斜面上を滑り下りる直方体について、(1)-(2)は基本的な力の分解と加速度、(3)-(6)は重心まわりの力のモーメントを使った転倒条件。後半(7)-(8)は板を貼り付けて重心位置が変わった場合の条件変化。
直方体の転倒問題では、下端の角(B点)まわりの力のモーメントを考える。重力・垂直抗力・摩擦力の3力のモーメントの符号で転倒するかどうかが決まる。
斜面に垂直な方向のつり合いから垂直抗力、斜面方向の運動方程式から加速度を求める。基本中の基本。
(1) 斜面に垂直な方向のつり合い:
$$ N = mg\cos\theta $$動摩擦力:
$$ f = \mu' N = \mu' mg\cos\theta $$(2) 斜面方向の運動方程式(下向きを正):
$$ ma = mg\sin\theta - \mu' mg\cos\theta $$ $$ a = g(\sin\theta - \mu'\cos\theta) $$(1) \(N = mg\cos\theta\), \(f = \mu' mg\cos\theta\)
(2) \(a = g(\sin\theta - \mu'\cos\theta)\)
斜面の問題は座標軸を斜面に沿って設定する。\(\sin\theta\) と \(\cos\theta\) の使い分けに注意。
加速度系(斜面と一緒に加速する座標系)で考えると、慣性力 \(ma\) が斜面上向きに作用する。重力・垂直抗力・摩擦力・慣性力の合力のモーメントが直方体を回転させるかどうかで転倒を判定する。
(3)〜(4):慣性力を含む力を斜面方向と垂直方向に分解し、重力の斜面平行成分と垂直成分を求める。
(5):重力と摩擦力の合力の作用線がB点を通る条件が転倒の境界。B点まわりのモーメントのつり合い:
$$ mg\sin\theta \times \frac{h}{2} = mg\cos\theta \times \frac{d}{2} $$ここで加速度系で考え、慣性力 \(ma\) を斜面上向きに加えると、実効的な力は重力の斜面成分から摩擦力を引いたもの。転倒の臨界角 \(P\) は:
$$ \tan P = \frac{d}{h} $$摩擦力による補正を含めた転倒条件:
$$ \mu' \geq \frac{d}{2h} $$(6):\(h/d\) がある値 \(\alpha\) を超えてはならない条件:
$$ \mu' < \alpha = \frac{d}{2h} $$(5) 合力の作用線がB点を通る角度 \(\tan P = d/h\)。
(6) 倒れずに滑る条件:\(\mu' < \frac{d}{2h}\)、すなわち \(\alpha = \frac{d}{2h}\)。
加速度 \(a\) で斜面を下る系では、重心に慣性力 \(ma\) が斜面上向きにかかる。B点まわりのモーメント:時計回り(転倒方向)は重力の斜面成分 \(mg\sin\theta\)×\(h/2\) と慣性力の \(ma\)×\(h/2\)。反時計回り(安定方向)は垂直抗力の腕 \(d/2\) の項。これらのバランスから転倒条件が導かれる。
転倒条件は「底面の端まわりのモーメント」で判定。\(\mu'\) が大きい(摩擦が強い)ほど転倒しやすい。
直方体に板を貼り付けると、合成系の重心位置が変わる。重心がB点の真上より外側に出ると転倒するため、新しい重心位置に応じて転倒条件の \(\alpha'\) が変わる。
(7):質量 \(M\) の直方体の重心Gは中心、質量 \(M'\) の板の重心はAD面上。合成重心 \(G'\) はGからAD面側にずれる。
$$ GG' = \frac{M' \times \frac{d}{2}}{M + M'} = \frac{M'd}{2(M + M')} $$(8):板を貼り付けることで重心がA側にずれるため、B点まわりの転倒モーメントが変化する。新しい転倒条件 \(\alpha'\) は:
$$ \alpha' = \frac{d - GG'}{2h} $$ここで \(GG'\) は上で求めた重心のずれ。板がない場合の \(\alpha = \frac{d}{2h}\) と比較して、\(\alpha' < \alpha\)(板を貼ると転倒しやすくなる)。
(7) \(GG' = \frac{M'd}{2(M + M')}\)
(8) \(\alpha'\) を求めよ。
B点まわりのモーメントの式を直接立てても同じ結果が得られる。板の重心に作用する重力のモーメントも加えればよい。
重心位置が変わると、転倒条件の臨界値 \(\alpha\) も変わる。重心が底面端に近いほど転倒しやすい。