前期 大問3:ピストンつきシリンダーと液体(熱力学)

解法の指針

鉛直なシリンダーに閉じ込めた 1 mol の単原子分子理想気体(比熱 \(C_V=\tfrac{3}{2}R,\ C_p=\tfrac{5}{2}R\))を、ピストン上の液体の重さで圧縮したり、熱交換器で膨張させたりする問題です。ポイントは 「そのときピストンが支えている圧力がいくらか」 を各状態でていねいに追うことにあります。

直感的理解

ピストンは質量ゼロなので、気体の圧力 = 大気圧 + 上に乗った液体の重さによる圧力。液体が多いほど気体は強く押される。液体が排出口から流れ出すと液柱が短くなり、圧力もその分だけ下がっていく。この「液柱の高さと圧力の対応」が全問を貫く鍵です。

4 つの状態の整理
状態圧力体積温度変化の種類
状態1 (i)\(p_0\)\(V_0\)\(T_0\)
状態2 (ii)\(2p_0\)\(V_2\)\(T_2\)1→2:断熱圧縮
状態3 (iii)\(2p_0\)\(V_0\)\(T_3\)2→3:定圧膨張
状態4 (iv)\(p_0\)\(2V_0\)\(T_4\)3→4:直線変化(排液)
全体を貫くポイント

4 状態のシミュレーション

直感的理解

状態1→2→3→4 とシリンダーの中身がどう変わるかを再生してみましょう。液体(水色)が乗るとピストンが沈み、熱を加えると膨張し、やがて液体が排出口からあふれ出て最後は大気圧だけになります。

Point

各状態で 「気体の圧力 = \(p_0\) + 液柱による圧力」 を意識する。液体が排出口からあふれ始めると液柱が縮み、それに応じて圧力が下がる。この対応が (d) 以降の直線変化を生む。

設問(a) — 状態2の体積 \(V_2\) と温度 \(T_2\)

直感的理解

熱交換器を止めた状態で液体を注いだので、気体は熱をやり取りせずに(断熱的に)押し縮められる。断熱圧縮では気体が仕事をされて内部エネルギーが増えるので、温度は上がる。圧力は \(p_0\to 2p_0\) と 2 倍になる。

シリンダーもピストンも断熱材でできており、1→2 では熱交換器を作動させていない。したがって気体は外部と熱をやり取りしない 断熱変化 をする。単原子分子理想気体の比熱比は

$$\gamma = \frac{C_p}{C_V} = \frac{\frac{5}{2}R}{\frac{3}{2}R} = \frac{5}{3}$$

断熱変化のポアソンの関係式 \(pV^{\gamma}=\)一定 を状態1と状態2に適用する(\(p_1=p_0,\ V_1=V_0,\ p_2=2p_0\)):

$$p_0 V_0^{\,5/3} = 2p_0\, V_2^{\,5/3}$$

両辺を \(p_0\) で割って \(V_2\) について解く:

$$V_2^{\,5/3} = \frac{1}{2}V_0^{\,5/3} \quad\Longrightarrow\quad V_2 = \left(\frac{1}{2}\right)^{3/5} V_0 = 2^{-3/5}\,V_0$$

温度は理想気体の状態方程式 \(\dfrac{pV}{T}=\)一定 から求める:

$$\frac{p_0 V_0}{T_0} = \frac{2p_0 V_2}{T_2} \quad\Longrightarrow\quad T_2 = \frac{2p_0 V_2}{p_0 V_0}\,T_0 = 2\cdot\frac{V_2}{V_0}\,T_0$$

\(V_2/V_0 = 2^{-3/5}\) を代入して整理する:

$$T_2 = 2\cdot 2^{-3/5}\,T_0 = 2^{\,1-\frac{3}{5}}\,T_0 = 2^{2/5}\,T_0$$
答え:\(\ V_2 = 2^{-3/5}V_0 \fallingdotseq 0.66\,V_0,\quad T_2 = 2^{2/5}T_0 \fallingdotseq 1.32\,T_0\)
別解:断熱の温度体積関係 \(TV^{\gamma-1}=\)一定 を使う

ポアソンの式は \(TV^{\gamma-1}=\)一定 の形でも書ける(\(\gamma-1=\tfrac{2}{3}\)):

$$T_0 V_0^{\,2/3} = T_2 V_2^{\,2/3} \;\Rightarrow\; T_2 = T_0\left(\frac{V_0}{V_2}\right)^{2/3} = T_0\left(2^{3/5}\right)^{2/3} = 2^{2/5}T_0$$

