大問2:コンデンサー回路と誘電体

解法の指針

直感的理解
スイッチの開閉で回路の「つながり方」が変わります。キルヒホッフの法則と電荷保存を軸に,誘電体が容量を変えるとどうなるかを考えましょう。「電圧一定なら電荷が変わる」「電荷一定なら電圧が変わる」の2パターンをまず見極めます。

2つの電池 $E$、2つのコンデンサー $C_1,\,C_2$($C_1 < C_2$)、抵抗 $R$、3つのスイッチ $S_1,\,S_2,\,S_3$ からなる回路です。スイッチの開閉により回路構成が変わり、直列接続並列接続の状態が切り替わります。後半では誘電体の挿入・取り出しに伴う電荷・エネルギーの変化を扱います。

問題の構成

全体を貫くポイント

数値例:電池 E = 12 V、容量 C1 = 2.0 μF と C2 = 4.0 μF の直列接続で合成容量は C = 2.0 × 4.0 ÷ (2.0 + 4.0) = 1.33 μF。蓄えられる電荷は Q = 1.33 × 10^-6 × 12 = 1.6 × 10^-5 C。C1 の電圧は V1 = Q ÷ C1 = 1.6 × 10^-5 ÷ (2.0 × 10^-6) = 8.0 V。

問1:$S_1$ と $S_3$ を閉じたときの $C_1$ の電位差と電荷

直感的理解
2つの電池を直列にして2つのコンデンサーを直列に充電する回路です。直列のコンデンサーには同じ電荷が蓄えられます。容量が小さい方に大きな電圧がかかります。

回路の状態

$S_1$ と $S_3$ を閉じ、$S_2$ は開いたままです。電流が流れるループは1つだけです。

青線が電流の流れるループ($S_2$ は開・灰色)

ループ:$\text{a} \to R \to S_1 \to \text{b} \to C_1 \to \text{c} \to C_2 \to \text{d} \to S_3 \to \text{e} \to E \to \text{f} \to E \to \text{a}$

2つの電池が直列で合計起電力 $2E$ を供給し、$C_1$ と $C_2$ が直列に接続されます。十分時間が経つと電流は 0 になり、$R$ での電圧降下も 0 です。

解法

直列コンデンサーには同じ電荷 $Q$ が蓄えられます。キルヒホッフの電圧則より: $$ \frac{Q}{C_1} + \frac{Q}{C_2} = 2E $$ $$ Q\,\frac{C_1 + C_2}{C_1 C_2} = 2E $$

答え
$C_1$ に蓄えられる電気量: $$ Q = \frac{2E\,C_1 C_2}{C_1 + C_2} $$ $C_1$ の極板間電位差: $$ V_1 = \frac{Q}{C_1} = \frac{2E\,C_2}{C_1 + C_2} $$

数値例:自己インダクタンス \(L = 0.10\) H、静電容量 \(C = 100\) μF の LC 回路の固有振動数は

\(f = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}} = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{0.10 \times 100 \times 10^{-6}}} = \dfrac{1}{2\pi \times 3.16 \times 10^{-3}} = 50.3\) Hz

コンデンサーの初期電荷 \(Q_0 = 2.0 \times 10^{-3}\) C のとき、最大電流は \(I_{\max} = Q_0\omega = 2.0 \times 10^{-3} \times 316 = 0.63\) A

Point

直列コンデンサーでは各極板に蓄えられる電荷は等しい。合成容量 $\dfrac{C_1 C_2}{C_1 + C_2}$ を用いると $Q = (\text{合成容量}) \times 2E$ ですぐに求まります。

問2:さらに $S_2$ を閉じたときの電流の向きと電気量

直感的理解
$S_2$ を閉じると回路が2つの独立ループに分かれます。各ループには電池1個とコンデンサー1個だけがあるので,最終的に各コンデンサーの電圧は $E$ になります。問1の状態との差が $S_2$ を流れた電荷量です。

