3個のおもり(質量 \(m\))と3本の棒を固定した「直角三角形の剛体」を扱う問題です。おもりAが直角の頂点(回転の中心)、おもりBがAの真横(床上、距離 \(d\))、おもりCがAの真上(高さ \(d\))にあります。糸でCを水平に引く力 \(F\) を変えながら、つり合い・摩擦・運動を順に考えます。
力のモーメントのつり合い(Aまわり):剛体全体を考えます。回転の中心はAなので、Aにはたらく力(垂直抗力・固定による反力)はAまわりのモーメントに寄与しません。残る力は次の通りです。
図1-1の座標で、Aを原点、右向きを \(x\) 軸正、上向きを \(y\) 軸正にとると、各点の位置は \(\mathrm{A}(0,0)\)、\(\mathrm{B}(-d,0)\)、\(\mathrm{C}(0,d)\) です。Aまわりのモーメント(反時計回りを正)を計算します。
Aまわりのモーメントのつり合いは:
$$mg\,d - F\,d - N_B\,d = 0$$Bが床から離れる瞬間は \(N_B = 0\) です。これを代入すると:
$$mg\,d - F\,d = 0 \quad\Rightarrow\quad F = mg$$数値で確認:\(m = 2.0\ \mathrm{kg}\)、\(g = 9.8\ \mathrm{m/s^2}\) とすると、Bが離れる力は
$$F = mg = 2.0 \times 9.8 = 19.6\ \mathrm{N}$$となり、棒の長さ \(d\) によらず、おもり1個分の重さに等しいことが分かります。
剛体三角形のうち、Aを支点として「Bを持ち上げる回転」と「Bを押し下げる回転」を直接比べます。糸の力 \(F\) は高さ \(d\) で右へ引くので、支点Aから見た回転の腕は \(d\)。Bの重力 \(mg\) も支点Aから水平距離 \(d\) にあるので腕は \(d\)。
Bが浮く直前は、この2つのモーメントだけがつり合えばよく(\(N_B=0\))、
$$F \cdot d = mg \cdot d \quad\Rightarrow\quad F = mg$$Cの重力はAの真上にあり腕が 0 なので関係しない、という点が見抜きどころです。
「床から離れる」=「垂直抗力が 0 になる」。回転の中心Aまわりのモーメントを使えば、A点の未知の力をまとめて消去できる。Cの重力は腕が 0 なので効かない。
仕事とエネルギーの関係:Aは固定されており、物体はAのまわりをゆっくり(つり合いを保ちながら)回転します。床の垂直抗力・Aの固定反力は仕事をしません。したがって、糸の力 \(F\) がした仕事 \(W\) は、物体の位置エネルギーの増加分に等しくなります。
物体がAのまわりに角 \(\varphi\) だけ傾いたとき(Bが離れた状態 \(\varphi=0\) を基準)の各おもりの高さを求めます。Aを基準点(高さ 0)とすると、回転後の高さは:
$$y_{\mathrm B} = d\sin\varphi, \qquad y_{\mathrm C} = d\cos\varphi, \qquad y_{\mathrm A} = 0$$よって、位置エネルギー(床を基準)は:
$$U(\varphi) = mg\,y_{\mathrm B} + mg\,y_{\mathrm C} = mgd(\sin\varphi + \cos\varphi)$$三角関数の合成を使うと:
$$U(\varphi) = \sqrt{2}\,mgd\,\sin\!\left(\varphi + \frac{\pi}{4}\right)$$これは \(\varphi = 45^\circ\) で最大値 \(\sqrt{2}\,mgd\) をとります。この点が位置エネルギーの「山の頂上」(不安定なつり合い)で、ここを越えると物体は自分で倒れていきます。したがって倒れ始めるまでに糸がする仕事 \(W_0\) は、\(\varphi=0\) から \(\varphi=45^\circ\) までの位置エネルギーの増加分です。
\(\varphi=0\) のとき(Bが離れた瞬間)の位置エネルギーは:
$$U(0) = mgd(\sin 0 + \cos 0) = mgd$$よって:
$$W_0 = U(45^\circ) - U(0) = \sqrt{2}\,mgd - mgd = (\sqrt{2}-1)\,mgd$$数値で確認:\(m=2.0\ \mathrm{kg}\)、\(g=9.8\ \mathrm{m/s^2}\)、\(d=0.50\ \mathrm m\) のとき:
