応用問題93 浮力

設問(1) 浮力と重力の関係

直感的理解
液中に沈めたおもりは、上向きの浮力と張力、下向きの重力の3力でつりあいます。浮力はおもりが排除した液体の重さ $\rho L^3 g$ です。台ばかりが増加分を示すのは、おもりが液体を押し下げる力(浮力の反作用)が加わるためです。

浮力:おもり(一辺 $L$ の立方体)が排除した液体の重さに等しいので

$$F = \rho L^3 g$$

おもりのつりあい:上向きに浮力 $F$ と張力 $T$、下向きに重力 $mg$ がはたらくので

$$T + F = mg \quad \Rightarrow \quad T = mg - \rho L^3 g$$

数値例:$\rho = 1000$ kg/m³(水)、$L = 0.10$ m、$m = 5.0$ kg、$g = 9.8$ m/s² のとき

$$F = 1000 \times 0.10^3 \times 9.8 = 1000 \times 0.001 \times 9.8 = 9.8 \;\text{[N]}$$ $$mg = 5.0 \times 9.8 = 49.0 \;\text{[N]}$$ $$T = 49.0 - 9.8 = 39.2 \;\text{[N]}$$
答え:
浮力:$F = \rho L^3 g$
重力:$mg$
張力:$T = mg - \rho L^3 g$
Point

浮力の大きさは物体の体積液体の密度で決まる。物体の密度は浮力には直接関係しない。

設問(2) 手が糸を引っ張っている力

直感的理解
糸を引く力は、おもりの「見かけの重さ」(水中での重さ)に等しいです。浮力が重力の一部を打ち消すので、手で支える力は空気中より小さくなります。

答え:設問(1) で求めた張力と同じです。

$$T = mg - \rho L^3 g = (m - \rho L^3)g$$

数値例(続き):$T = (5.0 - 1000 \times 0.001) \times 9.8 = (5.0 - 1.0) \times 9.8 = 39.2$ N

答え:
$$T = (m - \rho L^3)g\;\text{[N]}$$
Point

液体中での見かけの重さ = 真の重さ $-$ 浮力。これが張力の大きさになる。

設問(3) 台ばかりが示す質量

直感的理解
おもりを液中に沈めると、浮力の反作用が液体を通じて容器を押し下げます。台ばかりは「容器+液体の重さ」に加え、「浮力の反作用 $\rho L^3 g$」も測定します。つまり、おもりの分だけ余計に重くなるのではなく、浮力分だけ余計に重くなります。

台ばかりが支える力:容器+液体系にはたらく力のつりあいを考えます。

容器+液体系にはたらく力(鉛直方向):

つりあいの式:

$$R = (M_0 + \rho V)g + \rho L^3 g = (M_0 + \rho V + \rho L^3)g$$

台ばかりの示す質量は $R/g$ なので

$$\frac{R}{g} = M_0 + \rho V + \rho L^3 \;\text{[kg]}$$

数値例:容器の質量 $M_0 = 0.50$ kg、液体の体積 $V = 3.0 \times 10^{-3}$ m³、$\rho = 1000$ kg/m³、$L = 0.10$ m のとき

$$\rho V = 1000 \times 3.0 \times 10^{-3} = 3.0 \;\text{[kg]}$$ $$\rho L^3 = 1000 \times 0.001 = 1.0 \;\text{[kg]}$$ $$\text{台ばかりの示す質量} = 0.50 + 3.0 + 1.0 = 4.5 \;\text{[kg]}$$

(おもりを沈める前は $0.50 + 3.0 = 3.5$ kg なので、$\rho L^3 = 1.0$ kg 分だけ増加)

答え:
台ばかりが示す質量(容器の質量を $M_0$ [kg] とすると): $$M_0 + \rho V + \rho L^3 \;\text{[kg]}$$
補足:全体系で考える方法

系全体(容器+液体+おもり)に着目すると:

  • 下向き:全体の重力 $= (M_0 + \rho V + m)g$
  • 上向き:台ばかりの抗力 $R$ + 手が引く力 $T$
$$R + T = (M_0 + \rho V + m)g$$ $$R = (M_0 + \rho V + m)g - T = (M_0 + \rho V + m)g - (m - \rho L^3)g$$ $$R = (M_0 + \rho V + \rho L^3)g$$

結果は同じ。全体系で考えると見通しが良い。

Point

液体中に物体を沈めると、台ばかりの示す値は浮力の反作用分 $\rho L^3 g$ だけ増加する。全系のつりあいで考えると一発で求まる。