回路の状態

$S_2$ を閉じると、$\text{f}$ 点と $\text{c}$ 点が導線でつながり、回路は上側ループ下側ループの2つに分かれます。

$S_2$ を閉じると回路が上下2つのループに分離する

十分時間後、それぞれのループで: $$ V(C_1) = E, \quad V(C_2) = E $$

$S_2$ を閉じる前後の比較

閉じる前(問1の結果): $$ V(C_1) = \frac{2E\,C_2}{C_1 + C_2} > E, \quad V(C_2) = \frac{2E\,C_1}{C_1 + C_2} < E \quad (\because\; C_1 < C_2) $$ $C_1$ は過充電状態($V > E$)なので放電し、$C_2$ は不足状態($V < E$)なので追加充電されます。

電流の向きと電気量

$\text{c}$ 点における電荷保存で考えます。$\text{c}$ 点には $C_1$ の c 側極板(負の電荷)と $C_2$ の c 側極板(正の電荷)が接続しています。

$S_2$ を閉じる前の c 点の正味の電荷: $$ q_\text{前} = -Q_0 + Q_0 = 0 $$ $S_2$ を閉じた後(定常状態)の c 点の正味の電荷: $$ q_\text{後} = -E C_1 + E C_2 = E(C_2 - C_1) > 0 $$

c 点の正の電荷が増えた分 $E(C_2 - C_1)$ は、$S_2$ を通ってf 側から c 側へ正電荷が流入したことを意味します。

答え
電流の向き:f から c
$S_2$ を流れた電気量: $$ \Delta q = E(C_2 - C_1) $$
Point

孤立ノードの電荷保存:$S_2$ が開いている間、c 点周辺の電荷は保存される。$S_2$ を閉じると新たな経路ができ電荷が移動する。移動量は、閉じる前後の c 点の電荷の差から求められます。

問3:誘電体 D の挿入中に $S_2$ を流れる電流

直感的理解
電池につないだまま(電圧一定)誘電体を入れると,容量が増える分だけ電荷が増えます。面積に比例して入れるので容量は時間に比例し,結果として電流は一定になります。

設定

すべてのスイッチを開き、コンデンサーを放電して初期状態に戻します。次に $S_2$ と $S_3$ を閉じて $C_2$ を充電します($S_1$ は開)。ループ $\text{f} \to S_2 \to \text{c} \to C_2 \to \text{d} \to S_3 \to \text{e} \to E \to \text{f}$ により、十分時間後 $V(C_2) = E$、$Q_0 = EC_2$ に充電されます。

その状態のまま、比誘電率 $\varepsilon_r = 3$、極板間隔と同じ厚さの誘電体 D を $C_2$ の極板間にゆっくり挿入します。


0t₀

スライダーで挿入具合を変えると、電荷 $Q(t)$ のグラフ上の点が連動して動きます

解法

$S_2,\,S_3$ は閉じたままなので、$C_2$ の両端は電池に直結しており、電圧は常に $E$ に保たれます

時刻 $t$ で D が挿入された面積の割合は $\dfrac{t}{t_0}$(面積は時間に比例)です。$C_2$ を、誘電体が入った部分と真空部分の2つの並列コンデンサーと見なすと:

合計容量: $$ C(t) = C_2\!\left(1 - \frac{t}{t_0}\right) + 3C_2\,\frac{t}{t_0} = C_2\!\left(1 + \frac{2t}{t_0}\right) $$

$C(t)$ は $t$ の一次関数(直線)です。電圧 $V = E$ は一定なので、蓄えられる電荷 $Q(t) = C(t) \cdot E$ も $t$ の一次関数になります: $$ Q(t) = EC_2\!\left(1 + \frac{2t}{t_0}\right) $$

$Q(t)$ が $t$ に対して直線的に増えるということは、単位時間あたりの電荷の増加量(=電流)が一定であることを意味します。挿入開始時($t = 0$)と挿入完了時($t = t_0$)の電荷から:

