振動数 $\nu$・強さ $J$ の光を金属試料に照射し、光電効果により放出される電子の運動を考察する問題です。前半は光電効果の基礎、後半は電場・磁場中での荷電粒子の運動を扱います。
光電効果で放出された電子を阻止するには、電極 P₁ を金属試料に対して負電位にして、電子を押し返します。
端子 A₂ の接続位置:電圧計が P₁ と金属試料間の電圧を測定できるよう、A₂ は (ア) A₁R₀ 間に接続します。
電圧の調整方向:V を徐々に大きくしていき(逆バイアスを増加)、$V = V_0$ で電流計の読みが 0 になったとき、その $V_0$ が阻止電圧です。
電圧計は P₁–試料間の電位差を測るため、並列に接続。可変抵抗器 R₀ で分圧して微調整する。A₁ は電源側、A₂ は電圧計の一端に対応する接続端子です。
阻止電圧の測定回路では逆バイアスをかけて電子を減速させる。電流が 0 になる電圧が $V_0$。
アインシュタインの光電効果の式:
$$h\nu = W_1 + \frac{1}{2}mv_{\max}^2$$阻止電圧 $V_0$ の定義から:
$$eV_0 = \frac{1}{2}mv_{\max}^2$$これらを組み合わせると:
$$h\nu = W_1 + eV_0$$ $$W_1 = h\nu - eV_0$$$eV_0 = h\nu - W_1$ を $V_0 = \frac{h}{e}\nu - \frac{W_1}{e}$ と変形すると、$V_0$–$\nu$ グラフは傾き $h/e$、$\nu$ 切片 $\nu_0 = W_1/h$(限界振動数)の直線。グラフの $y$ 切片 $-W_1/e$ からも仕事関数が求められます。
光電効果の式はエネルギー保存則そのもの:光子のエネルギー $h\nu$ = 仕事関数 $W$ + 電子の最大運動エネルギー $eV_0$。
電極 P₁ での電子の運動エネルギーを考えます。金属試料から最大エネルギーで飛び出した電子の運動エネルギーは $\frac{1}{2}mv_{\max}^2 = eV_0$ ですが、逆電圧 $V$($V < V_0$)が掛かっているので、P₁ を通過する電子の運動エネルギーは:
$$K_{P_1} = eV_0 - eV = e(V_0 - V)$$(電子の初速度は 0 と見なす条件が問題文にあるため、P₁ での速度はほぼ 0 とする場合もあります。)
P₁ から P₂ の間で電圧 $V_1$ で加速されるので、P₂ での運動エネルギーは:
$$\frac{1}{2}mv_1^2 = e(V_0 - V) + eV_1$$問題文に「P₁ での電子の初速度は無視できるものとする」とあるので:
$$\frac{1}{2}mv_1^2 = eV_1$$ただし、阻止電圧ぎりぎりの条件で考える場合(最大運動エネルギーの電子が P₁ を通過する場合):
$$\frac{1}{2}mv_1^2 = e(V_0 - V + V_1)$$ $$v_1 = \sqrt{\frac{2e(V_0 - V + V_1)}{m}}$$金属試料を電位 0 とすると:
電子(電荷 $-e$)が試料 → P₂ へ移動すると、得るエネルギーは $(-e) \times ((-V+V_1) - 0) = e(V - V_1)$…これは符号に注意。電子は電位の低い方に自然に加速されるので、P₂ が P₁ より正の場合は加速されます。
荷電粒子の加速では通過した電位差の総和でエネルギーが決まる。各段階の電位差を正確に足し合わせることが重要。
電子は $z$ 方向に速さ $v_1$ で Q₁Q₂ 間に入ります。極板間の一様電場 $E$ は $x$ 軸の負の方向(問題の設定による)に作用し、電子(電荷 $-e$)には $x$ 軸の正の向きに力 $eE$ が働きます。
$x$ 方向の等加速度運動:
$$a_x = \frac{eE}{m}$$極板間の通過時間:$z$ 方向の速度は $v_1$ のまま変わらないので、
$$t = \frac{\ell}{v_1}$$Q₂ の穴を通過した瞬間(=ソレノイドに入る瞬間)の $v_x$:
$$v_x = a_x \cdot t = \frac{eE}{m} \cdot \frac{\ell}{v_1} = \frac{eE\ell}{mv_1}$$極板間を通過する間に電子が得るエネルギーは電場が仕事をした分に相当します:$W = eE \cdot \Delta x$。$\Delta x = \frac{1}{2}\frac{eE}{m}\left(\frac{\ell}{v_1}\right)^2$ なので $\frac{1}{2}mv_x^2 = eE \cdot \Delta x$ から $v_x$ を確認できます。ただし直接 $v_x = at$ の方が簡潔です。
偏向電場中の荷電粒子は放物運動のアナロジー。$z$ 方向は等速、$x$ 方向は等加速度。通過時間 $t = \ell/v_1$ がキーとなる量。
ソレノイド内で $z$ 軸方向に一様な磁束密度 $B$ が存在します。電子(電荷 $-e$)が $xy$ 平面内に速度成分をもつと、ローレンツ力が向心力となり円運動をします。
ローレンツ力 = 向心力:
$$evB = \frac{mv^2}{r}$$ここで $v$ は $xy$ 平面内の速さ。整理すると:
$$r = \frac{mv}{eB}$$角速度は:
$$\omega = \frac{v}{r} = \frac{eB}{m}$$これはサイクロトロン角振動数と呼ばれ、速さ $v$ に依存しないという重要な性質があります。