状態方程式を経由しなくても同じ結果が得られる。

Point

「熱交換器 OFF + 断熱壁 = 断熱変化」を見抜くのが最重要。等温圧縮(\(V_2=\tfrac12V_0,\ T_2=T_0\))と取り違えないこと。断熱では圧縮で温度が上がる。

設問(b) — 状態3の温度 \(T_3\)

直感的理解

状態2から状態3までは、液体の量が変わらない(まだ排出口に届いていない)ので、ピストンが支える圧力は \(2p_0\) のまま。熱交換器で温めて体積を \(V_0\) まで広げる 定圧膨張 だ。状態1と比べると、圧力は 2 倍・体積は同じなので、温度は 2 倍になる。

状態3では圧力 \(p_3=2p_0\)、体積 \(V_3=V_0\)(液面がちょうど排出口の下端に達した)。状態1と比較して状態方程式を立てる:

$$\frac{p_0 V_0}{T_0} = \frac{p_3 V_3}{T_3} = \frac{2p_0 \cdot V_0}{T_3}$$

これを \(T_3\) について解く:

$$T_3 = \frac{2p_0 V_0}{p_0 V_0}\,T_0 = 2T_0$$
答え:\(\ T_3 = 2T_0\)
補足:状態2→3が定圧である理由

ピストンは質量ゼロなので、力のつり合いは「下から気体の圧力 = 上から大気圧 + 液体の重さ」。状態2→3の間は液体が 1 滴も流れ出ていない(液面が排出口に達するのが状態3)ので、液体の重さは一定。よって気体の圧力は \(2p_0\) のまま変わらず、定圧変化になる。

Point

状態3は「\(p=2p_0,\ V=V_0\)」というきれいな値。状態1(\(p_0,V_0,T_0\))と 体積が同じで圧力が 2 倍 なので温度も 2 倍、と即答できる。

設問(c) — 状態1→3で吸収した熱量 \(Q_{13}\)

直感的理解

1→2 は断熱なので熱の出入りはゼロ。熱をやり取りするのは熱交換器を回した 2→3 の定圧膨張だけ。定圧では \(Q=C_p\Delta T\) と、温度差だけで熱量が決まる。

1→2(断熱):定義より熱の出入りはない。

$$Q_{12} = 0$$

2→3(定圧膨張):定圧変化で気体が吸収する熱量は \(Q=n C_p \Delta T\)。単原子分子なので \(C_p=\tfrac52R\)、\(n=1\)。温度は \(T_2=2^{2/5}T_0\) から \(T_3=2T_0\) まで変化する:

$$Q_{23} = 1\cdot\frac{5}{2}R\,(T_3 - T_2) = \frac{5}{2}R\left(2T_0 - 2^{2/5}T_0\right)$$

\(T_0\) でまとめる:

$$Q_{23} = \frac{5}{2}\left(2 - 2^{2/5}\right)R T_0$$

合計は \(Q_{13}=Q_{12}+Q_{23}\):

$$Q_{13} = 0 + \frac{5}{2}\left(2 - 2^{2/5}\right)R T_0 = \frac{5}{2}\left(2 - 2^{2/5}\right)R T_0$$

数値評価すると \(2^{2/5}\fallingdotseq 1.32\) なので \(Q_{13}\fallingdotseq \tfrac52\times 0.68\,RT_0 \fallingdotseq 1.7\,RT_0 > 0\)(吸熱)。

答え:\(\ Q_{13} = \dfrac{5}{2}\left(2 - 2^{2/5}\right)R T_0 \fallingdotseq 1.7\,RT_0\)(正なので吸熱)
別解:内部エネルギー変化 + 仕事で検算

2→3 の内部エネルギー変化と気体がする仕事を別々に計算して \(Q=\Delta U + W\) で確かめる。

内部エネルギー:\(\Delta U = \tfrac32R(T_3-T_2) = \tfrac32(2-2^{2/5})RT_0\)。

定圧膨張の仕事:\(W = p\,\Delta V = 2p_0(V_0 - V_2)\)。状態方程式より \(2p_0V_0=RT_3=2RT_0\)、\(2p_0V_2=RT_2=2^{2/5}RT_0\) だから

$$W = 2RT_0 - 2^{2/5}RT_0 = (2-2^{2/5})RT_0$$ $$Q_{23} = \Delta U + W = \left(\frac32+1\right)(2-2^{2/5})RT_0 = \frac52(2-2^{2/5})RT_0$$

\(Q=C_p\Delta T\) と一致する。

Point

1→2 が断熱で \(Q_{12}=0\) を落とさない。定圧では \(Q=C_p\Delta T\)(\(C_v\) ではない)を使う。\(2^{2/5}\) を残したまま答えるのが正確。

