床はつねに摩擦がなく、台 A(質量 \(M\))と小物体 B(質量 \(m\))からなる系を扱う総合問題です。3つの状況設定(I:台上の摩擦で B を引きずる/II:壁付き台と B の反発係数 \(e\) の衝突/III:ばねで連結した B の摩擦付き振動)に共通する解法の軸は次の通りです。
「最終的に一体となる」タイプは運動量保存で共通速度を出し、滑り距離やばね長はエネルギー保存で求めるのが定石です。
台 A をそっと押すと、A と B は一体で動きます。このとき B を一緒に加速させているのは「B と A の間の静止摩擦力」です。押す力を強くするほど B に必要な摩擦力も増え、ついに最大静止摩擦力 \(\mu m g\) を超えると B は取り残されて滑り出します。その境目が \(F_{\min}\) です。
力 \(F_1\) が小さいうちは、A と B は一体となって加速します。系全体(質量 \(M+m\))の運動方程式から共通加速度 \(a\) を求めます。
$$F_1 = (M+m)\,a \quad\Rightarrow\quad a = \frac{F_1}{M+m}$$次に B だけに注目すると、B を加速させる水平方向の力は A から受ける静止摩擦力 \(f\) のみです。B の運動方程式は
$$f = m a = \frac{m F_1}{M+m}$$B が滑らない条件は、この摩擦力が最大静止摩擦力 \(\mu m g\) を超えないことです。
$$\frac{m F_1}{M+m} \le \mu m g \quad\Rightarrow\quad F_1 \le \mu (M+m) g$$したがって、ちょうど滑り出す境界が求める最小値です。
$$F_{\min} = \mu (M+m) g$$滑り「出す」直前は B はまだ A に対して静止しています。静止状態で働ける摩擦力の上限は最大静止摩擦力 \(\mu m g\)なので、滑り出す条件にはこちらを使います。\(\mu>\mu'\) より、いったん滑り出すと摩擦力は \(\mu' m g\) に落ちます。
一体運動では系全体で加速度を求め、注目物体だけの運動方程式で「その物体を動かしている力(=摩擦力)」を逆算する。滑る条件は \(f \le \mu m g\)。
\(F_1>F_{\min}\) なので B は滑っています。滑っている間、B を引きずるのは動摩擦力 \(\mu' m g\)だけ。だから B は一定の加速度 \(\mu' g\) でゆっくり加速します。一方 A は強い力 \(F_1\) から摩擦の反作用を差し引いた力で、B より速く加速して前へ逃げていきます。
B が滑っている間、B が受ける水平力は動摩擦力 \(\mu' m g\)(A が動く向き、つまり \(+x\) 向き)のみです。B の運動方程式から加速度 \(a_B\) を求めます。
$$m a_B = \mu' m g \quad\Rightarrow\quad a_B = \mu' g$$静止から時刻 \(T_1\) まで等加速度なので、B の速度 \(v_1\) は
$$v_1 = a_B T_1 = \mu' g\, T_1$$次に A の運動方程式です。A には前向きの \(F_1\) と、B から受ける摩擦の反作用 \(\mu' m g\)(後ろ向き \(-x\))が働きます。
$$M a_A = F_1 - \mu' m g \quad\Rightarrow\quad a_A = \frac{F_1 - \mu' m g}{M}$$よって A の速度 \(V_1\) は
$$V_1 = a_A T_1 = \frac{(F_1 - \mu' m g)\,T_1}{M}$$B が A から受ける摩擦 \(\mu' m g\)(前向き)の反作用が、A が B から受ける摩擦 \(\mu' m g\)(後向き)です。系全体では外力 \(F_1\) だけが効くので、力積=運動量変化より
$$F_1 T_1 = m v_1 + M V_1 = m(\mu' g T_1) + (F_1 - \mu' m g)T_1 = F_1 T_1$$と矛盾なく一致します。
滑っている間の B の加速度は F₁ に依らず \(\mu' g\) で一定。A と B を別物体として運動方程式を立て、摩擦は互いに逆向きにかける。
図2では台 A と B の間に摩擦がありません。B に水平方向の力を伝える手段が(衝突が起きるまでは)何もないので、B は床に対して動きません。A だけが力 \(F_2\) で前へ加速し、B の下を滑っていきます。
