応用問題17 速度の分解

設問(1) 船の岸に対する速さ $v$

直感的理解
船は川幅方向(垂直)に $v_1$ で進むが、川の流れ $v_2$ で横に流されるため、実際は斜めに進みます。川幅30 mを渡るのは垂直方向の速度 $v_1$ だけの仕事です。実際の進路が川岸と30°の角をなすので、三角関数で各速度成分を求められます。上のシミュレーションで、船が流されながら対岸に到達する様子と速度ベクトルの関係を確認しましょう。

設定:

立式:

川幅方向の移動距離は垂直成分 $v_1$ のみで決まるので:

$$v_1 = \frac{d}{t} = \frac{30}{15} = 2.0 \text{ m/s}$$

実際の進行方向が川岸に対して $30°$ なので、速度の三角形より:

$$\sin 30° = \frac{v_1}{v} \quad \Rightarrow \quad v = \frac{v_1}{\sin 30°} = \frac{2.0}{0.50} = 4.0 \text{ m/s}$$
別解:実際の移動距離から求める方法

実際の進行方向は川岸に対して $30°$ なので、船が実際に移動した距離を $L$ とすると、川幅との関係は:

$$ \sin 30° = \frac{d}{L} \quad \Longrightarrow \quad L = \frac{d}{\sin 30°} = \frac{30}{0.5} = 60\,\text{m} $$

この距離を $t = 15\,\text{s}$ で移動したので:

$$ v = \frac{L}{t} = \frac{60}{15} = 4.0\,\text{m/s} $$

三角関数を使わず、移動距離と時間から直接求められる方法です。

答え:
$$ v = 4.0\,\text{m/s} $$
Point

川を横切る問題では、川幅方向の移動は静水上での速度成分だけで決まることを利用して、まず $v_1$ を求めるのが定石。合成速度 $v$ は三角関数の関係から逆算する。

設問(2) 船の静水上での速さ $v_1$

直感的理解
船の静水上での速さ $v_1$ は、川幅方向にまっすぐ進む速度成分です。川幅30 mを15秒で渡りきるので、$v_1 = 30 \div 15 = 2.0\,\text{m/s}$ と直接求まります。スライダーで $v_1$ を変えると、ドリフト角度と渡河時間がどう変わるか確かめてみましょう。$v_1 = 2.0$ のとき角度がちょうど $30°$ になります。

立式:

船首を川岸に垂直に向けているので、船の静水上での速さ $v_1$ はそのまま川幅方向の速度成分です。川幅と渡河時間から:

$$v_1 = \frac{d}{t} = \frac{30}{15} = 2.0 \text{ m/s}$$
答え:
$$ v_1 = 2.0\,\text{m/s} $$
Point

船首の向き=静水上での速度の向き。船首を川岸に垂直に向けているなら、静水上での速度はそのまま垂直成分になる。川幅と渡河時間から直接算出できる。

設問(3) 川の流れの速さ $v_2$

直感的理解
川の流れは船を横に流す力です。速度の直角三角形で、$v_1$(垂直)と $v_2$(水平)が直角をなし、$v$ が斜辺。$v$ と $v_1$ がわかれば、三平方の定理や三角関数で $v_2$ が求まります。「三平方の定理」ボタンで段階的に導出される過程を見てみましょう。

立式:

速度の直角三角形において、$v^2 = v_1^2 + v_2^2$ なので $v_2$ について解くと

$$v_2 = \sqrt{v^2 - v_1^2}$$

数値代入:$v = 4.0$ m/s、$v_1 = 2.0$ m/s を代入すると

$$v_2 = \sqrt{4.0^2 - 2.0^2} = \sqrt{16 - 4} = \sqrt{12} = 2\sqrt{3} \fallingdotseq 3.5 \text{ m/s}$$
別解:三平方の定理から求める方法

速度の直角三角形において $v^2 = v_1^2 + v_2^2$ が成り立つので:

$$ v_2 = \sqrt{v^2 - v_1^2} = \sqrt{4.0^2 - 2.0^2} = \sqrt{16 - 4} = \sqrt{12} = 2\sqrt{3}\,\text{m/s} $$

三角関数を使わず、三平方の定理だけで同じ結果が得られます。

補足:なぜ川の流れが船より速いのか

$v_2 = 2\sqrt{3} \fallingdotseq 3.5\,\text{m/s}$ は船の静水上での速さ $v_1 = 2.0\,\text{m/s}$ より大きいです。これは実際の進行方向が川岸からわずか $30°$ しか傾いていない(かなり流されている)ことと整合します。もし川の流れがなければ真っすぐ対岸に渡れるはずですが、$30°$ という浅い角度で流されるのは、川の流れがかなり強いことを示しています。

補足:速度の分解と力の分解

速度の分解は力の分解とまったく同じルールに従います。ベクトル量である速度を、直交する2方向に分けるのが基本です。川の問題では「川幅方向(垂直)」と「川岸方向(水平)」の2成分に分けることで、各方向の運動を独立に扱えます。力の合成・分解の考え方がそのまま速度にも適用できることを意識しておきましょう。

答え:
$$ v_2 = 2\sqrt{3} \fallingdotseq 3.5\,\text{m/s} $$
補足:エネルギー保存と散逸

摩擦がある場合は力学的エネルギーの一部が熱エネルギーに変わりますが、全エネルギー(力学的+熱)は保存されます。

Point

川を横切る問題では、速度の合成は直角三角形になる($v_1 \perp v_2$)。「川岸に対する角度」がどの角度かを正確に読み取り、$\sin$ と $\cos$ を間違えないことが重要。