設定:質量 $m$、幅 $w$、高さ $h$ の一様な直方体を傾き角 $\theta$ の斜面上に置く。重力加速度を $g$ とする。
傾く条件の導出:
直方体が倒れ始める瞬間は、重力の作用線が底面の下端の角 P を通るとき。
重心 G は直方体の中心にあるので、P を原点として斜面に沿う方向と垂直方向で考えると:
P まわりのモーメント:
重力 $mg$ を斜面に平行な成分 $mg\sin\theta$ と垂直な成分 $mg\cos\theta$ に分解する。
傾かない条件:戻すモーメント $\geq$ 倒すモーメント
$$mg\cos\theta \times \frac{w}{2} \geq mg\sin\theta \times \frac{h}{2}$$両辺を $\dfrac{mg}{2}$ で割ると:
$$w\cos\theta \geq h\sin\theta$$ $$\frac{\sin\theta}{\cos\theta} \leq \frac{w}{h}$$具体的な数値例:$w = 0.20$ m、$h = 0.60$ m の直方体の場合
$$\tan\theta \leq \frac{0.20}{0.60} = \frac{1}{3} \fallingdotseq 0.333$$ $$\theta \leq \arctan\!\left(\frac{1}{3}\right) \fallingdotseq 18.4°$$つまり、斜面の角度が約 $18.4°$ を超えると倒れ始めます。
静止摩擦係数 $\mu = 0.50$ のとき、すべる条件は $\tan\theta > \mu = 0.50$($\theta > 26.6°$)なので、この物体はすべるより先に倒れます($0.333 < 0.50$)。
重心 G を通る鉛直線が底面内を通れば物体は安定。鉛直線が底面の下端 P を通る臨界角度を求める。
重心は底面の中心から高さ $h/2$ にある。この重心を通る鉛直線が底面の端 P に達する角度を $\theta_c$ とすると:
$$\tan\theta_c = \frac{w/2}{h/2} = \frac{w}{h}$$$\theta < \theta_c$ なら鉛直線は底面内 → 安定
$\theta > \theta_c$ なら鉛直線は底面外 → 転倒
よって傾かない条件は $\tan\theta \leq w/h$。
斜面上の物体には「倒れる」と「すべる」の2つの不安定化がありえます。
どちらが先に起こるかは $w/h$ と $\mu$ の大小関係で決まります。
転倒条件:斜面上の物体が倒れない条件は $\tan\theta \leq w/h$。背が高い($h$ が大きい)ほど、また幅が狭い($w$ が小さい)ほど倒れやすい。転倒とすべりのどちらが先に起こるかは $w/h$ と $\mu$ の比較で決まる。