直流電源と交流電源のそれぞれについて、抵抗 \(R\)、コイル(自己インダクタンス \(L\))、コンデンサー(電気容量 \(C\))を含む回路を解析する総合問題です。問1が直流、問2が交流の設定。
コイルは「電流の変化を嫌う」素子。スイッチを閉じた瞬間は電流を流さない( \(I_L = 0\))。十分時間が経つと電流変化がゼロになり、コイルは単なる導線と同じになる。\(S_2\) は開いたまま(コンデンサーは切り離されている)。
コイルのインダクタンスが \(L\) なので、\(S_1\) を閉じた直後(\(t = 0^+\))にはコイルの自己誘導起電力がコイルの両端に現れ、電流変化をゼロに保とうとする。
閉じる前は回路に電流が流れていない(\(I_L = 0\))ので、閉じた直後も:
$$I_L = 0 \text{ A}$$点 b を基準(電位 0)とすると、電流がゼロなので \(R\) と \(r\) での電圧降下はゼロ。コイルの両端(aからb)に起電力 \(E\) 全体が現れる。したがって:
$$V_a = E$$十分時間が経つと電流変化がゼロ(\(\frac{dI_L}{dt} = 0\))になり、コイルの自己誘導起電力 \(-L\frac{dI}{dt}\) もゼロ。コイルは単なる導線と同じ。
回路はE、r、Rの直列接続になるので:
$$I_L = \frac{E}{R + r}$$点 a の電位は、bから a に向かってコイルを上昇しても電圧降下なし(導線と同じ)なので:
$$V_a = 0 \text{ V}$$(b を基準にすると、コイルの両端の電位差はゼロ。a は b と同電位。)
\(S_1\) を閉じた後のキルヒホッフの電圧則:
$$E = I_L(R + r) + L\frac{dI_L}{dt}$$これは1階線形微分方程式であり、解は:
$$I_L(t) = \frac{E}{R+r}\left(1 - e^{-\frac{R+r}{L}t}\right)$$点 a の電位は \(V_a = L\frac{dI_L}{dt}\) なので:
$$V_a = E \cdot e^{-\frac{R+r}{L}t}$$これを \(E\), \(r\), \(R\) およびその時刻における \(V_a\) を用いて表すと:
$$I_L = \frac{E - V_a}{R + r}$$微分方程式 \(L\frac{dI}{dt} + (R+r)I = E\) の一般解:
$$I(t) = \frac{E}{R+r} + A e^{-\frac{R+r}{L}t}$$初期条件 \(I(0) = 0\) より \(A = -\frac{E}{R+r}\):
$$I(t) = \frac{E}{R+r}\left(1 - e^{-t/\tau}\right), \quad \tau = \frac{L}{R+r}$$時定数 \(\tau\) が大きいほど、定常状態に達するのが遅い。
RL回路の過渡応答:直後は \(I=0\)・\(V_L=E\)、定常では \(I=E/(R+r)\)・\(V_L=0\)。時定数 \(\tau = L/(R+r)\)。
十分時間が経った定常状態で可変抵抗 \(R\) の値を変える。\(R\) が小さすぎると電流は大きいが抵抗での電圧降下が小さく、\(R\) が大きすぎると電流が小さくなる。最適な \(R\) がある。
定常状態の電流は \(I = \frac{E}{R+r}\)。可変抵抗での消費電力は:
$$P = I^2 R = \frac{E^2 R}{(R+r)^2}$$\(P\) を \(R\) で微分して 0 とおく:
$$\frac{dP}{dR} = E^2 \cdot \frac{(R+r)^2 - R \cdot 2(R+r)}{(R+r)^4} = E^2 \cdot \frac{r - R}{(R+r)^3}$$\(\frac{dP}{dR} = 0\) の条件は:
$$r - R = 0 \quad \Longrightarrow \quad R = r$$これはインピーダンスマッチング(整合条件)として知られる重要な結果。最大電力は:
$$P_{\max} = \frac{E^2 r}{(2r)^2} = \frac{E^2}{4r}$$消費電力を変形:
$$P = \frac{E^2}{(\sqrt{R} + r/\sqrt{R})^2} \leq \frac{E^2}{(2\sqrt{r})^2} = \frac{E^2}{4r}$$等号条件 \(\sqrt{R} = r/\sqrt{R}\) より \(R = r\)。
負荷抵抗 = 内部抵抗 のとき外部消費電力は最大。これは通信工学の「インピーダンスマッチング」と同じ原理。
\(S_1\) が開いた状態で \(S_2\) を操作する。コイルに蓄えられた磁場エネルギーがコンデンサーの充電やジュール熱に変換される。
\(S_1\) が開いた状態(定常電流 \(I_0 = \frac{E}{R+r}\) が流れている)で \(S_2\) を開けてから \(S_1\) を閉じるのは「極めて短い時間」とある。このとき、コイルの電流は急変できないので、\(S_2\) を閉じた直後もコイルには \(I_0\) が流れ続ける。
選択肢から正しい説明を選ぶ。コイルの性質は:
「コイルに流れる電流は連続で、瞬間的には変化できない(\(L \frac{dI}{dt}\) が有限であるため)」
これに対応するのは選択肢 (ア)「\(I_L > 0\)(\(S_1\) を閉じる直前の値を維持)」。
\(S_1\) が開いている(電源が切断)状態で \(S_2\) を閉じると、コイルとコンデンサーと抵抗の直列回路で過渡的な振動(または過減衰)が生じる。十分時間が経つと、抵抗でエネルギーが散逸して:
$$I_L = 0 \text{ A}$$\(S_1\) を開く直前にコイルに蓄えられていた磁場エネルギーは:
$$W_L = \frac{1}{2}LI_0^2 = \frac{1}{2}L\left(\frac{E}{R+r}\right)^2 = \frac{LE^2}{2(R+r)^2}$$十分時間が経つと \(I_L = 0\) で磁場エネルギーはゼロ。コンデンサーの電圧も、電流がゼロなので最終的に一定値に達する(さらに抵抗 \(R\) を通じて放電してゼロになる)。
エネルギー保存より、磁場エネルギーの全てがジュール熱になる:
$$Q_J = \frac{1}{2}LI_0^2 = \frac{LE^2}{2(R+r)^2}$$ここで \(E\), \(r\), \(R\), \(L\) を用いて表している。
十分時間が経つと \(I_L = 0\) でコイルにはエネルギーがない。回路に電流が流れていないので抵抗での電圧降下もゼロ。しかしコンデンサーに電荷が残っていると、\(R\) を通じて放電するため、最終的にコンデンサーの電荷もゼロになる。したがって全ての磁場エネルギーはジュール熱に変換される。
コイルの磁場エネルギー \(\frac{1}{2}LI^2\) は、回路を切り離すと全てジュール熱として散逸する。コンデンサーを経由しても最終的に抵抗で消費される。
交流回路では、コイルは電流の位相を遅らせ(誘導性リアクタンス \(\omega L\))、コンデンサーは電流の位相を進ませる(容量性リアクタンス \(1/\omega C\))。抵抗だけが電力を消費する。
交流電圧 \(V = V_0 \sin\omega t\) の実効値は:
$$V_{\text{rms}} = \frac{V_0}{\sqrt{2}}$$\(S_1\) のみ閉じた交流回路(R, L 直列)。合成インピーダンスは \(\sqrt{R^2 + \omega^2 L^2}\)。抵抗を流れる電流の振幅と、コイルを流れる電流の振幅は直列なので同一の電流が流れる:
$$I_R = I_L = \frac{V_0}{\sqrt{R^2 + \omega^2 L^2}}$$これを \(V_0\), \(\omega\), \(R\), \(L\) の中から必要なもので表す。
交流回路の平均消費電力は抵抗のみで消費される:
$$\bar{P} = \frac{1}{2}I_0^2 R = \frac{V_0^2 R}{2(R^2 + \omega^2 L^2)}$$あるいは \(V_0\), \(R\) を用いて:
電流を \(I = I_0 \sin(\omega t + \theta)\) と表すとき、電源電圧 \(V = V_0 \sin\omega t\) に対する位相差 \(\theta\) は:
$$I_0 \sin(\omega t + \theta) \quad \text{において} \quad \tan\theta = -\frac{\omega L}{R}$$(コイルのリアクタンスにより電流は電圧より遅れる:\(\theta < 0\))
\(I_0\) と \(\tan\theta\) を \(V_0\), \(\omega\), \(R\), \(L\) から必要なもので表す:
電流 \(\vec{I}\)、コイルの電流 \(\vec{I_L}\)、コンデンサーの電流 \(\vec{I_C}\)、電源電圧 \(\vec{V}\) を \(xy\) 平面上で角速度 \(\omega\) で反時計回りに回転するベクトルとして描く。
RL直列回路(\(S_1\) のみ)では、\(\vec{I_R} = \vec{I_L} = \vec{I}\)(直列なので同一電流)。電圧について:
問題では \(\vec{I}\), \(\vec{I_R}\), \(\vec{I_L}\), \(\vec{V}\) の \(y\) 成分で各物理量を表すので、\(\vec{I}\) を基準に \(\vec{V}\) が \(\vec{I}\) より \(\theta\) 進んでいるベクトル図が正解。
RL直列回路のベクトル図:
電圧が電流より \(\theta = \arctan(\omega L/R)\) 進んでいる。
ベクトル図の基本:コイルの電圧は電流より \(\pi/2\) 進む、コンデンサーの電圧は電流より \(\pi/2\) 遅れる。「進む遅れる」は「コ(イル)ス(すすむ)」「コ(ンデンサー)オク(遅れる)」と覚える。
\(S_1\) を閉じたまま \(S_2\) を閉じると、コイルとコンデンサーが並列に接続される。共振状態では並列LC部分のインピーダンスが無限大になり、電流がRのみを流れる。
\(S_2\) を閉じると、コンデンサー \(C\) がコイル \(L\) と並列になる。コンデンサーの両端電圧は \(V_C\) で、コンデンサーに流れる電流の振幅は:
$$I_C = \omega C V_C$$ここで \(V_C = V_L\)(並列なので電圧が等しい)。\(V_L = \omega L I_L\) より:
\(V_0\), \(C\), \(\omega\), \(L\) を用いて:
並列共振条件 \(\omega = \frac{1}{\sqrt{LC}}\) のとき、\(I = I_0\) であったとすると、コイルとコンデンサーに流れる電流は等しく逆位相:
$$I_L = I_C, \quad \text{位相が \(\pi\) ずれる}$$並列LC部分の合成電流がゼロとなり、全電流は抵抗のみを流れる。回路全体を流れる電流は:
$$I = \frac{V_0}{R} \sin\omega t$$測定した電流が \(I = I_0\) だったので:
直列共振:LC 直列部分のインピーダンス最小 → 電流最大
並列共振:LC 並列部分のインピーダンス最大(理想的には無限大)→ その部分に電流が流れない
本問は並列共振。コイルとコンデンサーの間で電流が往復するが、外部回路には影響しない。
並列共振 \(\omega = 1/\sqrt{LC}\) ではLC並列部分のインピーダンスが無限大→ 全電流は抵抗のみを通る。直列共振と混同しないこと。