$$W_0 = (\sqrt{2}-1)\times 2.0 \times 9.8 \times 0.50 \fallingdotseq 0.414 \times 9.8 = 4.06\ \mathrm{J}$$位置エネルギー \(U(\varphi)\) のグラフは \(\varphi=45^\circ\) を頂点とする山型です。\(\varphi<45^\circ\) では \(U\) は \(\varphi\) とともに増加(傾けるほどエネルギーが要る)。\(\varphi>45^\circ\) では \(U\) は減少(手を離しても自分で傾く)。
\(\varphi=45^\circ\) は \(U\) が最大になる点で、力(モーメント)がつり合う不安定なつり合いです。ここまで糸が仕事 \(W_0\) をして物体を持ち上げれば、あとは重力が仕事をして倒れていきます。
幾何的には、\(\varphi=45^\circ\) のとき重心がAの真上に来ます(重心が支点の真上=倒れる/戻るの境目)。
「ゆっくり回す+外力以外は仕事をしない」とき、外力の仕事=位置エネルギーの増加。倒れる境目は位置エネルギーが最大(重心が支点の真上)になる角。三角関数の合成 \(\sin\varphi+\cos\varphi=\sqrt2\sin(\varphi+45^\circ)\) で最大値を出す。
設定:Ⅱでは、おもりAは床に固定されておらず、Aと床の間の静止摩擦係数は \(\mu\ \left(\mu<\dfrac13\right)\)。おもりBと床の間には摩擦はありません。\(F\) が小さく、物体全体が静止している場合を考えます。
A点まわりのモーメントのつり合い:物体は静止しているので、A点まわりのモーメントはつり合います。A点には垂直抗力 \(N_A\)、摩擦力 \(f\)、おもりAの重力がはたらきますが、いずれも作用点がA(または真上のC)なのでモーメントに効きません。Ⅰ(1)と同じ式が成り立ちます。
位置は \(\mathrm A(0,0),\ \mathrm B(-d,0),\ \mathrm C(0,d)\)。Aまわり(反時計回りを正)のモーメントのつり合いは:
$$\underbrace{mg\,d}_{\text{Bの重力}} - \underbrace{F\,d}_{\text{糸の力}} - \underbrace{N_B\,d}_{\text{Bの抗力}} = 0$$両辺を \(d\) で割って \(N_B\) について解くと:
$$N_B = mg - F$$数値で確認:\(m=2.0\ \mathrm{kg}\)、\(g=9.8\ \mathrm{m/s^2}\)、\(F=5.0\ \mathrm N\) のとき:
$$N_B = 2.0\times 9.8 - 5.0 = 19.6 - 5.0 = 14.6\ \mathrm N$$\(F\) を大きくするほど \(N_B\) は小さくなり、\(F=mg\) でちょうど 0(=Bが離れる)。Ⅰ(1)の結果と整合します。
ⅠではAが床に固定、ⅡではAが摩擦で支えられているだけ、と条件が違いますが、どちらも物体が静止している点は同じです。A点を支点とするモーメントのつり合いには、A点にはたらく力(固定反力でも摩擦・垂直抗力でも)は一切寄与しません。
したがって \(N_B\) を決めるモーメントの式はⅠ・Ⅱで完全に同じになり、\(N_B=mg-F\) が共通して成り立ちます。Aの固定・非固定は、このあとのⅡ(2)(3) で「A点の力」を問われたときに初めて効いてきます。
静止しているなら、支点A点まわりのモーメントのつり合いはⅠと同形。A点の摩擦・垂直抗力は支点なので消える。\(N_B=mg-F\) は \(0\le F\le mg\) で意味をもつ。
鉛直方向の力のつり合い(物体全体):物体に床から上向きにはたらく力は、おもりAの垂直抗力 \(N_A\) と おもりBの垂直抗力 \(N_B\) の2つだけです(おもりCは宙に浮いていて床に接していません)。下向きには3個のおもりの重力 \(3mg\)。糸の力 \(F\) は水平なので鉛直方向には寄与しません。
鉛直方向のつり合いは:
$$N_A + N_B = 3mg$$Ⅱ(1)で求めた \(N_B = mg - F\) を代入すると:
$$N_A = 3mg - N_B = 3mg - (mg - F)$$ $$\therefore\; N_A = 2mg + F$$数値で確認:\(m=2.0\ \mathrm{kg}\)、\(g=9.8\ \mathrm{m/s^2}\)、\(F=5.0\ \mathrm N\) のとき:
$$N_A = 2\times 2.0\times 9.8 + 5.0 = 39.2 + 5.0 = 44.2\ \mathrm N$$\(F\) を大きくすると、Bの抗力 \(N_B\) が減った分だけAの抗力 \(N_A\) が増えます(合計は常に \(3mg\))。
外力のうち鉛直成分をもつのは3つの重力(合計 \(3mg\) 下向き)だけ。糸の \(F\) は水平、摩擦 \(f\) も水平です。よって鉛直方向は常に \(N_A + N_B = 3mg\)。
