ソレノイド内の一様磁場中を移動する円形コイルの電磁誘導を扱う問題です。コイルがソレノイド端部を通過する際に磁束が変化し、誘導起電力が生じます。
ソレノイド内部の磁場:
ソレノイドA(単位長さあたり $n$ 回巻き、電流 $I$)の内部の磁束密度は一様で:
$$B = \mu_0 n I$$コイルBを貫く磁束:
コイルBの直径は $b$($b < a$ なのでソレノイド内部に収まる)、面積 $S = \pi(b/2)^2 = \pi b^2/4$ です。コイルが完全にソレノイド内部にあるとき:
$$\Phi = BS = \mu_0 n I \cdot \frac{\pi b^2}{4}$$コイルが完全に内部にある間、$\Phi$ は一定なので 誘導起電力は $\mathcal{E} = 0$。
端部通過時の磁束変化:
コイルBが速さ $v$ でソレノイド端部を通過するとき、磁場のある領域がコイルを横切る面積が時間とともに変化します。コイルの中心がソレノイド端から距離 $x$ だけ外側に出ているとき、コイル内で磁場がある部分の面積が減少するため、磁束の時間変化率が生じます。
コイルが端部を横切る過程で、磁束の変化率は:
$$\frac{d\Phi}{dt} = -B \cdot \frac{dA_{\text{in}}}{dt}$$ここで $A_{\text{in}}$ はコイル内のソレノイド磁場が存在する部分の面積です。コイルの中心がソレノイド端面にあるとき、面積変化率が最大になります。
具体的な数値例:巻数密度 n = 1000 /m、電流 I = 2.0 A、コイル直径 b = 4.0 cm = 0.040 m、移動速度 v = 0.50 m/s のとき、磁束密度は B = 4π×10⁻⁷ × 1000 × 2.0 ≒ 2.5×10⁻³ T です。
$$B = 4\pi \times 10^{-7} \times 1000 \times 2.0 = 2.51 \times 10^{-3}\,\text{T}$$コイルを貫く最大磁束は:
$$\Phi_{\max} = 2.51 \times 10^{-3} \times \frac{\pi \times 0.04^2}{4} = 3.16 \times 10^{-6}\,\text{Wb}$$ファラデーの法則より誘導起電力は:
$$\mathcal{E} = -\frac{d\Phi}{dt}$$レンツの法則より、磁束が減少するので、それを補う向き(ソレノイド内部の磁場と同じ向き)に誘導電流が流れます。回路の抵抗が $R$ のとき、誘導電流は:
$$i = \frac{|\mathcal{E}|}{R}$$コイルBが完全にソレノイド内部にあるとき:$\mathcal{E} = 0$(磁束変化なし)
コイルBがソレノイド端部を通過するとき:
$$\mathcal{E} = -\frac{d\Phi}{dt}, \quad i = \frac{|\mathcal{E}|}{R}$$電流の向きはレンツの法則により、磁束の減少を妨げる向き。
円形コイルの中心がソレノイド端面から距離 $\xi$($-b/2 \le \xi \le b/2$)の位置にあるとき、コイル内でソレノイド磁場が存在する部分の面積 $A(\xi)$ は、円の一部(弓形)の面積として計算できます。
中心がちょうど端面上($\xi = 0$)のとき、$A = \pi b^2/8$(半円分)。コイルは速さ $v$ で移動するので $\xi = vt$ と置けば $dA/dt$ がわかります。
一般に、中心がソレノイド端面から $\xi$ だけ外側にあるとき:
$$A(\xi) = \frac{b^2}{4}\left[\arccos\!\left(\frac{2\xi}{b}\right) - \frac{2\xi}{b}\sqrt{1 - \frac{4\xi^2}{b^2}}\right]$$この微分を取ることで正確な誘導起電力の時間変化が得られます。
ソレノイド内部では磁場が一様なので、コイルが内部にある限り磁束は変化しない。誘導起電力が生じるのは端部を通過するときだけ。これはソレノイドの磁場の空間的不均一性(端部での磁場の変化)が本質的な原因。
誘導起電力と電力の関係からFを求める:
コイルBが速さ $v$ で等速運動しているとき、外力がコイルに対してする仕事率と、回路で消費されるジュール熱の仕事率が等しい:
$$Fv = \frac{\mathcal{E}^2}{R}$$ソレノイド端部でコイル中心が端面上にあるとき(磁束変化率が最大となる状況を考えます)、コイルを貫く磁束の変化率は:
$$\frac{d\Phi}{dt} = B \cdot \frac{dA}{dt}$$円形コイルがソレノイド端を通過するとき、面積変化率は直径 $b$ の円が端面を横切る幾何から得られます。中心が端面上にある瞬間の面積変化率は $dA/dt = bv$ です。したがって:
$$\mathcal{E} = B \cdot b \cdot v = \mu_0 n I \cdot b \cdot v$$力の大きさは:
$$F = \frac{\mathcal{E}^2}{Rv} = \frac{(\mu_0 n I \cdot b \cdot v)^2}{Rv} = \frac{\mu_0^2 n^2 I^2 b^2 v}{R}$$具体的計算:$n = 1000\,\text{/m}$、$I = 2.0\,\text{A}$、$b = 0.04\,\text{m}$、$v = 0.5\,\text{m/s}$、$R = 10\,\Omega$ のとき:
$$B = 4\pi \times 10^{-7} \times 1000 \times 2.0 = 2.51 \times 10^{-3}\,\text{T}$$ $$\mathcal{E} = 2.51 \times 10^{-3} \times 0.04 \times 0.5 = 5.03 \times 10^{-5}\,\text{V}$$ $$F = \frac{(5.03 \times 10^{-5})^2}{10 \times 0.5} = \frac{2.53 \times 10^{-9}}{5.0} = 5.1 \times 10^{-10}\,\text{N}$$ただし、問題ではコイルの全面積 $\pi b^2/4$ を使った一般的な表式が求められています。コイル全体を考えると:
$$F = \frac{\pi^2 b^4 \mu_0^2 n^2 I^2 v}{16R}$$力の向きは速度と逆向き(コイルの運動を妨げる向き)。
磁束を直接計算し、$F = BIl$ の形で求める方法です。
コイルに流れる誘導電流は $i = \mathcal{E}/R$。コイルの有効な長さ(磁場の境界を横切る部分)は、円形コイルの弦の長さで与えられます。
磁場中の電流が受ける力は $dF = i \, dl \times B$ の積分です。対称性から、$x$ 方向の成分のみが残り:
$$F_x = i B \int dl_y = i B \cdot b$$ここで $b$ はコイル直径。$i = \mathcal{E}/R = B \cdot (\pi b^2/4) \cdot v / (R \cdot \text{通過距離})$ を代入して整理すると同じ結果が得られます。
エネルギー法($Fv = P_{\text{Joule}}$)の方が簡潔で間違いにくいので推奨します。
誘導電流によるブレーキ力は速さ $v$ に比例する。これは電磁ブレーキの原理と同じ。等速運動を維持するには、外力 $F$ が常にこのブレーキ力と釣り合っている必要がある。また、$F \propto 1/R$ なので、抵抗が小さいほど大きなブレーキ力が生じる。
抵抗値を $2R$ に変えたときの影響:
設問(2)で求めた力の表式において、$R$ を $2R$ に置き換えます:
$$F' = \frac{\pi^2 b^4 \mu_0^2 n^2 I^2 v}{16 \cdot 2R} = \frac{1}{2} \cdot \frac{\pi^2 b^4 \mu_0^2 n^2 I^2 v}{16R}$$力が最大となる条件:
力 $F$ は磁束の時間変化率 $|d\Phi/dt|$ の2乗に比例します($F = \mathcal{E}^2/(Rv)$)。磁束の変化率が最大になるのは、コイルの中心がちょうどソレノイドの端面を通過するときです。このとき、磁場の境界がコイルの直径 $b$ の幅を横切っています。
$$F_{\max} = \frac{\mathcal{E}_{\max}^2}{2Rv}$$ここで $\mathcal{E}_{\max}$ はコイル中心がソレノイド端面上にあるときの誘導起電力です。面積変化率が最大のとき $d\Phi/dt = B \cdot b \cdot v$ なので:
$$\mathcal{E}_{\max} = \mu_0 n I \cdot b \cdot v$$具体的な計算:先ほどの数値($B = 2.51 \times 10^{-3}\,\text{T}$、$b = 0.04\,\text{m}$、$v = 0.5\,\text{m/s}$、$2R = 20\,\Omega$)で:
$$\mathcal{E}_{\max} = 2.51 \times 10^{-3} \times 0.04 \times 0.5 = 5.03 \times 10^{-5}\,\text{V}$$ $$F_{\max} = \frac{(5.03 \times 10^{-5})^2}{20 \times 0.5} = \frac{2.53 \times 10^{-9}}{10} = 2.5 \times 10^{-10}\,\text{N}$$これは抵抗 $R$ のときの最大値の半分です。
すなわち、抵抗 $R$ のときの最大値の $\dfrac{1}{2}$ 倍。
外力が等速運動を維持するためにする仕事率は、抵抗で消費されるジュール熱に等しい:
$$P = Fv = \frac{\mathcal{E}^2}{2R}$$抵抗を2倍にすると電流は半分になるので、ジュール熱 $i^2 \cdot 2R = (\mathcal{E}/2R)^2 \cdot 2R = \mathcal{E}^2/(2R)$ となり、確かに力が半分($F = P/v$)になることが確認できます。
直感的には、抵抗が大きいと電流が小さくなり、電流が磁場から受ける力(ブレーキ力)も小さくなるということです。超伝導($R \to 0$)ではブレーキ力が極めて大きくなり、コイルはソレノイドから出られなくなります。
コイルの中心がソレノイド端面から $\xi$ の位置にあるとき($\xi > 0$ がソレノイド外側)、ソレノイド内部にあるコイルの面積は弓形の面積公式から:
$$A(\xi) = \frac{b^2}{4}\left[\arccos\!\left(\frac{2\xi}{b}\right) - \frac{2\xi}{b}\sqrt{1 - \frac{4\xi^2}{b^2}}\right]$$これを時間で微分すると($\xi = vt$ として):
$$\frac{dA}{dt} = -v \cdot \sqrt{b^2 - 4\xi^2}$$$\xi = 0$(中心が端面上)のとき $|dA/dt| = vb$ で最大。したがって:
$$|\mathcal{E}_{\max}| = B \cdot v \cdot b = \mu_0 n I \cdot v \cdot b$$これは簡略的に求めた結果と一致します。
電磁誘導による力は $F \propto v/R$ の関係がある。抵抗が大きいほど電流が減り、力も減る。力が最大になるのは磁束の空間的変化が最も急な場所(ソレノイド端面)をコイル中心が通過する瞬間。この問題は電磁ブレーキ・渦電流ブレーキの原理と本質的に同じ物理。