医学部 大問Ⅱ:電磁気(LC回路の電気振動)

解法の指針

LC回路の電気振動を基本から発展まで段階的に扱う問題です。単一LC回路から始まり、2つのLC回路の結合振動、さらにうなりの物理まで展開されます。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1(a) コンデンサーの初期電荷

直感的理解
スイッチ S を a に長時間接続すると、コンデンサー C は電源電圧 $V_0$ まで完全に充電されます。定常状態では電流がゼロなので、コンデンサーの両端の電圧は電源電圧に等しくなります。

設定:図1の回路で、スイッチ S を a に接続して電圧 $V_0$ の電源で電気容量 $C$ のコンデンサーを充電します。

長時間充電すると、電流がゼロになり、コンデンサーの電圧は電源電圧 $V_0$ に等しくなります。このとき蓄えられた電荷は:

$$q_0 = CV_0$$
答え:
$$q_0 = CV_0$$
Point

コンデンサーの基本式 $Q = CV$ は、定常状態での電荷を求める出発点です。この初期電荷がLC振動のエネルギー源になります。

問1(b) 固有振動数 $f_0$

直感的理解
スイッチを b に切り替えると、コンデンサーの電荷がコイルを通じて放電と充電を繰り返します。電気エネルギーと磁気エネルギーが交互に入れ替わる振動現象です。これは力学のばねの振動と数学的に同じ構造です。

設定:スイッチ S を b に切り替えると、コンデンサー C とコイル L による LC 回路が形成されます(図2)。回路には振動電流が流れ、振動電流は流れ始めません(抵抗ゼロのため)。

問題文の式(1)より、コンデンサーの電荷は:

$$Q = q_0\cos(2\pi f_0 t) \tag{1}$$

$f_0$ の導出:LC回路の微分方程式(キルヒホッフの法則)から、

$$L\frac{dI}{dt} + \frac{Q}{C} = 0$$

$I = -\frac{dQ}{dt}$ を代入すると:

$$L\frac{d^2Q}{dt^2} + \frac{Q}{C} = 0$$

これは角振動数 $\omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}$ の単振動の方程式です。よって:

$$f_0 = \frac{\omega_0}{2\pi} = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$$
答え:
$$f_0 = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$$ ($C$, $L$ を用いて表した)
別解:エネルギー保存からの導出

LC回路のエネルギー保存則:

$$\frac{Q^2}{2C} + \frac{1}{2}LI^2 = \frac{q_0^2}{2C} = \text{一定}$$

$Q = q_0\cos(\omega_0 t)$ を代入すると $I = q_0\omega_0\sin(\omega_0 t)$ で、

$$\frac{q_0^2\cos^2(\omega_0 t)}{2C} + \frac{1}{2}Lq_0^2\omega_0^2\sin^2(\omega_0 t) = \frac{q_0^2}{2C}$$

これが任意の $t$ で成り立つには $L\omega_0^2 = 1/C$、つまり $\omega_0 = 1/\sqrt{LC}$ が必要です。

Point

LC回路の固有振動数 $f_0 = 1/(2\pi\sqrt{LC})$ はばね振動の $f = 1/(2\pi\sqrt{m/k})$ と対応しています。$L$ が質量 $m$、$1/C$ がばね定数 $k$ に対応します。

問1(c)(d) 微小変化の関係式

直感的理解
微小時間 $\Delta t$ の間に電荷 $Q$ が $\Delta Q$ だけ変化するとき、電流 $I$ はその変化率です。同様に、コイルの自己誘導とコンデンサーの電圧の関係から $\Delta I$ と $Q$ が結びつきます。

(c) $\Delta Q$ と $I$ の関係:

電流 $I$ はコンデンサーの電荷の時間変化率の逆符号です(回路の正方向を図の矢印に合わせて)。微小時間 $\Delta t$ の間に電荷が $\Delta Q$ だけ変化するとき:

$$\frac{\Delta Q}{\Delta t} = -I \tag{2}$$

これは $I = -dQ/dt$ の微小量表現です。コンデンサーから電荷が流れ出る($\Delta Q < 0$)と正の電流($I > 0$)が流れます。

答え (c): $$\boxed{\frac{\Delta Q}{\Delta t} = -I}$$

(d) $\Delta I$ と $Q$ の関係:

