前期 大問2:電磁気(光電効果とソレノイド中の電子の運動)

解法の指針

振動数 $\nu$・強さ $J$ の光を金属試料に照射し、光電効果により放出される電子の運動を考察する問題です。前半は光電効果の基礎、後半は電場・磁場中での荷電粒子の運動を扱います。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1 — 端子 A₂ の接続位置と電圧の調整方向

直感的理解
光電効果で飛び出した電子を阻止するには、電極 P₁ を金属試料に対しての電位にする(電子を押し返す逆電圧をかける)。可変抵抗器で電圧を調整し、電流計の読みがゼロになる電圧が阻止電圧 $V_0$。回路の接続位置は、P₁ が負極になるよう選ぶ。

光電効果で放出された電子を阻止するには、電極 P₁ を金属試料に対して負電位にして、電子を押し返します。

端子 A₂ の接続位置:電圧計が P₁ と金属試料間の電圧を測定できるよう、A₂ は (ア) A₁R₀ 間に接続します。

電圧の調整方向:V を徐々に大きくしていき(逆バイアスを増加)、$V = V_0$ で電流計の読みが 0 になったとき、その $V_0$ が阻止電圧です。

答え:A₂ の接続位置は (ア)。電圧を徐々に大きくして電流が 0 になる電圧 $V_0$ を読み取る。
🔍 補足:回路構成の考え方

電圧計は P₁–試料間の電位差を測るため、並列に接続。可変抵抗器 R₀ で分圧して微調整する。A₁ は電源側、A₂ は電圧計の一端に対応する接続端子です。

Point

阻止電圧の測定回路では逆バイアスをかけて電子を減速させる。電流が 0 になる電圧が $V_0$。

問2 — 仕事関数 $W_1$

直感的理解
光電効果の基本式:光のエネルギー = 仕事関数 + 電子の最大運動エネルギー。阻止電圧 $V_0$ で最大運動エネルギーの電子がちょうど止まるので、$eV_0 = \frac{1}{2}mv^2_{\max}$。

アインシュタインの光電効果の式:

$$h\nu = W_1 + \frac{1}{2}mv_{\max}^2$$

阻止電圧 $V_0$ の定義から:

$$eV_0 = \frac{1}{2}mv_{\max}^2$$

これらを組み合わせると:

$$h\nu = W_1 + eV_0$$ $$W_1 = h\nu - eV_0$$
答え:$W_1 = h\nu - eV_0$
📐 別解:$\nu$–$V_0$ グラフからの求め方

$eV_0 = h\nu - W_1$ を $V_0 = \frac{h}{e}\nu - \frac{W_1}{e}$ と変形すると、$V_0$–$\nu$ グラフは傾き $h/e$、$\nu$ 切片 $\nu_0 = W_1/h$(限界振動数)の直線。グラフの $y$ 切片 $-W_1/e$ からも仕事関数が求められます。

Point

光電効果の式はエネルギー保存則そのもの:光子のエネルギー $h\nu$ = 仕事関数 $W$ + 電子の最大運動エネルギー $eV_0$。

問3 — 電極 P₂ の穴を通過した瞬間の電子の速さ $v_1$

直感的理解
$V_0$ よりわずかに小さい電圧 $V$ をかけた状態で、最大運動エネルギーの電子が電極 P₁ の穴を通過し、さらに電極 P₁ に対して正の電圧 $V_1$ がかかった P₂ に向かって加速される。P₂ の穴を通過する電子の速さは、各段階で得たエネルギーの合計で決まる。

電極 P₁ での電子の運動エネルギーを考えます。金属試料から最大エネルギーで飛び出した電子の運動エネルギーは $\frac{1}{2}mv_{\max}^2 = eV_0$ ですが、逆電圧 $V$($V < V_0$)が掛かっているので、P₁ を通過する電子の運動エネルギーは:

$$K_{P_1} = eV_0 - eV = e(V_0 - V)$$

(電子の初速度は 0 と見なす条件が問題文にあるため、P₁ での速度はほぼ 0 とする場合もあります。)

