前期 大問3:熱力学(ピストン付き容器・気体の状態変化・液体を押し上げる現象)

解法の指針

高さ \(\tfrac{9}{2}L\)・断面積 \(S\) の縦置き容器の問題です。上部のピストンは初め高さ \(3L\) に固定され、上は外気 \(p_0\) に開放。ピストンの下は高さ \(2L\) の仕切板(バルブ付き)で、部屋A(\(0\)〜\(2L\)、体積 \(2SL\))部屋B(\(2L\)〜\(3L\)、体積 \(SL\))に分かれています。はじめバルブは閉、部屋Aに単原子分子理想気体 \(3n_0\,\mathrm{mol}\)(圧力 \(p_0\)、温度 \(\tfrac{T_0}{3}\))、部屋Bは真空です。

状態 1 → 6 と変化していきます。前半(設問1〜3)は状態方程式・定積変化・自由膨張、後半(設問4〜10)はピストンと液柱のつり合い気体がする仕事・熱力学第一法則を組み合わせます。まずは装置全体の変化を下のシミュレーションで俯瞰してください。

全体を貫くポイント

設問(1) — 気体定数 R を求める

直感的理解

部屋Aの初期状態は「圧力・体積・温度・物質量」がすべて分かっている。理想気体の状態方程式 \(pV=nRT\) はこの4つが分かれば \(R\) について解ける。体積は断面積 \(S\) × 高さ \(2L\) なので \(2SL\) であることに注意する。

部屋Aの初期状態に理想気体の状態方程式を適用する。体積 \(V=S\times 2L = 2SL\)、圧力 \(p_0\)、温度 \(\dfrac{T_0}{3}\)、物質量 \(3n_0\) なので:

$$p_0 \cdot 2SL = 3n_0 \cdot R \cdot \frac{T_0}{3}$$

右辺の \(3\) が約分されて \(3n_0\cdot\dfrac{T_0}{3}=n_0T_0\)。よって:

$$2p_0 S L = n_0 R\, T_0 \quad\Rightarrow\quad R = \frac{2 p_0 S L}{n_0 T_0}$$
答え: $$R = \frac{2 p_0 S L}{n_0 T_0}\ \ \mathrm{[J/(mol\cdot K)]}$$
🔍 補足:この後ずっと使う関係 \(n_0RT_0 = 2p_0SL\)

上の式を変形すると \(n_0 R T_0 = 2p_0SL\) が得られる。設問(2)以降で「\(n R T\) の形」が出てきたら、この置き換えで答えを \(p_0,S,L\) だけで表せる。問題が \(R\) を最初に問うのは、以降の計算のための"換算レート"を用意させるためである。

Point

状態方程式は4つの量のうち3つが分かれば残り1つ(ここでは \(R\))が出る。体積は「断面積 × 高さ」で、部屋Aの高さは \(2L\) なので \(2SL\)。

設問(2) — 状態2の温度 \(T_2\) と部屋Aが受け取った熱 \(Q_{12}\)

直感的理解

ピストンも仕切板も固定、バルブは閉。部屋Aの体積は \(2SL\) のまま変わらない(定積変化)。定積では圧力と温度が比例するので、圧力が \(p_0\to 3p_0\) と 3 倍になれば温度も 3 倍。受け取った熱は、定積なのですべて内部エネルギーの増加に使われる。

温度 \(T_2\):体積一定(定積変化)なので \(\dfrac{p}{T}\) が一定。状態1 \(\left(p_0,\ \tfrac{T_0}{3}\right)\) と状態2 \((3p_0,\ T_2)\) を比べて:

$$\frac{p_0}{\,T_0/3\,} = \frac{3p_0}{T_2} \quad\Rightarrow\quad T_2 = 3p_0 \cdot \frac{T_0/3}{p_0} = T_0$$

