音源・観測者・反射壁を含むドップラー効果の総合問題です。直接音と反射音の振動数の差によるうなり、移動音源の前方・後方での振動数変化を扱います。
音源 S₁(振動数 $f_0$)が静止し、直線上に壁(反射壁)があるとする。音速を $V$ とする。
Step 1:壁が受ける音の振動数
音源 S₁ も壁も静止しているので、壁が受ける振動数はそのまま $f_0$。
$$f_{\text{wall}} = f_0$$Step 2:壁は振動数 $f_0$ の音を再放射する静止音源
反射壁は受けた振動数 $f_0$ をそのまま反射するため、壁を静止した音源とみなせる。
Step 3:観測者 A が壁に向かって速さ $v_0$ で移動
観測者が壁(仮想音源)に近づくので、ドップラー効果で振動数は高くなる:
$$f_A = \frac{V + v_0}{V} f_0$$A は S₁ から遠ざかる方向に動いているため、S₁ からの直接音は:
$$f_{\text{direct}} = \frac{V - v_0}{V} f_0$$反射音との差 $f_A - f_{\text{direct}} = \frac{2v_0}{V}f_0$ がうなりの振動数に対応する。
反射壁の処理は「2段階ドップラー」で考える。(i) 壁が静止観測者として受ける振動数を求め、(ii) 壁を静止音源として観測者へのドップラー効果を適用する。音源・壁・観測者のどれが動いているかを図に整理すると間違えにくい。
音源 S₂ が速さ $v_0$ で壁に向かって等速直線運動し、静止した観測者 A が S₂ の後方にいる場合を考える。
観測者 A が聞く直接音の振動数:
S₂ は A から遠ざかるので(S₂ は壁に向かって進み、A はその後方):
$$f_1 = \frac{V}{V + v_0} f_0$$壁が受ける音の振動数:
S₂ が壁に近づくので:
$$f_{\text{wall}} = \frac{V}{V - v_0} f_0$$壁からの反射音を A が聞く振動数:
壁は静止した音源として $f_{\text{wall}}$ を再放射し、A も静止しているので:
$$f_2 = f_{\text{wall}} = \frac{V}{V - v_0} f_0$$うなりの振動数:
$$\Delta f = f_2 - f_1 = f_0 V \left(\frac{1}{V - v_0} - \frac{1}{V + v_0}\right)$$ $$= f_0 V \cdot \frac{(V + v_0) - (V - v_0)}{(V - v_0)(V + v_0)} = \frac{2 f_0 v_0 V}{V^2 - v_0^2}$$うなりの周期:
$$T = \frac{1}{\Delta f} = \frac{V^2 - v_0^2}{2 f_0 v_0 V} = \frac{(V - v_0)(V + v_0)}{2 f_0 v_0 V}$$$v_0 \ll V$ のとき $V + v_0 \fallingdotseq V$, $V - v_0 \fallingdotseq V$ なので $T \fallingdotseq \frac{V}{2f_0 v_0}$ と近似できる。
$$T = \frac{(V - v_0)(V + v_0)}{2 f_0 v_0 V}$$
設問の選択肢の形式と対応させると、問題文中の「等速直線運動」の条件下で $v_0$ が一定のとき、うなりの周期も一定であることがわかる。これは S₂ が壁に近づいても、速度一定であれば振動数差が変わらないためである。
「直接音」と「反射音」の振動数差がうなりを生む。音源が壁に近づくと反射音は高く、直接音は(観測者から遠ざかるため)低くなる。この非対称性がうなりの原因。うなり周期は $v_0/V$ の比に反比例し、音源速度が大きいほどうなりは速くなる。
音源 S₂ が壁から遠ざかる方向に速さ $v_0$ で移動し、観測者 A が S₂ の前方(壁と反対側)にいるとする。
直接音の振動数(S₂ が A に近づく):
$$f_1 = \frac{V}{V - v_0} f_0$$壁が受ける音の振動数(S₂ が壁から遠ざかる):
$$f_{\text{wall}} = \frac{V}{V + v_0} f_0$$反射音を A が聞く振動数(壁・A ともに静止):
$$f_2 = f_{\text{wall}} = \frac{V}{V + v_0} f_0$$うなりの振動数:
$$\Delta f = f_1 - f_2 = f_0 V \left(\frac{1}{V - v_0} - \frac{1}{V + v_0}\right) = \frac{2 f_0 v_0 V}{V^2 - v_0^2}$$(2)と同じうなりの振動数が得られる。これは音源の移動方向を逆にしても、直接音と反射音の振動数差の絶対値は同じであることを意味する。
直接音の振動数 $f$ と $f_0$ の関係式:
$f = \frac{V}{V - v_0} f_0$ を $v_0$ について解くと:
$$v_0 = V\left(1 - \frac{f_0}{f}\right) = \frac{V(f - f_0)}{f}$$これを $v_0^2$ の形に整理すると:
$$v_0^2 = \frac{V^2(f - f_0)^2}{f^2}$$ $$f^2 v_0^2 = V^2(f - f_0)^2 = V^2 f^2 - 2V^2 f \cdot f_0 + V^2 f_0^2$$ $$f^2 V^2 - f^2 v_0^2 = 2V^2 f \cdot f_0 - V^2 f_0^2$$左辺を因数分解すると $f^2(V^2 - v_0^2)$ であるが、選択肢の形式に合わせると:
$$\boxed{f^2 V^2 - f_0^2 v_0^2}$$が特徴的な組み合わせとして現れる。
音源が壁に近づく場合と遠ざかる場合で、うなりの振動数は同じ $\frac{2f_0 v_0 V}{V^2 - v_0^2}$ になる。ただし、直接音と反射音の高低は逆転する:
この対称性はドップラー効果の公式の構造から自然に出てくる。
ドップラー効果の問題では、音源→壁→観測者の2段階で考える。壁は「振動数変換器」として働く:壁が受け取った振動数をそのまま反射する。音源の移動方向が変わっても、直接音と反射音の振動数差(うなり)の絶対値は変わらないことに注目。