水平に対して傾き角 $\theta$ をもつ2枚の斜面 AC, EG と、点 O を中心とする半径 $R$・中心角 $2\theta$ の円弧状の曲面 CE をなめらかにつないだ台の上で、ばね(ばね定数 $k$)に繋がれた質量 $m$ の小球の運動を考察する力学の総合問題です。
小球が斜面上で静止しているとき、斜面方向の力のつりあいを考えます。斜面に沿って上向きを正とすると:
斜面方向のつりあい:
$$kd = mg\sin\theta$$したがって、自然長からの縮み $d$ は:
$$d = \frac{mg\sin\theta}{k}$$つりあい位置は弾性エネルギー $\frac{1}{2}kd^2$ と重力の位置エネルギー $mgd\sin\theta$ の関係から求めることもできます。ポテンシャルエネルギーの極小点が平衡位置であり、$\frac{d}{dx}\left(\frac{1}{2}kx^2 - mgx\sin\theta\right) = 0$ から $kx = mg\sin\theta$ が得られます。
斜面上のばねのつりあいでは、重力の斜面成分 $mg\sin\theta$ だけがばねの力とつりあう。垂直成分 $mg\cos\theta$ は垂直抗力が受け持つ。
$m = 0.50\,\text{kg}$, $k = 49\,\text{N/m}$, $\theta = 30°$, $g = 9.8\,\text{m/s}^2$ のとき:
$$d = \frac{mg\sin\theta}{k} = \frac{0.50 \times 9.8 \times 0.50}{49} = \frac{2.45}{49} = 0.050\,\text{m} = 5.0\,\text{cm}$$$3d = 0.15\,\text{m}$ だけ縮めたときの弾性エネルギーは $\frac{1}{2}k(3d)^2 = \frac{1}{2} \times 49 \times 0.15^2 = 0.55\,\text{J}$。
B での速さ:$v_0 = d\sqrt{3k/m} = 0.050 \times \sqrt{3 \times 49/0.50} = 0.050 \times 17.1 = 0.86\,\text{m/s}$。
ばねを自然長から $3d$ だけ縮めたとき、弾性エネルギーは $\frac{1}{2}k(3d)^2$ です。小球が自然長の位置 B に達するまでに、斜面に沿って $3d$ だけ上昇するため、高さの変化は $3d\sin\theta$ です。
エネルギー保存則(斜面は摩擦なし):
$$\frac{1}{2}k(3d)^2 = \frac{1}{2}mv_0^2 + mg \cdot 3d\sin\theta$$ここで $d = \frac{mg\sin\theta}{k}$ を代入すると $mg\sin\theta = kd$ なので:
$$\frac{9}{2}kd^2 = \frac{1}{2}mv_0^2 + kd \cdot 3d = \frac{1}{2}mv_0^2 + 3kd^2$$整理すると:
$$\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{9}{2}kd^2 - 3kd^2 = \frac{3}{2}kd^2$$ $$v_0^2 = \frac{3kd^2}{m} \cdot \frac{2}{1} = \frac{3kd^2 \cdot 2}{2m} \cdot 2$$正しく計算し直すと:
$$v_0^2 = \frac{2 \cdot \frac{3}{2}kd^2}{m} = \frac{3kd^2}{m}$$ここで $\frac{3kd^2}{m} = \frac{k}{m} \cdot 3d^2$ ではなく、もう少し整理すると $v_0 = d\sqrt{\frac{3k}{m}}$ ですが、問題文では「$d$, $k$, $m$ を用いて」なので:
$$\boxed{v_0 = d\sqrt{\frac{3k}{m}}}$$しかし、選択肢の形 $v_0 = d\sqrt{\frac{2k}{m}}$ と比較するために再検証します。
再計算(補正):問題をよく読むと、ばねを自然長から $3d$ 押し縮めてから離し、小球が B(自然長の位置)で支持板から離れます。圧縮量が $3d$ で移動距離も $3d$:
$$\frac{1}{2}k(3d)^2 = \frac{1}{2}mv_0^2 + mg(3d)\sin\theta$$ $$\frac{9kd^2}{2} = \frac{mv_0^2}{2} + 3kd^2 \quad (\because mg\sin\theta = kd)$$ $$\frac{mv_0^2}{2} = \frac{9kd^2 - 6kd^2}{2} = \frac{3kd^2}{2}$$ $$v_0 = d\sqrt{\frac{3k}{m}}$$つりあい位置($d$ だけ縮んだ状態)を基準点にすれば、そこでのポテンシャルは極小。自然長位置 B は基準から $d$ だけ離れた点。$3d$ 縮めた位置は基準から $2d$ 離れた点(つりあい位置から見て逆方向に $2d$)。単振動では基準からの距離が等しい点で速さが等しくなります。振幅 $A = 2d$ の単振動として $v_0 = A\omega\sqrt{1-(x/A)^2}$ で $x = d$ とすると $v_0 = 2d\sqrt{k/m}\cdot\sqrt{1 - 1/4} = d\sqrt{3k/m}$ と一致します。
エネルギー保存で $mg\sin\theta = kd$ の関係を代入すると計算が簡潔になる。既知の結果を積極的に活用する姿勢が入試では重要。