設問(d) — 状態3→4の \(p\text{-}V\) 図

直感的理解

状態3から膨張が進むと、ピストンが上がって液体が排出口からあふれ出る。液柱がだんだん短くなるので、液体の重さによる圧力(\(p-p_0\))もだんだん減る。しかも液柱の高さは ピストンの位置=体積 \(V\) に比例して減るので、圧力は \(V\) の 一次関数(直線) になる。

液柱と圧力の関係を式にする。シリンダーの断面積を \(S\)、液体の密度を \(\rho\) とする。排出口の高さは固定なので、状態3以降、液面(液体の上端)はつねに排出口の高さにある。気体の体積が \(V\) のときピストンの高さは \(V/S\)、液柱の高さは(排出口の高さ)\(-\,V/S\) である。

気体の圧力は「大気圧 + 液柱の重さによる圧力」なので、

$$p = p_0 + \rho g\,(\text{液柱の高さ})$$

状態3(\(V=V_0,\ p=2p_0\))と状態4(\(V=2V_0,\ p=p_0,\ \text{液柱ゼロ}\))を代入して定数を決めると、排出口の高さは \(2V_0/S\)、\(\rho g/S = p_0/V_0\) が得られる。これを使うと

$$p = p_0 + \frac{\rho g}{S}\,(2V_0 - V) = p_0 + \frac{p_0}{V_0}(2V_0 - V) = p_0\!\left(3 - \frac{V}{V_0}\right)$$

したがって \(p\) は \(V\) の一次関数。\(p\text{-}V\) 図では 点 \((V_0,\,2p_0)\) と点 \((2V_0,\,p_0)\) を結ぶ右下がりの直線 になる。

答え: 状態3 \((V_0, 2p_0)\) から状態4 \((2V_0, p_0)\) へ向かう右下がりの直線(\(p = p_0(3 - V/V_0)\))。
補足:なぜ「直線」になるのか(液柱の高さ)

液面が排出口で固定される一方、ピストンは体積に比例して上がる。液柱の高さ \(=\)(一定の排出口高さ)\(-\)(ピストン高さ)\(=\) 定数 \(-\)(\(V\) に比例)なので、液柱の高さは \(V\) の一次式。圧力 \(=p_0+\)(液柱高さに比例)だから、圧力も \(V\) の一次式(直線)になる。もし排液が起きず液体量が一定なら定圧(水平線)だが、ここでは あふれて液柱が縮む点が本質。

Point

「排液で液柱が縮む → 圧力が下がる → \(V\) に比例して下がる → 直線」という因果を押さえる。両端の座標 \((V_0,2p_0)\) と \((2V_0,p_0)\) を打って直線で結べばよい。

設問(e) — 状態3→A で吸収した熱量 \(Q_{3\mathrm{A}}\)

直感的理解

途中の状態 A(圧力 \(p\)、体積 \(V\))まで吸収した熱を、第一法則 \(Q=\Delta U + W\) で組み立てる。内部エネルギー変化は温度差から、仕事は \(p\text{-}V\) 図の直線の下の 台形の面積 から求まる。両方 \(V\) の 2 次式になるので、合計も \(V\) の 2 次式で表せる。

状態A では \(p = p_0\!\left(3 - \dfrac{V}{V_0}\right)\)。理想気体(\(n=1\))なので \(RT = pV\):

$$RT = pV = p_0\!\left(3 - \frac{V}{V_0}\right)V = p_0\!\left(3V - \frac{V^2}{V_0}\right)$$

① 内部エネルギー変化 \(\Delta U = \dfrac32 R(T - T_3)\)。ここで \(RT_3 = 2p_0V_0\) だから、

$$\Delta U = \frac{3}{2}\left(RT - RT_3\right) = \frac{3}{2}\left[\,p_0\!\left(3V - \frac{V^2}{V_0}\right) - 2p_0V_0\right] = \frac{9}{2}p_0 V - \frac{3p_0}{2V_0}V^2 - 3p_0V_0$$

② 気体がした仕事 \(W\) は、直線 \(p=p_0(3-V/V_0)\) の下の台形の面積(\(V_0\) から \(V\) まで)。上底 \(=p(V)\)、下底 \(=2p_0\)、高さ \(=V-V_0\) の台形:

$$W = \frac{1}{2}\Big(\,2p_0 + p_0\big(3 - \tfrac{V}{V_0}\big)\Big)(V - V_0) = \frac{p_0}{2}\left(5 - \frac{V}{V_0}\right)(V - V_0)$$

