cos\theta \;\Rightarrow\; 4 - 2\cos\theta < 2 + \cos\theta \;\Rightarrow\; 2 < 3\cos\theta$$

よって条件は:

$$\cos\theta > \frac{2}{3}$$
答え: $$\cos\theta > \frac{2}{3}$$
補足:\(\cos\theta=\tfrac23\) の境目で何が起きるか

\(\cos\theta=\tfrac23\) のとき、下限 \(r(2-\tfrac23)=\tfrac{4}{3}r\) と上限 \(\dfrac{r(2+\tfrac23)}{2}=\tfrac{4}{3}r\) が一致し、可能な \(h_2\) は1点に潰れる(しかもそこは G で速さ 0=進めない)。だから等号では条件を満たす \(h_2\) は存在せず、厳密に \(\cos\theta>\tfrac23\) が必要。問3では \(\theta=\tfrac{\pi}{3}\)(\(\cos\theta=\tfrac12<\tfrac23\))なので、必ず浮き上がる。

Point

「条件を満たす値が存在するか」は下限 が 上限 より小さいという不等式に帰着する。2つの制約を式にして、区間が空でない条件を探すのが定石。

問3(8) — \(\theta=\pi/3\)。浮き上がった瞬間の速さ \(V\)

直感的理解

\(\theta=\dfrac{\pi}{3}\) では \(\cos\theta=\tfrac12<\tfrac23\) なので、問2(7)より浮き上がりは避けられない。問2(6)の議論から、浮き上がるのはちょうど円弧 FH に入る点 F。F の高さは \(r\) だから、そこまでの落差でエネルギー保存を使えば速さが出る。

問2(6)の議論より、山の円弧 FH で最初に \(N=0\) となるのは端点 F。したがって浮き上がる点は F であり、その高さは \(r\)。高さ \(h_3\) から初速 0 ですべり出したので、F までの落差は \(h_3 - r\)。エネルギー保存より:

$$\frac{1}{2}mV^2 = mg(h_3 - r)$$

\(V\) について解くと(質量が消える):

$$V = \sqrt{2g(h_3 - r)}$$
答え: $$V = \sqrt{2g(h_3 - r)}\ \text{[m/s]}$$
補足:本当に F で浮くのか(\(\theta=\pi/3\) での確認)

F で浮く条件は \(N_F<0\)、すなわち \(v_F^2 > gr\cos\theta = \tfrac12 gr\)。\(v_F^2 = 2g(h_3-r)\) だから \(2g(h_3-r) > \tfrac12 gr\)、つまり \(h_3 > \tfrac54 r\) で F 浮き上がりが起こる。問3は「BI 間のある点で浮き上がった」と与えられているので、この条件は満たされている。F での速度の向きは直線 EF の延長、すなわち水平から角 \(\theta\) 上向きになる(これが次問の斜方投射の初速度)。

Point

浮き上がる点さえ特定できれば、速さはその点までの落差でエネルギー保存を使うだけ。F の高さが \(r\) であることが鍵。

問3(9) — 浮き上がってから壁に衝突するまでの時間

直感的理解

F を離れた後は斜方投射。壁は点 I に鉛直(垂直)に立っている。壁が垂直だから、衝突する瞬間は水平位置が壁に届いた瞬間で決まる。だから必要なのは「F から壁までの水平距離」と「水平方向の速さ(一定)」だけ。鉛直の運動は時間には効かない。

F を離れた小物体は、水平から角 \(\theta=\dfrac{\pi}{3}\) 上向き・速さ \(V\) で斜方投射される。水平方向の速さは一定で \(V\cos\theta\)。壁は垂直なので、F から壁(点 I)までの水平距離を水平速度で割れば衝突時刻になる。

図の幾何から、F と I の水平距離は \(\theta=\dfrac{\pi}{3}\) で

$$\overline{FI}_{\text{水平}} = \frac{r(1+\sin^2\theta)}{\sin\theta} = \frac{r\left(1+\tfrac34\right)}{\tfrac{\sqrt3}{2}} = \frac{7r}{2\sqrt3}$$

水平速度は \(V\cos\theta = V\cdot\dfrac12 = \dfrac{V}{2}\)。よって時間は:

$$t = \frac{\overline{FI}_{\text{水平}}}{V\cos\theta} = \frac{7r/(2\sqrt3)}{V/2} = \frac{7r}{\sqrt3\,V} = \frac{7\sqrt3\,r}{3V}$$
答え: $$t = \frac{7\sqrt3\,r}{3V}\ \text{[s]}$$
📐 水平距離 \(\overline{FI}=\dfrac{7r}{2\sqrt3}\) の導出