P₁ から P₂ の間で電圧 $V_1$ で加速されるので、P₂ での運動エネルギーは:

$$\frac{1}{2}mv_1^2 = e(V_0 - V) + eV_1$$

問題文に「P₁ での電子の初速度は無視できるものとする」とあるので:

$$\frac{1}{2}mv_1^2 = eV_1$$

ただし、阻止電圧ぎりぎりの条件で考える場合(最大運動エネルギーの電子が P₁ を通過する場合):

$$\frac{1}{2}mv_1^2 = e(V_0 - V + V_1)$$ $$v_1 = \sqrt{\frac{2e(V_0 - V + V_1)}{m}}$$
答え:$v_1 = \sqrt{\dfrac{2e(V_1 - V + V_0)}{m}}$
(P₁ での初速 0 の近似では $v_1 = \sqrt{\dfrac{2eV_1}{m}}$)
📐 別解:エネルギー図による整理

金属試料を電位 0 とすると:

  • P₁ の電位:$-V$(逆バイアス)
  • P₂ の電位:$-V + V_1$(P₁ に対して $+V_1$)

電子(電荷 $-e$)が試料 → P₂ へ移動すると、得るエネルギーは $(-e) \times ((-V+V_1) - 0) = e(V - V_1)$…これは符号に注意。電子は電位の低い方に自然に加速されるので、P₂ が P₁ より正の場合は加速されます。

Point

荷電粒子の加速では通過した電位差の総和でエネルギーが決まる。各段階の電位差を正確に足し合わせることが重要。

問4 — 電極 Q₁Q₂ 間を通過後のソレノイドに入る瞬間の速度の $x$ 成分 $v_x$

直感的理解
電子が $z$ 軸方向に速さ $v_1$ で進み、2枚の平行板電極 Q₁, Q₂ の間で $x$ 方向の一様電場 $E$ を受ける。電場による力は $F = eE$($x$ 方向)で、$z$ 方向の速度は変わらない。これは重力場中の水平投射のアナロジー。

電子は $z$ 方向に速さ $v_1$ で Q₁Q₂ 間に入ります。極板間の一様電場 $E$ は $x$ 軸の負の方向(問題の設定による)に作用し、電子(電荷 $-e$)には $x$ 軸の正の向きに力 $eE$ が働きます。

$x$ 方向の等加速度運動:

$$a_x = \frac{eE}{m}$$

極板間の通過時間:$z$ 方向の速度は $v_1$ のまま変わらないので、

$$t = \frac{\ell}{v_1}$$

Q₂ の穴を通過した瞬間(=ソレノイドに入る瞬間)の $v_x$:

$$v_x = a_x \cdot t = \frac{eE}{m} \cdot \frac{\ell}{v_1} = \frac{eE\ell}{mv_1}$$
答え:$v_x = \dfrac{eE\ell}{mv_1}$
📐 別解:エネルギー保存を用いた $v_x$ の確認

極板間を通過する間に電子が得るエネルギーは電場が仕事をした分に相当します:$W = eE \cdot \Delta x$。$\Delta x = \frac{1}{2}\frac{eE}{m}\left(\frac{\ell}{v_1}\right)^2$ なので $\frac{1}{2}mv_x^2 = eE \cdot \Delta x$ から $v_x$ を確認できます。ただし直接 $v_x = at$ の方が簡潔です。

Point

偏向電場中の荷電粒子は放物運動のアナロジー。$z$ 方向は等速、$x$ 方向は等加速度。通過時間 $t = \ell/v_1$ がキーとなる量。

問5 — ソレノイド内での等速円運動の角速度

直感的理解
ソレノイド内は $z$ 軸の正の向きに一様な磁場 $B$ がある。$z$ 軸上の観測者から見ると、電子は $xy$ 平面内で等速円運動をする。ローレンツ力が向心力を提供する。角速度は速さによらず、$eB/m$ で決まる(サイクロトロン角振動数)。

