斜面座標での力の整理:
重心Gまわりの力のモーメントのつりあい:
垂直抗力 $N$ の作用点をOから距離 $d$ の位置、重心Gは底面の中心(Oから $b/2$)にあります。Gまわりのモーメントを考えると、$N$ のモーメント腕は $(d - b/2)$、摩擦力 $F$ のモーメント腕は $a/2$(重心の高さ)です。
つりあいの式:
$$N\left(d - \frac{b}{2}\right) = F \cdot \frac{a}{2}$$$N = mg\cos\theta$、$F = mg\sin\theta$ を代入:
$$mg\cos\theta\left(d - \frac{b}{2}\right) = mg\sin\theta \cdot \frac{a}{2}$$ $$d - \frac{b}{2} = \frac{a\tan\theta}{2}$$ $$d = \frac{b}{2} + \frac{a\tan\theta}{2} = \frac{b + a\tan\theta}{2}$$数値例:$a = 0.40$ m、$b = 0.20$ m、$\theta = 30°$ のとき:
$$d = \frac{0.20 + 0.40 \times \tan 30°}{2} = \frac{0.20 + 0.40 \times 0.577}{2} = \frac{0.20 + 0.231}{2} = 0.216 \text{ m}$$斜面上の剛体は重心まわりのモーメントのつりあいで垂直抗力の作用点を求める。$\theta$ が大きくなるとNの作用点は下端Oの方から上端へ移動する。
傾き始める条件: $d = b$(垂直抗力の作用点が上端に達する)
$$(1)の結果に d = b を代入:\quad \frac{b + a\tan\theta}{2} = b$$ $$b + a\tan\theta = 2b \quad \Rightarrow \quad a\tan\theta = b$$ $$\tan\theta = \frac{b}{a}$$$\theta$ がこの値を超えると物体は傾きます。一方、すべりだす条件は摩擦力が最大静止摩擦力に達するときで $mg\sin\theta = \mu mg\cos\theta$、すなわち $\tan\theta = \mu$。
すべりだすより先に倒れるためには、傾く臨界角がすべる臨界角より小さい必要があります:
$$\frac{b}{a} < \mu$$このとき $\tan\theta$ が $b/a$ を超えた瞬間(まだ $\mu$ に達する前に)倒れ始めます。
数値例:$a = 0.40$ m、$b = 0.20$ m のとき、傾く臨界条件は $\tan\theta = 0.20/0.40 = 0.50$($\theta = 26.6°$)。$\mu = 0.60$ なら $0.50 < 0.60$ なので、すべりより先に傾きます。
倒れるより先にすべりだす条件は、すべる臨界角($\tan\theta = \mu$)が傾く臨界角($\tan\theta = b/a$)より小さいこと:
$$\mu < \frac{b}{a}$$数値例:$a = 0.40$ m、$b = 0.20$ m のとき $b/a = 0.50$。$\mu = 0.30$ なら $0.30 < 0.50$ を満たすので、$\theta$ を大きくしていくと $\theta = \arctan(0.30) = 16.7°$ で先にすべりだします。$\mu = 0.60$ なら $0.60 > 0.50$ なのでこの条件は満たされず、先に傾きます。
斜面上の直方体には2つの臨界角があります:
| 現象 | 臨界条件 | 決定要因 |
|---|---|---|
| すべり | $\tan\theta = \mu$ | 摩擦係数のみ |
| 傾き | $\tan\theta = b/a$ | 形状のみ |
$\mu > b/a$(摩擦が大きい)→ 先に傾く(縦長の物体ほど倒れやすい)
$\mu < b/a$(摩擦が小さい)→ 先にすべる(横長の物体ほどすべりやすい)
$\mu = b/a$ のとき、すべりと傾きが同時に起きます。
斜面上の直方体は、すべり($\tan\theta = \mu$)と傾き($\tan\theta = b/a$)の2つの臨界角を比較して、小さい方が先に起きる。すべりは摩擦係数で、傾きは形状で決まる。