基本問題123 保存力以外の力の仕事

ばねと摩擦がある系の運動

直感的理解
ばねの弾性エネルギーが物体の運動エネルギーに変わり、あらい面を通過する間に摩擦力が負の仕事をして物体が停止します。全エネルギーの行き先を追えば、停止位置が分かります。

設定:点 A を基準にばねを $x_0$ だけ圧縮して物体を放す。A から B まではなめらか、B 以降は動摩擦係数 $\mu'$ のあらい水平面。物体は B を通過して距離 $d$ で停止。

(1) ばねを離す → B に到達

A → B はなめらかなので力学的エネルギー保存(ばねの弾性エネルギー → 運動エネルギー):

$$\frac{1}{2}kx_0^2 = \frac{1}{2}mv_B^2$$ $$v_B = x_0\sqrt{\frac{k}{m}}$$

(2) B → 停止点

B 以降は摩擦力 $f = \mu' mg$ が運動と逆向きに作用。距離 $d$ で停止:

$$\frac{1}{2}mv_B^2 = \mu' mg \cdot d$$

(3) 全体のエネルギー関係

A → 停止点でまとめると、弾性エネルギー = 摩擦熱:

$$\frac{1}{2}kx_0^2 = \mu' mg \cdot d$$ $$d = \frac{kx_0^2}{2\mu' mg}$$
答え:
B での速さ:$v_B = x_0\sqrt{k/m}$
停止距離:$d = \dfrac{kx_0^2}{2\mu' mg}$
補足:力の見落とし防止チェックリスト

力を列挙する際は、①重力 ②垂直抗力 ③張力 ④摩擦力 ⑤弾性力 の順に確認し、接触力と遠隔力を分けて図示すると見落としを防げます。

Point

非保存力の仕事:弾性エネルギー = 摩擦による熱エネルギー、つまり $\frac{1}{2}kx^2 = \mu' mg \cdot d$。始状態と終状態の力学的エネルギーの差が非保存力の仕事に等しい。

具体的な数値で確認

物体の質量 \(m = 0.20\) kg、ばね定数 \(k = 50\) N/m、ばねの初期縮み \(x_0 = 0.10\) m、動摩擦係数 \(\mu' = 0.25\)、重力加速度 \(g = 9.8\) m/s² として計算する。

(1) ばねが自然長に戻る瞬間(=ばねから離れる点B)の速さ \(v_B\):弾性エネルギーが運動エネルギーに変わる(ばねの区間はなめらかと仮定)。

$$ \tfrac{1}{2} k x_0^2 = \tfrac{1}{2} m v_B^2 $$ $$ v_B = x_0 \sqrt{\frac{k}{m}} = 0.10 \times \sqrt{\frac{50}{0.20}} = 0.10 \times \sqrt{250} \fallingdotseq 1.58 \text{ m/s} $$

(2) Bからあらい面に入り、停止するまでの距離 \(d\):摩擦力 \(\mu' m g\) が物体の運動エネルギーをすべて熱に変える。

$$ \tfrac{1}{2} m v_B^2 = \mu' m g \cdot d $$ $$ d = \frac{v_B^2}{2 \mu' g} = \frac{1.58^2}{2 \times 0.25 \times 9.8} = \frac{2.5}{4.9} \fallingdotseq 0.51 \text{ m} $$

または初期の弾性エネルギーから直接:

$$ d = \frac{k x_0^2}{2 \mu' m g} = \frac{50 \times 0.10^2}{2 \times 0.25 \times 0.20 \times 9.8} \fallingdotseq 0.51 \text{ m} $$