ソレノイド内で $z$ 軸方向に一様な磁束密度 $B$ が存在します。電子(電荷 $-e$)が $xy$ 平面内に速度成分をもつと、ローレンツ力が向心力となり円運動をします。

ローレンツ力 = 向心力:

$$evB = \frac{mv^2}{r}$$

ここで $v$ は $xy$ 平面内の速さ。整理すると:

$$r = \frac{mv}{eB}$$

角速度は:

$$\omega = \frac{v}{r} = \frac{eB}{m}$$

これはサイクロトロン角振動数と呼ばれ、速さ $v$ に依存しないという重要な性質があります。

答え:$\omega = \dfrac{eB}{m}$
🔍 補足:ソレノイド内の3次元運動

磁場は $z$ 方向なので、$z$ 方向の速度成分 $v_z = v_1$ はローレンツ力の影響を受けず一定です。$xy$ 平面内では円運動、$z$ 方向には等速直線運動を行うため、3次元ではらせん(ヘリカル)運動になります。

$z$ 軸上の観測者から見ると等速円運動に見え、側面から見るとらせんです。

Point

サイクロトロン角振動数 $\omega = eB/m$ は速さに依らない。これがサイクロトロン加速器の原理(加速しても周期が変わらない)。

問6 — 金属試料2の電子の最大初速度 $v_{0m}$

直感的理解
金属試料2の仕事関数は $W_2 = W_1 - w$($W_1$ より $w$ だけ小さい)。仕事関数が小さいほど光電子の最大運動エネルギーが大きくなる。$V = V_0$ に設定されているので、阻止電圧を超える余剰エネルギーが電子の運動エネルギーとなる。

金属試料2の仕事関数は $W_2 = W_1 - w$。光電効果の式:

$$h\nu = W_2 + \frac{1}{2}mv_{0m}^2 = (W_1 - w) + \frac{1}{2}mv_{0m}^2$$

$W_1 = h\nu - eV_0$ を代入すると:

$$h\nu = (h\nu - eV_0 - w) + \frac{1}{2}mv_{0m}^2$$ $$\frac{1}{2}mv_{0m}^2 = eV_0 + w$$

ところで、P₁ と金属試料の間には電圧 $V = V_0$ がかかっています(金属試料1で阻止電圧になるよう調整済み)。金属試料2から飛び出した電子がこの逆電圧を乗り越えて P₁ の穴を通過する際のエネルギー変化:

$$\frac{1}{2}mv_{0m}^2 - eV_0 = \frac{1}{2}mv_{\text{P1}}^2$$

P₁ を通過する電子の運動エネルギーは $w$ です。ただし問題では P₂ の穴を通過する電子の最大初速度を求めるので:

$$\frac{1}{2}mv_{0m}^2 = eV_0 + w$$

ここで $eV_0$ と $w$ を分離して書くと、$v_{0m} = \sqrt{\frac{2(eV_0 + w)}{m}}$ ですが、問題文の指定文字で表現すると:

P₂ を通過して穴を出る電子がもちうる最大の初速度の大きさを $v_{0}$ とすると、問題文の文脈から、P₁ の穴を通過する際の初速度は 0 なので:

$$v_{0m} = \sqrt{\frac{2w}{m}}$$
答え:$v_{0m} = \sqrt{\dfrac{2w}{m}}$
📐 別解:エネルギー図を使った整理

金属試料1($W_1$)で $V = V_0$ のとき電流ゼロ:最大エネルギーの電子がちょうど P₁ に到達できない。

金属試料2($W_2 = W_1 - w$)に交換すると、同じ光で飛び出す電子の最大運動エネルギーは $w$ だけ多い。

$V = V_0$ の逆電圧で $eV_0$ 分のエネルギーを失うと、P₁ を通過後に残る運動エネルギーは $w$。

よって P₁ 通過直後の速さは $\sqrt{2w/m}$。これが P₂ 方向に進む際の初速度になります。

Point

仕事関数の差 $w = W_1 - W_2$ がそのまま余剰運動エネルギーになる。阻止電圧を固定して試料を変えると、差分のエネルギーがそのまま電子に残る。

問7 — 等速円運動の半径($u = 2v_1$ の条件)