山の中心 O′ を基準にとると、\(F_x = x_{O'} - r\sin\theta\)、\(H_x = x_{O'} + r\sin\theta\)。点 I は直線 HJ 上で高さ \(r(1-\cos\theta)\) にあり、H(高さ \(r\))から鉛直に \(r\cos\theta\) 下がる。傾き \(\theta\) の直線上での水平移動は \(\dfrac{r\cos\theta}{\tan\theta} = \dfrac{r\cos^2\theta}{\sin\theta}\)。したがって

$$\overline{FI}_{\text{水平}} = 2r\sin\theta + \frac{r\cos^2\theta}{\sin\theta} = \frac{r(2\sin^2\theta+\cos^2\theta)}{\sin\theta} = \frac{r(1+\sin^2\theta)}{\sin\theta}$$

\(\theta=\dfrac{\pi}{3}\)(\(\sin^2\theta=\tfrac34\))を入れると \(\dfrac{r\cdot\tfrac74}{\sqrt3/2}=\dfrac{7r}{2\sqrt3}\)。

Point

垂直な壁への衝突時刻は水平運動だけで決まる。「水平距離 ÷ 水平速度」。鉛直の上昇・下降は衝突の「場所(高さ)」を決めるだけで、時刻には関係しない。

問3(10) — 壁を飛び越えるための高さ \(h_3\) の条件

直感的理解

壁の上端 K は、発射点 F と同じ高さ \(r\)。斜方投射では、発射と同じ高さに戻るのは「上って下りる」フル1往復の時間 \(\dfrac{2V\sin\theta}{g}\) 後。だからこの時間が来る前に壁に届けば、まだ K より高い位置にいて壁を飛び越える。壁到達時刻(前問)がこの往復時間より短ければよい。

壁上端 K は発射点 F と同じ高さ \(r\)。斜方投射で発射高さに戻る時刻は \(t_{\text{戻}} = \dfrac{2V\sin\theta}{g}\)。壁到達時刻 \(t\)(問3(9))がこれより短ければ、壁位置でまだ K より高いので飛び越える:

$$t < t_{\text{戻}} \;\Rightarrow\; \frac{\overline{FI}_{\text{水平}}}{V\cos\theta} < \frac{2V\sin\theta}{g}$$

整理して \(V^2\) の条件にする(\(2\sin\theta\cos\theta=\sin2\theta\)):

$$V^2 > \frac{g\,\overline{FI}_{\text{水平}}}{\sin 2\theta}$$

\(\theta=\dfrac{\pi}{3}\) では \(\overline{FI}_{\text{水平}}=\dfrac{7r}{2\sqrt3}\)、\(\sin 2\theta = \sin\dfrac{2\pi}{3}=\dfrac{\sqrt3}{2}\)。代入すると:

$$V^2 > \frac{g\cdot \dfrac{7r}{2\sqrt3}}{\dfrac{\sqrt3}{2}} = g\cdot\frac{7r}{2\sqrt3}\cdot\frac{2}{\sqrt3} = \frac{7gr}{3}$$

問3(8) より \(V^2 = 2g(h_3 - r)\)。これを代入して \(h_3\) について解く:

$$2g(h_3 - r) > \frac{7gr}{3} \;\Rightarrow\; h_3 - r > \frac{7r}{6} \;\Rightarrow\; h_3 > r + \frac{7r}{6} = \frac{13r}{6}$$
答え:すべり出す高さ \(h_3\) が次の値を超えると壁を飛び越える。 $$h_3 > \frac{13r}{6}\ \text{[m]}$$
🧮 検算:\(h_3=\dfrac{13r}{6}\) でちょうど K をかすめる

限界 \(h_3=\dfrac{13r}{6}\) では \(V^2 = 2g\left(\dfrac{13r}{6}-r\right) = 2g\cdot\dfrac{7r}{6} = \dfrac{7gr}{3}\)。壁位置での高さ(F を原点、上向き正)を計算すると

$$y = \overline{FI}\tan\theta - \frac{g\,\overline{FI}^{\,2}}{2V^2\cos^2\theta} = \frac{7r}{2\sqrt3}\cdot\sqrt3 - \frac{g\left(\frac{7r}{2\sqrt3}\right)^2}{2\cdot\frac{7gr}{3}\cdot\frac14} = \frac{7r}{2} - \frac{7r}{2} = 0$$

ちょうど K(\(y=0\)、高さ \(r\))の高さに一致し、かすめる。これより \(h_3\) が大きいと \(y>0\) で飛び越え、小さいと壁に衝突する。数値では \(r=1.2\,\text{m}\) のとき限界は \(\dfrac{13\times1.2}{6}=2.6\,\text{m}\)。

Point

発射点と同じ高さの障害物を越えるかは「壁到達時刻 と 発射高さへ戻る時刻 \(\tfrac{2V\sin\theta}{g}\) の比較」で判定できる。水平・鉛直を分けて考えるのが斜方投射の鉄則。