受け取った熱 \(Q_{12}\):定積変化では気体は仕事をしない(\(W=0\))ので、第一法則より \(Q_{12}=\Delta U\)。単原子分子理想気体の定積モル比熱は \(C_V=\dfrac{3}{2}R\)。物質量 \(3n_0\)、温度変化 \(\Delta T = T_0-\dfrac{T_0}{3}=\dfrac{2}{3}T_0\) だから:

$$Q_{12} = 3n_0 \cdot \frac{3}{2}R \cdot \frac{2}{3}T_0 = 3n_0 R\, T_0$$

ここで設問(1)の関係 \(n_0RT_0 = 2p_0SL\) を代入する:

$$Q_{12} = 3\,(n_0 R T_0) = 3 \cdot 2p_0 S L = 6 p_0 S L$$
答え: $$T_2 = T_0\ \mathrm{[K]},\qquad Q_{12} = 6 p_0 S L\ \mathrm{[J]}$$
🧮 具体例:数値を入れて \(Q_{12}\) を確かめる

仮に \(p_0 = 1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}\)、\(S = 1.0\times10^{-2}\ \mathrm{m^2}\)、\(L = 0.10\ \mathrm{m}\) とすると:

$$Q_{12} = 6 p_0 S L = 6 \times (1.0\times10^{5}) \times (1.0\times10^{-2}) \times 0.10 = 6.0\times10^{2}\ \mathrm{J}$$

およそ \(600\ \mathrm{J}\) の熱を部屋Aの気体が受け取る計算になる。定積なのでこの熱はまるごと温度上昇(内部エネルギー)に化ける

Point

定積変化は\(W=0\) なので \(Q=\Delta U=\tfrac32 nR\Delta T\)。温度は \(\dfrac{p}{T}=\)一定から一発。単原子分子は \(C_V=\tfrac32 R\) を必ず使う。

設問(3) — 自由膨張後(状態3)の \(T_3,\ p_3,\ n_b\)

直感的理解

バルブを開くと、部屋Aの気体が真空の部屋Bへドッと吹き出す(自由膨張)。真空に対しては押し返す相手がいないので気体は仕事をしないし、外との熱の出入りもない。よって内部エネルギー=温度は変わらない。十分時間が経てば気体は \(A+B\) 全体(体積 \(3SL\))に一様に広がる。

温度 \(T_3\):問題文にある通り、自由膨張では熱の出入りも仕事もなく内部エネルギーが不変。理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まるので温度も不変:

$$T_3 = T_2 = T_0$$

圧力 \(p_3\):気体全量 \(3n_0\) が体積 \(3SL\)(\(=2SL+SL\))、温度 \(T_0\) に一様に広がった状態方程式を立てる:

$$p_3 \cdot 3SL = 3n_0 R\, T_0 \quad\Rightarrow\quad p_3 = \frac{3n_0 R T_0}{3SL} = \frac{n_0 R T_0}{SL}$$

\(n_0 R T_0 = 2p_0SL\) を代入:

$$p_3 = \frac{2 p_0 S L}{S L} = 2 p_0$$

部屋Bの物質量 \(n_b\):一様な密度で分配されるので、体積比 \(\dfrac{SL}{3SL}=\dfrac13\) が部屋Bの取り分。あるいは部屋B(体積 \(SL\)、圧力 \(2p_0\)、温度 \(T_0\))に状態方程式を立てて:

$$n_b = \frac{p_3 \cdot SL}{R T_0} = \frac{2p_0 SL}{R T_0} = \frac{2p_0 SL}{\,2p_0 SL/n_0\,} = n_0$$
答え: $$T_3 = T_0\ \mathrm{[K]},\qquad p_3 = 2 p_0\ \mathrm{[Pa]},\qquad n_b = n_0\ \mathrm{[mol]}$$
🔬 補足:なぜ自由膨張で温度が下がらないのか

