応用問題171 糸の長さが変わる振り子

設問(1) 最下点通過直前の張力 \(T_1\)

直感的理解
水平位置から静かにはなすと、最下点では高さ \(l\) 分だけ落下しています。エネルギー保存則で速さを求め、最下点での円運動の運動方程式から張力を求めます。最下点の直前は半径 \(l\) の円運動です。

立式:初期位置(水平、糸の支点と同じ高さ)から最下点(高さ差 \(l\))までのエネルギー保存:

$$ mgl = \frac{1}{2}mv_1^2 \quad \Rightarrow \quad v_1^2 = 2gl $$

最下点(直前)での運動方程式(中心=上向き、半径 \(l\)):

$$ T_1 - mg = \frac{mv_1^2}{l} = \frac{m \cdot 2gl}{l} = 2mg $$ $$ \therefore \quad T_1 = 3mg $$
答え:
$$T_1 = 3mg$$
Point

最下点では張力が重力に打ち勝って上向きに向心力を提供する。\(T = mg + \dfrac{mv^2}{r}\) の形。

設問(2) 最下点通過直後の張力 \(T_2\)

直感的理解
最下点の直前と直後で速さは同じですが、半径が \(l\) から \(l/2\) に変わるのがポイントです。半径が半分になると向心力は2倍必要になるため、張力が大きくなります。

立式:最下点直後は、糸が釘Oに引っかかるため半径 \(l/2\) の円運動になります。速さ \(v\) は同じ(\(v^2 = 2gl\))。

運動方程式(中心=上向き、半径 \(l/2\)):

$$ T_2 - mg = \frac{mv^2}{l/2} = \frac{2mv^2}{l} = \frac{2m \cdot 2gl}{l} = 4mg $$ $$ \therefore \quad T_2 = 5mg $$
答え:
$$T_2 = 5mg$$
Point

糸の有効長さが変わると、同じ速さでも向心力の大きさが変わる。半径が小さいほど大きな向心力が必要。

設問(3)(4)(5) 角度 \(\theta\) の位置での張力と放物線移行条件

直感的理解
最下点から角度 \(\theta\) 上がった位置では、高さが \(\dfrac{l}{2}(1 - \cos\theta)\) 上がっています。エネルギー保存で速さを求め、半径方向の運動方程式で張力を求めます。張力がゼロになる角度が円軌道から離脱する角度です。

設問(3):最下点から角度 \(\theta\) の位置(高さ \(\frac{l}{2}(1 - \cos\theta)\) 上昇)でのエネルギー保存:

$$ \frac{1}{2}mv_{\theta}^2 = \frac{1}{2}mv^2 - mg\frac{l}{2}(1 - \cos\theta) $$

\(v^2 = 2gl\) を代入:

$$ v_{\theta}^2 = 2gl - gl(1 - \cos\theta) = gl(1 + \cos\theta) $$

半径方向(O向き)の運動方程式(半径 \(l/2\)):

$$ T - mg\cos\theta = \frac{mv_{\theta}^2}{l/2} = \frac{2m \cdot gl(1 + \cos\theta)}{l} = 2mg(1 + \cos\theta) $$ $$ T = mg\cos\theta + 2mg(1 + \cos\theta) = mg(2 + 3\cos\theta) $$

設問(4):\(\theta = 90°\) のとき \(\cos 90° = 0\) なので:

$$ T = mg(2 + 0) = 2mg $$

釘が糸から受ける力 \(F\) は張力と等しく(作用・反作用)\(F = 2mg\)。

設問(5):円軌道から放物線軌道に移る条件は \(T = 0\)(糸がたるむ):

$$ mg(2 + 3\cos\theta_0) = 0 \quad \Rightarrow \quad \cos\theta_0 = -\frac{2}{3} $$
答え(3):
$$T = mg(2 + 3\cos\theta)$$
答え(4):
$$F = 2mg$$
答え(5):
$$\cos\theta_0 = -\frac{2}{3}$$
補足:離脱後の運動

\(\theta_0 = \arccos(-2/3) \fallingdotseq 131.8°\) で糸がたるみ、小球は接線方向に飛び出して放物運動に移ります。このとき速さは \(v_{\theta_0} = \sqrt{gl(1 + \cos\theta_0)} = \sqrt{gl/3}\) です。

Point

糸がたるむ条件 \(T = 0\) から離脱角度が求まる。糸の有効長が変わる振り子では、エネルギー保存は全体で成り立つが、運動方程式の半径は区間ごとに変わることに注意。

数値例で確認

上で導いた結果に具体的な数値を代入し、計算の流れを確認します。

初期の糸の長さ \(l_1 = 1.0\) m で角速度 \(\omega_1 = 4.0\) rad/s, 引き上げて \(l_2 = 0.50\) m とする。角運動量保存:

$$m l_1^2 \omega_1 = m l_2^2 \omega_2$$ $$\omega_2 = \omega_1 \left(\frac{l_1}{l_2}\right)^2 = 4.0 \times 4 = 16 \text{ rad/s}$$ $$v_2 = l_2 \omega_2 = 0.50 \times 16 = 8.0 \text{ m/s}$$
Point

記号の式に具体的な数値を代入することで、オーダー (桁) と単位を同時に検算できる。入試でも概数での検算は有効。