LC回路の電気振動を基本から発展まで段階的に扱う問題です。単一LC回路から始まり、2つのLC回路の結合振動、さらにうなりの物理まで展開されます。
設定:図1の回路で、スイッチ S を a に接続して電圧 $V_0$ の電源で電気容量 $C$ のコンデンサーを充電します。
長時間充電すると、電流がゼロになり、コンデンサーの電圧は電源電圧 $V_0$ に等しくなります。このとき蓄えられた電荷は:
$$q_0 = CV_0$$コンデンサーの基本式 $Q = CV$ は、定常状態での電荷を求める出発点です。この初期電荷がLC振動のエネルギー源になります。
設定:スイッチ S を b に切り替えると、コンデンサー C とコイル L による LC 回路が形成されます(図2)。回路には振動電流が流れ、振動電流は流れ始めません(抵抗ゼロのため)。
問題文の式(1)より、コンデンサーの電荷は:
$$Q = q_0\cos(2\pi f_0 t) \tag{1}$$$f_0$ の導出:LC回路の微分方程式(キルヒホッフの法則)から、
$$L\frac{dI}{dt} + \frac{Q}{C} = 0$$$I = -\frac{dQ}{dt}$ を代入すると:
$$L\frac{d^2Q}{dt^2} + \frac{Q}{C} = 0$$これは角振動数 $\omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}$ の単振動の方程式です。よって:
$$f_0 = \frac{\omega_0}{2\pi} = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$$LC回路のエネルギー保存則:
$$\frac{Q^2}{2C} + \frac{1}{2}LI^2 = \frac{q_0^2}{2C} = \text{一定}$$$Q = q_0\cos(\omega_0 t)$ を代入すると $I = q_0\omega_0\sin(\omega_0 t)$ で、
$$\frac{q_0^2\cos^2(\omega_0 t)}{2C} + \frac{1}{2}Lq_0^2\omega_0^2\sin^2(\omega_0 t) = \frac{q_0^2}{2C}$$これが任意の $t$ で成り立つには $L\omega_0^2 = 1/C$、つまり $\omega_0 = 1/\sqrt{LC}$ が必要です。
LC回路の固有振動数 $f_0 = 1/(2\pi\sqrt{LC})$ はばね振動の $f = 1/(2\pi\sqrt{m/k})$ と対応しています。$L$ が質量 $m$、$1/C$ がばね定数 $k$ に対応します。
(c) $\Delta Q$ と $I$ の関係:
電流 $I$ はコンデンサーの電荷の時間変化率の逆符号です(回路の正方向を図の矢印に合わせて)。微小時間 $\Delta t$ の間に電荷が $\Delta Q$ だけ変化するとき:
$$\frac{\Delta Q}{\Delta t} = -I \tag{2}$$これは $I = -dQ/dt$ の微小量表現です。コンデンサーから電荷が流れ出る($\Delta Q < 0$)と正の電流($I > 0$)が流れます。
(d) $\Delta I$ と $Q$ の関係:
コンデンサーの極板間の電位差とコイルに生じる誘導起電力が等しいことから(キルヒホッフの法則):
$$\frac{Q}{C} = L\frac{\Delta I}{\Delta t}$$整理すると:
$$\frac{\Delta I}{\Delta t} = \frac{Q}{LC} \tag{3}$$これは「コンデンサーに電荷 $Q$ が溜まっていると、その電圧が電流を変化させる」という物理を表しています。
式(2)と(3)をばね振動と比較すると:
| LC回路 | ばね振動 |
|---|---|
| $\frac{\Delta Q}{\Delta t} = -I$ | $\frac{\Delta x}{\Delta t} = v$ |
| $\frac{\Delta I}{\Delta t} = \frac{Q}{LC}$ | $\frac{\Delta v}{\Delta t} = -\frac{k}{m}x$ |
$Q \leftrightarrow x$, $I \leftrightarrow -v$, $1/C \leftrightarrow k$, $L \leftrightarrow m$ の対応が見えます。