展開して整理する:

$$W = \frac{p_0}{2}\left(5V - \frac{V^2}{V_0} - 5V_0 + V\right) = 3p_0 V - \frac{p_0}{2V_0}V^2 - \frac{5}{2}p_0V_0$$

③ 合計 \(Q_{3\mathrm{A}} = \Delta U + W\)。同類項をまとめる:

$$Q_{3\mathrm{A}} = \left(-\frac{3p_0}{2V_0}-\frac{p_0}{2V_0}\right)V^2 + \left(\frac{9}{2}p_0 + 3p_0\right)V + \left(-3p_0V_0 - \frac{5}{2}p_0V_0\right)$$ $$\boxed{\;Q_{3\mathrm{A}} = -\frac{2p_0}{V_0}\,V^2 + \frac{15}{2}p_0\,V - \frac{11}{2}p_0V_0\;}$$

検算:\(V=V_0\) を入れると \(-2p_0V_0 + \tfrac{15}{2}p_0V_0 - \tfrac{11}{2}p_0V_0 = 0\) となり、状態3では \(Q_{3\mathrm A}=0\)。整合する。

答え:\(\ (\mathrm{ア}) = -\dfrac{2p_0}{V_0},\quad (\mathrm{イ}) = \dfrac{15}{2}p_0,\quad (\mathrm{ウ}) = -\dfrac{11}{2}p_0V_0\)
別解:仕事を積分で求める

台形公式の代わりに定積分でもよい:

$$W = \int_{V_0}^{V} p_0\!\left(3 - \frac{V'}{V_0}\right)dV' = p_0\left[\,3V' - \frac{V'^2}{2V_0}\right]_{V_0}^{V} = 3p_0V - \frac{p_0}{2V_0}V^2 - \frac{5}{2}p_0V_0$$

台形面積と完全に一致する。

Point

\(Q=\Delta U + W\) の 両方を \(V\) の式にそろえるのがコツ。仕事は「\(p\text{-}V\) 図の台形の面積」と見れば積分なしで出せる。\(V=V_0\) で \(Q=0\) の検算を必ず。

設問(f) — 状態Aの温度 \(T\)

直感的理解

(e) の途中で使った \(RT = pV\) をそのまま温度の式にすればよい。\(p_0/R\) は状態1の関係 \(p_0V_0=RT_0\) を使えば \(T_0/V_0\) に置き換わり、\(V_0,\,T_0\) だけで書ける。結果は 上に凸の放物線 になる。

(e) で得た \(RT = p_0\!\left(3V - \dfrac{V^2}{V_0}\right)\) の両辺を \(R\) で割る:

$$T = \frac{p_0}{R}\left(3V - \frac{V^2}{V_0}\right)$$

ここで状態1の関係 \(p_0V_0 = RT_0\) より \(\dfrac{p_0}{R} = \dfrac{T_0}{V_0}\)。これを代入して \(V_0,\,T_0\) だけの式にする:

$$T = \frac{T_0}{V_0}\left(3V - \frac{V^2}{V_0}\right) = -\frac{T_0}{V_0^{2}}\,V^2 + \frac{3T_0}{V_0}\,V$$

検算:\(V=V_0\) で \(T=-T_0+3T_0=2T_0=T_3\)、\(V=2V_0\) で \(T=-4T_0+6T_0=2T_0=T_4\)。両端とも一致する。

答え:\(\ (\mathrm{エ}) = -\dfrac{T_0}{V_0^{2}},\quad (\mathrm{オ}) = \dfrac{3T_0}{V_0},\quad (\mathrm{カ}) = 0\)
補足:状態3と状態4で温度が同じ理由

状態3は \(p=2p_0,V=V_0\) で \(pV=2p_0V_0\)、状態4は \(p=p_0,V=2V_0\) で \(pV=2p_0V_0\)。\(pV\) の値が等しいので、理想気体では温度も等しく、ともに \(2T_0\)。だが途中では \(pV\) がもっと大きくなり、温度は \(2T_0\) を超える(次の (g))。

Point

\(p_0/R\) を \(T_0/V_0\) に置き換える(状態1の \(p_0V_0=RT_0\))のが指定文字で答えるカギ。定数項 (カ) は 0 になる。

設問(g) — 到達する最高温度 \(T_M\)

直感的理解

(f) の温度は上に凸の放物線。両端(状態3・状態4)はどちらも \(2T_0\) だが、途中はそれより高い。放物線の頂点が最高温度で、頂点は左右対称なので体積の真ん中 \(V=\tfrac32V_0\) にある。

