基本問題137 運動量の保存と相対速度

設問(1) 船Aの速度

直感的理解
人が船の上で後ろに歩くと、反作用で船は前に進みます。これはロケットの原理と同じです。「船に対する速度」と「地面に対する速度」を混同しないことが鍵です。

設定:船Aに対する人の速度を \(v_r\) [m/s](船尾向きを負)とします。右向きを正として、地面に対する船Aの速度を \(v_A\)、人の速度を \(v_{\text{人}}\) とおきます。

2つの式:

(i) 運動量保存則(初め全体が静止):

$$m_{\text{人}} v_{\text{人}} + m \, v_A = 0 \quad \cdots (1)$$

(ii) 相対速度の関係(船に対する人の速度が \(v_r\)):

$$v_{\text{人}} - v_A = v_r \quad \cdots (2)$$

途中計算:式(2)より \(v_{\text{人}} = v_r + v_A\) を式(1)に代入:

$$m_{\text{人}}(v_r + v_A) + m \, v_A = 0$$ $$m_{\text{人}} v_r + (m_{\text{人}} + m) v_A = 0$$ $$v_A = -\frac{m_{\text{人}} v_r}{m_{\text{人}} + m}$$
答え:
$$v_A = -\frac{m_{\text{人}} v_r}{m_{\text{人}} + m}$$

(人が船尾向きに歩けば \(v_r < 0\) なので、\(v_A > 0\):船は前進する)

Point

「〜に対する速度」は相対速度。地面基準の速度に変換してから運動量保存則を立てます。

設問(2) 地面に対する人の速度

直感的理解
スライダーで質量比を変えてみましょう。船が非常に重いと人はほぼ船に対する速度で動きます(船が動かない)。船が軽いと人はほとんど動かず船が飛んでいきます。

立式:相対速度の式(2)から

$$v_{\text{人}} = v_r + v_A$$

途中計算:設問(1)の結果を代入すると

$$v_{\text{人}} = v_r + \left(-\frac{m_{\text{人}} v_r}{m_{\text{人}} + m}\right) = v_r \left(1 - \frac{m_{\text{人}}}{m_{\text{人}} + m}\right) = \frac{m \cdot v_r}{m_{\text{人}} + m}$$
答え:
$$v_{\text{人}} = \frac{m \cdot v_r}{m_{\text{人}} + m}$$
補足:反発係数との関係

反発係数 $e$ の定義は:

$$e = -\frac{v_1^{\prime} - v_2^{\prime}}{v_1 - v_2}$$

完全弾性衝突($e = 1$)では運動エネルギーも保存されます。

Point

相対速度と運動量保存の連立で「地面に対する速度」を求めます。相対速度 \(v_r\) は問題文で与えられる「〜に対する速度」です。