式(2)(3)を組み合わせると $\frac{d^2Q}{dt^2} = -\frac{Q}{LC}$ となり、角振動数 $\omega_0 = 1/\sqrt{LC}$ の単振動を得ます。電磁気の問題を力学のアナロジーで解くのは入試頻出の手法です。
設定:図3のように、電気容量 $C$ のコンデンサー1, 2、自己インダクタンス $L$ のコイル1, 2、自己インダクタンス $L_3$ のコイル3で構成された回路です。$Q_S = Q_1 + Q_2$ として電荷の和の振動を調べます。
(e) $\Delta Q_S$ と電流の関係:
$Q_S = Q_1 + Q_2$ の微小変化は:
$$\frac{\Delta Q_S}{\Delta t} = \frac{\Delta Q_1}{\Delta t} + \frac{\Delta Q_2}{\Delta t}$$式(2)と同様に、$\frac{\Delta Q_1}{\Delta t} = -I_1$, $\frac{\Delta Q_2}{\Delta t} = -I_2$ なので:
$$\frac{\Delta Q_S}{\Delta t} = -(I_1 + I_2) \tag{4}$$ここでキルヒホッフの第1法則より $I_3 = I_1 + I_2$ なので:
(f) 電圧と電流変化の関係:
コンデンサー1側の回路(上辺の左半分+下辺)にキルヒホッフの第2法則を適用:
$$\frac{Q_1}{C} = L\frac{\Delta I_1}{\Delta t} + L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t} \tag{5}$$コンデンサー2側の回路についても同様に:
$$\frac{Q_2}{C} = L\frac{\Delta I_2}{\Delta t} + L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t} \tag{6}$$(g) $\Delta I_3$ と $Q_S$ の関係:
式(5)と(6)を辺々加えると:
$$\frac{Q_1 + Q_2}{C} = L\left(\frac{\Delta I_1}{\Delta t} + \frac{\Delta I_2}{\Delta t}\right) + 2L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t}$$$Q_S = Q_1 + Q_2$、$I_3 = I_1 + I_2$ より $\frac{\Delta I_3}{\Delta t} = \frac{\Delta I_1}{\Delta t} + \frac{\Delta I_2}{\Delta t}$ なので:
$$\frac{Q_S}{C} = L\frac{\Delta I_3}{\Delta t} + 2L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t} = (L + 2L_3)\frac{\Delta I_3}{\Delta t}$$ $$\frac{\Delta I_3}{\Delta t} = \frac{Q_S}{(L + 2L_3)C} \tag{7}$$式(4)と(7)を合わせると、$Q_S$ は角振動数 $\omega_S = 1/\sqrt{(L + 2L_3)C}$ の単振動をすることが分かります。コイル3が2つの回路を結合することで、実効的なインダクタンスが $L + 2L_3$ に増加します。
(h) $Q_S$ の固有振動数 $f_S$:
式(4)と(7)を合わせると、$Q_S$ は単振動の方程式に従います:
$$\frac{d^2 Q_S}{dt^2} = -\frac{Q_S}{(L + 2L_3)C}$$よって角振動数 $\omega_S = \frac{1}{\sqrt{(L + 2L_3)C}}$、固有振動数は:
(i)〜(j) 初期条件と $Q_d$ の振動数:
初期条件:$Q_1(0) = q_1 > 0$, $Q_2(0) = q_2$ として、
$$Q_S(0) = q_1 + q_2, \quad Q_d(0) = q_1 - q_2$$$Q_d = Q_1 - Q_2$ について、式(5)と(6)を辺々引くと:
$$\frac{Q_1 - Q_2}{C} = L\left(\frac{\Delta I_1}{\Delta t} - \frac{\Delta I_2}{\Delta t}\right)$$$I_d = I_1 - I_2$ とおくと $\frac{\Delta Q_d}{\Delta t} = -I_d$ で、
