基本問題143 弾性衝突と完全非弾性衝突

設問(ア) 弾性衝突 (\(e = 1\))

直感的理解
等質量の弾性衝突では「速度が交換」されます。ビリヤードで手玉が止まり的玉が飛んでいくのがまさにこれ。運動エネルギーも完全に保存されます。

立式:等質量 $m = m$、$e = 1$ の公式に代入:

$$v_A' = \frac{m - 1 \cdot m}{m + m} v_0 = \frac{0}{2m} v_0 = 0$$ $$v_B' = \frac{(1 + 1)m}{m + m} v_0 = \frac{2m}{2m} v_0 = v_0$$
答え:
$$v_A' = 0 \text{(Aは停止)}, \quad v_B' = v_0 \text{(BがAの速度を引き継ぐ)}$$
Point

等質量の弾性衝突では速度が完全に入れ替わる。これはニュートンのゆりかごの原理です。

設問(イ) 完全非弾性衝突 (\(e = 0\))

直感的理解
完全非弾性衝突ではくっついて一体になります。運動量は保存されますが、運動エネルギーの一部は熱や音に変わります。等質量なら速度は半分に、エネルギーは半分失われます。

立式:$e = 0$ なので衝突後の相対速度 = 0(一体化)。運動量保存:

$$mv_0 = (m + m)V = 2mV$$ $$V = \frac{v_0}{2}$$

エネルギー損失:

$$\Delta K = \frac{1}{2}mv_0^2 - \frac{1}{2}(2m)\!\left(\frac{v_0}{2}\right)^2 = \frac{mv_0^2}{2} - \frac{2m \cdot v_0^2}{2 \times 4} = \frac{mv_0^2}{2} - \frac{mv_0^2}{4} = \frac{mv_0^2}{4}$$
答え:
$$V = \frac{v_0}{2}, \quad \Delta K = \frac{1}{4}mv_0^2 \text{(全エネルギーの50%が損失)}$$
補足:力の見落とし防止チェックリスト

力を列挙する際は、①重力 ②垂直抗力 ③張力 ④摩擦力 ⑤弾性力 の順に確認し、接触力と遠隔力を分けて図示すると見落としを防げます。

Point

完全非弾性衝突では運動量は保存するがエネルギーは保存しない。エネルギー損失は \(\Delta K = \dfrac{m_1 m_2}{2(m_1 + m_2)}(v_1 - v_2)^2\)。

数値例で確認

上で導いた結果に具体的な数値を代入し、計算の流れを確認します。

\(m = 1.0\) kg, \(M = 3.0\) kg, \(v = 8.0\) m/s (静止 M に衝突) とする。弾性衝突:

$$v' = \frac{m-M}{m+M}v = \frac{-2.0}{4.0}\times 8.0 = -4.0 \text{ m/s}$$ $$V' = \frac{2m}{m+M}v = \frac{2.0}{4.0}\times 8.0 = 4.0 \text{ m/s}$$

完全非弾性衝突の共通速度:

$$V = \frac{mv}{m+M} = \frac{1.0 \times 8.0}{4.0} = 2.0 \text{ m/s}$$
Point

記号の式に具体的な数値を代入することで、オーダー (桁) と単位を同時に検算できる。入試でも概数での検算は有効。