基本問題55 滑車を含むつりあい

斜面上の物体と滑車のつりあい

直感的理解
定滑車は力の向きを変えるだけで、大きさは変えません(糸の張力は一定)。力をどの方向から加えるかで、つりあいの式の立て方が変わります。(1) 斜面平行なら重力の斜面成分だけ、(2) 水平なら水平・鉛直の2方向で式を立てます。

(1) 斜面に平行な方向に力を加えたとき

定滑車を使って斜面に沿って引き上げるので、糸の張力 $F$ は斜面方向です。重力を斜面平行・垂直に分解します。

斜面方向のつりあい(斜面上向き正):

$$ F = mg\sin 30° = mg \times \frac{1}{2} = \frac{mg}{2} $$

垂直方向のつりあい(斜面から離れる向き正):

$$ N = mg\cos 30° = mg \times \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{\sqrt{3}}{2}\,mg $$

(2) 水平方向に力を加えたとき

水平方向に引くので、3力(重力 $mg$、垂直抗力 $N$、水平力 $F$)を水平・鉛直方向に分解してつりあいの式を立てます。

水平方向のつりあい:水平力 $F$ と垂直抗力の水平成分 $N\sin 30°$ がつりあいます。

$$ F = N\sin 30° \quad \cdots (1) $$

鉛直方向のつりあい:垂直抗力の鉛直成分 $N\cos 30°$ が重力 $mg$ とつりあいます。

$$ N\cos 30° = mg \quad \cdots (2) $$

(2)より $N$ を求めます:

$$ N = \frac{mg}{\cos 30°} = \frac{mg}{\;\dfrac{\sqrt{3}}{2}\;} = \frac{2mg}{\sqrt{3}} = \frac{2\sqrt{3}}{3}\,mg $$

(1)に代入して $F$ を求めます:

$$ F = N\sin 30° = \frac{2\sqrt{3}}{3}\,mg \times \frac{1}{2} = \frac{\sqrt{3}}{3}\,mg = mg\tan 30° $$
答え:
(1) $F = \dfrac{mg}{2}$, $\;N = \dfrac{\sqrt{3}}{2}\,mg$

(2) $F = \dfrac{\sqrt{3}}{3}\,mg = mg\tan 30°$, $\;N = \dfrac{2\sqrt{3}}{3}\,mg = \dfrac{mg}{\cos 30°}$
補足:(1) と (2) の比較

水平方向に引く場合 (2) の方が $F$ は小さくなります($\frac{1}{\sqrt{3}} < \frac{1}{2}$...ではなく $\frac{1}{\sqrt{3}} \fallingdotseq 0.577 > 0.5$)。実は水平に引く方が大きな力が必要で、垂直抗力も大きくなります。これは水平力には斜面を押し付ける成分があるためです。

Point

定滑車は力の向きを変えるだけ。加える力の方向によってつりあいの式が変わる。斜面平行なら $F = mg\sin\theta$、水平なら $F = mg\tan\theta$。

具体的な数値で確認

物体の質量を \(m = 2.0\) kg、斜面の角度 \(\theta = 30°\)、重力加速度 \(g = 9.8\) m/s² として各値を計算する。

重力の大きさ:

$$ mg = 2.0 \times 9.8 = 19.6 \text{ N} $$

(1) 糸を斜面に平行に引く場合:糸の張力 \(F\) は重力の斜面平行成分と等しい。垂直抗力 \(N\) は重力の斜面垂直成分と等しい。

$$ F = mg \sin 30° = 19.6 \times \frac{1}{2} = 9.8 \text{ N} $$ $$ N = mg \cos 30° = 19.6 \times \frac{\sqrt{3}}{2} \fallingdotseq 17.0 \text{ N} $$

(2) 糸を水平に引く場合:水平・鉛直方向のつりあいから \(F = mg\tan 30°\)、\(N = mg/\cos 30°\)。

$$ F = mg \tan 30° = 19.6 \times \frac{1}{\sqrt{3}} \fallingdotseq 11.3 \text{ N} $$ $$ N = \frac{mg}{\cos 30°} = \frac{19.6}{\sqrt{3}/2} \fallingdotseq 22.6 \text{ N} $$

水平に引く方が \(F\) も \(N\) も大きくなる(水平力には斜面を押し付ける成分があるため)。