ピストンを押して膨張する(外に仕事をする)ときは、そのぶん内部エネルギーが減って温度が下がる。しかし真空へ膨張するときは押す相手がいないので仕事はゼロ。断熱容器で \(Q=0\)、\(W=0\) だから \(\Delta U=0\)、理想気体では \(\Delta U = \tfrac32 nR\Delta T\) なので \(\Delta T=0\)。これが「自由膨張=等温」と言われる理由である(実在気体ではわずかに温度変化する)。

Point

自由膨張は\(Q=0,\ W=0 \Rightarrow \Delta U=0 \Rightarrow T\)不変。あとは全体を1つの気体として状態方程式を立て、物質量は体積比で分ければよい。

設問(4) — 液体の密度 \(\rho\)

直感的理解

固定具を外してもピストンが動かなかった=ピストンにはたらく力がつり合っている。ピストン(質量無視)を上へ押すのは下の部屋Bの気体(圧力 \(p_3=2p_0\))、下へ押すのは上の外気 \(p_0\) + 高さ \(L\) の液柱の重み。この力のつり合いから、液柱がちょうど \(p_0\) 分の圧力を生むように密度が決まる。

状態3から状態4では、ピストンは動かず部屋Bの気体の状態も変わらないので、その圧力は \(p_3 = 2p_0\) のまま。ピストン(質量・厚さ無視)にはたらく力のつり合いを立てる。上向きは部屋Bの気体、下向きは外気と液柱:

$$\underbrace{p_3\, S}_{\text{下から気体}} = \underbrace{p_0\, S}_{\text{上から外気}} + \underbrace{\rho g L \cdot S}_{\text{液柱}L\text{の重み}}$$

両辺を \(S\) で割り、\(p_3=2p_0\) を代入する:

$$2p_0 = p_0 + \rho g L$$

これを \(\rho\) について解く:

$$\rho g L = p_0 \quad\Rightarrow\quad \rho = \frac{p_0}{gL}$$
答え: $$\rho = \frac{p_0}{gL}\ \ \mathrm{[kg/m^3]}$$
📐 補足:液柱が生む圧力 \(\rho g L\) の意味

高さ \(L\)、断面積 \(S\) の液柱の質量は \(\rho\cdot SL\)、重力は \(\rho SLg\)。これをピストン面積 \(S\) で割ると圧力 \(\dfrac{\rho SLg}{S}=\rho gL\)。つまり液柱は自分の重みぶんだけ余分に下へ押す。この \(\rho gL\) がちょうど \(p_0\)(気体の余剰圧 \(2p_0-p_0\))に等しくなる密度が答え。後の設問で \(\rho gL = p_0\)、\(\rho g = \dfrac{p_0}{L}\) を繰り返し使う。

Point

質量無視のピストンは上下の圧力がつり合う。液柱は \(\rho gh\) の圧力を足す。ここで得た \(\rho gL = p_0\) は以降の"つり合いの武器"。

設問(5) — 状態5の圧力 \(p_5\) と温度 \(T_5\)

直感的理解

ヒーターBで部屋Bを温め、ピストンを \(\dfrac{L}{2}\) 押し上げる。ピストンが上がっても液柱の高さは \(L\) のまま(断面積一定で液の量 \(SL\) は不変)で、上の \(\dfrac{L}{2}\) の空隙が埋まっていくだけ。だから液面が容器の口に届くまではつり合いの式は状態4と同じ形=圧力は \(2p_0\) で一定(定圧変化)。定圧なら体積比=温度比。

圧力 \(p_5\):ピストンが \(\dfrac{L}{2}\) 上昇する間、液柱の高さは \(L\) のまま(液の体積 \(SL\) 一定、断面積 \(S\) 一定)で、液面はまだ容器の口に届いていない。だからつり合いの式は状態4と同じ:

$$p_5\,S = p_0\,S + \rho g L\, S \;\Rightarrow\; p_5 = p_0 + \rho g L = p_0 + p_0 = 2p_0$$

