抵抗とコンデンサーから構成される回路の問題です。一辺 $\ell$ の正方形の平行平板コンデンサー(極板間隔 $d$)を2つ($C_\text{A}$, $C_\text{B}$)と、抵抗値 $r$ の抵抗2つ($R_\text{A}$, $R_\text{B}$)を含む回路を扱います。
設定:$S_\text{A}$ を閉じ、$S_\text{B}$ は開いたまま、十分に時間が経過した後の状態を考えます。回路の導線部分の抵抗、電池の内部抵抗、コンデンサーの極板の端における電場(電界)の乱れは無視できます。真空の誘電率を $\varepsilon_0$ とします。
電気容量の計算:一辺 $\ell$ の正方形の極板、極板間隔 $d$ の平行平板コンデンサーの電気容量は、
$$C_\text{A} = \frac{\varepsilon_0 \ell^2}{d}$$定常状態の電荷:十分な時間が経過すると電流は $0$ になり、$R_\text{A}$ での電圧降下もゼロです。したがって $C_\text{A}$ の両端電圧は電源電圧 $V_0$ と等しくなります。
$$q_1 = C_\text{A} V_0 = \frac{\varepsilon_0 \ell^2}{d} V_0$$電池がした仕事 $W$:電池は電荷 $q_1$ を電位差 $V_0$ で運ぶので、
$$W = q_1 V_0 = \frac{\varepsilon_0 \ell^2}{d} V_0^2$$$C_\text{A}$ に蓄えられた静電エネルギーは $U = \frac{1}{2}q_1 V_0 = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{2d}$ です。電池がした仕事 $W = q_1 V_0 = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{d}$ との差 $W - U = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{2d}$ が、充電過程で $R_\text{A}$ で発生したジュール熱に相当します。
コンデンサーの充電では、電池がした仕事の半分がコンデンサーに蓄えられ、残り半分が抵抗でジュール熱として失われる。この「$1/2$ の法則」は抵抗値に依存しない普遍的な結果。
状況の整理:$C_\text{A}$ が $q_1$ に充電された後、$S_\text{A}$ を開き、次に $S_\text{B}$ を閉じます。$S_\text{A}$ が開いているため電池は $R_\text{A}$ 経由では接続されていませんが、$S_\text{B}$ を閉じることで電池は $R_\text{B}$ を通じて回路に接続されます。
$S_\text{B}$ を閉じた直後($t = 0^+$)の回路解析:
$S_\text{A}$ が開いているので、$R_\text{A}$ に電流は流れません。回路は次の経路のみ有効です:
電池 $V_0$ → $S_\text{B}$ → $R_\text{B}$ → 分岐点B → $C_\text{B}$(下)および $r$ を通じて分岐点A → $C_\text{A}$(下)
$t = 0^+$ では $C_\text{A}$ の電圧 = $V_0$、$C_\text{B}$ の電圧 = $0$ です。
$R_\text{B}$ を流れる電流 $i_1$:分岐点Bの電位は $V_\text{CB} = 0$ なので、キルヒホッフの法則より
$$V_0 = i_1 \cdot r + V_\text{CB} = i_1 \cdot r + 0$$ $$\therefore\quad i_1 = \frac{V_0}{r}$$ジュール熱 $h_1$:十分な時間が経過すると、$C_\text{A}$ と $C_\text{B}$ は同じ電気容量($C_\text{A} = C_\text{B} = \varepsilon_0 \ell^2 / d$)なので、最終的に両方とも電圧 $V_0$ に充電されます(電池が $V_0$ を維持するため)。
初期状態のエネルギー:
$$U_i = \frac{1}{2}C V_0^2 + 0 = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{2d}$$最終状態のエネルギー:
$$U_f = \frac{1}{2}C V_0^2 + \frac{1}{2}C V_0^2 = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{d}$$この過程で電池がした仕事:$C_\text{B}$ を $0$ から $V_0$ まで充電するのに電荷 $q_1 = CV_0$ を送り出すので、
$$W_\text{bat} = q_1 V_0 = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{d}$$ただし $C_\text{A}$ の電圧は初めから $V_0$ で変化しないので、$C_\text{A}$ への充放電による仕事はゼロです。
エネルギー保存より、全抵抗($R_\text{B}$ と $r$)でのジュール熱の合計は:
$$h_1 = W_\text{bat} + U_i - U_f = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{d} + \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{2d} - \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{d} = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{2d}$$$S_\text{A}$ が開いているため、$C_\text{A}$ と $r$ を含む閉じた部分系では電荷の出入りは $R_\text{B}$ 経由のみです。最終的に $C_\text{B}$ の電圧が $V_0$ になると、$r$ を流れる電流はゼロとなり、$C_\text{A}$ の電圧も $V_0$ のまま変化しません。したがって $C_\text{A}$ は最初から最後まで $V_0$ を保ち、実質的に $C_\text{B}$ の充電のみが問題のジュール熱を決定します。$C_\text{B}$ の充電で発生するジュール熱は $\frac{1}{2}CV_0^2 = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 V_0^2}{2d}$ です。
