設定:
立式:
等加速度直線運動の速度の式 $v = u + at$ を用います。前端がAを通過してから後端がAを通過するまでの時間が $t$ です。
式変形:$v = u + at$ を $t$ について解くと
$$v - u = at$$ $$t = \frac{v - u}{a}$$列車の通過問題では「前端の運動」に着目する。前端がA地点を通過してから後端がA地点を通過するまでの時間に、前端は列車の長さ分だけ移動する。速度変化は $v - u = at$ の関係で直結する。
立式:
等加速度直線運動の公式 $v^2 = u^2 + 2al$ を用います。前端の移動距離が列車の長さ $l$ に等しいので:
式変形:$v^2 = u^2 + 2al$ を $l$ について解くと
$$v^2 - u^2 = 2al$$ $$l = \frac{v^2 - u^2}{2a}$$設問(1)で求めた $t = \frac{v-u}{a}$ を使い、$l = ut + \frac{1}{2}at^2$ に代入しても同じ結果が得られます:
$$ l = u \cdot \frac{v-u}{a} + \frac{1}{2}a\left(\frac{v-u}{a}\right)^2 = \frac{u(v-u)}{a} + \frac{(v-u)^2}{2a} = \frac{2u(v-u) + (v-u)^2}{2a} = \frac{(v-u)(2u + v - u)}{2a} = \frac{(v-u)(v+u)}{2a} = \frac{v^2 - u^2}{2a} $$等加速度運動の平均速度は $\bar{v} = \dfrac{u+v}{2}$ です。列車の通過時間 $t = \dfrac{v-u}{a}$ を使うと:
$$ l = \bar{v} \times t = \frac{u+v}{2} \times \frac{v-u}{a} = \frac{(u+v)(v-u)}{2a} = \frac{v^2 - u^2}{2a} $$同じ結果を平均速度の考え方で確認できます。等加速度運動では平均速度が $\frac{u+v}{2}$ になることを知っていれば、暗算でも求められる便利な方法です。
$v^2 - u^2 = 2as$ は時間を含まない公式で、距離を直接求めたいときに有効。列車の通過問題では「前端の移動距離=列車の長さ」と読み替えることがカギ。
設定:
中点がA地点にあるとき、前端はAから $\dfrac{l}{2}$ だけ進んでいます。前端の速さを考えます。
立式:
$v'^2 = u^2 + 2a \cdot \frac{l}{2}$ に、設問(2)で求めた $l = \frac{v^2 - u^2}{2a}$ を代入します。
式変形:
$$v'^2 = u^2 + 2a \cdot \frac{l}{2} = u^2 + al$$$l = \dfrac{v^2 - u^2}{2a}$ を代入すると
$$v'^2 = u^2 + a \cdot \frac{v^2 - u^2}{2a} = u^2 + \frac{v^2 - u^2}{2} = \frac{2u^2 + v^2 - u^2}{2} = \frac{u^2 + v^2}{2}$$ $$v' = \sqrt{\frac{u^2 + v^2}{2}}$$等加速度運動において $v = u + at$ より $\dfrac{dv}{dt} = a$ なので、$dt = \dfrac{dv}{a}$ です。また $v = \dfrac{dx}{dt}$ より $dx = v\,dt = \dfrac{v}{a}\,dv$ が成り立ちます。
前端がA地点(速さ $u$)から $\dfrac{l}{2}$ だけ進んで中点がAに達したとき、前端の速さを $v'$ とすると:
$$ \int_0^{l/2} dx = \int_u^{v'} \frac{v}{a}\,dv $$ $$ \frac{l}{2} = \frac{1}{a}\left[\frac{v^2}{2}\right]_u^{v'} = \frac{v'^2 - u^2}{2a} $$ここで $l = \dfrac{v^2 - u^2}{2a}$ を代入すると:
$$ \frac{v^2 - u^2}{4a} = \frac{v'^2 - u^2}{2a} $$ $$ v'^2 - u^2 = \frac{v^2 - u^2}{2} \quad \Longrightarrow \quad v'^2 = u^2 + \frac{v^2 - u^2}{2} = \frac{u^2 + v^2}{2} $$ $$ v' = \sqrt{\frac{u^2 + v^2}{2}} $$微積分を使うと、速度と位置の関係を変数変換で直接結びつけることができます。
中点がA地点を通過する速さ $v' = \sqrt{\dfrac{u^2 + v^2}{2}}$ は、$u$ と $v$ の二乗平均平方根(RMS)です。一方、時間の中間点での速さは算術平均 $\bar{v} = \dfrac{u+v}{2}$ です。
二乗平均と算術平均の間には常に次の不等式が成り立ちます(等号は $u = v$ のとき):
$$ v' = \sqrt{\frac{u^2 + v^2}{2}} \geq \frac{u+v}{2} = \bar{v} $$物理的意味:加速中の列車は後半ほど速いため、距離の中間点に到達するのは時間の中間点より早く、その時点での速さは算術平均よりも大きくなります。「距離の中間点」と「時間の中間点」を区別することが重要です。
この問題では「A地点を通過する」と「列車の長さ $l$ を通過する」という2つの概念が混在しています。
いずれも前端の運動に着目して、前端の移動距離と等加速度の公式を組み合わせるのがポイントです。「どの部分がどの地点を通過するか」を正確に把握しましょう。
距離の中間点での速さは $v' = \sqrt{\frac{u^2 + v^2}{2}}$(二乗平均平方根)。時間の中間点での速さ $\frac{u+v}{2}$(算術平均)とは異なる。この違いは等加速度運動の頻出テーマ。
計算結果の単位が正しいか確認する習慣をつけましょう。速度なら [m/s]、加速度なら [m/s²] になるはずです。数式の両辺で単位が一致するか(次元解析)を確認すると、立式ミスを防げます。
列車の前端の速さを \(u = 10\) m/s、後端の速さを \(v = 20\) m/s、加速度を \(a = 1.5\) m/s² として、各設問の値を実際に計算する。
(1) 通過時間 \(t\):
$$ t = \frac{v - u}{a} = \frac{20 - 10}{1.5} \fallingdotseq 6.7 \text{ s} $$(2) 列車の長さ \(l\)(前端がAから後端がAまで進む距離):
$$ l = \frac{v^2 - u^2}{2a} = \frac{20^2 - 10^2}{2 \times 1.5} = \frac{400 - 100}{3.0} = 100 \text{ m} $$(3) 列車の中央がAを通る瞬間の速さ \(v'\)(距離中点):
$$ v' = \sqrt{\frac{u^2 + v^2}{2}} = \sqrt{\frac{10^2 + 20^2}{2}} = \sqrt{\frac{500}{2}} = \sqrt{250} \fallingdotseq 15.8 \text{ m/s} $$これは時間の中間点での速さ \((u+v)/2 = 15\) m/s とは異なることに注意(等加速度運動では距離中点の速さの方が時間中点よりわずかに大きい)。