点 B は台上の斜面 AC と水平面との交点(O と同じ高さ)で、点 C は斜面と円弧の接続点です。図から、B と C の高さの差を求めます。
点 O を基準とすると:
B の高さを基準として、C の高さは $R\sin\theta$、D の高さは $R + R\sin\theta = R(1 + \sin\theta)$ です。
B → C のエネルギー保存:
$$\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}mv_1^2 + mgR\sin\theta$$ $$v_1^2 = v_0^2 - 2gR\sin\theta$$ところで問題文には「$v_0$, $g$, $R$, $\theta$ を用いて表せ」とあるので:
$$v_1 = \sqrt{v_0^2 - 2gR\sin\theta}$$B は O と同じ高さにあり(B は斜面 AC 上で O と同じ高さの点と明示)、C は円弧の端点です。円の中心 O から C への方向は斜面に沿う方向なので、C の高さは O から $R\sin\theta$ だけ上です。したがって B → C の高低差は $R\sin\theta$ です。
円弧上の各点の高さを中心 O からの角度で表すのがポイント。$\theta$ の幾何学的意味を正確に把握しよう。
円弧の頂点 D で、小球に働く力は重力 $mg$(下向き)と垂直抗力 $N$(下向き=中心方向)です。円運動の運動方程式(向心方向):
$$mg + N = \frac{mv_D^2}{R}$$台から離れる条件は $N \geq 0$ より(離れるぎりぎりで $N = 0$):
$$mg = \frac{mv_D^2}{R} \quad \Rightarrow \quad v_D^2 \geq gR$$B → D のエネルギー保存で $v_D$ と $v_0$ の関係を求めると(D の高さは B から $R(1 + \sin\theta)$):
$$\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}mv_D^2 + mgR(1+\sin\theta)$$ $$v_D^2 = v_0^2 - 2gR(1+\sin\theta)$$$v_D^2 \geq gR$ と合わせて:
$$v_0^2 - 2gR(1+\sin\theta) \geq gR$$ $$v_0 \geq \sqrt{gR(3 + 2\sin\theta)}$$C → D のエネルギー保存を使っても同じ結果が得られます:
$$\frac{1}{2}mv_1^2 = \frac{1}{2}mv_D^2 + mgR(1-\sin\theta + \sin\theta) = \frac{1}{2}mv_D^2 + mgR$$ただし C から D への高さ差は $R - R\sin\theta + R\sin\theta = R$(D は O の真上で C より $R(1-\sin\theta)$ 高い…ではなく、正確には C → D の高さ差は $R(1 - \sin\theta)$ なので $v_1^2 = v_D^2 + 2gR(1-\sin\theta)$。$v_D^2 \geq gR$ と $v_1 = \sqrt{v_0^2 - 2gR\sin\theta}$ から同じ条件が導けます。
円弧頂点で台から離れる条件はジェットコースターの頂点条件と同じ。$N = 0$ を代入するのが定石。
小球が点 C で台から離れた後、重力のみが作用するため放物運動をします。
ここで重要なのは対称性です:
C での速度を水平・鉛直成分に分解すると:
$$v_{Cx} = v_C\cos\theta, \quad v_{Cy} = v_C\sin\theta \quad (\text{上向き})$$E は C と同じ高さで水平方向に対称な位置にあるため、E に到達したとき:
$$v_{Ex} = v_C\cos\theta, \quad v_{Ey} = -v_C\sin\theta \quad (\text{下向き})$$この速度の向きは斜面 EG に平行であり、小球は E で台の斜面にちょうど沿う方向に進入します。したがって点 E で再び台に接触します。
C を原点に水平右向き $x$、鉛直上向き $y$ として、放物運動の方程式を立てると:
$$x = v_C\cos\theta \cdot t, \quad y = v_C\sin\theta \cdot t - \frac{1}{2}gt^2$$$y = 0$ となる時刻 $t^* = \frac{2v_C\sin\theta}{g}$ で、$x^* = \frac{2v_C^2\sin\theta\cos\theta}{g} = \frac{v_C^2\sin 2\theta}{g}$。
C と E の水平距離は $2R\sin\theta$、高低差は 0 です。$x^* = 2R\sin\theta$ が成り立つことを確認すれば、E での接触が示されます。
物理の記述問題では対称性を利用した論証が非常に強力。座標計算で確認できるとさらに確実。
弾性衝突(反発係数 $e = 1$)の公式を使います。質量 $m$ の小球が速さ $v_0$ で静止している質量 $M$ の小物体に衝突:
運動量保存:
$$mv_0 = mv_2 + MV_2 \quad \cdots (1)$$反発係数の式($e = 1$):
$$V_2 - v_2 = v_0 \quad \cdots (2)$$(2) より $V_2 = v_0 + v_2$ を (1) に代入:
$$mv_0 = mv_2 + M(v_0 + v_2) = (m + M)v_2 + Mv_0$$ $$(m - M)v_0 = (m + M)v_2$$ $$v_2 = \frac{m - M}{m + M}v_0$$ $$V_2 = v_0 + v_2 = v_0 + \frac{m-M}{m+M}v_0 = \frac{2m}{m+M}v_0$$$M > m$ より $v_2 < 0$(小球は跳ね返る)、$V_2 > 0$(小物体は前方へ進む)。
弾性衝突では運動エネルギーも保存:
$$\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}mv_2^2 + \frac{1}{2}MV_2^2$$運動量保存 $m(v_0 - v_2) = MV_2$ とエネルギー保存 $m(v_0^2 - v_2^2) = MV_2^2$ を割り算すると $v_0 + v_2 = V_2$ が得られ、反発係数 $e = 1$ の式と同値です。
弾性衝突の公式 $v_2 = \frac{m-M}{m+M}v_0$、$V_2 = \frac{2m}{m+M}v_0$ は暗記必須。$M > m$ なら小球は跳ね返り、$M = m$ なら速度が入れ替わる。
$\theta = 45°$ の場合を考えます。小物体は速さ $V_2$ で斜面を下り始め、動摩擦係数 $\mu'$ の摩擦面を距離 $L$ 滑って停止します。
エネルギー保存(摩擦あり):
$$\frac{1}{2}MV_2^2 + MgL\sin\theta = \mu' MgL\cos\theta$$ここで $\theta = 45°$ より $\sin 45° = \cos 45° = \frac{1}{\sqrt{2}}$:
$$\frac{1}{2}MV_2^2 = \mu' MgL\cos\theta - MgL\sin\theta = MgL(\mu' - 1)\cos\theta$$$\mu' > 1$ でないと停止しません。問題文では $\mu > \mu'$ であり、実際に小物体が停止するためには $\mu' > \tan\theta = 1$($\theta = 45°$ のとき)が必要です。
$$L = \frac{V_2^2}{2g(\mu' - 1)\cos\theta} = \frac{V_2^2}{2g(\mu' - 1) \cdot \frac{1}{\sqrt{2}}} = \frac{\sqrt{2}V_2^2}{2g(\mu' - 1)}$$$\theta = 45°$ では $\sin\theta = \cos\theta$ なので、摩擦による減速と重力による加速の差が $(\mu' - 1)$ の因子に集約される。$\mu' > \tan\theta$ が停止条件。
衝突後の小球の速さは $|v_2| = \frac{M-m}{M+m}v_0$(跳ね返り方向)。小球が斜面を登り返して円弧頂点 D を通過するには:
F → D のエネルギー保存(F は B と同じ高さ、D はそこから $R(1+\sin\theta)$ 高い):
$$\frac{1}{2}mv_2^2 = \frac{1}{2}mv_D^2 + mgR(1+\sin\theta)$$D で台から離れない条件 $v_D^2 \geq gR$ より:
$$v_2^2 \geq gR + 2gR(1+\sin\theta) = gR(3 + 2\sin\theta)$$ところで $v_2^2 < v_0^2$($M > m$ より $\left|\frac{m-M}{m+M}\right| < 1$)。
したがって $v_2$ の範囲は:
$$\sqrt{gR(3+2\sin\theta)} \leq |v_2| < v_0$$すなわち $v_0$ を $g$, $R$ で書き直すと:
$$v_2^2 \geq gR(3+2\sin\theta)$$$M > m$ の弾性衝突では必ず $|v_2| < v_0$。衝突で運動エネルギーの一部が $M$ に移るため。
衝突後の小球の速さ $|v_2| = \frac{M-m}{M+m}v_0$ から、到達する最高点の高さ $h$(点 F からの高さ)は:
$$\frac{1}{2}mv_2^2 = mgh$$ $$h = \frac{v_2^2}{2g} = \frac{(M-m)^2}{(M+m)^2} \cdot \frac{v_0^2}{2g}$$$h$ を $M$ の関数として分析します:
$\frac{dh}{dM}$ を計算すると:$f(M) = \left(\frac{M-m}{M+m}\right)^2$ の微分は $f'(M) = 2 \cdot \frac{M-m}{M+m} \cdot \frac{2m}{(M+m)^2} > 0$($M > m$ で常に正)。
グラフの形状は$M = m$ で $h = 0$ から始まり、単調に増加して上に凸の曲線で $\frac{v_0^2}{2g}$ に漸近します。
これは図3の選択肢 (い) に対応します($M = m$ で 0 から始まり、上に凸で飽和するグラフ)。
$M > m$ の範囲で $h'(M) > 0$ を示します。$h = \frac{v_0^2}{2g}\left(\frac{M-m}{M+m}\right)^2$ とおくと、$u = \frac{M-m}{M+m}$ は $M$ の単調増加関数($u' = \frac{2m}{(M+m)^2} > 0$)であり、$h = \frac{v_0^2}{2g}u^2$ も $u > 0$ の範囲で単調増加。したがって極大・極小は存在しません。
ただし問題によっては、小球が台の頂点を越えられない領域($h$ が頂点の高さで頭打ちになる)も考慮する必要があり、その場合はグラフの形が変わる可能性があります。
グラフ選択問題では端点($M = m$, $M \to \infty$)の振る舞いと単調性・凹凸を確認するのが最短ルート。