図2では A と B の間にも床にも摩擦がありません。力 \(F_2\) は A だけに加わり、B には水平方向の力が一切働きません。よって B の運動方程式は
$$m \cdot a_B = 0 \quad\Rightarrow\quad a_B = 0$$初め静止しているので、B は動きません。
$$v_0 = 0$$A は質量 \(M\) で力 \(F_2\) を受けるので、加速度は \(a_A = F_2/M\)。時刻 \(T_2\) で速度が \(V_0\) になることから
$$V_0 = a_A T_2 = \frac{F_2}{M} T_2$$これを \(T_2\) について解いて
$$T_2 = \frac{M V_0}{F_2}$$この段階では B はまだどちらの壁にも接触していないとします。もし壁に押されていれば B にも力が伝わりますが、問題設定では \(0\le t\le T_2\) の間に衝突は起きません。だから B は純粋に「力ゼロ」で静止を続けます。
摩擦も接触もなければ水平方向の力はゼロ → 速度変化なし。力を受けるのは A だけなので、\(T_2\) は A 単独の等加速度運動から求める。
力を切ると、A は速度 \(V_0\) で動き B は静止。やがて壁が B にぶつかり、何度も衝突を繰り返します。反発係数 \(e<1\) なので衝突のたびに相対速度が小さくなり、最後は A と B が同じ速さに落ち着きます。床は摩擦なしなので、系全体の運動量はずっと保存しています。
力を切ったあと、系に働く水平外力はありません(床は摩擦なし)。衝突は内力なので、A+B の運動量は最初から最後まで保存します。力を切った瞬間は A が \(V_0\)、B が \(0\)。十分時間後に両者が同じ速度 \(v_2\) になったとすると
$$M V_0 + m \cdot 0 = (M+m)\, v_2$$これを解いて
$$v_2 = \frac{M V_0}{M+m}$$反発係数の値によらず、最終的な共通速度はこの値になります(\(e\) は「何回衝突するか・どれだけ熱になるか」を決めるだけ)。
衝突で失われる運動エネルギーは
$$\Delta K = \frac12 M V_0^2 - \frac12 (M+m) v_2^2 = \frac12 \cdot \frac{M m}{M+m} V_0^2$$これは \(e<1\) のときに正で、衝突音や変形(熱)として失われます。\(e=1\)(完全弾性)なら一体化せず振動し続けます。
文字式の妥当性を具体的な数値で確認します。仮に \(M = 2.0\) kg、\(m = 1.0\) kg、\(V_0 = 6.0\) m/s とすると、共通速度は
$$v_2 = \frac{M V_0}{M+m} = \frac{2.0 \times 6.0}{2.0 + 1.0} = \frac{12.0}{3.0} = 4.0 \text{ m/s}$$失われる運動エネルギーは
$$\Delta K = \frac12 \cdot \frac{M m}{M+m} V_0^2 = \frac12 \cdot \frac{2.0 \times 1.0}{3.0} \times 6.0^2 = \frac12 \times \frac{2.0}{3.0} \times 36 = 12.0 \text{ J}$$運動量 \(M V_0 = 2.0 \times 6.0 = 12.0\) kg·m/s が衝突の前後で保たれ、十分時間後には A・B がともに 4.0 m/s で動くことが確かめられます。
外力ゼロ+内部衝突 → 運動量保存で共通速度。「最終的に一体」と言われたら \(MV_0=(M+m)v\) を即立てる。\(e\) は最終速度に影響しない。
各衝突では、運動量保存と反発係数の式が同時に成り立ちます。相対速度 \((v_B-v_A)\) は衝突のたびに大きさが \(e\) 倍になり、向きが反転します。だから「相対速度=\((-e)^n\) 倍」とまとめられ、ここから A・B 個別の速度が決まります。
\(n\) 回目の衝突直後の A・B の速度を \(V_n',\ v_n'\) とします。各衝突で運動量は保存するので、衝突を何回繰り返しても
$$M V_n' + m v_n' = M V_0 \quad\cdots(\ast)$$反発係数の定義より、1回の衝突で「衝突後の相対速度」は「衝突前の相対速度」の \(-e\) 倍になります(向きが反転し大きさが \(e\) 倍)。衝突前(=力を切った直後)の相対速度は \(v_B-v_A = 0 - V_0 = -V_0\)。よって \(n\) 回後は