つまり定圧変化(\(p_5 = 2p_0 = p_3\))。

温度 \(T_5\):部屋Bの体積は \(SL \to S\left(L+\dfrac{L}{2}\right)=\dfrac{3}{2}SL\) に増える(高さ \(L\to\dfrac32 L\))。物質量 \(n_0\) も圧力 \(2p_0\) も一定なので、シャルルの法則 \(\dfrac{V}{T}=\)一定より:

$$\frac{SL}{T_3} = \frac{\tfrac{3}{2}SL}{T_5} \;\Rightarrow\; T_5 = \frac{3}{2}\,T_3 = \frac{3}{2}\,T_0$$
答え: $$p_5 = 2 p_0\ \mathrm{[Pa]},\qquad T_5 = \frac{3}{2}\,T_0\ \mathrm{[K]}$$
🔍 補足:なぜ「定圧」だと言い切れるのか

ピストンの上には常に「外気 \(p_0\) + 高さ \(L\) の液柱」が乗っている。液面が容器の口に届くまでは液柱の高さが \(L\) で変わらないので、下から支えるべき圧力は常に \(p_0+\rho gL=2p_0\)。ピストンがゆっくり動く(力がつり合いながら動く)ため、この \(2p_0\) が加熱中ずっと保たれる。状態5でちょうど液面が口(高さ \(\tfrac92 L\))に到達する。

Point

上に乗る液柱の高さが一定ならピストン圧=定圧。定圧変化は \(\dfrac{V}{T}=\)一定で、体積 \(\tfrac32\) 倍 → 温度 \(\tfrac32\) 倍。

設問(6)(7) — 状態6の \(p_6,\ V_6\) と \(p_6\)–\(V_6\) の関係

直感的理解

状態5からさらにピストンを \(z\) 上げると、液面はもう容器の口に届いているので液があふれてこぼれる。液柱の高さは \(L\) から \(L-z\) へ減る。液柱が短くなるぶんピストンを下へ押す圧力が減り、必要な気体の圧力 \(p_6\) も下がる。体積は素直にピストンの上昇分だけ増える。

設問(6):\(p_6\) と \(V_6\)

状態5からピストンが \(z\) 上昇。部屋Bの高さは \(\dfrac32 L \to \dfrac32 L + z\) なので体積は:

$$V_6 = S\left(\frac{3L}{2} + z\right)$$

液面はすでに容器の口にあり、あふれるので液柱の高さは \(L-z\) に減る。液面(口)には外気 \(p_0\) がかかる。ピストンのつり合いは:

$$p_6\,S = p_0\,S + \rho g (L-z)\,S$$

両辺を \(S\) で割り、\(\rho g = \dfrac{p_0}{L}\)(設問4)を代入:

$$p_6 = p_0 + \frac{p_0}{L}(L-z) = p_0\cdot\frac{L + (L-z)}{L} = \frac{p_0(2L - z)}{L}$$
設問(6)の答え: $$p_6 = \frac{p_0(2L-z)}{L}\ \mathrm{[Pa]},\qquad V_6 = S\left(\frac{3L}{2}+z\right)\ \mathrm{[m^3]}$$

設問(7):\(p_6\) を \(V_6\) で表す

\(V_6 = S\left(\dfrac{3L}{2}+z\right)\) を \(z\) について解くと \(z = \dfrac{V_6}{S} - \dfrac{3L}{2}\)。これを \(p_6\) に代入して \(z\) を消す:

$$p_6 = \frac{p_0}{L}\Big(2L - z\Big) = \frac{p_0}{L}\left(2L - \frac{V_6}{S} + \frac{3L}{2}\right) = \frac{p_0}{L}\left(\frac{7L}{2} - \frac{V_6}{S}\right)$$