\(F\) を増やすとモーメントの効果でBが浮きやすくなり \(N_B\) が減りますが、その減少分はそのまま \(N_A\) の増加に回ります。床が支える総量 \(3mg\) は変わりません。
水平な外力(\(F\)・摩擦)は鉛直のつり合いに効かない。床の支える総和は常に \(N_A+N_B=3mg\)。\(N_B\) が分かれば引き算で \(N_A\)。
水平方向の力のつり合い(物体全体・滑り出す直前):物体に水平方向にはたらく外力は、糸の力 \(F\)(右向き)と、Aと床の間の摩擦力 \(f\)(左向き)です。Bと床の間には摩擦がないので、Bからの水平力は 0。物体が静止しているとき、水平方向のつり合いは:
$$F = f$$物体が滑り出す直前は、摩擦力が最大静止摩擦力に達します:
$$f = \mu N_A$$ここに、Ⅱ(2)で求めた \(N_A = 2mg + F\) を代入します:
$$F = \mu N_A = \mu(2mg + F)$$\(F\) について整理すると:
$$F - \mu F = 2\mu mg \quad\Rightarrow\quad F(1-\mu) = 2\mu mg$$ $$\therefore\; F = \frac{2\mu mg}{1-\mu}$$「Bが滑り出す前に離れない」ことの確認:このとき \(N_B = mg - F\) が正である必要があります。\(\mu<\dfrac13\) のとき:
$$F = \frac{2\mu mg}{1-\mu} < \frac{2\cdot\frac13\,mg}{1-\frac13} = \frac{\frac23 mg}{\frac23} = mg$$よって \(F\lt mg\)、すなわち \(N_B>0\) となり、Bは床に接したまま物体が滑り出します。問題文の条件 \(\mu<\dfrac13\) はこのためのものです。
数値で確認:\(m=2.0\ \mathrm{kg}\)、\(g=9.8\ \mathrm{m/s^2}\)、\(\mu=0.25\) のとき:
$$F = \frac{2\times 0.25\times 2.0\times 9.8}{1-0.25} = \frac{9.8}{0.75} \fallingdotseq 13.1\ \mathrm N$$もし \(\mu\ge\dfrac13\) だと、上の計算で \(F\ge mg\) となります。すると \(F\) が滑り出しの値に達する前に \(F=mg\) を超えてしまい、先に \(N_B=0\) となってBが床から離れます。
つまり「Bが接したまま滑り出す」という問題の状況が成立するためには \(\mu<\dfrac13\) が必要で、これは問題文できちんと与えられています。物理の問題では、与えられた不等式条件が「どの現象が先に起きるか」を保証していることが多いので、最後に確認する習慣をつけましょう。
滑り出しは「水平力=最大静止摩擦 \(\mu N_A\)」。\(N_A\) が \(F\) に依存するので連立して解く。条件 \(\mu<\tfrac13\) はBが離れる前に滑ることを保証する。
設定:Ⅲでは、おもりA・Bが床に接したまま物体が右に運動しています。Aと床の間の動摩擦係数は \(\mu'\ \left(\mu'<\dfrac13\right)\)、Bと床の間は摩擦なしです。まず等速直線運動(図1-3)の場合を考えます。
運動方程式:等速直線運動では加速度が 0 なので、合力は 0、すなわち力のつり合いが成り立ちます。これはⅡの静止状態と同じ形ですが、摩擦が動摩擦力 \(f = \mu' N_A\) になります。
鉛直方向(物体全体、Cは浮いている):
$$N_A + N_B = 3mg$$A点まわりのモーメントのつり合い(加速度 0 なので静止時と同形):
$$mg\,d - F\,d - N_B\,d = 0 \quad\Rightarrow\quad N_B = mg - F$$これより \(N_A = 3mg - N_B = 2mg + F\)。
水平方向(右向きを正、合力 0):糸の力 \(F\) と動摩擦力 \(\mu' N_A\)(左向き)がつり合います:
$$F = \mu' N_A = \mu'(2mg + F)$$\(F\) について解くと:
$$F(1-\mu') = 2\mu' mg \quad\Rightarrow\quad F = \frac{2\mu' mg}{1-\mu'}$$数値で確認:\(m=2.0\ \mathrm{kg}\)、\(g=9.8\ \mathrm{m/s^2}\)、\(\mu'=0.20\) のとき:
$$F = \frac{2\times 0.20\times 2.0\times 9.8}{1-0.20} = \frac{7.84}{0.80} = 9.8\ \mathrm N$$Ⅱ(3)は「静止していた物体が滑り出す瞬間」で、最大静止摩擦 \(\mu N_A\) を使いました。Ⅲ(1)は「すでに動いている物体が等速で進む」状況で、動摩擦 \(\mu' N_A\) を使います。
どちらも加速度 0(つり合い)なので式の形は同じで、摩擦係数の記号だけが \(\mu \to \mu'\) に変わります。一般に動摩擦係数は最大静止摩擦係数より小さいので、等速で動かし続ける力はⅡ(3)で滑り出した力より小さくなります。
等速直線運動=加速度 0=つり合い。式はⅡと同形で、摩擦を動摩擦 \(\mu' N_A\) に置き換えるだけ。\(N_A=2mg+F\) を代入して連立。
設定:糸を放して \(F=0\) にすると、左向きの動摩擦だけが残り、物体は減速します。加速度の大きさを \(a\ (a>0)\) とすると、加速度は速度と逆向き(左向き)です。物体は回転せず(角加速度 0)、まっすぐ並進しながら減速します。Bが床から受ける垂直抗力 \(N_B\) を \(a\) で表します。
水平方向の運動方程式(物体全体、質量 \(3m\)):はたらく水平力はAの動摩擦力 \(\mu' N_A\)(左向き)だけです。左向きを加速度の正の向きとすると:
$$3m\,a = \mu' N_A \quad\Rightarrow\quad N_A = \frac{3m a}{\mu'} \quad\cdots(\ast)$$重心まわりのモーメントのつり合い:物体は回転しない(角加速度 0)ので、重心Gのまわりのモーメントの合計は 0 です。3個の等質量のおもりの重心Gは、\(\mathrm A(0,0),\ \mathrm B(-d,0),\ \mathrm C(0,d)\) の平均で:
$$\mathrm G\left(-\frac{d}{3},\ \frac{d}{3}\right)$$重心まわりのモーメント(反時計回りを正)を、床からの力について計算します。重力は重心にはたらくとみなせるのでモーメントは 0。
| 力 | 作用点 | 重心からの位置 | 重心まわりのモーメント |
|---|---|---|---|
| \(N_A\)(上向き) | A\((0,0)\) | \(\left(\tfrac{d}{3},-\tfrac{d}{3}\right)\) | \(+\tfrac{d}{3}N_A\) |
| \(\mu'N_A\)(左向き) | A\((0,0)\) | \(\left(\tfrac{d}{3},-\tfrac{d}{3}\right)\) | \(-\tfrac{d}{3}\mu'N_A\) |
| \(N_B\)(上向き) | B\((-d,0)\) | \(\left(-\tfrac{2d}{3},-\tfrac{d}{3}\right)\) | \(-\tfrac{2d}{3}N_B\) |
重心まわりのモーメントのつり合い(合計=0):
$$\frac{d}{3}N_A - \frac{d}{3}\mu' N_A - \frac{2d}{3}N_B = 0$$両辺に \(\dfrac{3}{d}\) を掛けて整理すると:
$$N_A(1-\mu') = 2N_B \quad\Rightarrow\quad N_B = \frac{N_A(1-\mu')}{2}$$ここに \((\ast)\) の \(N_A = \dfrac{3ma}{\mu'}\) を代入します:
$$N_B = \frac{1-\mu'}{2}\cdot\frac{3ma}{\mu'}$$ $$\therefore\; N_B = \frac{3ma(1-\mu')}{2\mu'}$$数値で確認:\(m=2.0\ \mathrm{kg}\)、\(\mu'=0.20\)、\(a=2.0\ \mathrm{m/s^2}\) のとき:
$$N_B = \frac{3\times 2.0\times 2.0\times(1-0.20)}{2\times 0.20} = \frac{12\times 0.80}{0.40} = \frac{9.6}{0.40} = 24\ \mathrm N$$支点を重心ではなくA点にとっても解けますが、その場合は「A点が加速している」ため、重心に慣性力(見かけの力、大きさ \(3ma\)、向きは加速度と逆=右向き)を加えて考える必要があります。
A点まわりのモーメントのつり合い(A点の \(N_A\)・摩擦は腕 0 で消える。重力 \(3mg\) は重心の \(x\) 座標 \(-\tfrac{d}{3}\) に、慣性力 \(3ma\)(右向き)は重心の \(y\) 座標 \(\tfrac{d}{3}\) に効く):