磁場は $z$ 方向なので、$z$ 方向の速度成分 $v_z = v_1$ はローレンツ力の影響を受けず一定です。$xy$ 平面内では円運動、$z$ 方向には等速直線運動を行うため、3次元ではらせん(ヘリカル)運動になります。
$z$ 軸上の観測者から見ると等速円運動に見え、側面から見るとらせんです。
サイクロトロン角振動数 $\omega = eB/m$ は速さに依らない。これがサイクロトロン加速器の原理(加速しても周期が変わらない)。
金属試料2の仕事関数は $W_2 = W_1 - w$。光電効果の式:
$$h\nu = W_2 + \frac{1}{2}mv_{0m}^2 = (W_1 - w) + \frac{1}{2}mv_{0m}^2$$$W_1 = h\nu - eV_0$ を代入すると:
$$h\nu = (h\nu - eV_0 - w) + \frac{1}{2}mv_{0m}^2$$ $$\frac{1}{2}mv_{0m}^2 = eV_0 + w$$ところで、P₁ と金属試料の間には電圧 $V = V_0$ がかかっています(金属試料1で阻止電圧になるよう調整済み)。金属試料2から飛び出した電子がこの逆電圧を乗り越えて P₁ の穴を通過する際のエネルギー変化:
$$\frac{1}{2}mv_{0m}^2 - eV_0 = \frac{1}{2}mv_{\text{P1}}^2$$P₁ を通過する電子の運動エネルギーは $w$ です。ただし問題では P₂ の穴を通過する電子の最大初速度を求めるので:
$$\frac{1}{2}mv_{0m}^2 = eV_0 + w$$ここで $eV_0$ と $w$ を分離して書くと、$v_{0m} = \sqrt{\frac{2(eV_0 + w)}{m}}$ ですが、問題文の指定文字で表現すると:
P₂ を通過して穴を出る電子がもちうる最大の初速度の大きさを $v_{0}$ とすると、問題文の文脈から、P₁ の穴を通過する際の初速度は 0 なので:
$$v_{0m} = \sqrt{\frac{2w}{m}}$$金属試料1($W_1$)で $V = V_0$ のとき電流ゼロ:最大エネルギーの電子がちょうど P₁ に到達できない。
金属試料2($W_2 = W_1 - w$)に交換すると、同じ光で飛び出す電子の最大運動エネルギーは $w$ だけ多い。
$V = V_0$ の逆電圧で $eV_0$ 分のエネルギーを失うと、P₁ を通過後に残る運動エネルギーは $w$。
よって P₁ 通過直後の速さは $\sqrt{2w/m}$。これが P₂ 方向に進む際の初速度になります。
仕事関数の差 $w = W_1 - W_2$ がそのまま余剰運動エネルギーになる。阻止電圧を固定して試料を変えると、差分のエネルギーがそのまま電子に残る。
問6で $u = 2v_1$ という条件が与えられ、問7では最大初速度 $v_{0m}$ の電子がソレノイドに入った場合の円運動の半径を求めます。
ソレノイド内で $xy$ 平面内の速さが円運動の半径を決めます。電子の $xy$ 平面内の速さを $v_\perp$ とすると:
$$r = \frac{mv_\perp}{eB}$$最大初速度 $v_{0m}$ の電子の場合、$v_\perp = v_{0m} = \sqrt{\frac{2w}{m}}$ なので:
$$r = \frac{m}{eB}\sqrt{\frac{2w}{m}} = \frac{\sqrt{2mw}}{eB} = \frac{1}{eB}\sqrt{2mw}$$角速度 $\omega = eB/m$ は速さに依らず一定ですが、半径 $r = mv/(eB)$ は速さに比例します。初速度が連続分布する場合($0$ から $v_{0m}$ まで)、円運動の半径も $0$ から $mv_{0m}/(eB)$ まで連続的に分布します。
$r = mv/(eB)$ は速さに比例。角速度は一定でも、速い電子ほど大きな円を描く。
金属試料2から放出される電子は $0$ から $v_{0m}$ まで連続的に分布する初速度をもちます。ソレノイド内では全ての電子が同じ角速度 $\omega = eB/m$ で円運動しますが、半径 $r = mv/(eB)$ は速さに比例するため、$0$ から $r_{\max} = mv_{0m}/(eB)$ まで連続分布します。
投影図のポイント:
十分に長い時間照射すると、異なる半径の円が重なり合い、$xy$ 平面上では入射点を含む半円形(ディスク状)の領域が塗りつぶされます。
試料1の参考円 C を基準とすると、試料2ではそれより大きな半径の軌道も加わるため、C の外側にも軌跡が広がります。これは選択肢(き)の形状に対応します。
初速度 $v_i$($0 \leq v_i \leq v_{0m}$)の電子は半径 $r_i = mv_i/(eB)$ の円を描きます。すべての円は入射点を通り、中心は入射点から $r_i$ だけ離れた同一方向にあります。これらの円の合集合(ユニオン)が投影図です。
$r_i = 0$(入射点のみ)から $r_{\max}$(最大円)まで連続的に変化するため、最大円の内部が完全に塗りつぶされ、円 C の外側にも軌跡が広がります。
投影図の問題では連続分布する速度 → 連続分布する半径という対応を意識する。「個々の軌道」ではなく「軌道の重ね合わせ(合集合)」で図形を判断する。