大問2:コンデンサーの放電(抵抗とコイルの比較)

解法の指針

直感的理解
抵抗を通すと電荷は移動するがエネルギーは熱として失われます。コイルを通すと電荷はキャッチボールのように往復し,エネルギーは保存されます。「抵抗=ブレーキ」「コイル=はずみ車」というイメージです。

本問は、コンデンサーを含む回路において、抵抗を接続した場合(RC回路)とコイルを接続した場合(LC回路)の過渡現象を比較・考察する問題です。抵抗によるエネルギー散逸と、コイルによるエネルギー保存(電気振動)の違いを明確に意識する必要があります。

問(1)では電荷再分配とジュール熱を、問(2)ではLC振動におけるエネルギーの授受と電荷保存則を扱います。

問題の構成

全体を貫くポイント

問(1)(a) コンデンサーAの充電電流

直感的理解
空のコンデンサーに電池をつなぐと,最初は「空のバケツに水を注ぐ」ように大きな電流が流れますが,満たされるにつれて電流は細くなります。

回路の状態(図1)

スイッチ $S_1$ を閉じ、$S_2$ は開いたままです。電流は $V_0 \to S_1 \to R \to C_\mathrm{A}$ の経路で流れ、$C_\mathrm{A}$ が充電されます。

回路図:ホバーで各素子の説明を表示

解法

$S_1$ を閉じた時刻 $t = t_0$ において、コンデンサー $C_\mathrm{A}$ は未充電(電圧0)であり、回路には最大の電流が流れます。回路方程式(キルヒホッフ)は

$t = t_0$($q = 0$)での電流 $I_0$ は

$C_\mathrm{A}$ の充電が進み $q$ が増加すると、コンデンサー電圧 $q/C_\mathrm{A}$ が大きくなり電流 $I$ は減少します。充電完了時には $I = 0$、$q = C_\mathrm{A}V_0$ となります。

微分方程式を解くと電流は指数関数的に減衰します。

時定数 $\tau = C_\mathrm{A}R$ が減衰の速さを決めます。

グラフ 1(実線:$R$、破線:$R' > R$)

$R$(実線) $R' > R$(破線)

条件:電圧 12 V、抵抗 2.0 Ω、容量 10 μF。

具体的な計算:$V_0 = 12\,\text{V}$、$R = 2.0\,\Omega$、$C_A = 10\,\mu\text{F}$ のとき、

初期電流:$I_0 = V_0/R = 12/2.0 = 6.0\,\text{A}$

時定数:$\tau = C_A R = 10 \times 10^{-6} \times 2.0 = 2.0 \times 10^{-5}\,\text{s} = 20\,\mu\text{s}$

$t = \tau$ での電流:$I(\tau) = 6.0 \times e^{-1} = 6.0 \times 0.368 = 2.2\,\text{A}$

📐 RC回路の全電荷量の確認

$$Q = \int_0^\infty I\,dt = \int_0^\infty \frac{V_0}{R}e^{-t/\tau}\,dt = \frac{V_0}{R} \cdot \tau = \frac{V_0}{R} \cdot C_A R = C_A V_0$$

$C_A V_0 = 10 \times 10^{-6} \times 12 = 1.2 \times 10^{-4}\,\text{C} = 120\,\mu\text{C}$。これは抵抗値 $R$ に依存しません。

答え:
グラフの形状:時刻 $t_0$ で縦軸切片 $V_0/R = 6.0\,\text{A}$ から始まり、横軸に漸近する下に凸の減少曲線(実線)。
縦軸の値:$\dfrac{V_0}{R} = 6.0\,\text{A}$
Point

RC 充電回路の電流は $I = \frac{V_0}{R}\,e^{-t/(C_\mathrm{A}R)}$ です。初期電流は抵抗だけで決まり($V_0/R$)、充電が進むとコンデンサーが「逆起電力」のように働いて電流を抑えます。グラフは常に下に凸($I'' > 0$)であり、直線的ではありません。

問(1)(b) 抵抗値が大きい場合の電流変化

直感的理解
抵抗が大きい=パイプが細い。スタートの水量は少ないけど,じわじわ長時間かけて同じ総量の水を流します。グラフは「低くスタートして長く尾を引く」形になります。

解法

抵抗値を $R' > R$ に変えたときの3つの変化を整理します。

  1. 初期電流が小さくなる:$I'_0 = \dfrac{V_0}{R'} < \dfrac{V_0}{R} = I_0$
  2. 時定数が大きくなる:$\tau' = C_\mathrm{A}R' > C_\mathrm{A}R = \tau$ → 減衰が緩やかになる
  3. 総電荷量は変わらない:$\displaystyle\int_0^\infty I\,dt = C_\mathrm{A}V_0$(抵抗によらない) → グラフの面積は同じ