コンデンサーの極板間の電位差とコイルに生じる誘導起電力が等しいことから(キルヒホッフの法則):

$$\frac{Q}{C} = L\frac{\Delta I}{\Delta t}$$

整理すると:

$$\frac{\Delta I}{\Delta t} = \frac{Q}{LC} \tag{3}$$

これは「コンデンサーに電荷 $Q$ が溜まっていると、その電圧が電流を変化させる」という物理を表しています。

答え (d): $$\boxed{\frac{\Delta I}{\Delta t} = \frac{Q}{LC}}$$ $L$, $C$, $Q$ を用いて表した。
補足:力学との対応

式(2)と(3)をばね振動と比較すると:

LC回路ばね振動
$\frac{\Delta Q}{\Delta t} = -I$$\frac{\Delta x}{\Delta t} = v$
$\frac{\Delta I}{\Delta t} = \frac{Q}{LC}$$\frac{\Delta v}{\Delta t} = -\frac{k}{m}x$

$Q \leftrightarrow x$, $I \leftrightarrow -v$, $1/C \leftrightarrow k$, $L \leftrightarrow m$ の対応が見えます。

Point

式(2)(3)を組み合わせると $\frac{d^2Q}{dt^2} = -\frac{Q}{LC}$ となり、角振動数 $\omega_0 = 1/\sqrt{LC}$ の単振動を得ます。電磁気の問題を力学のアナロジーで解くのは入試頻出の手法です。

問2(e)〜(g) 結合LC回路

直感的理解
2つのコンデンサーと3つのコイルからなる回路(図3)では、コイル3が2つのLC回路を結合させます。結合によって元の振動とは異なる固有振動数が現れます。

設定:図3のように、電気容量 $C$ のコンデンサー1, 2、自己インダクタンス $L$ のコイル1, 2、自己インダクタンス $L_3$ のコイル3で構成された回路です。$Q_S = Q_1 + Q_2$ として電荷の和の振動を調べます。

(e) $\Delta Q_S$ と電流の関係:

$Q_S = Q_1 + Q_2$ の微小変化は:

$$\frac{\Delta Q_S}{\Delta t} = \frac{\Delta Q_1}{\Delta t} + \frac{\Delta Q_2}{\Delta t}$$

式(2)と同様に、$\frac{\Delta Q_1}{\Delta t} = -I_1$, $\frac{\Delta Q_2}{\Delta t} = -I_2$ なので:

$$\frac{\Delta Q_S}{\Delta t} = -(I_1 + I_2) \tag{4}$$

ここでキルヒホッフの第1法則より $I_3 = I_1 + I_2$ なので:

答え (e): $$\boxed{\frac{\Delta Q_S}{\Delta t} = -I_3}$$ ただし $I_3 = I_1 + I_2$。

(f) 電圧と電流変化の関係:

コンデンサー1側の回路(上辺の左半分+下辺)にキルヒホッフの第2法則を適用:

$$\frac{Q_1}{C} = L\frac{\Delta I_1}{\Delta t} + L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t} \tag{5}$$

コンデンサー2側の回路についても同様に:

$$\frac{Q_2}{C} = L\frac{\Delta I_2}{\Delta t} + L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t} \tag{6}$$
答え (f):
式(5): $\frac{Q_1}{C} = L\frac{\Delta I_1}{\Delta t} + L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t}$
式(6): $\frac{Q_2}{C} = L\frac{\Delta I_2}{\Delta t} + L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t}$

(g) $\Delta I_3$ と $Q_S$ の関係:

式(5)と(6)を辺々加えると:

$$\frac{Q_1 + Q_2}{C} = L\left(\frac{\Delta I_1}{\Delta t} + \frac{\Delta I_2}{\Delta t}\right) + 2L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t}$$

$Q_S = Q_1 + Q_2$、$I_3 = I_1 + I_2$ より $\frac{\Delta I_3}{\Delta t} = \frac{\Delta I_1}{\Delta t} + \frac{\Delta I_2}{\Delta t}$ なので:

$$\frac{Q_S}{C} = L\frac{\Delta I_3}{\Delta t} + 2L_3\frac{\Delta I_3}{\Delta t} = (L + 2L_3)\frac{\Delta I_3}{\Delta t}$$ $$\frac{\Delta I_3}{\Delta t} = \frac{Q_S}{(L + 2L_3)C} \tag{7}$$
答え (g): $$\boxed{\frac{\Delta I_3}{\Delta t} = \frac{Q_S}{(L + 2L_3)C}}$$ $L$, $L_3$, $C$, $Q_S$ を用いて表した。
Point

