基本例題19 棒のつりあい

棒のつりあいの解法

直感的理解
棒のつりあいでは、「回転しない」条件(力のモーメントのつりあい)が決め手です。未知の力が多い点(ここではA端)を回転軸に選ぶと、その点にはたらく力のモーメントが0になり、未知数が減って式が簡単になります。Pをドラッグして、おもりの位置が変わると張力がどう変化するか確認しましょう。

設定:長さ $l$ の軽い棒。A端は鉛直の壁面にあり、B端と壁面の点Cを糸で結ぶ。Aから距離 $d$ の点Pに質量 $m$ のおもりを吊るす。棒は水平、糸は棒と30度。

Step 1:力の整理

棒にはたらく力は以下の4つ:

Step 2:A点まわりの力のモーメントのつりあい

A点を回転軸に選ぶと、$F$ と $N$ のモーメントは0になります。反時計回りを正として、$mg$ は時計回り(負)、$T$ の鉛直成分 $T\sin 30°$ は反時計回り(正)です:

$$T \sin 30° \times l = mg \times d \quad \Rightarrow \quad T \times \frac{1}{2} \times l = mgd$$ $$T = \frac{2mgd}{l}$$

Step 3:鉛直方向の力のつりあい

上向きを正として、摩擦力 $F$ と張力の鉛直成分 $T\sin 30°$ が重力 $mg$ とつりあいます:

$$F + T\sin 30° = mg \quad \Rightarrow \quad F = mg - \frac{T}{2} = mg - \frac{mgd}{l} = mg\!\left(1 - \frac{d}{l}\right)$$

Step 4:水平方向の力のつりあい

壁からの垂直抗力 $N$ と張力の水平成分 $T\cos 30°$ がつりあいます:

$$N = T\cos 30° = \frac{2mgd}{l} \times \frac{\sqrt{3}}{2} = \frac{\sqrt{3}\,mgd}{l}$$
答え:
$$T = \frac{2mgd}{l}, \quad F = mg\!\left(1 - \frac{d}{l}\right), \quad N = \frac{\sqrt{3}\,mgd}{l}$$
数値検証:具体的な値を代入して確認

$m = 2.0$ kg、$l = 1.2$ m、$d = 0.80$ m、$g = 9.8$ m/s² のとき:

$$T = \frac{2 \times 2.0 \times 9.8 \times 0.80}{1.2} = \frac{31.36}{1.2} = 26.1 \text{ N}$$ $$F = 2.0 \times 9.8 \times \!\left(1 - \frac{0.80}{1.2}\right) = 19.6 \times \frac{1}{3} = 6.53 \text{ N}$$ $$N = \frac{\sqrt{3} \times 2.0 \times 9.8 \times 0.80}{1.2} = \frac{1.732 \times 15.68}{1.2} = 22.6 \text{ N}$$

検算:鉛直方向 $F + T\sin 30° = 6.53 + 13.1 = 19.6 = mg$ ✓

補足:回転軸の選び方

回転軸はどこに取っても結果は同じですが、未知の力が2つ以上はたらく点を選ぶと、その力のモーメントが0になり計算が楽になります。

この問題ではA点に $F$ と $N$ の2つの未知の力がはたらいているので、A点を回転軸に選ぶのが最も効率的です。

もしB点を回転軸にすると、$T$ のモーメントが0になりますが、$F$ と $N$ の両方が残るため、モーメントの式だけでは1つの未知数しか消せません。

Point

剛体のつりあいでは、(1) 力のベクトルの和 = 0(水平・鉛直)、(2) 任意の点まわりの力のモーメントの和 = 0、の3式を立てる。回転軸は未知の力が多い点に選ぶと計算が簡潔になる。