展開して整理すると、\(p_6\) は \(V_6\) の1次式(右下がりの直線)になる:

$$p_6 = \frac{7 p_0}{2} - \frac{p_0}{S L}\,V_6$$
設問(7)の答え: $$p_6 = \frac{7 p_0}{2} - \frac{p_0 V_6}{S L}$$
🔍 検算:状態5でこの式が \(2p_0\) を返すか

状態5は \(z=0\)、\(V_6 = V_5 = \dfrac32 SL\)。式に入れると \(p_6 = \dfrac{7p_0}{2} - \dfrac{p_0}{SL}\cdot\dfrac{3SL}{2} = \dfrac{7p_0}{2}-\dfrac{3p_0}{2}=2p_0\)。設問(5)の \(p_5=2p_0\) と一致。この直線の傾き \(-\dfrac{p_0}{SL}\) が、次の設問で仕事(\(p\)–\(V\) 図の面積)を計算する鍵になる。

Point

液があふれる段階では液柱 \(=L-z\)。つり合い \(p_6 = p_0 + \rho g(L-z)\) に \(\rho gL=p_0\) を入れると \(p_6 = \dfrac{p_0(2L-z)}{L}\)。\(z\) を \(V_6\) で置き換えれば \(p_6\)–\(V_6\) の直線が出る。

設問(8) — 部屋Bの気体がした仕事 \(W_{56}\)(空欄ア・イ)

直感的理解

設問(7)で \(p_6\) が \(V_6\) の1次式=\(p\)–\(V\) 図で直線だと分かった。気体がした仕事は\(p\)–\(V\) 図で「状態5から状態6までの曲線と \(V\) 軸で囲む面積」。直線の下なので台形の面積で計算できる。

状態5 \(\left(V_5=\dfrac32 SL,\ p_5=2p_0\right)\) から状態6 \(\left(V_6=\dfrac32 SL+Sz,\ p_6=\dfrac{p_0(2L-z)}{L}\right)\) まで、圧力は体積の1次関数で変化する。仕事は \(p\)–\(V\) 図の台形面積(上底 \(p_6\)、下底 \(p_5\)、高さ=体積変化 \(V_6-V_5\)):

$$W_{56} = \frac{1}{2}\,(p_5 + p_6)\,(V_6 - V_5)$$

体積変化は \(V_6 - V_5 = Sz\)。圧力の和は:

$$p_5 + p_6 = 2p_0 + \frac{p_0(2L-z)}{L} = 4p_0 - \frac{p_0 z}{L}$$

これらを代入する:

$$W_{56} = \frac{1}{2}\left(4p_0 - \frac{p_0 z}{L}\right)\cdot Sz = \frac{1}{2}p_0 S\left(4z - \frac{z^2}{L}\right)$$

\(p_0 SL\) でくくり、\(\dfrac{z}{L}\) の式に整える:

$$W_{56} = p_0 S L\left\{ -\frac{1}{2}\left(\frac{z}{L}\right)^2 + 2\left(\frac{z}{L}\right) \right\}$$
答え(空欄): $$(\mathrm{ア}) = -\frac{1}{2},\qquad (\mathrm{イ}) = 2$$
📐 別解:積分で面積を出す

\(p_6 = \dfrac{7p_0}{2}-\dfrac{p_0}{SL}V\) を \(V=V_5\) から \(V_6\) まで積分しても同じ:

$$W_{56} = \int_{V_5}^{V_6}\!\left(\frac{7p_0}{2}-\frac{p_0}{SL}V\right)dV = \left[\frac{7p_0}{2}V - \frac{p_0}{2SL}V^2\right]_{V_5}^{V_6}$$

\(V_5=\dfrac32 SL,\ V_6=\dfrac32 SL+Sz\) を入れて整理すると \(W_{56}=p_0SL\left\{-\dfrac12\left(\dfrac{z}{L}\right)^2 + 2\dfrac{z}{L}\right\}\) となり、台形公式と一致する。直線変化なら台形、曲線なら積分と使い分ければよい。