式(4)と(7)を合わせると、$Q_S$ は角振動数 $\omega_S = 1/\sqrt{(L + 2L_3)C}$ の単振動をすることが分かります。コイル3が2つの回路を結合することで、実効的なインダクタンスが $L + 2L_3$ に増加します。

問2(h)〜(k) 固有振動数と初期条件

直感的理解
結合系には2つの固有振動数があります。$Q_S = Q_1 + Q_2$ の振動数 $f_S$ と、$Q_d = Q_1 - Q_2$ の振動数 $f_d$ です。初期条件から各モードの振幅が決まります。

(h) $Q_S$ の固有振動数 $f_S$:

式(4)と(7)を合わせると、$Q_S$ は単振動の方程式に従います:

$$\frac{d^2 Q_S}{dt^2} = -\frac{Q_S}{(L + 2L_3)C}$$

よって角振動数 $\omega_S = \frac{1}{\sqrt{(L + 2L_3)C}}$、固有振動数は:

答え (h): $$f_S = \frac{1}{2\pi\sqrt{(L + 2L_3)C}}$$

(i)〜(j) 初期条件と $Q_d$ の振動数:

初期条件:$Q_1(0) = q_1 > 0$, $Q_2(0) = q_2$ として、

$$Q_S(0) = q_1 + q_2, \quad Q_d(0) = q_1 - q_2$$

$Q_d = Q_1 - Q_2$ について、式(5)と(6)を辺々引くと:

$$\frac{Q_1 - Q_2}{C} = L\left(\frac{\Delta I_1}{\Delta t} - \frac{\Delta I_2}{\Delta t}\right)$$

$I_d = I_1 - I_2$ とおくと $\frac{\Delta Q_d}{\Delta t} = -I_d$ で、

$$\frac{\Delta I_d}{\Delta t} = \frac{Q_d}{LC}$$

これは $Q_d$ の振動方程式で、角振動数は $\omega_d = 1/\sqrt{LC}$:

答え (i)(j):
$$f_d = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}} = f_0$$ 差モード $Q_d$ の固有振動数はコイル3の影響を受けず、単独のLC回路と同じ $f_0$ に一致する。

$f_S = \frac{1}{2\pi\sqrt{(L + 2L_3)C}}$, $f_d = f_0$ より $f_S < f_d = f_0$($L_3 > 0$ のため)。

(k) 初期条件 $q_1 > 0$, $q_2 = -q_1$ の場合:

$Q_S(0) = q_1 + (-q_1) = 0$、$Q_d(0) = q_1 - (-q_1) = 2q_1$

和モードの振幅はゼロなので $Q_S(t) = 0$(常に)。差モードのみが振動します:

$$Q_d(t) = 2q_1\cos(2\pi f_d t) = 2q_1\cos(2\pi f_0 t)$$

したがって:

$$Q_1(t) = \frac{Q_S + Q_d}{2} = q_1\cos(2\pi f_0 t)$$ $$Q_2(t) = \frac{Q_S - Q_d}{2} = -q_1\cos(2\pi f_0 t)$$
答え (k):
$Q_S = f_S t$ を含む式で表すと:$Q_S(t) = 0$(振動しない)。
$Q_d(t) = 2q_1\cos(2\pi f_0 t)$ のみが振動する。
コイル3を電流が流れない($I_3 = I_1 + I_2 = 0$)ため、$L_3$ の影響がなく振動数は $f_0$。
Point

結合振動系には和モード($Q_S$, 振動数 $f_S$)と差モード($Q_d$, 振動数 $f_d = f_0$)の2つの固有モードがあります。一般の振動はこれらの重ね合わせで表され、$f_S \neq f_d$ のときうなりが生じます。

問2(l)〜(n) うなりと音の物理

直感的理解
2つの近い周波数の振動が重なると、振幅が周期的に増減するうなりが生じます。電気振動の場合、コンデンサーの電圧変動が振動板を駆動して音波を発生させます。$f_S$ と $f_d$ の両方が聞こえる場合と、うなりとして聞こえる場合があります。