面積が等しいのにスタートが低いため、破線は途中で実線と必ず交差し、その後は実線より上側を通って緩やかに0に漸近します。

シミュレーション:$R'/R$ を変えて比較

スライダーで $R'/R$ を調整すると破線の変化を確認できます

答え:
グラフの形状:(a)の実線よりも小さい切片 $V_0/R'$ から始まり、初期は実線の下側、途中から実線の上側を通って緩やかに減少する曲線(破線)。
Point

抵抗を大きくすると「流れにくい」ためスタートは低くなりますが、「長持ち」するため減衰は遅くなります。面積(=総電荷量 $C_\mathrm{A}V_0$)が等しいことから、2本の曲線は必ず1回交差します。

問(1)(c) 電荷の再分配

直感的理解
満タンのコンデンサーと空のコンデンサーをつなぐと,水位が等しくなるまで電荷が移動します。最終的に「電圧が同じ」になったところで電流が止まります。

回路の状態

$C_\mathrm{A}$ の充電完了後($Q_\mathrm{A} = C_\mathrm{A}V_0$)、$S_1$ を開き $S_2$ を閉じます。$C_\mathrm{A}$ の電荷は抵抗 $R$ を通って $C_\mathrm{B}$ へ流れ込みます。十分時間が経つと電流が止まり、両コンデンサーの電圧が等しくなります。

電荷再分配の回路図:ホバーで電荷の流れを確認

解法

最終状態では電流が止まっているので、$R$ の電圧降下は0です。したがって2つのコンデンサーは並列接続と同じ状態になり、電圧 $V'$ が等しくなります。

連立すると

よって

答え:
$$Q_\mathrm{A} = \frac{C_\mathrm{A}^2}{C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B}}\,V_0, \quad Q_\mathrm{B} = \frac{C_\mathrm{A}C_\mathrm{B}}{C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B}}\,V_0$$
Point

コンデンサーをつなぎ変える問題では、「孤立部分の電荷保存」と「定常状態での電圧一致」を組み合わせるのが鉄則です。抵抗 $R$ の値は最終状態に影響しません(過渡現象の速さだけを変えます)。

問(1)(d) ジュール熱によるエネルギー損失

直感的理解
高いところから低いところへ水を移すと,高さの差の分だけ位置エネルギーが失われます。同様に,電圧が異なるコンデンサー間の電荷移動では必ずジュール熱が発生します。

シミュレーション:電荷再分配とエネルギーの行方

再生ボタンで電荷が $C_\mathrm{A}$ から $C_\mathrm{B}$ へ移動する過程を観察できます

解法

ジュール熱 $\Delta E$ は「初期の静電エネルギー」と「最終の静電エネルギー」の差です。

差をとると

$$\Delta E = U_\text{前} - U_\text{後} = \frac{1}{2}C_\mathrm{A}V_0^2 - \frac{C_\mathrm{A}^2 V_0^2}{2(C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B})} = \frac{1}{2}C_\mathrm{A}V_0^2 \left(1 - \frac{C_\mathrm{A}}{C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B}}\right)$$ $$= \frac{C_\mathrm{A}C_\mathrm{B}}{2(C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B})}\,V_0^2$$
初期 ½CAV₀²
CA
+
CB
+
ジュール熱
答え:
$$\Delta E = \frac{C_\mathrm{A}C_\mathrm{B}}{2(C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B})}\,V_0^2$$
Point

電荷の再分配では、抵抗値 $R$ によらずジュール熱の総量は同じです。$R$ が変わるのは「どれだけ速く平衡に達するか」だけです。エネルギー損失は「初期 $-$ 最終」の引き算で求めるのが最もシンプルかつ確実です。

(a) コイルを含む回路の電流(LC振動)

直感的理解
LC回路はコンデンサーとコイルの間でエネルギーが行ったり来たりする「電気の振り子」です。スイッチを入れた瞬間は電流0ですが,コンデンサーの電圧が押し出す力となって電流がぐんぐん増えます。

LC振動回路:クリックで電流の流れをアニメーション

問題設定

$S_1$ で $C_\mathrm{A}$ を充電した後、$S_1$ を開き $S_2$ を閉じると、$C_\mathrm{A}, L, C_\mathrm{B}$ の閉回路で電気振動(LC振動)が始まります。

解法

電流 $I$ の時間変化は正弦波(サインカーブ)の一部となります。$t=t_0$ で $I=0$ かつ傾き(増加率)が最大となるグラフを選びます。
図3の中で、0から始まり上に凸の形(サインカーブの最初の山の形)をしているのは (イ) です。(エ)は変曲点を持って立ち上がっており(S字)、LC振動の初期挙動(余弦波の微分は正弦波)と一致しません。

理由:
時刻 $t_0$ において、コンデンサー $C_\mathrm{A}$ の電圧は $V_0$ であり、コイルには大きな電圧がかかるため、電流の増加率 $dI/dt$(グラフの接線の傾き)は最大となるから。