Point

気体がした仕事は\(p\)–\(V\) 図の面積。圧力が体積の1次式なら台形面積 \(\dfrac12(p_{\text{始}}+p_{\text{終}})\Delta V\) で一発。

設問(9) — 温度 \(T_6\) と内部エネルギー変化 \(\Delta U_{56}\)(空欄ウ〜キ)

直感的理解

\(T_6\) は状態方程式 \(p_6 V_6 = n_0 R T_6\) から。\(p_6\) も \(V_6\) も \(z\) の式なので、\(T_6\) は \(z\) の2次式になる。内部エネルギー変化は単原子分子なので \(\Delta U = \dfrac32 n_0 R\,\Delta T\)で、\(T_5\) からの差をとる。

温度 \(T_6\):部屋B(\(n_0\,\mathrm{mol}\))に状態方程式 \(p_6 V_6 = n_0 R T_6\) を立てる。まず \(p_6 V_6\) を計算する:

$$p_6 V_6 = \frac{p_0(2L-z)}{L}\cdot S\left(\frac{3L}{2}+z\right) = \frac{p_0 S}{L}(2L-z)\left(\frac{3L}{2}+z\right)$$

積を展開する:\((2L-z)\left(\dfrac{3L}{2}+z\right) = 3L^2 + \dfrac12 Lz - z^2\)。よって:

$$p_6 V_6 = \frac{p_0 S}{L}\left(3L^2 + \frac{1}{2}Lz - z^2\right) = p_0 S\left(3L + \frac{z}{2} - \frac{z^2}{L}\right)$$

\(T_6 = \dfrac{p_6V_6}{n_0 R}\)。ここで \(n_0 R = \dfrac{2p_0 SL}{T_0}\)(設問1)を使う:

$$T_6 = \frac{p_0 S\left(3L + \tfrac{z}{2} - \tfrac{z^2}{L}\right)}{2p_0 SL/T_0} = \frac{T_0}{2L}\left(3L + \frac{z}{2} - \frac{z^2}{L}\right)$$

各項を \(\dfrac{z}{L}\) の形に整理する:

$$T_6 = T_0\left\{ -\frac{1}{2}\left(\frac{z}{L}\right)^2 + \frac{1}{4}\left(\frac{z}{L}\right) + \frac{3}{2} \right\}$$

内部エネルギー変化 \(\Delta U_{56}\):単原子分子なので \(\Delta U_{56} = \dfrac32 n_0 R(T_6 - T_5)\)。\(T_5 = \dfrac32 T_0\) を引くと、定数項 \(\dfrac32\) が消える:

$$T_6 - T_5 = T_0\left\{ -\frac{1}{2}\left(\frac{z}{L}\right)^2 + \frac{1}{4}\left(\frac{z}{L}\right) \right\}$$

\(\dfrac32 n_0 R T_0 = \dfrac32\cdot 2p_0 SL = 3p_0 SL\) を使って:

$$\Delta U_{56} = 3p_0 S L\left\{ -\frac{1}{2}\left(\frac{z}{L}\right)^2 + \frac{1}{4}\left(\frac{z}{L}\right) \right\} = p_0 S L\left\{ -\frac{3}{2}\left(\frac{z}{L}\right)^2 + \frac{3}{4}\left(\frac{z}{L}\right) \right\}$$
答え(空欄): $$(\mathrm{ウ}) = -\frac{1}{2},\quad (\mathrm{エ}) = \frac{1}{4},\quad (\mathrm{オ}) = \frac{3}{2},\quad (\mathrm{カ}) = -\frac{3}{2},\quad (\mathrm{キ}) = \frac{3}{4}$$
🔍 検算:\(z=0\)(状態5)で \(T_6\) は \(T_5\) に戻るか

\(z=0\) を \(T_6\) の式に入れると \(T_6 = T_0\cdot\dfrac32 = \dfrac32 T_0 = T_5\)。\(\Delta U_{56}\) も \(z=0\) で \(0\)。境界で前の状態に一致するので式は正しい。なお \(\Delta U_{56}\) は \(\dfrac{z}{L}=\dfrac14\) で最大(正)になり、その後は温度が下がって負に転じる。