$$v_n' - V_n' = (-e)^n \,(0 - V_0) \cdot(-1)\ \ \Longrightarrow\ \ v_n' - V_n' = -(-e)^n V_0 \quad\cdots(\ast\ast)$$\((\ast)\) と \((\ast\ast)\) を連立します。\((\ast)\) を \(M+m\) で割った \(\dfrac{M V_n'+m v_n'}{M+m}=\dfrac{MV_0}{M+m}\) と \((\ast\ast)\) を組み合わせて
$$V_n' = \frac{M V_0}{M+m} - \frac{m}{M+m}\Big(v_n'-V_n'\Big)\cdot(-1)\ \Rightarrow\ V_n' = \frac{M + m(-e)^n}{M+m}\,V_0$$これを \((\ast)\) に戻して \(v_n'\) を求めると
$$v_n' = \frac{M\{1-(-e)^n\}}{M+m}\,V_0$$確かに \(n\to\infty\) で \((-e)^n\to 0\) となり、両者とも問4の \(v_2=\dfrac{MV_0}{M+m}\) に収束します。
1次元の反発係数 \(e\) の衝突公式(A→B にぶつかる)から、衝突前 \((V,v)\)、衝突後 \((V',v')\) は
$$V' = \frac{(M-em)V+(1+e)m\,v}{M+m},\qquad v'=\frac{(1+e)M\,V+(m-eM)v}{M+m}$$相対速度 \(u=v-V\) に着目すると \(u'=-e\,u\) が一発で出るので、\(u_n=(-e)^n u_0=-(-e)^nV_0\)。重心速度 \(\dfrac{MV+mv}{M+m}=\dfrac{MV_0}{M+m}\)(不変)と合わせれば同じ結果になります。
繰り返し衝突は「重心速度は不変」+「相対速度は毎回 \(-e\) 倍」の2本で攻める。符号付き \((-e)^n\) を忘れると向きを取り違える。
図3では B が台の壁にばねでつながれ、A と B の間には摩擦があります。最初に A だけ速度 \(V_0\) を与えると、ばねが伸び縮みし摩擦で熱が出ながら振動します。ばねの力も摩擦力も A・B 間の内力なので、床が摩擦なしの限り系全体の運動量は保存。十分時間後に一体になれば共通速度が決まります。
ばねの弾性力も A・B 間の摩擦力も、A と B からなる系の内力です。床は摩擦なしなので水平外力は働かず、運動量は保存します。最初は A が \(V_0\)、B が \(0\)。最終的に相対運動が止まって一体(共通速度 \(v_3\))になると
$$M V_0 + m \cdot 0 = (M+m)\,v_3$$よって
$$v_3 = \frac{M V_0}{M+m}$$問4と同じ形になります。「最終的に相対運動が止まる」のは、摩擦が相対運動のエネルギーを少しずつ熱に変えるためです。
最終状態では B が A に対して静止し(相対速度ゼロ)、ばねは一定の長さ \(L\) を保ちます。このとき B にはばねの力 \(k(L-d)\) と静止摩擦力がつり合い、A と B は同じ速度で並進します。摩擦が動摩擦である限り相対運動は減衰し続けるので、いずれこの状態に達します。
ばね・摩擦は系の内力。床が摩擦なしなら運動量は常に保存し、共通速度は \(MV_0/(M+m)\)。\(k,\mu'\) には依らない。
最初の運動エネルギーのうち、一部は最終的な並進運動に残り、一部はばねの弾性エネルギーになり、残りは摩擦熱になります。摩擦熱 \(=\mu' m g \times s\)(\(s\)=B が A 上を滑った相対距離の合計)。エネルギー保存の帳尻から \(s\) が決まります。
力学的エネルギー保存(摩擦熱を含む)を始め(A だけ \(V_0\)、ばね自然長)から終わり(一体・共通速度 \(v_3\)、ばね長 \(L\))まで立てます。摩擦による発熱は \(\mu' m g \cdot s\)。
$$\frac12 M V_0^2 = \frac12 (M+m) v_3^2 + \frac12 k (L-d)^2 + \mu' m g\, s$$運動エネルギーの減少分を計算します。\(v_3=\dfrac{MV_0}{M+m}\) を代入すると