電荷の変化量 $\Delta Q = 3EC_2 - EC_2 = 2EC_2$ がかかった時間 $t_0$ で均等に流れるので: $$ I = \frac{\Delta Q}{t_0} = \frac{2EC_2}{t_0} $$

答え
$$ I = \frac{2EC_2}{t_0} \quad \text{(一定)} $$
別解:微分を使う方法

$Q(t) = EC_2\!\left(1 + \dfrac{2t}{t_0}\right)$ を $t$ で微分すると: $$ I = \frac{dQ}{dt} = E \cdot \frac{dC}{dt} = E \cdot \frac{2C_2}{t_0} = \frac{2EC_2}{t_0} $$ $C(t)$ が $t$ の一次関数なので微分は定数になり、結果は同じです。

Point

電池に直結(電圧一定)の状態で容量が変化すると、$Q = CV$ も容量に比例して変化します。面積が時間に比例するので $C(t)$ は一次関数 → $Q(t)$ も直線的に増加 → 電流は一定になります。

問4:$S_2$ を開いて D を取り去るための外力の仕事

直感的理解
回路を開いてから誘電体を抜くと,電荷は逃げ場がないので一定のまま。しかし容量が減るので電圧がグンと上がり,エネルギーも増えます。その増加分は「引き抜くために必要な仕事」です。

設定

$t = t_0$ で D が完全に挿入された状態($C = 3C_2$、$V = E$、$Q = 3EC_2$)から、$S_2$ を開いてから D をゆっくり取り去ります。

$S_1$ は開、$S_2$ も開になるため、$C_2$ の c 側極板は他のどの回路とも接続されなくなり、電荷が一定に保たれます:$Q = 3EC_2$(一定)。

D 除去前($S_2$ 開直後)
+ + + +
D
- - - -
$C = 3C_2$
$Q = 3EC_2$
$V = E$
$U = \dfrac{3}{2}C_2 E^2$
Q一定
D 除去後
+ + + +
真空
- - - -
$C = C_2$
$Q = 3EC_2$
$V = 3E$
$U = \dfrac{9}{2}C_2 E^2$

解法

電荷一定で誘電体を取り去ると容量が $3C_2 \to C_2$ に減り、電圧が $E \to 3E$ に上昇します。エネルギー変化を比較します。

回路は開いているので電流は流れず、ジュール熱は発生しません。エネルギーが増加した分がすべて外力の仕事です。

答え
$$ W = U_f - U_i = \frac{9}{2}\,C_2 E^2 - \frac{3}{2}\,C_2 E^2 = 3C_2 E^2 $$
Point

誘電体はコンデンサーに引き込まれる方向に力を受けます。電荷一定(回路が開)の場合、取り去るための外力の仕事=静電エネルギーの増加分です。

問5:D 除去後に $S_1$ を閉じたときの $C_1,\,C_2$ の電位差とグラフ

直感的理解
$C_2$ に溜まった大量の電荷($3EC_2$)を問1と同じループで再分配します。$C_2$ の電圧 $3E$ が電池の起電力 $2E$ より大きいため,$C_1$ が「逆向き」に充電されるという一見不思議な結果になります。

設定

D を取り去った後の状態:$C_2$ に電荷 $Q = 3EC_2$(c 側が正)、電圧 $3E$。$C_1$ は無充電。
ここで $S_1$ を閉じます($S_2$ は開、$S_3$ は閉のまま)。

問1と同じループだが、$C_2$ に初期電荷 $3EC_2$ が蓄えられている

解法

ループは問1と同じ構成です。総起電力は $2E$ ですが、$C_2$ に初期電荷があるため結果が異なります。

c 点は孤立ノード($S_2$ が開)なので、c 点に接続した極板の電荷の合計が保存されます。 $$ \text{($C_1$ の c 側極板)} + \text{($C_2$ の c 側極板)} = 0 + 3EC_2 = 3EC_2 \quad \cdots\text{(i)} $$