直感的理解
最大初速度 $v_{0m}$ をもつ電子が P₂ を通過後、電場で偏向され、ソレノイドに入る。ソレノイド内では $xy$ 平面内の速度成分のみが円運動の半径を決める。$u = 2v_1$ という条件を使って半径を求める。

問6で $u = 2v_1$ という条件が与えられ、問7では最大初速度 $v_{0m}$ の電子がソレノイドに入った場合の円運動の半径を求めます。

ソレノイド内で $xy$ 平面内の速さが円運動の半径を決めます。電子の $xy$ 平面内の速さを $v_\perp$ とすると:

$$r = \frac{mv_\perp}{eB}$$

最大初速度 $v_{0m}$ の電子の場合、$v_\perp = v_{0m} = \sqrt{\frac{2w}{m}}$ なので:

$$r = \frac{m}{eB}\sqrt{\frac{2w}{m}} = \frac{\sqrt{2mw}}{eB} = \frac{1}{eB}\sqrt{2mw}$$
答え:$r = \dfrac{mv_{0m}}{eB} = \dfrac{1}{eB}\sqrt{2mw}$
🔍 補足:半径と速さの関係

角速度 $\omega = eB/m$ は速さに依らず一定ですが、半径 $r = mv/(eB)$ は速さに比例します。初速度が連続分布する場合($0$ から $v_{0m}$ まで)、円運動の半径も $0$ から $mv_{0m}/(eB)$ まで連続的に分布します。

Point

$r = mv/(eB)$ は速さに比例。角速度は一定でも、速い電子ほど大きな円を描く。

問8 — $xy$ 平面上の投影図

直感的理解
金属試料2から様々な初速度($0$ から $v_{0m}$ まで連続分布)で飛び出した電子が、ソレノイド内でらせん運動をする。$z$ 軸上の観測者から見た $xy$ 平面への投影は、異なる半径の円運動が重なったパターンになる。電子は $z$ 軸の正方向に進みながら円を描くため、$xy$ 投影は閉じた円(全円)になる。

金属試料2から放出される電子は $0$ から $v_{0m}$ まで連続的に分布する初速度をもちます。ソレノイド内では全ての電子が同じ角速度 $\omega = eB/m$ で円運動しますが、半径 $r = mv/(eB)$ は速さに比例するため、$0$ から $r_{\max} = mv_{0m}/(eB)$ まで連続分布します。

投影図のポイント:

十分に長い時間照射すると、異なる半径の円が重なり合い、$xy$ 平面上では入射点を含む半円形(ディスク状)の領域が塗りつぶされます。

試料1の参考円 C を基準とすると、試料2ではそれより大きな半径の軌道も加わるため、C の外側にも軌跡が広がります。これは選択肢(き)の形状に対応します。

答え:(き)
理由:初速度 $0$〜$v_{0m}$ の連続分布により、半径 $0$〜$r_{\max}$ の円軌道が重なり、参考円 C を含み、さらにその外側にも広がる塗りつぶし領域が生じる。$z$ 方向の速度は $xy$ 投影に影響しないため、各電子は完全な円を描き、結果として入射点を中心とした半ディスク状の投影図となる。
📐 別解:各電子の軌道を重ね合わせる考え方

初速度 $v_i$($0 \leq v_i \leq v_{0m}$)の電子は半径 $r_i = mv_i/(eB)$ の円を描きます。すべての円は入射点を通り、中心は入射点から $r_i$ だけ離れた同一方向にあります。これらの円の合集合(ユニオン)が投影図です。

$r_i = 0$(入射点のみ)から $r_{\max}$(最大円)まで連続的に変化するため、最大円の内部が完全に塗りつぶされ、円 C の外側にも軌跡が広がります。

Point

投影図の問題では連続分布する速度 → 連続分布する半径という対応を意識する。「個々の軌道」ではなく「軌道の重ね合わせ(合集合)」で図形を判断する。