Point

\(T\) は状態方程式 \(pV=nRT\)から、\(\Delta U\) は単原子分子の\(\Delta U=\tfrac32 nR\Delta T\)から。\(n_0R=\dfrac{2p_0SL}{T_0}\) を代入すると答えが \(p_0SL\) と \(\dfrac{z}{L}\) だけで書ける。

設問(10) — ピストンが一気に上昇し始める \(z^{*}\)

直感的理解

ヒーターBでゆっくり熱を加えながらピストンを上げていく。加えた熱 \(Q_{56}(z)\) が \(z\) とともに増えている間は、少し熱を足すと少しだけ \(z\) が増える(安定に制御できる)。ところが\(Q_{56}\) が最大になる点を超えると、つり合いを保つには逆に熱を"抜く"必要が出てくる。ヒーターは熱を加える一方なので制御できず、ピストンが一気に飛び出す。だから \(z^{*}\) は \(Q_{56}(z)\) が最大になる点。

熱力学第一法則より、状態5から状態6で部屋Bの気体に与えた熱は \(Q_{56} = \Delta U_{56} + W_{56}\)。設問(8)(9)の結果を足す(\(u=\dfrac{z}{L}\) とおく):

$$Q_{56} = p_0 S L\left\{ -\frac{3}{2}u^2 + \frac{3}{4}u \right\} + p_0 S L\left\{ -\frac{1}{2}u^2 + 2u \right\}$$

同類項をまとめる(\(u^2\) の係数 \(-\dfrac32-\dfrac12=-2\)、\(u\) の係数 \(\dfrac34+2=\dfrac{11}{4}\)):

$$Q_{56} = p_0 S L\left\{ -2u^2 + \frac{11}{4}u \right\}$$

問題文にある通り「\(z^{*}\) を超えると、つり合いを保つには熱を外へ放出する必要がある」=\(z^{*}\) を境に \(Q_{56}\) が減少に転じる。つまり \(z^{*}\) は\(Q_{56}(z)\) が最大になる点。上に凸の2次関数なので、頂点で傾き \(0\):

$$\frac{d}{du}\left(-2u^2 + \frac{11}{4}u\right) = -4u + \frac{11}{4} = 0 \;\Rightarrow\; u = \frac{11}{16}$$

\(u = \dfrac{z}{L}\) だったので:

$$z^{*} = \frac{11}{16}L$$
答え: $$z^{*} = \frac{11 L}{16}$$
🧮 具体例と安定性の意味

\(u^2\) の係数が負なので \(Q_{56}(u)\) は上に凸の放物線。頂点 \(u=\dfrac{11}{16}=0.6875\) までは \(Q_{56}\) が増加(熱を加えるほど \(z\) が進む=安定にゆっくり上昇)、頂点を超えると \(Q_{56}\) は減少(\(z\) をさらに進めるには熱を抜かねばならない)。ヒーターは加熱しかできないので、\(z^{*}\) に達した瞬間からつり合いが保てず一気に噴出する。仮に \(L=0.10\ \mathrm{m}\) なら \(z^{*}=\dfrac{11}{16}\times0.10 \fallingdotseq 0.069\ \mathrm{m}\)、約 \(6.9\ \mathrm{cm}\)。なお \(z^{*}=\dfrac{11}{16}L \lt L\) なので、液体がまだ残っている(\(z\le L\))段階で噴出が起こることも確認できる。

Point

\(Q=\Delta U+W\) で \(Q_{56}(z)\) を作ると上に凸の2次関数。傾き \(\dfrac{dQ_{56}}{dz}=0\) の点が安定と不安定の境目 \(z^{*}\)。加熱一方では山の頂上で一気にピストンが動く。