$C_1$ の b 側極板の電荷を $Q_1$、$C_2$ の c 側極板の電荷を $Q_2$ とすると、$C_1$ の c 側極板は $-Q_1$、$C_2$ の d 側極板は $-Q_2$ です。

電荷保存 (i) より: $$ -Q_1 + Q_2 = 3EC_2 \quad \Rightarrow \quad Q_2 = 3EC_2 + Q_1 \quad \cdots\text{(ii)} $$

十分時間後に電流が 0 のとき、KVL(ループを一周): $$ \frac{Q_1}{C_1} + \frac{Q_2}{C_2} = 2E \quad \cdots\text{(iii)} $$

(ii) を (iii) に代入: $$ \frac{Q_1}{C_1} + \frac{3EC_2 + Q_1}{C_2} = 2E $$ $$ \frac{Q_1}{C_1} + 3E + \frac{Q_1}{C_2} = 2E $$ $$ Q_1\!\left(\frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\right) = -E $$ $$ Q_1 = \frac{-E\,C_1 C_2}{C_1 + C_2} $$

$Q_1 < 0$ は、$C_1$ の b 側極板に負の電荷が蓄えられること(通常と逆の極性)を意味します。

$$ Q_2 = 3EC_2 + Q_1 = 3EC_2 - \frac{E\,C_1 C_2}{C_1 + C_2} = \frac{EC_2(2C_1 + 3C_2)}{C_1 + C_2} $$

答え
$C_1$ の極板間電位差: $$ V(C_1) = \frac{|Q_1|}{C_1} = \frac{EC_2}{C_1 + C_2} $$ $C_2$ の極板間電位差: $$ V(C_2) = \frac{Q_2}{C_2} = \frac{E(2C_1 + 3C_2)}{C_1 + C_2} $$

電位のグラフ(図3)

点 e の電位を 0 として各点の電位を求めます。

$V(\text{c})$ が $2E$ と $3E$ の間になる理由

$V(\text{c})$ の式を変形してみます: $$ V(\text{c}) = \frac{E(2C_1 + 3C_2)}{C_1 + C_2} = E\!\left(\frac{2C_1 + 3C_2}{C_1 + C_2}\right) = E\!\left(2 + \frac{C_2}{C_1 + C_2}\right) $$

ここで $\dfrac{C_2}{C_1 + C_2}$ の取りうる範囲を考えます。$C_1,\,C_2 > 0$ かつ $C_1 < C_2$ なので:

したがって: $$ \frac{1}{2} < \frac{C_2}{C_1 + C_2} < 1 $$ $$ 2E + \frac{E}{2} < V(\text{c}) < 2E + E $$ $$ \frac{5}{2}E < V(\text{c}) < 3E $$

物理的には、$C_2$ に蓄えられていた大量の電荷($3EC_2$)のうち一部が $C_1$ に押し込まれ、$C_1$ を通常と逆の極性に充電します。この逆極性の $C_1$ が b → c 方向に電位を押し上げるため、c 点の電位が $2E$ を超えます。ただし $C_2$ にも電荷が残る(すべてが $C_1$ に移るわけではない)ので $3E$ には達しません。

なお、特殊ケースとして $C_1 \to 0$ のとき $V(\text{c}) \to 3E$($C_2$ の電荷がすべて電位を支配)、$C_1 \to C_2$ のとき $V(\text{c}) \to \dfrac{5}{2}E$ です。

グラフの特徴:

回路と電位の対応

Point

回路の各ノードの電位を追うには、電池は起電力分だけ電位が上がり、コンデンサーは $Q/C$ だけ電位が下がる(高電位→低電位)ことを基本に順にたどります。抵抗に電流が流れていなければ電位降下は 0 です。