\(T(V) = -\dfrac{T_0}{V_0^2}V^2 + \dfrac{3T_0}{V_0}V\) は上に凸の放物線。最高温度は頂点で、\(\dfrac{dT}{dV}=0\) となる \(V\) で与えられる:

$$\frac{dT}{dV} = -\frac{2T_0}{V_0^2}V + \frac{3T_0}{V_0} = 0 \quad\Longrightarrow\quad V = \frac{3}{2}V_0$$

この \(V\) は範囲 \(V_0 \le V \le 2V_0\) の内側にあるので採用できる。代入して \(T_M\):

$$T_M = -\frac{T_0}{V_0^2}\left(\frac{3V_0}{2}\right)^{2} + \frac{3T_0}{V_0}\cdot\frac{3V_0}{2} = -\frac{9}{4}T_0 + \frac{9}{2}T_0 = \frac{9}{4}T_0$$
答え:\(\ T_M = \dfrac{9}{4}T_0\)(体積 \(V=\tfrac32V_0\) のとき)
別解:平方完成で頂点を出す(微分を使わない)

放物線を平方完成する(\(v=V/V_0\) とおくと \(T=(3v-v^2)T_0\)):

$$T = -\left(v^2 - 3v\right)T_0 = -\left(v - \frac{3}{2}\right)^2 T_0 + \frac{9}{4}T_0$$

\(v=\tfrac32\)(すなわち \(V=\tfrac32V_0\))で最大値 \(\dfrac94T_0\)。微分なしでも導ける。

Point

両端が同じ温度 \(2T_0\) なので、頂点は対称性から体積の中点 \(V=\tfrac32V_0\)。そこで最高 \(T_M=\tfrac94T_0\)。「最高温度の位置」と次の「吸熱→放熱の境目」は別の点なので混同しない。

設問(h) — 吸熱から放熱に切り替わる状態Bの体積 \(V_B\)

直感的理解

状態3から吸収した熱量 \(Q_{3\mathrm A}(V)\) は、はじめ増え(吸熱)、途中から減り始める(放熱)。ちょうど切り替わる点では、吸収熱量が最大(それ以上増えない)。つまり \(Q_{3\mathrm A}(V)\) が最大になる体積が状態Bだ。最高温度の点(\(V=\tfrac32V_0\))とは別の場所になる。

状態3→Aで吸収した熱量は (e) より

$$Q_{3\mathrm{A}}(V) = -\frac{2p_0}{V_0}V^2 + \frac{15}{2}p_0 V - \frac{11}{2}p_0V_0$$

膨張が進む(\(V\) が増える)につれて、はじめ \(Q_{3\mathrm A}\) は増加(吸熱)し、途中から減少(放熱)に転じる。切り替わる状態Bは \(Q_{3\mathrm A}\) が 最大になる点なので、\(\dfrac{dQ_{3\mathrm A}}{dV}=0\):

$$\frac{dQ_{3\mathrm{A}}}{dV} = -\frac{4p_0}{V_0}V + \frac{15}{2}p_0 = 0$$

\(V\) について解く:

$$\frac{4}{V_0}V = \frac{15}{2} \quad\Longrightarrow\quad V_B = \frac{15}{8}V_0$$

\(\tfrac{15}{8}=1.875\) は範囲 \(V_0\le V\le 2V_0\) の内側にあるので妥当。

答え:\(\ V_B = \dfrac{15}{8}V_0\)
補足:なぜ最高温度の点(\(\tfrac32V_0\))とずれるのか

吸熱・放熱の境目は「気体に流れ込む微小熱量 \(\delta Q\) の符号が変わる点」。\(\delta Q = dU + \delta W = C_V\,dT + p\,dV\)。膨張中 \(dV>0\) なので \(p\,dV>0\)(つねに正の寄与)だが、\(V>\tfrac32V_0\) では温度が下がり \(dT<0\)(\(C_V\,dT<0\))。両者がつり合う点が状態Bで、温度がすでに下がり始めた後(\(\tfrac32V_0<\tfrac{15}{8}V_0\))に来る。だから 最高温度の点(\(\tfrac32V_0\))より後ろで吸熱→放熱に切り替わる。

Point

「吸熱→放熱の境目 = 吸収熱量 \(Q_{3\mathrm A}\) が最大」。\(\dfrac{dQ_{3\mathrm A}}{dV}=0\) から \(V_B=\tfrac{15}{8}V_0\)。最高温度 \(\tfrac32V_0\)、最高圧力・体積・温度の点はすべて別物なので、「何が最大か」を取り違えないこと。