$S_\text{A}$ が開いた後の回路構成をしっかり把握すること。$C_\text{A}$ は $r$ を通じてしか外部と繋がらないため、最終的に電池電圧 $V_0$ を保ったまま安定する。ジュール熱は $C_\text{B}$ の充電に伴う損失のみ。
設定:$C_\text{B}$ の極板間に誘電率 $\varepsilon$($\varepsilon > \varepsilon_0$)の直方体($\ell \times \ell \times d$)を挿入します。電池を「電圧を自由に変えられる電源」に取り換え、$S_\text{A}$ および $S_\text{B}$ を閉じます。電源電圧を $V = V_s$ に設定して十分な時間が経過させた後、電圧を $V(t) = V_s + at$($a > 0$)で一定の割合で増加させます。
誘電体挿入後の $C_\text{B}$ の電気容量:
$$C_\text{B}' = \frac{\varepsilon \ell^2}{d}$$$C_\text{A}$ は変化せず $C_\text{A} = \varepsilon_0 \ell^2 / d$ のままです。
(a) 電圧増加中の電流・電圧の関係式:
$R_\text{A}$ を流れる電流を $i_1(t)$、$R_\text{B}$ を流れる電流を $i_2(t)$ とします。$C_\text{A}$ の電圧を $V_1(t)$、$C_\text{B}$ の電圧を $V_2(t)$ とします。
キルヒホッフの法則より:
$R_\text{A}$ のループ:
$$V(t) = i_1(t) \cdot r + V_1(t)$$$R_\text{B}$ のループ:
$$V(t) = i_2(t) \cdot r + V_2(t)$$抵抗 $r$(上部)のループ:
$$V_1(t) = i_r(t) \cdot r + V_2(t)$$ここで $i_r(t)$ は上部抵抗 $r$ を流れる電流です。分岐点での電流保存より、
$$V_s(t) = V(t) \text{ として、} \quad i_1(t) = C_\text{A}\frac{dV_1}{dt}, \quad i_2(t) = C_\text{B}'\frac{dV_2}{dt}$$(b) 定常状態($t$ が十分大きいとき):
電圧が一定の割合 $a$ で増加するとき、十分な時間が経過すると各コンデンサーの電圧も一定の割合で増加し、電流は一定値に落ち着きます。
定常状態では $\frac{dV_1}{dt} = \frac{dV_2}{dt} = a$(電源電圧と同じ割合で増加)となり、
$$I_1 = C_\text{A} \cdot a = \frac{\varepsilon_0 \ell^2}{d} a$$ $$I_2 = C_\text{B}' \cdot a = \frac{\varepsilon \ell^2}{d} a$$このとき、$R_\text{A}$ での電圧降下 $\Delta V_1 = I_1 \cdot r = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 a r}{d}$ は一定なので、
$$V_1(t) = V(t) - I_1 r = V_s + at - \frac{\varepsilon_0 \ell^2 a r}{d}$$ $$V_2(t) = V(t) - I_2 r = V_s + at - \frac{\varepsilon \ell^2 a r}{d}$$(c) $I_1$ と $I_2$ の導出:
定常状態での各電流は、$C_\text{A}$, $C_\text{B}'$ の値と電圧変化率 $a$ から求まります。
$$I_1 = \frac{\varepsilon_0 \ell^2 a}{d}, \qquad I_2 = \frac{\varepsilon \ell^2 a}{d}$$抵抗 $r$ を流れる定常電流は $V_1 - V_2$ の電位差から、
$$i_r = \frac{V_1 - V_2}{r} = \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell^2 a}{d}$$電圧を $V_s + at$ で増加させ始めた直後は、各コンデンサーの電圧は $V_s$(初期定常値)のままで、急激に電流が変化します。RC 時定数($\sim r \cdot C$)程度の時間が経過すると、過渡項 $\propto e^{-t/RC}$ が減衰し、定常状態に近づきます。定常状態では電流が一定で、コンデンサー電圧は電源電圧と同じ割合 $a$ で増加します。
電源電圧が $V(t) = V_s + at$ のように時間に比例して増加するとき、定常状態では各コンデンサーに $i = Ca$ の一定電流が流れる。これは「電流 = 電気容量 $\times$ 電圧変化率」の直接的な帰結。
設定:電源を起電力 $V_0$ の電池に戻し、$C_\text{B}$ に挿入していた誘電体を完全に引き出します。$S_\text{A}$, $S_\text{B}$ を閉じた状態で十分に時間を経過させた後($C_\text{A}$, $C_\text{B}$ ともに $V_0$ に充電)、誘電体を一定速度 $v$ で $C_\text{B}$ の極板間に挿入し始めます。誘電体と極板間の摩擦はないものとします。
(a) 電気容量の変化:誘電体が $b$($0 \le b \le \ell$)だけ挿入されたとき、$C_\text{B}$ は「誘電体のある部分」と「真空の部分」の並列合成です。
誘電体がある部分の電気容量:$\frac{\varepsilon \cdot \ell \cdot b}{d}$
真空部分の電気容量:$\frac{\varepsilon_0 \cdot \ell \cdot (\ell - b)}{d}$
$$C_\text{B}(b) = \frac{\varepsilon \ell b + \varepsilon_0 \ell(\ell - b)}{d} = \frac{\ell[\varepsilon_0 \ell + (\varepsilon - \varepsilon_0)b]}{d}$$$b = vt$ なので、時間 $\Delta t$ あたりの電気容量の変化は
