基本問題135 動く板の上での物体の運動

設問(1) 小物体の加速度

直感的理解
小物体は板から動摩擦力(逆向き)を受けて減速します。床がなめらかなので、物体に働く水平方向の力は板からの摩擦力だけです。

立式:小物体に対して運動方程式を立てます。初速の向きを正とすると、動摩擦力は進行方向と逆向きに \(\mu' mg\) です。

$$ma = -\mu' mg$$

途中計算:両辺を \(m\) で割ると

$$a = -\mu' g$$

負号は初速の向きと逆向き(減速)を意味します。

答え:
$$a_{\text{物体}} = -\mu' g \quad \text{(大きさ } \mu' g \text{、初速と逆向き)}$$
Point

動摩擦力は常に相対運動の逆向きに働きます。小物体は板に対して前方に滑っているので、摩擦力は後ろ向きです。

設問(2) 板の加速度

直感的理解
板は小物体から作用・反作用で摩擦力(前向き)を受けます。床はなめらかなので、この力だけが板を加速させます。

立式:板に対する運動方程式。作用反作用の法則より、板は小物体から \(\mu' mg\) の摩擦力を前向き(正の向き)に受けます。

$$MA = \mu' mg$$

途中計算:両辺を \(M\) で割ると

$$A = \frac{\mu' mg}{M}$$
答え:
$$A_{\text{板}} = \frac{\mu' mg}{M} \quad \text{(小物体の初速と同じ向き)}$$
Point

作用反作用の法則:物体が板から受ける摩擦力と、板が物体から受ける摩擦力は大きさ等しく逆向き。

設問(3) 小物体が板に対して静止するまでの時間

直感的理解
小物体は減速し、板は加速します。やがて両者の速度が一致した瞬間に相対運動が止まり、摩擦力も消えます。v-tグラフで2本の直線が交わる点がその瞬間です。

立式:物体の速度 \(v_0 - \mu' g t\) と板の速度 \(\dfrac{\mu' mg}{M} t\) が等しくなる時刻 \(t_0\) を求めます。

$$v_0 - \mu' g \, t_0 = \frac{\mu' mg}{M} \, t_0$$

途中計算:\(t_0\) を含む項をまとめると

$$v_0 = \mu' g \, t_0 + \frac{\mu' mg}{M} \, t_0 = \mu' g \, t_0 \left(1 + \frac{m}{M}\right) = \frac{\mu' g \, t_0 (m + M)}{M}$$ $$t_0 = \frac{Mv_0}{\mu' g(m + M)}$$
答え:
$$t_0 = \frac{Mv_0}{\mu' g(m + M)}$$
Point

「板に対して静止する」=「両者の速度が一致する」。2つの速度式を等号で結びます。

設問(4) そのときの速さ \(V\)

直感的理解
床がなめらかなので水平方向の外力がゼロ。よって系全体の運動量が保存します。最終的に一体となって動くので、運動量保存則から共通速度 \(V\) が一発で求まります。

方法1:運動量保存則

水平方向の外力がゼロなので系全体の運動量が保存されます。初めは小物体のみ運動していたので:

$$mv_0 + M \times 0 = (m + M)V$$

途中計算:

$$V = \frac{mv_0}{m + M}$$
答え:
$$V = \frac{mv_0}{m + M}$$
別解:速度式への代入

板の速度に \(t_0\) を代入しても同じ結果が得られます。

$$V = \frac{\mu' mg}{M} \cdot \frac{Mv_0}{\mu' g(m + M)} = \frac{mv_0}{m + M}$$
Point

外力なしの系では運動量が保存します。最終速度は運動量保存から直接求めるのが最も簡潔です。

数値例で確認

上で導いた結果に具体的な数値を代入し、計算の流れを確認します。

\(m = 1.0\) kg, \(M = 3.0\) kg, \(v_0 = 4.0\) m/s とすると:

$$V = \frac{mv_0}{m+M} = \frac{1.0 \times 4.0}{4.0} = 1.0 \text{ m/s}$$ $$\Delta p_m = m(V - v_0) = 1.0 \times (1.0 - 4.0) = -3.0 \text{ kg·m/s}$$ $$\Delta K = \frac{1}{2}(m+M)V^2 - \frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}\times 4.0 \times 1.0^2 - \frac{1}{2}\times 1.0 \times 16 = -6.0 \text{ J}$$
Point

記号の式に具体的な数値を代入することで、オーダー (桁) と単位を同時に検算できる。入試でも概数での検算は有効。