$$\frac{\Delta I_d}{\Delta t} = \frac{Q_d}{LC}$$これは $Q_d$ の振動方程式で、角振動数は $\omega_d = 1/\sqrt{LC}$:
(k) 初期条件 $q_1 > 0$, $q_2 = -q_1$ の場合:
$Q_S(0) = q_1 + (-q_1) = 0$、$Q_d(0) = q_1 - (-q_1) = 2q_1$
和モードの振幅はゼロなので $Q_S(t) = 0$(常に)。差モードのみが振動します:
$$Q_d(t) = 2q_1\cos(2\pi f_d t) = 2q_1\cos(2\pi f_0 t)$$したがって:
$$Q_1(t) = \frac{Q_S + Q_d}{2} = q_1\cos(2\pi f_0 t)$$ $$Q_2(t) = \frac{Q_S - Q_d}{2} = -q_1\cos(2\pi f_0 t)$$結合振動系には和モード($Q_S$, 振動数 $f_S$)と差モード($Q_d$, 振動数 $f_d = f_0$)の2つの固有モードがあります。一般の振動はこれらの重ね合わせで表され、$f_S \neq f_d$ のときうなりが生じます。
(l) うなりの特徴:
電気振動を音に変換して聞いたとき、$f_S$ と $f_d$ が近い周波数であれば、うなり(beat)が聞こえます。
$f_S$ と $f_d$ について、$Q_1(t)$ を和積の公式で変形すると:
$$Q_1 = \frac{1}{2}[Q_S + Q_d] = \frac{q_1}{2}[\cos(2\pi f_S t) + \cos(2\pi f_0 t)]$$ $$= q_1\cos\left(\pi(f_0 - f_S)t\right)\cos\left(\pi(f_0 + f_S)t\right)$$うなりの振動数(1秒あたりの振幅変動回数)は:
$$f_{\text{beat}} = |f_d - f_S| = |f_0 - f_S|$$音の強弱の周波数 $f_{\text{beat}}$ と、音の高さを決める搬送周波数 $(f_0 + f_S)/2$ が分離されます。
(m) $q_1 > 0$, $q_2 = -q_1$ の場合の誘導起電力:
前問(k)で示したように、この初期条件では $Q_S = 0$(常に)で $I_3 = 0$(常に)です。したがってコイル3を流れる電流は常にゼロで、コイル3に生じる誘導起電力もゼロです。
(n) 音の強さの比較:
$f_S$ と $f_d$ は、コンデンサー1の極板間の電位差に比例する大きさの音を発します。
また $q_1 > 0$, $q_2 = 0$, $L_3$ は $L$ より十分に小さいが $f_S$ と $f_d$ を分離できる程度の値とします。
$Q_1 = \frac{1}{2}[\cos(2\pi f_S t) + \cos(2\pi f_d t)]$ より、コンデンサー1の電圧は $V_1 = Q_1/C$ で、$f_S$ と $f_d$ の2つの成分が同じ振幅 $q_1/(2C)$ で含まれています。
したがって、$f_S$ の音と $f_d$ の音の強さは等しくなります。
人間の耳はおよそ 20 Hz 〜 20 kHz の範囲の音を聞くことができます。うなりとして認識されるには、$|f_S - f_d|$ が数 Hz 程度(通常 15 Hz 以下)である必要があります。
$f_S = \frac{1}{2\pi\sqrt{(L + 2L_3)C}}$ で $L_3 \ll L$ なら $f_S \fallingdotseq f_0(1 - L_3/L)$ と近似でき、うなりの振動数は $f_0 \cdot L_3/L$ 程度になります。
結合振動系の一般論では、対称モード(和モード)と反対称モード(差モード)に分解します:
任意の初期条件は2つのモードの線形結合で表せます:
$$Q_1(t) = A\cos(2\pi f_S t) + B\cos(2\pi f_d t)$$ $$Q_2(t) = A\cos(2\pi f_S t) - B\cos(2\pi f_d t)$$初期条件 $Q_1(0) = q_1$, $Q_2(0) = q_2$ より $A = (q_1 + q_2)/2$, $B = (q_1 - q_2)/2$。
結合振動の問題は、和と差の変数に分離するのが定石です。各モードは独立な単振動として解け、一般解は2つのモードの重ね合わせになります。この手法は力学の連成振動でも全く同じです。