$$\frac12 M V_0^2 - \frac12 (M+m) v_3^2 = \frac12 M V_0^2 - \frac12 \cdot \frac{M^2 V_0^2}{M+m} = \frac{M m\, V_0^2}{2(M+m)}$$よってエネルギー式は
$$\frac{M m\, V_0^2}{2(M+m)} = \frac12 k (L-d)^2 + \mu' m g\, s$$\(s\) について解いて
$$s = \frac{\dfrac{M m V_0^2}{2(M+m)} - \dfrac12 k(L-d)^2}{\mu' m g} = \frac{M m V_0^2 - (M+m)\,k (L-d)^2}{2\,\mu' m g\,(M+m)}$$摩擦熱は \(f \times (\text{相対滑り距離})\) で計算します。\(s\) は B が A に対して滑った距離の総和(往復ぶんすべて足したもの)であり、B や A が床に対して移動した距離とは別物です。動摩擦力の大きさ \(\mu' m g\) は向きが変わっても一定なので、熱は \(\mu' m g\cdot s\) と書けます。
「滑った総距離」はエネルギー保存の摩擦熱項 \(\mu' mg\,s\)から逆算する。運動エネルギーの減少は \(\dfrac{MmV_0^2}{2(M+m)}\) と覚えると速い。
A に \(V_0\) を与えた直後、A は前へ進み B は取り残されるので、ばねは縮みます(長さ \(D\lt d\))。縮んだばねは B を前(\(+x\))へ押し戻し、さらに B は A に対して後ろへ滑るので動摩擦も B を \(+x\) 向きに押します。A 上から見た B の加速度(相対加速度)を求めます。
ばねが \(D\lt d\) に縮んでいるとき、縮み量は \(d-D\)。ばねは B を \(+x\) 向きに \(k(d-D)\) で押します。この局面では B が A に対して後方へ滑っているので、B に働く動摩擦は滑りと逆の \(+x\) 向きで \(\mu' m g\)。B の運動方程式(床に対する加速度 \(a_B\))は
$$m\,a_B = k(d-D) + \mu' m g \quad\Rightarrow\quad a_B = \frac{k(d-D)+\mu' m g}{m}$$一方 A は、これらの力の反作用を受けます。ばねの一端は A の壁に固定されているので、ばねが B を \(+x\) に押すなら壁(A)を \(-x\) に引き、摩擦の反作用も A に \(-x\) 向きに \(\mu' m g\)。A の運動方程式は
$$M\,a_A = -\,k(d-D) - \mu' m g \quad\Rightarrow\quad a_A = -\frac{k(d-D)+\mu' m g}{M}$$A から見た B の相対加速度 \(a = a_B - a_A\) は
$$a = \frac{k(d-D)+\mu' m g}{m} + \frac{k(d-D)+\mu' m g}{M} = \big\{k(d-D)+\mu' m g\big\}\left(\frac1m+\frac1M\right)$$通分して整理すると
$$a = \frac{(M+m)\{k(d-D)+\mu' m g\}}{Mm}$$相対運動の方程式は換算質量 \(\mu_{\text{red}}=\dfrac{Mm}{M+m}\) を使って \(\mu_{\text{red}}\,a = k(d-D)+\mu' m g\) と書けます。これを解くと上と同じ \(a=\dfrac{(M+m)\{k(d-D)+\mu' mg\}}{Mm}\)。2体問題は換算質量で「1体の問題」に帰着できます。
相対加速度は\(a_B-a_A\)で計算。ばね力も摩擦力も A・B に逆向きの反作用でかかるため、相対加速度には \(\frac1m+\frac1M\) の因子が現れる。
A に \(V_0\) を与えると、B は A に対して後ろへ滑り、ばねは最大まで縮みます。その「最も縮んだ瞬間」が最初の折り返し(相対速度ゼロ)です。ここまでのエネルギー保存(並進KE+ばねPE+摩擦熱)から、縮み量 \(d-d_1\) を求めます。
始め(A だけ \(V_0\)、ばね自然長 \(d\))から最初の折り返し(相対速度ゼロ、ばね長 \(d_1\))までエネルギー保存を立てます。相対速度ゼロのとき A・B は瞬間的に共通速度 \(v^\ast=\dfrac{MV_0}{M+m}\)。縮み量を \(x=d-d_1\) とおくと、摩擦熱はこの局面では \(\mu' m g \cdot x\)(B は一方向に滑る)。