(l) うなりの特徴:

電気振動を音に変換して聞いたとき、$f_S$ と $f_d$ が近い周波数であれば、うなり(beat)が聞こえます。

$f_S$ と $f_d$ について、$Q_1(t)$ を和積の公式で変形すると:

$$Q_1 = \frac{1}{2}[Q_S + Q_d] = \frac{q_1}{2}[\cos(2\pi f_S t) + \cos(2\pi f_0 t)]$$ $$= q_1\cos\left(\pi(f_0 - f_S)t\right)\cos\left(\pi(f_0 + f_S)t\right)$$

うなりの振動数(1秒あたりの振幅変動回数)は:

$$f_{\text{beat}} = |f_d - f_S| = |f_0 - f_S|$$

音の強弱の周波数 $f_{\text{beat}}$ と、音の高さを決める搬送周波数 $(f_0 + f_S)/2$ が分離されます。

答え (l):
音の強弱が周期的に変化する現象。この現象の名称はうなり(beat)。

(m) $q_1 > 0$, $q_2 = -q_1$ の場合の誘導起電力:

前問(k)で示したように、この初期条件では $Q_S = 0$(常に)で $I_3 = 0$(常に)です。したがってコイル3を流れる電流は常にゼロで、コイル3に生じる誘導起電力もゼロです。

答え (m):
コイル3の誘導起電力は常にゼロ。理由:$I_3 = I_1 + I_2 = 0$(対称性から常に成り立つ)なので $L_3\frac{dI_3}{dt} = 0$。

(n) 音の強さの比較:

$f_S$ と $f_d$ は、コンデンサー1の極板間の電位差に比例する大きさの音を発します。

また $q_1 > 0$, $q_2 = 0$, $L_3$ は $L$ より十分に小さいが $f_S$ と $f_d$ を分離できる程度の値とします。

$Q_1 = \frac{1}{2}[\cos(2\pi f_S t) + \cos(2\pi f_d t)]$ より、コンデンサー1の電圧は $V_1 = Q_1/C$ で、$f_S$ と $f_d$ の2つの成分が同じ振幅 $q_1/(2C)$ で含まれています。

したがって、$f_S$ の音と $f_d$ の音の強さは等しくなります。

答え (n):
$f_S$ の音と $f_d$ の音は同じ強さ(振幅が等しい)。
理由:$Q_1 = \frac{q_1}{2}\cos(2\pi f_S t) + \frac{q_1}{2}\cos(2\pi f_d t)$ より、両成分の振幅が $q_1/2$ で等しいため。
補足:うなりが聞こえる条件

人間の耳はおよそ 20 Hz 〜 20 kHz の範囲の音を聞くことができます。うなりとして認識されるには、$|f_S - f_d|$ が数 Hz 程度(通常 15 Hz 以下)である必要があります。

$f_S = \frac{1}{2\pi\sqrt{(L + 2L_3)C}}$ で $L_3 \ll L$ なら $f_S \fallingdotseq f_0(1 - L_3/L)$ と近似でき、うなりの振動数は $f_0 \cdot L_3/L$ 程度になります。

別解:固有モードの一般論

結合振動系の一般論では、対称モード(和モード)と反対称モード(差モード)に分解します:

  • 和モード:$Q_1 = Q_2$(両コンデンサーが同相で振動)。コイル3に電流が流れるので $L_3$ の影響あり。$f_S < f_0$。
  • 差モード:$Q_1 = -Q_2$(逆相で振動)。コイル3に電流が流れないので $L_3$ の影響なし。$f_d = f_0$。

任意の初期条件は2つのモードの線形結合で表せます:

$$Q_1(t) = A\cos(2\pi f_S t) + B\cos(2\pi f_d t)$$ $$Q_2(t) = A\cos(2\pi f_S t) - B\cos(2\pi f_d t)$$

初期条件 $Q_1(0) = q_1$, $Q_2(0) = q_2$ より $A = (q_1 + q_2)/2$, $B = (q_1 - q_2)/2$。

Point

結合振動の問題は、和と差の変数に分離するのが定石です。各モードは独立な単振動として解け、一般解は2つのモードの重ね合わせになります。この手法は力学の連成振動でも全く同じです。