答え:
記号:(イ)
理由:閉じた瞬間の電流は0であるが、コンデンサーの電圧によりコイルに大きな電圧がかかるため、電流の時間変化率(グラフの傾き)は最大となるから。
Point

振動電流は $I(t) = I_\text{max}\sin\omega(t-t_0)$ の形になります。$t=t_0$ で $I=0$ ですが、$\cos$ 型の電荷分布から駆動されるため、スタート直後の勢い(傾き)は最大です。

(b) 電流最大時の電圧

直感的理解
電流が最大=「速度が最大」のタイミング。振り子でいえば最下点を通過する瞬間で,加速度が0になっています。コイルの電圧=加速度なので,このとき $V_L = 0$ です。

電流最大時の電圧関係:スライダーで時刻を動かして確認

解法

時刻 $t_1$ において電流 $I$ が最大になるとき、その時間変化率 $\frac{\Delta I}{\Delta t}$(すなわち $dI/dt$)は 0 になります。

コイルの電圧降下は $V_L = L \frac{dI}{dt}$ なので、このとき コイルの両端電圧は0 となります。
したがって、キルヒホッフの法則より、コンデンサーAとBの電圧は等しくなります。

また、電荷保存則より、常に $Q_\mathrm{A} + Q_\mathrm{B} = C_\mathrm{A}V_0$ が成り立ちます。

$V_\mathrm{B} = V_\mathrm{A}$ を代入して、

答え:
$$V_\mathrm{A} = V_\mathrm{B} = \frac{C_\mathrm{A}}{C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B}}V_0$$
Point

「電流最大」$\iff$「$dI/dt=0$」$\iff$「コイルの電圧0」$\iff$「コンデンサー同士の電圧が釣り合う(平衡位置)」。この連想が重要です。

(c) 電流最大時のエネルギー

直感的理解
LC回路ではエネルギーが保存されるので,コイルのエネルギーは「全体から引き算」で求めるのが最も確実です。直接 $\frac{1}{2}LI^2$ を計算するより間違いにくい方法です。
初期 CAのみ
t=t₁ CA+CB+Coil

解法

時刻 $t_1$ における各エネルギーを求めます。

答え:
$$U_\mathrm{B} = \frac{C_\mathrm{A}^2 C_\mathrm{B}}{2(C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B})^2}V_0^2, \quad U_L = \frac{C_\mathrm{A}C_\mathrm{B}}{2(C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B})}V_0^2$$
Point

コイルのエネルギー計算は $1/2 LI^2$ を直接計算するよりも、全エネルギーからの引き算(エネルギー保存則)を利用する方が計算ミスを防げます。

(d) 半周期後の電荷 $Q_\mathrm{F}$

直感的理解
電荷の振動は「バネにつながった振り子」と同じです。初期位置から平衡点を通り過ぎて,反対側の同じ距離まで到達します。「0 → 中心 → 中心の反対側」と対称に振れます。

半周期の電荷振動:平衡点を中心に対称に振れる様子

解法

電流 $I$ が最初に0になった時刻から、次に0になる時刻(半周期後)を考えます。LC振動において、電荷 $q(t)$ は単振動します。

よって、求める $Q_\mathrm{F}$(半周期後のBの電荷)は、

答え:
$$Q_\mathrm{F} = \frac{2C_\mathrm{A}C_\mathrm{B}}{C_\mathrm{A}+C_\mathrm{B}}V_0$$
Point

電気振動は、力がつり合う点(電圧が等しい点)を中心とした電荷の単振動です。「0から中心まで行った振幅分だけ、さらに向こう側へ行く」と考えると直感的に解けます。

(e) エネルギーの完全移動条件

直感的理解
同じ大きさのコップ同士なら水を完全に移し替えられますが,大きさが違うと「満タン」のレベルが異なるので完全移動できません。$C_A = C_B$ のとき,電荷のキャッチボールが完全に成立します。

容量比を変えて電荷移動を観察できます

解法

「$C_\mathrm{A}$ のエネルギーをすべて $C_\mathrm{B}$ に移す」とは、ある瞬間に $C_\mathrm{A}$ の電荷 $Q_\mathrm{A}$ が 0 になり、すべての電荷(エネルギー)が $C_\mathrm{B}$ に移動することを意味します。

(d)で考察した「半周期後の状態」が、最も電荷が移動した瞬間です。このとき、コンデンサーAに残っている電荷は、

これが 0 になればよいので、

このとき、$Q_\mathrm{F} = C_\mathrm{A}V_0$ となり、確かに電荷がすべて移動しています。

答え:
$$C_\mathrm{A} = C_\mathrm{B}$$
Point

同じ容量のコンデンサー同士でLC振動させると、エネルギー(電荷)を完全にキャッチボールできます。容量が異なると、片方に電荷が残り続けます。