$$\frac12 M V_0^2 = \frac12 (M+m)\,{v^\ast}^2 + \frac12 k x^2 + \mu' m g\, x$$運動エネルギーの減少は問7と同様に \(\dfrac{MmV_0^2}{2(M+m)}\)。したがって
$$\frac{M m V_0^2}{2(M+m)} = \frac12 k x^2 + \mu' m g\, x$$両辺を 2 倍して \(x\) の2次方程式にします。
$$k x^2 + 2\mu' m g\, x - \frac{M m V_0^2}{M+m} = 0$$\(x>0\) の解を取ると
$$x = \frac{-\mu' m g + \sqrt{(\mu' m g)^2 + k\cdot \dfrac{M m V_0^2}{M+m}}}{k}$$ばね長は \(d_1 = d - x\) なので
$$d_1 = d - \frac{\sqrt{\mu'^2 m^2 g^2 + \dfrac{k M m V_0^2}{M+m}} - \mu' m g}{k}$$\(\mu'\to 0\) とすると \(x\to\sqrt{\dfrac{MmV_0^2}{k(M+m)}}\)。これは単純なばね(換算質量 \(\dfrac{Mm}{M+m}\))が初期相対運動エネルギー \(\dfrac12\cdot\dfrac{Mm}{M+m}V_0^2\) をすべてばねに蓄える縮み量と一致し、妥当です。摩擦があると(\(\mu'>0\))縮みは小さくなります。
折り返し=相対速度ゼロ=瞬間的に共通速度。エネルギー保存にばねPE \(\frac12kx^2\) と摩擦熱 \(\mu'mg\,x\) を両方入れて2次方程式を解く。
これは「摩擦のある単振動」(相対運動)と同じです。摩擦のある振動では、折り返しごとに振幅が一定量ずつ減ります。ここでは折り返しのたびにばねの変形(自然長からのずれ)の大きさが \(\dfrac{2\mu' m g}{k}\) ずつ減少し、向き(縮み/伸び)は交互に入れ替わります。
相対運動は「摩擦のある単振動」です。ばねの変形(自然長 \(d\) からのずれ)を \(s=(\text{ばね長})-d\) とおくと、各折り返しでの \(|s|\) は一定量ずつ減ります。実際、隣り合う2つの折り返し位置の差は、摩擦のある振動の標準結果として
$$|s_{n}| = |s_{n-1}| - \frac{2\mu' m g}{k}$$最初の折り返し(\(n=1\))の変形の大きさは、問9で求めた縮み量に等しく
$$|s_1| = \frac{\sqrt{\mu'^2 m^2 g^2 + \dfrac{k M m V_0^2}{M+m}} - \mu' m g}{k}$$よって \(n\) 回目の折り返しでの大きさは
$$|s_n| = |s_1| - (n-1)\frac{2\mu' m g}{k} = \frac{\sqrt{\mu'^2 m^2 g^2 + \dfrac{k M m V_0^2}{M+m}} - \mu' m g - (n-1)\,2\mu' m g}{k}$$分子をまとめると \(\sqrt{\;\cdots\;} - (2n-1)\mu' m g\) となります。さらに変形の向きは折り返しごとに交互(\(n=1\) は縮みなので符号 \(-1\))なので \(s_n=(-1)^n|s_n|\)。ばね長 \(L=d+s_n\) より
$$L = d + (-1)^n\,\frac{\sqrt{\mu'^2 m^2 g^2 + \dfrac{k M m V_0^2}{M+m}} - (2n-1)\mu' m g}{k}$$摩擦のある単振動は、各半周期ごとに「つり合いの中心」が摩擦力ぶん \(\dfrac{\mu' m g}{k}\) だけ滑り運動の向きと逆へずれた点を中心とする単振動になります。半周期で中心が \(+\dfrac{\mu' mg}{k}\) と \(-\dfrac{\mu' mg}{k}\) を交互に取るため、折り返しの振幅は半周期ごとに \(2\cdot\dfrac{\mu' mg}{k}\) ずつ減少します。最終的に \(|s_n|\) が静止摩擦で支えられる範囲(\(|s|\le \dfrac{\mu mg}{k}\))に入ると B は止まります。
摩擦付き振動は折り返しごとに振幅が \(2\mu'mg/k\) ずつ等差で減る。向きは交互なので符号 \((-1)^n\) を付ける。\(n=1\) で問9に一致することを必ず確認する。