$$\Delta C = \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell v}{d} \Delta t$$(b) $R_\text{B}$ に流れる電流の向き:
$C_\text{B}$ の電気容量が増加するので、電圧 $V_0$ を維持するには追加の電荷 $\Delta q = V_0 \Delta C$ が必要です。この電荷は電池から $R_\text{B}$ を通じて供給されるので、電流は紙面右向き(図3の向きから選ぶ)に流れます。
(c) 定常電流 $I_\text{A}$ と $I_\text{B}$:
$C_\text{A}$ の電気容量は変化しないので、定常状態では $C_\text{A}$ に流れる電流は $0$ です。
$$I_\text{A} = 0$$$C_\text{B}$ には、電気容量の変化率に応じた電流が流れます:
$$I_\text{B} = V_0 \frac{dC_\text{B}}{dt} = V_0 \cdot \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell v}{d} = \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell v V_0}{d}$$(d) 誘電体を挿入するのに必要な外力 $F$:
$R_\text{A}$, $R_\text{B}$ にそれぞれ一定の電流 $I_\text{A}$, $I_\text{B}$ が流れているとき、エネルギー保存を考えます。
時間 $\Delta t$ の間に:
$I_\text{A} = 0$ のとき、分岐点Aの電位は $V_0$($R_\text{A}$ での降下なし)、分岐点Bの電位も $V_0$($C_\text{B}$ の電圧は $V_0$)。したがって $r$ の両端電位差は $0$ で、$r$ に流れる電流も $0$ です。
エネルギー保存:
$$W_\text{bat} + W_F = \Delta U + I_\text{B}^2 r \Delta t$$ $$V_0 I_\text{B} \Delta t + Fv\Delta t = \frac{1}{2}V_0^2 \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell v}{d}\Delta t + I_\text{B}^2 r \Delta t$$$I_\text{B} = \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell v V_0}{d}$ を代入して $V_0 I_\text{B} = \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell v V_0^2}{d}$ より、
$$Fv = \frac{1}{2}\frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell v V_0^2}{d} + I_\text{B}^2 r - \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell v V_0^2}{d}$$ $$Fv = I_\text{B}^2 r - \frac{1}{2}\frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell v V_0^2}{d}$$コンデンサーは誘電体を引き込む方向に力を及ぼすので、外力は反対向き(紙面左向き)です。つまり $F < 0$(挿入方向を正とした場合)となる可能性がありますが、エネルギー収支から:
$$F = \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell V_0^2}{2d} - I_\text{B}^2 \frac{r}{v}$$ここで $I_\text{B}^2 r / v = \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)^2 \ell^2 v V_0^2 r}{d^2}$ を使うと、
$$F = \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell V_0^2}{2d} - \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)^2 \ell^2 v r V_0^2}{d^2}$$外力の向きは紙面左向き(誘電体が引き込まれるのを抑える向き)です。
コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーは $U = \frac{1}{2}C_\text{B} V_0^2$ です。電圧一定で誘電体を $b$ だけ挿入したとき、
$$U(b) = \frac{1}{2}\frac{\ell[\varepsilon_0 \ell + (\varepsilon - \varepsilon_0)b]}{d} V_0^2$$誘電体に働く静電気力は、
$$F_\text{elec} = \frac{\partial U}{\partial b}\bigg|_{V=\text{const}} = \frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell V_0^2}{2d}$$この力は誘電体を引き込む向き(紙面左向き)に働きます。外力はこれに抗する必要がありますが、抵抗でのジュール熱分を考慮する必要があるため、動的な場合は上記のエネルギー収支が正確です。
誘電体をコンデンサーに挿入するとき、電圧一定条件ではコンデンサーが誘電体を引き込む力を及ぼす。この力は $\frac{(\varepsilon - \varepsilon_0)\ell V_0^2}{2d}$ で、$\varepsilon > \varepsilon_0$ のとき常に正(引き込み方向)。実際の挿入では抵抗による散逸も考慮する。