$$N_B\cdot d + 3ma\cdot\frac{d}{3} - 3mg\cdot\frac{d}{3} = 0$$この式は \(g\) を含むため、\(a\) だけの式にするには別の式(\((\ast)\))と連立して \(g\) を消す必要があります。重心を支点にとると慣性力のモーメントが消え、本文のように \(g\) を経由せず \(N_B\) を \(a\) で表せて計算が軽くなります。
並進だけで回転しない剛体は「重心まわりのモーメント=0」。重力は重心にかかるので重心まわりのモーメントに効かない。水平の運動方程式 \(3ma=\mu'N_A\) と組み合わせて \(N_B\) を \(a\) で表す。
鉛直方向の力のつり合い(物体全体):鉛直方向には加速していない(物体は水平に動く)ので、床の抗力の合計は重力とつり合います:
$$N_A + N_B = 3mg$$Ⅲ(2)で求めた2つの式を代入します:
$$N_A = \frac{3ma}{\mu'}, \qquad N_B = \frac{3ma(1-\mu')}{2\mu'}$$これらを \(N_A + N_B = 3mg\) に代入:
$$\frac{3ma}{\mu'} + \frac{3ma(1-\mu')}{2\mu'} = 3mg$$左辺を共通因数 \(\dfrac{3ma}{\mu'}\) でくくります:
$$\frac{3ma}{\mu'}\left(1 + \frac{1-\mu'}{2}\right) = 3mg$$かっこの中を計算すると \(1 + \dfrac{1-\mu'}{2} = \dfrac{2 + (1-\mu')}{2} = \dfrac{3-\mu'}{2}\) なので:
$$\frac{3ma}{\mu'}\cdot\frac{3-\mu'}{2} = 3mg$$両辺を \(3m\) で割り、\(a\) について解きます:
$$\frac{a(3-\mu')}{2\mu'} = g \quad\Rightarrow\quad a = \frac{2\mu' g}{3-\mu'}$$数値で確認:\(g=9.8\ \mathrm{m/s^2}\)、\(\mu'=0.20\) のとき:
$$a = \frac{2\times 0.20\times 9.8}{3-0.20} = \frac{3.92}{2.80} = 1.4\ \mathrm{m/s^2}$$もし物体が「ふつうの一体の箱」なら減速の加速度は \(\mu' g\) になりますが、この物体ではA点だけに摩擦がはたらき、しかも \(N_A\) は重さ全体の一部なので、\(a=\dfrac{2\mu'g}{3-\mu'}\) と \(\mu' g\) より小さめの値になります。
別の順序でも同じ答えになります。まず鉛直 \(N_A+N_B=3mg\) と重心まわりの式 \(N_A(1-\mu')=2N_B\) から \(N_A\) を求めると:
$$N_B=\frac{N_A(1-\mu')}{2},\quad N_A+\frac{N_A(1-\mu')}{2}=3mg \;\Rightarrow\; N_A\cdot\frac{3-\mu'}{2}=3mg$$ $$N_A=\frac{6mg}{3-\mu'}$$これを水平の運動方程式 \(3ma=\mu'N_A\) に代入すると:
$$3ma=\mu'\cdot\frac{6mg}{3-\mu'} \;\Rightarrow\; a=\frac{2\mu'g}{3-\mu'}$$同じ結果が得られます。途中で求まる \(N_A=\dfrac{6mg}{3-\mu'}\) も検算に使えます。
Ⅲ(2)で \(N_A,N_B\) を \(a\) で表しておけば、残る鉛直のつり合い \(N_A+N_B=3mg\) に代入するだけで \(a\) が決まる。摩擦がA点だけにはたらくので、ふつうの \(\mu'g\) より小さい加速度になる。
| 小問 | 答え |
|---|---|
| Ⅰ(1) | \(F = mg\) |
| Ⅰ(2) | \(W_0 = (\sqrt{2}-1)mgd\) |
| Ⅱ(1) | \(N_B = mg - F\) |
| Ⅱ(2) | \(N_A = 2mg + F\) |
| Ⅱ(3) | \(F = \dfrac{2\mu mg}{1-\mu}\) |
| Ⅲ(1) | \(F = \dfrac{2\mu' mg}{1-\mu'}\) |
| Ⅲ(2) | \(N_B = \dfrac{3ma(1-\mu')}{2\mu'}\) |
| Ⅲ(3) | \(a = \dfrac{2\mu' g}{3-\mu'}\) |
支点の選び方が解法のカギ:A点を支点にすればA点の抗力・摩擦が消え(Ⅰ・Ⅱ)、運動する剛体では重心を支点にすれば重力と慣性力が消える(Ⅲ)。「知りたくない未知力の作用点を支点にする」が剛体のつり合いの定石。